輝利哉君のひ孫が大正時代にタイムスリップするお話   作:科学大好き人間

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炭治郎視点です。最後だけオリ主のカナト君視点になります。

投稿が久々になってしまいお気に入り登録して下さった方には本当に申し訳ないです。筆者がここ半年以上狛恋カップリングに脳内リソースを割いていたので中々他のカップリングを書こうと思えなくなってしまったのが理由です。ただ狛恋の二次小説もつい先日完結したためこちらも漸く書き上げる気になりました。宜しければ番外編の結末を見届けて頂けたらな幸いです。

注意:
妊活に苦労されている方は不快に思う要素があります。もし該当する方はブラウザバック推奨です。大丈夫そうな方は本文をどうぞ。


番外編 炭治郎とカナヲの温泉旅 後編

「ここが石段街かぁ。」

 

「カナト兄さんが言ってた通りお店が一杯あるね! 炭治郎行くよっ!」

 

「ま、待てカナヲ! 浴衣でそんな急いで駆け上がると転ぶぞ!? ゆっくり! ゆっくり見て回ろう! なっ?」

 

「もうっ・・・炭治郎はのんびり屋さんなんだから・・・」

 

 

旅館から歩いて暫くすると、観光客向けの大小様々な店が石段の脇に立ち並ぶ景観が目に飛び込んできた。

 

するとすぐにカナヲが興奮気味に駆けだそうとする。俺は慌てて待ったをかけるがカナヲは不服なのか振り返り少し膨れる。

 

俺は苦笑いしながら歩み寄り、カナヲに片手を差し出す。

 

 

「ほら、危ないから手を握ろう。これなら安心だろう?」

 

「っ! 炭治郎っ!」

 

 

するとカナヲはパッと花が咲いたように表情を明るくし、俺に寄って手を握る。俺はその仕草に思わず頬が綻び優しく握り返す。お互いに指を絡ませ合いながら。

 

 

「夕食までまだまだ時間あるからな、食べ歩きながらカナトさんお勧めの名所を巡ろう。カナヲ、早速どの店に寄ろうか。」

 

「ラムネ!」

 

「ま、また飲むのかカナヲ? さっき沢山飲んだろう。一旦お腹に溜まるものを食べてそれからにしないか? 身体にも余り良くないし。」

 

「むう・・・」

 

 

カナヲは不服そうだが、それでも俺の言葉に納得したのか首を縦に振る。

 

そうして俺たちはゆっくりと石段を登っていく。真っ先に目についたのが饅頭屋だった。

 

 

「ほらカナヲ。温泉饅頭だぞ? これも甘いしカナヲの口に合うんじゃないか?」

 

「ほんとだ、美味しそう!」

 

 

ほんのりと甘く漂うあんこの匂いが心地よい。俺とカナヲ早速店に立ち寄り、片手にそれを持って食べ歩きながら石段を上る。

 

 

「美味しい! 温泉饅頭なんて初めて食べた!」

 

「そうか? なら良かったカナヲ。もし気に入ったなら旅館に帰るときにまた買っていいからな?」

 

「うん! そうするねっ!」

 

 

カナヲは嬉しそうだ。やっぱり甘いもの全般好きみたいで俺は安心した。流石に温泉街にまで遠出してラムネだけ飲まして帰るなんて思い出も何もない。この調子でカナヲの好物の開拓と行こう。

 

 

「カナヲ。次はあのお店にしよう。だし醤油のいい香りがするからもしかしておでんかな?」

 

「あれって何だろう。全部同じ形してるからおでんじゃないみたいだけど。」

 

 

そうして俺たちが次に寄ったのは玉こんにゃくの店だった。俺は二本頼み、片方を息で冷ましてからカナヲに近づける。

 

 

「ほらカナヲ、あ~ん。」

 

 

カナヲは俺が玉こんにゃくの串を近づけると暫く何だこれはと言わんばかりに物珍し気に見つめていたが、やがてその先端をかじった。

 

 

「美味しい・・・糸こんにゃくの塊みたいな感じ・・・」

 

「そうか? なら良かった。うん! 確かにうまいなこれ! だし醤油が良く染みてる! 小腹にも溜まりそうだ!」

 

 

そうして店頭近くで黙々と二人で食べ進め、完食したのちに俺たちは再び石段を登り始めた。

 

 

「甘いしょっぱいを繰り返してると無限に食べれそうだなカナヲ! 次はあの店にするか?」

 

「何あれ・・・独特な匂いもするんだけど・・・」

 

