トレーナー室にいきなり入ってきたテイエムオペラオー。
そしてトレーナーにむかってある言葉を投げかける。
その言葉によって物語は動き出す……。


1 / 1
第1話

「はーっはっはっは!キミもテイエムオペラ像にしてあげようか!」

 

「閣下ァ!?」

 

とある休日の昼下がり。勝負服でトレーナー室に乗り込むや否や某悪魔の閣下のようなことを言い出したテイエムオペラオー。G1レースで着用する白とピンク、金が基調の勝負服はいつも通りだが、よく見るといつもより頭の上の王冠は大きく派手になっているし、めったにつけないアイシャドウが色濃くメイクされていた。

オフの日だからと資料整理の為にトレーナー室で作業中だったトレーナーは担当ウマ娘の急なイメチェン具合に困惑と驚きを隠せなかった。

 

「…どうして急に閣下みたいなこと言い出したの?」

 

「フフフ…先日アヤベさんやドトウ達と一緒に買い物に出かけてね」

「妖精に誘われるかのごとく立ち寄ったCDショップで見つけたのさ」

 

「そう!世紀末覇王たるこのボクと同じ名を冠したグループを!」

 

「名前だけじゃん!」

 

なんと偶然聖飢魔Ⅱを知ったノリで言い出したらしい。

 

「それだけではないよトレーナー君!ボクが秋シニア三冠を勝利した時のことを覚えているかい?」

 

「それはもちろん覚えているよ。あの時のオペラオーの走りは…」

 

秋シニア三冠だけではない。あの1年間オペラオーは一度の敗北もなくレースを走り切った。

その他の追随も許さない圧倒的な走り、1つの時代を終わらせるかのようなパフォーマンスから彼女は“世紀末覇王”の称号を得たのだ。

 

「はーはっはっは!ボクのレースでの勝利の美しさを讃えてくれるのはうれしいがそこではないよ!」

「ボクの美しさをより広めるためにボクそっくりのテイエムオペラオー像を作ったじゃないか!」

 

あのオペラオーの笑い声も再現した超精巧な像か…結局校内やレース場に飾られることはなくコレクションとして自分の部屋においてあるらしい。

同部屋のビワハヤヒデは大丈夫だろうか、あれは超精巧過ぎてちょっとホラーだった。

 

「かの音楽隊もことあるごとに「蠟人形にしてやろうか」と言っていたらしい、そんな芸術に対する価値観さえもも一致させてしまうなんて…流石ボク!」

 

「いやそういう意味じゃないと思うよアレは」

 

そうはいっても周囲を魅了するカリスマ性や一挙手一投足を話題にするスター性などは確かに通ずるものはあるかも知れない。かもしれないだけだが。

 

「でもそれをどうして真似しようと?」

 

なにかしら目的があるから恰好を整え、メイクをしてきたはずだが…

 

「よくぞ聞いてくれたね!ボクもバンドを組みたいのさ!協力してくれたまえ!」

 

「バンド…って、どうやってメンバーを集めるのさ」

 

他にも聞きたいことはいろいろあったが最初に口をついたのはそれだった。

 

「あてはあるさ!」

 

そう言うとオペラオーはトレーナーの身体を背負うといつもの高笑いを響かせながら走り出した。

 

「一人では音楽隊は名乗れないからね!共にブレーメンへの道のりを歩む仲間の元に向かおう!」

 

「ちょっと待って!?校内を走ったらあぁぁぁ!?」

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

「…それで私のところに来たのか?話の繋がりが見えんのだが」

「それは私も知りたいです…」

 

トレセン学園の一角にある花壇で水やりをしていたエアグルーヴからオペラオーからの誘いと一連の流れを聞いた後の一言。なんとか追いついたトレーナーも疑問を投げかける。

オペラオーはバンドを組みたいと言っていた。つまりはある程度音楽に対する素養が求められるメンツが必要になるわけだ。

エアグルーヴはクラシック音楽…ショパンを嗜んでいるというのは聞いたことがある。

オペラオーもよくオペラに関する知識を話題にするが求める音楽性が似通っていると感じたのだろうか?

 

「そんなのはまさしく見て分かるじゃないか!何事もまずは形からと言うしね!」

 

「「見て分かる??」」

 

見て分かるほどのヒントが今のエアグルーヴにあるのか?

