作品の性質上、基本提督と対象の艦娘は最初からラブラブちゅっちゅです。
尚、独自解釈が多量に含まれます。
軍病院の一室。
「……赤城さん、もう一度言って貰えるかしら。」
呆然とベットに腰掛けた加賀は、赤城から聞かされた言葉の理解が追い付かずに、そう聞き返した。
「…………提督は……亡くなりました。」
加賀は、再び告げられたその言葉が、意味を成さない音の羅列のように聞こえた。
「……赤城さん、エイプリルフールはまだ先よ?……いくら赤城さんでも、そんな嘘を吐くのはダメです。」
加賀は、赤城の告げた言葉を冗談と決めつけた。
否、そうで無ければ、とても正気を保てなかったからだ。
「冗談では……ありません。」
赤城は、そんな加賀の心情を察しながらも、事実として突き付けるしかなかった。
加賀と同じように付けられた、自身の左手の薬指に嵌められた指輪を右手で強く包みながら。
「……なんで……?赤城さん、なんで……?あの人は、私と赤城さんを残して勝手に死ぬような無責任な人では無いわ………新しい命も…宿ったのに。」
赤城のそんな言葉に、加賀は虚ろな目でそう呟きながら、お腹を優しく撫でた。
「……そもそも私は、どうして病院に居るの…?……たしか、私とあの人と赤城さんが、久しぶりに休みが合って……それで、一緒に買い物に出掛けて……それで……それで?」
加賀は、自身の記憶を辿ろうとするも、その記憶は断片的なものでしかなかった。
「……それで……ショッピングモールに向けて歩いて居た時、街頭演説をしていた政治家に対するテロに巻き込まれてしまったんです。
銃を乱射して……艤装を展開していない私達では、どうしようもありませんでした。」
加賀の断片的な言葉に、赤城はそう続けた。
「……それで、どうなったの…?」
「……提督は元特殊部隊の出ですから、持っていたハンドガンで即座に十数人のうち四人の頭を撃ち抜き、射殺しましたが、その直後に流れ弾が私達に飛び交い……私達が浴びる筈だった数十の銃弾の殆どをその身で受けました。」
赤城は、加賀の虚ろな目を見つめながらそう答えた。
そして、唐突に膝を着いたかと思うと……頭を下げた。
「……申し訳ありませんでした。
あの時私は、身篭って激しい動きが出来ない加賀さんを直ぐに逃がす役目を提督から頂いていながら、楽しさと油断のあまりその役目を果たせませんでした。
……もし、あの時私が加賀さんと一緒にその場を即座に離脱することが出来ていれば、提督はあんな烏合の衆など、銃弾の雨を浴びせるだけで無力化出来ました。
……私が油断さえしなければ。
…本当に!申し訳ありませんでした…!!」
赤城は、そう叫びながら頭を床に擦り付けた。
「……赤城さん」
「…っ!私がどれだけ謝ろうと、提督の命が戻る訳では無いのは重々承知しています!
そして、私にこの指輪をつける資格も有りません!
ですので、ケジメとして私はこの指を切り落とし!腹を切ってお詫びいたします!!」
赤城は、加賀の呼びかけに頭を上げてそう叫び、懐から小刀を取り出した。
そして、その刃を薬指に当てた。
「赤城さん」
「……止めないで下さい!私は……私なりのケジメをっ!!」
「赤城さん」
加賀は、そんな赤城の腕を掴む。
そして、こう続けた。
「……赤城さん、もうやめてください……自分の"お腹の子"も殺す気ですか?」
「え……?」
赤城は、加賀のその言葉に動きを止めた。
「……何となく、分かるの。赤城さんのお腹に新しい命が宿っているのが。」
加賀は、赤城の腕を掴んでいた手をそのお腹へと動かし、愛おしそうに撫でながらそう続けた。
「……あの人の事は、今でも信じられません。……でも、それは"この子達"には関係有りません。
…だから、赤城さんも産んでください。それが残されたものにできる贖罪の方法です。」
「……。」
赤城は、そんな加賀の発言を聞き終わるや否や、再び深く頭を下げた。
その姿はもはや土下座を通り越していて、頭突きに近いものとなった。
そんな姿を見下ろすように眺めていた加賀だったが、暫くしてこう言った。
「……赤城さん、私はこの子を産んだら
死のうと思います。」
「っ!」
加賀の発言に、赤城は息を詰まらせた。
「この子を産むことで、私はあの人との全ての繋がりを失ってしまいます……そうなったらもう、私の生きる理由は有りません。
……あの人の……提督のいない世界に、私の居場所は有りませんから。」
