一般通過レジェンダリアンの〈超級〉〜指名手配を添えて〜 作:苦悩
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パシン。
乾いた音が、星空の夜、リビングに響く。
『……え?』
『……───ちゃん、自殺した、って。いま、電話、が……ぅッ』
『なに……ぇなん……え?』
「……あーあ……あーあ」
”───?”
そう。あの子は死んだ。自殺した。
『何って……アンタ、自分が何したか本当にわかってないの!?』
『ぁ……ぇ?』
『──ッ!!!』
パシン、パシン。
2つ、3つと響く打音は、やがて家中に響き、異変を知らせる。
『何?なんの音──!?あにぃ!?ちょ、お母さん止めて!』
『止め無いで!この、この子はぁ!!!』
『何の騒ぎだ!』
『ぇ……ぇ……ぁ?』
「……家庭崩壊を思い出させるとか、鬼?」
”──”
「あぁはいはいそうでしたねー」
『妊娠してたの!5ヶ月!』
『は?』
『──ッ!あんた、あんたねぇ!!!』
『ぁ、ぐ、あ”ぁ!やめ──!』
『ちょ、あ、えと……』
『っ、あぁ”、クソ!』
馬乗りになって殴る母と、必死に止める父。状況が飲み込めず、立ち尽くすしかない妹。
だって、記憶にないから。
行ったのはキスまで、そこから先は行ってない。
ただ、現実を受け入れられない、呆然とするしかなかったんだよ。
それに……
「この時は9月。夏休みが終わって、明日から学校が始まる、そんな頃合。対して、付き合い始めたのは6月頭。どう考えても、計算が合わないんだよね」
5ヶ月なら、遅くても5月頭にはもう妊娠してないとダメなんだよ。
まあ、つまり、だ。
「最初っから、さ。最初から、彼女は妊娠していた。それだけだよ」
それも、当時16才の女の子が。
”────?”
「それで?それで、かぁ……。そっか、そういえばこういうのって時代とか地域とかで……。あー、そうだね。自分らの時代、確かに結婚するのは18からOKなんだ。けど、それは18になってから。16で結婚とか、それこそ子供を作ったとか……行為の時点でアウト、そもそもルール違反だ」
”────”
「っはは、たしかにお前は理解できないだろうね。性別とか、無さそうだし」
”─────?───”
「あぁ、それは……はぁ……ほら、今から流れるから……見ればわかる」
────最ッッッ低、で、最ッッッッッッ悪な、
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【本鑑定は、関係者家族双方の要請に基づき実施されたものである。】
【DNA多型解析の結果、被検者間に生物学的な親子関係は成立しないと判断される。】
【親子関係否定率:100%】
それが、
そして。
「ぁ?」
「───……すまん、父さんが間違ってた」
「───ごめんなさ──!」
「……なにこれ」
【本鑑定は、関係者家族および警察協力要請に基づき実施された。】
【検体Aと検体CのDNA型は、
全解析座位において父子関係を否定する不一致を示さなかった。】
【親子関係成立確率:99.9998%】
【検体Cの提供者は、検体A(胎児)の生物学的父親である可能性が極めて高い。】
【・検体C:男性(■■■■)口腔粘膜サンプル】
親友の名前が、あった。
「……なにこれ」
何かが、盛大に、致命的に。
気づけば頬筋が吊り上がり、吐く息は断続的になって、熱い液体がエクボを伝って落ちていった。
□
「ふふっ……いや、今見てもまだ笑える。最高のエンタメだこれ」
”───?”
『その……だな……。娘の机の中を、少し、探してもらったんだが……』
『そこで……見つけてしまったんです。娘が……その……』
「んー?いや、あの少年、中々いい道化だよなーって思って」
”──”
「そうだね、アレは
そもそも、大前提として。
「
それでも。
それでも、自分と同じ顔の少年が、こうして鬱展開まっしぐらの展開を改めて見させられると、こう……来るものがあるかなって思う。
共感性羞恥に近いものだと思うけどさ。
『貴方に宛てて……遺書を、書いた形跡が、あったんです』
「で、この紙切れが渡される、と……うん、だいたいこんな感じだったかな」
少年は、静かに、その紙を受け取って。
それを少し眺めて……。
□
ビリ。
ビリビリ。
ビリビリビリビリビリビリビリビリ。
「───!何してる!?」
「……何って……見ての通り、だよ」
カミキレを、破って、捨てた。それだけ。
「自暴自棄になるのはわかる!お前が辛いのも分かっている!だが、いちばん辛いのはあの子のご両し───」
「バカ言ってんじゃねぇよ、クソ親父。いちばん辛いのは──に決まってんだろうが。こんなカミキレ、──がいねぇんじゃあ一銭の価値もねぇんだよ!」
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”───?”
文字の数、少なすぎない?そう、聴いてきた。
「ん?あの紙に書かれた文字?……あぁ、そりゃそうだよね。読めないよね、お前」
あの文字はな……
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『たすけて』
□
「って、読むんだよ」
”──”