 

俺が指差した店はもつ煮込みを扱ってる店だった。カナヲはいぶかしむ目で店の料理を見ていた。

 

 

「私はいらない・・・」

 

「カナヲ? もつ煮は身体に良いらしいぞ? カナトさんが言うには、びたみんびい群?が多くて滋養強壮に良いし鉄分亜鉛も豊富で貧血予防にもなるんだって。

 それと確かこらーげん?が豊富でお肌のツヤや美白効果、シミ予防、ニキビ予防、肌のくすみとかも軽減するらしくて・・・」

 

「食べるっ!! 店主さん二人分お願いしますっ!!」

 

 

俺の説明を待たずにカナヲが張り切って注文をかける。なんだろう。最後のお肌の下りが琴線に触れたのだろうか。そう言えばしのぶさんもカナトさんに勧められて新婚後頑張って食べてたような気もするけど・・・

 

 

「カ、カナヲ・・・苦手なら無理して食べなくていいからな・・・?」

 

「大丈夫! お肌に良いんでしょ? ほら炭治郎も! しっかり食べて滋養つけてっ!」

 

「いや・・・俺別に疲れやすくないし特段張り切る必要も・・・」

 

「何言ってるの炭治郎! ほらしっかり食べて! 今日だけは途中で力尽きたら私許さないから!」

 

「・・・? 力尽きる? 食べ歩きぐらいでそんなにヘトヘトになるか・・・? ・・・ん???」

 

 

俺は暫し混乱するがカナヲが気合入れて必死に食べているのを見て俺もそれに倣う。やがて完食したのかカナヲは再び店主に声を掛ける。

 

 

「すみません! お代わりお願いします!!」

 

「お嬢ちゃん。今日特別な日なのかもしれないけど食べ過ぎは毒だからほどほどにね? あと旦那さんのことはちゃんと労わってあげてね?」

 

 

引き気味に店主の方にそう宥められ、カナヲは肩を落としシュンとする。俺は苦笑いをしながらカナヲの肩に手を置く。

 

 

「カナヲ。気に入ってくれたのは嬉しいけど同じものを一度に大量摂取するのは良くないってカナトさんも言ってたぞ? また今度食べさせてあげるから・・・」

 

「・・・わかった。」

 

 

そうして俺たちはその店をあとにした。最後うっすらと「今夜は頑張ってね旦那さん。大変だと思うけど。」という何故か同情するような声が聞こえた気がした。なぜ・・・

 

そして暫くしょんぼり気味のカナヲの手を引いて登っていくと、『石段の湯』と書かれた看板が視界に移った。

 

 

「公共浴場か。こういう広いところの温泉に浸かるのもいいよなぁ。」

 

「じゃあ炭治郎っ! 一緒にお風呂入ろっ!」

 

「ま、待てカナヲ!? ここは公共だから他のお客さんも居るって! そもそも男女別々だから!」

 

「じゃあいいや。他のところ行こ?」

 

 

カナヲは一瞬で元気になったかと思うと再び落ち着いて俺の手を引いてその場を去ろうとする。まるでもうここには興味がないと言わんばかりに。

 

 

「カ、カナヲ・・・ごめんって。旅館に帰ったらまた一緒にお風呂入れるし・・・外じゃ勘弁してくれないか・・・?」

 

「ほんと? 嬉しい! 約束だからね? じゃあ外のお風呂はもういいから他のところ行こっ!」

 

 

そうしてカナヲは俺の手を引いてグングン階段を登り詰める。今日はカナヲの浮き沈みに振り回されてばっかりだな・・・

 

やがて最上段を登り切り、俺達は伊香保神社に到着した。振り返ると石段街が一望でき、それはまさに絶景の眺めだった。

 

 

「わあ! 結構登ったな! いい景色じゃないかカナヲ!」

 

「うん! 夕暮れが近いからとっても綺麗。炭治郎と一緒に見れて嬉しい。」

 

 

俺達は互いに手を握って見つめ合う。カナヲの頬がかすかに朱色に染まっているように見えた。

 

 

「それじゃあ折角だし参拝していこうか。なんでもここは縁結びや子宝の御利益があるみたいだぞ?」

 

「縁結びはいらない。だって炭治郎ともう一緒だもん。でも子宝の御利益は欲しい。しのぶ姉さんの赤ちゃんみたいに可愛い子生まれるといいな。」

 

「・・・っ!」

 

 

俺は少しからかうつもりで言ったが見事カナヲに倍返しを受けた。カナヲは本当に・・・いつからこんなに積極的な子になったんだ?