加賀は、そう言いながら自身のお腹を優しく擦った。
「……だから、この子は赤城さんにお願いしますね。」
「……っ分かり、ました。」
赤城は、嗚咽混じりにそう答えた。
「それから、赤城さん……この子の……名前なんですが……」
「分かりました。」
「……まだ何も言ってないです。」
加賀の言葉を遮り、即座に了解の返事した赤城に対して加賀は苦笑した。
続けて加賀は言う。
「……この子の名前は、"祐賀"にしようと……思います。」
「祐賀、ですか?」
「……はい、男の子でも、女の子でも読める字にしたかったので。……どうでしょうか?」
加賀は、少し不安げに赤城にそう尋ねる。
「良い、名前だと思います。」
赤城は、笑顔でそう肯定した。
ー
あれから数ヶ月が経ち、加賀と赤城は無事子供を産んだ。
「…あぅ………あわぁうぃ?」
祐賀と名付けられたその子供は、加賀の腕に抱かれながら、赤城に手を伸ばしている。
「ふふっ……可愛いですね。」
赤城は、そんな祐賀を抱き上げた。
「あわぁうぃ!」
そんな赤城を見てか、祐賀も嬉しそうに笑う。
「…」
「…ぁ?…かぁ…ぅあ?」
加賀は、赤城の子を抱きながら、そんな二人の様子を微笑ましそうに眺めている。
だが、加賀の頭の中を占めているのは、提督との子供を産むという目的を達成したことによる虚無感と、彼との思い出の日々だけだった。
初めて出会ったあの日の事。
『航空母艦 加賀です。あなたが私の提督なの?…それなりに期待はしているわ。』
『なかなか気難しそうな子が来たな……』
初めてMVPを取ったあの日の事。
『良い指揮でした。
こんな艦隊なら、また一緒に出撃したいものです。』
『めっちゃ指揮官泣かせに来るやん。もっと頑張るわ。』
初めて喧嘩をしたあの日の事。
『頭に来ました。』
『五月蝿ぇ!てめぇみたいなやつとっとと沈んでこい!』
初めて沈みかけたあの日の事。
『提督…赤城さん、あなた達が無事ならいいの……先に逝って、待っているわね……』
『馬鹿野郎!お前はまだ沈んでねぇ!まだ、まだ謝ってねぇのに沈ませるかよ…!』
仲直りしたあの日の事。
『沈めなんて言って悪かった。…失いかけてわかった、俺にはお前が必要だ。
…だから、ごめん。』
『…間宮さんのアイスを一緒に食べてくれるなら、良いけれど。』
初めて看病されたあの日の事。
『ゲホッゴホッ……提督、忙しいのに、わざわざ来て…いただかなくても…』
『いいんだよ、どうせ執務終わったらやる事ないし、何よりお前の顔がみたい。』
『……変な人…』
初めて手を繋いだあの日の事。
『提督、その……手を……繋いでも?』
『あ?なんだ急に。まぁいいけど……』
『……暖かい…ですね…』
『いやお前の方が暖かいだろ』
『誰が焼き鳥製造機ですって?』
『言ってねえよ』
初めて想いを伝え、キスを交えたあの日の事。
『提督……私はどうやら、貴方の事が好きみたいです。』
『えなに?なんかのドッキリ?』
『本気です』
『…マジ?』
『まだ疑うのですか……ならば……んっ…』
『…マジ…なのか』
『ええ』
初めて抱きしめられたあの日の事。
『加賀ぁ…いつもありがとうなぁ…いつも本当に助かってるんだ……』
『提督飲み過ぎです、あと抱きしめないでくださいセクハラです』
『加賀ぁ……ホントに愛して……zzZ』
『っ!……そこの五航戦、口笛を吹かない!そこの妖精さん、ラッパでチャルメラを吹こうとしない!……はぁ、全く。』
『加賀さん、お布団敷きましたから、ここで提督を寝かせて置いてあげて下さい。』
『ありがとうございます、赤城さん。』
練度が最大になり、指輪を貰ったあの日の事。
『加賀、これを……受け取ってくれるか?』
『………』
『…やっぱ嬉しく無い…か?』
『いえ…私、感情表現が…その……提督、私…これでも今、とても幸せなのですけれど…』
『加賀…!』
『提督、苦しいです』
『すまない…でも、今だけはこうさせてくれ』
『……ここは譲れません』
初めて交わったあの日の事。
『加賀……お前の全てが欲しい。』
『はい、私の全てを貴方に…あげます。』
『愛してる、加賀。』
『私も…です……』
妊娠が発覚したあの日の事。
『提督、その…明石さんに診てもらった結果なのだけれど……』
『体調不良の原因は見つかったか?』
『……ええ、その……出来たみたいなの。』
『え?何が?』