オペラオーは聖飢魔Ⅱを見てバンドを思いついた…見た目で分かる=ファッション?……エアグルーヴのファッション…

 

「…もしかして、アイシャドウのメイク?」

 

Exactly(そのとおりでございます)

 

「なっ!? これはお母様のメイクを真似ているのであって…って何を言わせているこのたわけ!」

 

エアグルーヴが母に憧れ、メイクも揃えているのは学園の間では有名だが流石に公然と話すのは照れくさいのか耳まで赤くしながら抗議している。

 

「エアグルーヴ先輩が偉大な母上に憧れているのは知っているさ!ただボクが目指す音楽隊にはぴったりのメンバーであるのも事実!覇王に並ぶものとして女帝の名は申し分ない!」

 

「ど、どこから聞い、いやそれよりも最近ハヤヒデがこぼしていたぞ!部屋に不可思議な人形があるせいで妙に寝つきが悪いとな!勝手に学園内に不審物を持ち込むな!」

 

やっぱりオペラオー人形の影響はあったのか…。正直アレの持ち込みの許可は下りそうにないと思っていたから黙っていたところはあるが。

 

「そんな!オペラオー人形の美しさ×ボク自身の美しさは美の女神(アフロディーテ)にも劣らないよ!そんな美しさのせいでハヤヒデさんを酔わせてしまっていたなんて……なんて罪作りなボク!」

 

「何を訳の分からん事を言っているこのたわけ!いい機会だ、私直々に説教にしてやる!」

 

「おやおや振られてしまったようだ!他の候補を勧誘するので説教はまたの機会にさせてもらうよ!」

 

女帝の追撃を躱し、自らの目的の為にトレーナーを小脇に抱え去っていく世紀末覇王。

 

「他の候補って…まだ続けるの?!」

 

「勿論さ!次はきっと成功する!」

 

 

 

__________________________________

 

 

 

「そんなかくかくしかじかで」

 

「うまうまうみゃうみゃと言うことなのね!面白そう!」

 

「えぇ…反応良いのが怖い…」

 

2人が次に向かったのは食堂でティータイムを楽しんでいたファインモーションのテーブル。

逃走の勢いそのままテーブルに近づいたせいで、SPの皆さんにスクラムで止められるというハプニングがありつつも席に着いた2人とファインモーションの会話は恐ろしいほどに弾んでいた。

 

それにしてもオペラオーはなぜファインモーションを誘ったのか?

先程のエアグルーヴへのお誘いは音楽性ガン無視、アイシャドウメイクの共通点のみで勧誘していた。

今回ファインのメイクは聖飢魔Ⅱには似つかないが……

 

「今回お誘いいただきありがとうございます。テイエムオペラオー殿」

「ふふっ、普段ハードロックやヘヴィメタルなんて聞く機会もやる機会はないもの! シャカールにちょっと教えてもらったことはあるけど…それでも楽しみ!」

 

「はーはっはっは!音楽性などこれからのボクたちにとっては些末な問題さ!かの音楽隊には“閣下”と呼ばれた魔王がいた…この覇王だけではなくそんな呼ばれ方をするメンバーも必要だと思ってね」

 

殿下ァァァァァァァァ!!?

 

「まさか閣下と殿下の語呂の良さで選んだの?! 駄目だよ色々と!不敬なのはダメ!」

 

「ええ~いいよそんなの。私は気にしないよ?」

 

「こっちと周りが気にするの!」

 

想像してたのよりとんでもなかった。これはマズい。

このノリと勢いを2人に任せていたらこちらがもたない上にどこまでも暴走しかねない‥‥!

 

「ファイン先輩もそう言っているしお言葉に甘えようトレーナー君!そうと決まれば…」

 

「そうだね! 早速国内の大きいコンサート会場押さえておくよ!やっぱり武〇館か東〇ドームかな?」

 

「「え??」」

 

トレーナーとオペラオーは自身の耳を疑った。

この日本で限られたアーティストしかライブができないような会場を押さえる?