 

ああ・・・カナエさんの教育のせいか・・・なら仕方ないな・・・

 

俺は観念したような傍観の表情に変わる。

 

 

「炭治郎。ぼうっとしないで。早くお参りするよ?」

 

 

カナヲは俺を怪訝に見てそのまま手を引いて行く。そして俺たちは神社に祈りを捧げた。

 

別に俺だって子どもが欲しくない訳じゃない。ただカナトさんに聞かされたこれから先の未来が不安で尻込みしてしまうんだ。

 

もし俺達が本当に子を授かれるのなら・・・どうか神様・・・カナヲとこれから生まれ来る我が子の二人をどうか守ってください・・・俺の代わりにどうかお願いします・・・

 

俺が必死に目を瞑って震えるように祈っていると、不意にカナヲが俺の両肩に手を乗せ包み込むように抱き着いてくる。

 

 

「安心して炭治郎。心配しないで。私は絶対大丈夫だから。」

 

 

俺は目を開ける。震えも治まっていた。カナヲが俺の顔を下から微笑を浮かべ覗き込む。

 

 

「私は炭治郎から沢山の愛を貰えたなら、一生それを支えに強く生きていけるから。だから私は大丈夫。安心して?」

 

「カナヲ・・・」

 

「もうそんな顔しないで? 私は炭治郎と楽しい思い出を一杯作りたいの。勿論今日だけじゃなくてこれからも、ね。約束してくれる?」

 

「っ! ・・・ああ、約束する。俺は寿命が尽きるその日まで、全力でカナヲを幸せにするよ・・・! 一生消えない思い出をうんと作る。約束する・・・!!」

 

「ふふっ。嬉しい。じゃあ涙ふいて、そしたら次の場所に行こ? まだ見るところあるんだから。」

 

 

俺はカナヲに指摘されるまで自身が泣いていることに気が付かなかった。急いで涙を拭いて俺はカナヲと次の目的地まで歩みを進めた。

 

やがて紅葉で視界が覆われる景色に周囲が移り変わる。

 

 

「ここは確か河鹿橋だったっけ? カナトさんが言ってた・・・」

 

「凄い。まるで紅葉でできた天井を潜り抜けてるみたい。」

 

 

俺達は頭上を生い茂る紅葉を眺めながら河鹿橋の中央をゆっくりと進む。周囲全てが鮮やかで俺は思わず息を飲んだ。

 

 

「綺麗だ・・・」

 

「そうだね。とっても綺麗。」

 

「いや・・・そうじゃなくて・・・まあそれもあるけど・・・今は・・・」

 

 

時刻は夕暮れ時だった。紅葉の向こう側から夕陽が透けるように橋の上を照らし、カナヲを鮮やかに彩り俺は目を奪われていた。

 

 

「カナヲが・・・本当に綺麗だなって・・・」

 

「えっ///!? た、炭治郎っ///!?」

 

 

俺は真っ赤に染まったカナヲが愛おしくて堪らなくて、そのままゆっくりと顔を近づけて接吻を交わした。

 

 

「っ///!!」

 

 

俺は再び顔を離す。目を見開きこれ以上にない位赤く染まったカナヲを見て俺は思わず腰に手を回して抱きしめる。

 

 

「た、炭治郎・・・///」

 

「カナヲ。ありがとう。俺を選んでくれて。俺の傍に居てくれて。」

 

 

俺は抱きしめる力を僅かに強める。

 

 

「こんな先の短い俺なんかに・・・そこまでひたむきな感情を向けてくれて・・・俺はカナヲとこうして傍に居られて本当に幸せだ。ありがとう・・・愛しているよ。」

 

「わ・・・私も・・・!! 炭治郎が好きっ!! 愛してるっ!! 寿命が短いとかそんなの関係ないよ! 私が炭治郎の傍に居たいんだもの。だから最期まで一緒に居させてね? 約束だよ。」

 

「ああ・・・!! 約束するよ・・・!!」

 

 

俺は感極まって再び泣いてしまった。どうして俺は長生きできなくなってしまったんだろう。そう思わない日はない。

 

でも仕方がない。痣が出なければ、俺は最後の無惨との戦いの場に立つことすらできなかっただろう。生き残れたかどうかもわからない。

 

どの道時を巻き戻す(すべ)なんてない。今の俺に、これからの俺にできることは、悔いなく全力で残りの時間を生き抜くことだと、そう思った。

 