『だから……新しい命が…宿りました…』
『……』
『提督……?やっぱり、迷惑だったかしら……』
『加賀ぁ!!』
『きゃあっ!?』
『ありがとう!本当に……ありがとう!』
『提督、苦しいです……』
『……加賀、愛してる。今この時だけは、何を差し置いても、お前を愛してる。』
『…私も、貴方を愛しています。』
初めて修羅場を知ったあの日の事。
『………提督、赤城さんとはいつから関係を持っていたのですか。』
『……少し前の、宴会の時からだ。』
『…そう、ですか……では、私はお払い箱と言うことでしょうか。』
『違う、決してそんな事は無い。今回の事は俺が理性を制御出来なかったからだ、酒に酔っていたからという言い訳をするつもりは無い。』
『……分かりました。……私は貴方の事を許します。』
『加賀……』
『ですが、条件があります。』
『なんだ?』
『…赤城さんともケッコンしてください。』
『はぁ!?』
『…赤城さんが提督の事を想っているのは、ずっと前から知っていました。
そして、私はケッコンしてからずっと思っていたんです……提督の右隣り、ここは譲れません。でも、赤城さんになら左隣りを任せられる、と。』
『加賀……分かった、お前がそう望むなら俺は赤城ともケッコンする。
……でも、必ず2人とも同じだけ愛するって誓う。』
『はい……信じています。』
失う事の痛みを、辛さを、恐怖を、絶望を、初めて知ったあの日の事。
『…加賀…赤城…無事…か……良かっ…た…お前達…が無…事なら…それで…』
『喋らないでくださいッ!提督!今、今救急車が来ますから!』
『赤城さん血が…血が止まりません……なんでなんで止血してるのに!』
『……もういいさ…加賀、赤城。』
『提督!しっかりしてください!まだ、まだ間に合います!』
『イヤイヤイヤイヤイヤイヤ!なんでなんでなんでなんで!?提督!提督ッ!
逝かないでください!私を置いていかないで!子供の名前決めるって約束したでしょう!?ねぇ!提督っ!提督ッ!赤城さんも、私も、纏めて愛してくれるって……約束…してくれたでしょう……?』
『ごめ、ん……約…束まも…れなくて……で、も…でも…な、ほん、とに…愛…してる……加、賀…あ、かぎ…………ありが、とう、おれを…愛して、く、れて………いま、も、し、んでも……あ、い、して、る…』
『提督!目を開けてください!まだ、まだ…!まだ私…全然愛してもらってない…!ようやく…加賀さんにも認められたのに…!まだ、逝かないでくださいよ…っ!!』
『提督……?嘘、嘘嘘嘘嘘嘘うそうそうそ!!駄目駄目駄目駄目ダメダメダメだめだめだめだめ!!提督!いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
そんな甘く苦しい思い出が、加賀の脳裏に浮かんでは消えていく。
「加賀さん、祐賀が……」
赤城は、自分のの腕の中で眠る祐賀を見てそう言った。
「……寝てしまったのね」
加賀はそう言いながら、受け取った祐賀を布団に寝かせた。
「提督……貴方は本当に狡い人です……幸せを与えておきながら、自分だけ先に逝ってしまうなんて……」
「……。」
赤城は何も言わず目を伏せる。
「赤城さん……会いたいです…あの人に………死んででも…っ!」
「………っ」
赤城は、加賀のその呟きに思わず息を詰まらせた。
「……だから、死のうと思ったのに……この子を見たら、死ぬに死ねなくなっちゃいました……」
布団の中でスヤスヤと寝息を立てる祐賀を優しく撫でながら、加賀はそう言いった。
そんな彼女の表情は、死に場所を見失った兵士のようでもあり、子の成長を願う母のようでもあり、帰らぬ愛を求める少女のようでもあった。
「加賀さん……」
赤城は、そんな加賀に何も言うことが出来なかった。
「提督……貴方は本当に酷い人です……愛を教えておいて、その上私達を残して逝ってしまうなんて……っ」
病院で目を覚ましたあの日から、初めて彼女の目に涙が浮かび、頬を伝う。
「……っ加賀…さん…」
赤城は、そんな加賀を優しく抱きしめる。
「……っ、私は…貴方を……許しません…っ………でも、貴方が残したこの子達は……必ず守り、育てます……っ」
加賀は、赤城の胸の中で嗚咽を漏らしながらそう言った。
「…愛して…います…っ…いつまでも…」
ちなみにうちの初嫁艦は加賀さんです。
…好評なら続く……かも