しかもどちらか選択可能? 耳を疑う内容に2人の思考は一瞬停止する。

 

「機材も楽器も必要だよね…できればいいやつを使った方がやる気もでるし!ねえねえこのギターなんてどう?」

 

「「あぇ??」」

 

そうしてファインモーションが見せたウマホの画面にはFe〇derの○○○万円(24年サトノクラウン種付料)ほど、いやそれ以上するベースがずらりと並んでいた。

思考は完全に固まり、意識が宇宙猫になりそうなオペラオー。

それをよそに様々な機材を物色するファインモーション。楽しそうに眺めるそれらはどれもが目が飛び出るお値段。

 

「も、申し訳ありませんでしたああああ!!!キャンセルでお願いしますううう!!!!」

 

トレーナーは耐え切れず頭を深々と下げ、周囲のSP達にも何回も「この話は忘れてください」と念押し。

宇宙ウマ娘になったオペラオーを背負って食堂を飛び出した。

 

「あら? 別の機会になっちゃった」

「そうだ! シャカールやクリスやギムレットに声をかけてみよっと! きっと楽しいバンドになるよね!」

 

1人残ったファインモーション殿下は、次は他の友人たちを誘ってみようと考える。

この後に奔放おてんばお嬢様のブレーキ役(になるであろう)のエアシャカールに幸あれ。

 

 

 

 

中庭のベンチにて___

 

「人の思考は理解から外れた時停止するんだねトレーナー君…君がいなければある意味ルサルカのように悲惨な結末を辿る可能性が垣間見えたよ」

 

「助けになったのなら幸いだよ。これに懲りたらもう…」

 

「いや!ここであきらめては覇王の名折れだ!次も検討はついている!さあ行くよ!」

 

 

__________________________________

 

 

 

「そんなうんぬんかんぬんで」

 

「ずきゅんどきゅんですか…」

 

そうして見つけたのはエイシンフラッシュ。

ドイツ生まれの真面目で几帳面なウマ娘だ。もうオペラオーが何を基準にしてメンバーを選出しているのかがわからない。

見た目も地位も年間無敗を達成したウマ娘らしくぶっ飛んだやり方で(半ば無理やりだが)共通点を見出してきた。

トレーナーはもはやそのスカウト理由を楽しみにしていた。さあどんな理由になるのか…

 

「フラッシュさん!貴女はレース前にドイツのおまじないを唱えていると聞いているよ!」

 

Toi toi toi(トイトイトイ)のことですか? そのことならおっしゃる通りです。ドイツの伝統的な幸運を呼ぶおまじないでして…」

 

「それなら話が早い! ボクが集めている音楽隊のモチーフの閣下もそれを唱えていてね! だからその要素を取り入れるため共に音楽隊を結成しようじゃないか!」

 

確かに閣下は某朝番組の歌コーナーでtoi toi toiの歌を歌ってはいた。

・・・歌ってはいたがもはや繋がりと呼べるかすら怪しかった。いや前の2人もそこまであったわけではない。

だが閣下本人からの共通点を見つけようとはしていた。歌っていた歌詞から広げるならもうメンバーを厳選しなくても当てはめられてしまいそうだ。

 

「もうそれっぽさだけなら白い〇蹟でオグリキャップやタマモクロス、フジキセキ呼べるじゃん…」

 

「流石はボクのトレーナー! その人選も実に素晴らしいよ! この後に会いに行こう!」

 

「そうかではそれらはお前達への説教が終わってからだな」

 

「「「ん?」」」

 

後ろを振り向くとそこには固有スキルのごとく目に青い炎を光らせたエアグルーヴがオペラオー、そしてトレーナーの首筋をがっちりと掴んでいた。

 

「私が逃がさないといったらもう逃げることは諦めんかたわけ共が…」

 

「はーはっはっは! 囚われの身となるもそれもまた美しいボク!」

 

「ぇえ!? なんでトレーナーの自分まで…」

 

「黙れ! 連帯責任だ! トレーナーとして担当の所業を制御するどころか一緒に走り回りおって!」

 

まさかの巻き込まれ事故だ。どちらかというと暴走しないように一緒にいたっていうのに共犯になっていた。

これはたづなさんも呼ばれてお説教コースかな…。

引きずられながらもそんな始末書×始末書になりそうだと考えを巡らせるトレーナー。

 

後に残されたのは話の途中で相手がいなくなってしまったフラッシュだけであった。

 

「少し学園が騒がしいとは思っていましたがエアグルーヴさんがああもお怒りになるとは…」

 

「お二人のお説教が短くなるように祈っておきましょうか」

 

両手を握り、叩くような仕草をしながら小さく唱える

 

 

 

 

 

Toi toi toi だいじょうぶ きっときっとねだいじょうぶ______

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

単発ネタばかりではありますが他の作品も読んでいただけたら嬉しいです。

今後もよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。