 

「炭治郎。日が暮れると危ないから、そろそろ戻ろっか。他に行きたい場所まだあったけど、このまま旅館に戻って二人で過ごしたいな?」

 

「ああ、そうだなカナヲ。残りの場所はまた来た時に行けばいいもんな。元の道に戻ろうか。」

 

 

そうして俺たちは、手を繋ぎ、指を絡め握り合ったまま、寄り添うように二人でもと来た道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館で夕食を頂き、再びカナヲと紅葉の見える温泉で言葉を交わしながら過ごす。

 

やがて夜も更けて、俺たちは就寝準備を済ませ、部屋で二つくっついたまま敷かれる布団の上で横になり、そのまま同衾した。

 

 

「今日はありがとう炭治郎。私とっても楽しかったよ。またいつか二人で来ようね?」

 

「勿論だよカナヲ。今日は本当に楽しかった。近いうちにまた時間を見つけて二人で来ような?」

 

 

二人でくっついたまま横になってはいたが、俺たちはどちらも眠ろうとはしない。

 

暫く気まずい沈黙が続く。俺は緊張で汗をかくばかりで一向に切り出すことがことができないでいたが、ここは俺の方から言うべきだと内心決意を固める。すると・・・

 

 

「炭治郎・・・」

 

 

カナヲが俺に抱き着く力を少しだけ強める。俺はハッとしカナヲの顔を見た。

 

 

「カ、カナヲ・・・」

 

「炭治郎・・・貴方が将来を不安に思ってることはずっと前から知ってたの・・・だからずっと・・・炭治郎が進んでそういうことをしたくないって思ってることはわかってた・・・でも・・・」

 

 

カナヲは俺の胸元に顔をうずめる。俺の浴衣を握りしめるカナヲの手が僅かに震えていた。

 

 

「でも私・・・やっぱり思い出だけじゃなくて炭治郎の生きた証も残して欲しいよ・・・!!

 確かにしのぶ姉さんも居るし、アオイだっているし、蝶屋敷にも竈門家にも私の傍に居てくれる人はいる。

 でも私は・・・やっぱり炭治郎と・・・炭治郎との間で・・・!!」

 

 

カナヲのすすり泣く声が聞こえた気がした。そこから俺はすぐさまカナヲに応えなければと思った。

 

俺は上体を起こしてそのままカナヲを力強く抱きしめる。

 

 

「ごめんっ!! ずっとカナヲの気持ちに応えてあげられなくてごめんっ!!

 未来がどうだとか、今後厳しい時代になるだとか、そんなことを言い訳にしてカナヲに寂しい思いをさせ続けて来た!! 本当にごめんっ!! ごめんよ・・・!!」

 

 

俺達二人は静かに抱き合う。気づけばお互いにすすり泣くような声は出なくなっていた。やがて抱き合うのをやめてお互い見つめ合う。

 

 

「炭治郎・・・いいの?」

 

「ああ。寧ろカナヲの方こそいいのか? 俺・・・情けないところばかり見せて来ただろうし・・・」

 

「ううん。そんなことないよ。それだけ炭治郎が私のことを真剣に考えて悩み続けてくれたってことだと思うから。でもね・・・これからはもうそんなこと考えないでね?」

 

「カナヲ・・・」

 

「お願い炭治郎・・・今夜は私に・・・これ以上ないくらい一杯愛を注いで・・・せめて今夜だけは・・・ずっと我慢し続けてきた私の心と身体を満たして欲しい・・・お願い・・・」

 

「カナヲ・・・ああ! だって約束したもんな? おねだりされたらちゃんと聞くって。じゃなきゃ針千本だもんな?」

 

「ふふっ。そうよ。これから先ずっと約束守ってもらうからね? 覚悟してて炭治郎。」

 

 

そうして俺達は口付けを交わす。どちらが先に抱き、どちらが先に押し倒したのかもわからないまま、俺達はそのまま身体を重ねた。

 

気が付けば朝になっていた。ただひたすらに、今は二人の体温を感じているのがどうしようもなく心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、まさかたった一夜で身籠るなんて。カナヲは相当優秀な母体だったようですね。とても嬉しい反面あんなにあっさり懐妊できて正直羨ましい限りです。私は二年もかかったのに・・・」

 

「まあまあしのぶさん。天からの授かりものって言うしこればかりは時の運だよ。何はともあれこれでカナヲちゃんも安心できるね。本当に良かった。」

 

 

炭治郎とカナヲちゃんの温泉旅から早一ヶ月。カナヲちゃんが不意に職場で体調不良を起こした。急いでしのぶさんが診察した結果、彼女のお腹の中には新たな命が宿っていた。

 

カナヲちゃんの懐妊が明らかになると、元蝶屋敷の診療所で働く者一同、大層大喜びとなった。カナヲちゃんもその時は思わず嬉し涙を流していた程だ。

 

ただ一方でしのぶさんは少々複雑な心持ちのようだ。確かに僕らの時はカナヲちゃんのようにこうもあっさりとは行かなかった。今も尚嬉しさと悔しさが同居しているような何とも言えない顔をしている。

 

 

「カナト君。こうなったら私達も負けていられませんね? カナヲ達に追い越されないよう今まで以上に一層励みましょう。」

 

「いや・・・子どもの数で競われても・・・そもそも僕らはお互い仕事で忙しい身だしあんまり無理しなくても・・・」

 

「何を言ってるんですかカナト君。私だってあと一人や二人は欲しいと思っているんですよ? 肝心の貴方がそんな腑抜けたことを言っているようでは困ります。早速今夜から頑張らないと。」

 

「いやいや何を言ってるのしのぶさん。カナメが生まれてまだ半年だよ? 流石に妊活には早いよ。母体の負担もある上に育児だって蔑ろにはできないし・・・」

 

「大丈夫です! 今だって蝶屋敷の子達にカナメの面倒見てもらってるんですから! その気になれば日中だって時間作れるはずです!」

 

「あのねしのぶさん。あの子達は僕らの仕事に支障が出ないようにわざわざ時間を取って面倒見てくれてるのであって、僕らの妊活の為にカナメのお世話をしてる訳ではないんだよ? 流石にそれは職権乱用だよ。」

 

「だ、だったら! 最悪姉さんに面倒見て貰うんで何も問題ありません!」

 

「いやあるよ。そもそも高頻度で出産繰り返してたら母体の負担が大きいって。最悪しのぶさんの健康面が・・・」

 

「大丈夫です! カナト君ならその辺も含めて食事での栄養管理だってキッチリできるはずです! だから問題ありません!」

 

「えぇ~・・・嘘でしょ・・・そこまでする必要ある?」

 

「ありますよ! さあさあさあ! これでもう言い逃れできませんよ!? 今夜からキッチリお務めを果たして貰いますからね!? 因みに逃げようとしても無駄ですから!!」

 

「・・・いや・・・別に逃げないけど・・・」

 

 

カナヲちゃんのご懐妊イベントは実にめでたい。めでたいのだが・・・結果僕ら夫婦にもその勢いが飛び火したようだ。

 

ただまあ、短命ながらも愛する妻子に囲まれて人生の幕を下ろせるなら、存外悪くない人生かなと、この時の僕は苦笑いを浮かべ思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下おまけ:

 

 

 

 

「カナト君。未来の科学だと妊娠し辛い人達はどうしてるんですか? 私、最低でもあと一人は子ども欲しいのだけれど。カナト君なら科学の力でそういう薬作れたりしないんですか?」

 

「う~ん。中々の無理難題を言うね、しのぶさん。まあ確かに不妊治療は百年後の未来では既に確立してはいたけど、正直この時代でできそうなのは一般不妊治療程度だろうね。

 そうは言ってもタイミング法が関の山かな? 排卵日を正確に予測できれば自然妊娠の確率が高まるけど、正直僕らの頻度だとこれはやってもやんなくてもあまり意味がない気がする。

 一方もう一つの人工授精法についてだけど現段階でこっちはかなり危ないかな?

 精子を洗浄して濃縮後直接子宮に注入する原理からして、医療で使える程の洗浄技術が確立できない以上感染症等の危険性が無視できないからね。

 僕の寿命制限がなければいつかは実現できるかもしれないけど、そもそもそんな時間があるなら二十代のうちにずっと妊活してる方がだいぶ現実的だと思う。

 なにせしのぶさんは一度出産を経験してるんだから母体として何ら異常があるとは思えないからね。」

 

「そう・・・他に方法はないと・・・」

 

 

僕の説明を聞いてしのぶさんの表情に影が差す。

 

 

「いや。今話したのはあくまでも不妊治療の話であって、妊娠しやすくする方法なら別であるよ?」

 

「ほ、本当ですか!? カナト君!!」

 

「うん。まあ絶対ではないけど。」

 

「では早速教えてください!! と言うより、どうして今まで教えてくれなかったんですか!? なんでそんな意地の悪いことを・・・!!」

 

「いや、既に対策済みだし言わなくてもいいと思ってたんだけど。」

 

「えっ・・・ど・・・どういうことですか?」

 

 

しのぶさんが僕の返答に動揺してるので、僕はもったいぶらず種明かしをする。

 

 

「あくまでも傾向の話だよ? まず妊娠しやすくするには母体の健康状態が必要不可欠だ。これは誰でも知ってると思う。

 ただ、具体的な話としては、『適正体重の維持』『健康的な生活習慣』『ストレス管理』の三つをしっかり守らなくちゃいけないってことなんだ。

 ここで言う適正体重っていうのはBMI18.5以上25未満に該当する体重のことだね。BMIっていうのは『体重(kg)』÷『身長(m)の2乗』のことで、実はしのぶさんは当初16.5程度とかなり痩せ過ぎだったんだ。ただ僕と一緒に生活するようになって食事量をかなり増やしてもらったから、おかげで今は充分適正体重だと思うよ。

 次に睡眠、食事、運動の習慣だけど、寝る時間も食事の栄養バランスも僕が今では管理してるよね? 運動もまあ・・・夜の分も含めて申し分ないと思う。

 だから生活習慣に問題はないしホルモンバランスに異常をきたすこともないはずだ。

 最後にストレスの話だけど、なるべく仕事終わりは息抜きしてもらったりくつろげるように僕の方で気を遣ってるつもりだから、まあ・・・多分・・・大丈夫かな? 僕が無意識にモラハラしてなければだけど。」

 

「すとれす・・・? もらはら・・・?」

 

「ああ、ごめん。この時代だと通じないよね。要は精神的に不健康じゃないかってこと。因みにしのぶさんは最近悩んでたり嫌なこととか貯めこんだりしてない?」

 

「まあ・・・それは大丈夫かと・・・強いて挙げるならもう少しカナト君と一緒に過ごしたいかなって思ってるくらいです。」

 

「ああ・・・それはごめん。立ち上げた法人の仕事が多くてそこは申し訳ないって思ってるよ。でもまあもうすぐ引継ぎも全て終わるしそこは安心して、しのぶさん。」

 

「そうですか・・・なら良かったです。しかしカナト君は本当に物知りですね?」

 

「いやいや。ただ未来で多少勉強熱心だっただけだよ? そう大層なものじゃない。」

 

「仮に勉強熱心だとして・・・多分野の知識をずっと忘れずに覚えてるのがそもそも人間離れしてると思います。貴方は生きる図書館か何かですか?」

 

「う~ん・・・まあ昔から一度覚えたことは忘れないから例えるならそうなのかも・・・」

 

「成る程。私の旦那様はどうやらとんでもない人のようです。」

 

「ねえ、それってさぁ、ほんとに褒めてる?」

 

「勿論褒めてますよ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痣者の人生はたった二十五年で終わる。けど、こうして最愛の人と最期まで一緒に居られる人生なら充分幸せじゃないかって、そうじみじみ僕は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 




以上で番外編『炭治郎とカナヲの温泉旅』終了です。書き終えて番外編完結の方が本編完結期間よりも長いと気づき我ながら唖然としました。完結当初は次回作の連載期間中に片手間で書けば余裕で終わると思っていたのですがまあそんなことはなかったですね。一年前の自分を殴りたい・・・ぐはっ!!

とは言えこちらも無事書き切れて良かったです。やはり一番最初に書いた作品には多少の思い入れがあるので、改めて番外編も完結するといろいろ感慨深いものがありますね。つい先日完結させた別の二次小説とも多少の繋がりがあるので、本作が面白いと感じた方は是非そちらも読んで見てください。ただあっちの白峰は比較的常識人なので本作との違いに多少驚くかもしれませんね。ちょっとした遊び心だと思って頂ければ幸いです。

処女作である本小説も無事終わり、もう一つの方も無事完結したので、4月からは本作の次に投稿を始めた作品の第二部でも書いてみようかなと思っています。あっちはあっちでアニメ化に合わせて第二部を書いてほしいという感想コメントがあったので、折角だと思い今構想を練っているところです。ただ本作の番外編のように間延びはさせたくないと思っているので、途中で別作品の投稿は始めないつもりです。しっかり仕上げてから次回作を書こうと思っています。

いろいろと長くなりましたが、以上が今後の予定です。それではまた機会がありましたらお会いしましょう。ではでは。
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