悪い大人でも青春を謳歌できますか?   作:三度の飯より曇らせ

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恋愛描写はありません(多分)生徒と恋愛していいのは先生だけです。

セリカの誘拐犯は都合上、人数は減らしました。原作通りだと主人公が普通に負けるので。



悪い大人の憂鬱

 

 黒見セリカの誘拐の一件から数刻経ち、夜の気配はすっかりと消え去った。

 

 今日はアビドスの登校日。正直、盛大な遠足の後だ。まるでダイハードとも引けを取らない。振替休日くらいは欲しいところだが。

 どうやら黒見セリカは登校する気に満ち溢れているらしい。

 

 大変、元気なことで。子供は風の子ってよく言うが、コイツは別格だな。

 仮にも麻薬を吸引されていた状態だった。それも対テロリスト鎮圧に使われるような軍事兵器と遜色ない代物。そこらの高校生ならもうちょい昏倒している。

 今、こうやって歩けているだけでも奇跡みたいなものだ。

 

 今は、黒見の自宅前。最低限の身支度をしてから、登校するつもりなんだろう。

 確かに、制服は煤けて肌にも痣や浅い傷が多く残る。目元の隈も濃かった。化粧で誤魔化す必要があるだろう。

 しかし、女の身支度は時間がかかる。もうちょっと簡略化したって誰も何も言わないと思うけどな。

 

「お待たせ……じゃあ行くわよ」

「なあ、もうちょっと時間巻こうぜ。特に化粧とショッピング。五分前行動は学生の本分だろ?」

「うるさいわね。女子は皆、こういうものなのよ」

 

 まあ、こういう所も黙って許してやるのが男の化粧。滴る汗と甲斐性こそが男を魅せるものだ。

 

 しかし、これからどう仕事を進めるか。

 取り敢えず、目先の目標は達成した。出来る動きの幅が広がったのは事実だが、後のことは全く無策。刹那的な自分が恨めしい。

 それに課題は仕事だけじゃない。突然、降って湧いた最大の弊害。躾のなってないガキがしでかした凶行によって、俺の現状はひもじい。

 シリアルが食えない朝なんて悪夢と大して変わらない。クソくらえだ。

 

 幾ら中指を立てたって、貧しさは中和されない。ここは一つ、覚悟を決めるとき。俺が男だって言うならブー垂れず腹括れ。

 

「なあ、相棒。最高の提案があるんだが、聞いていくか?」

「なによ藪から棒に……」

「いやあ、俺は今、無一文でな。今日のランチにすらありつけない。可哀そうだろ?そんな苦しい思いをしている相棒を助けたいとは思わないか?」

「ああ、そういえば財布がどうこうって、言ってたっけ」

「そう。とりあえずカードは再発行するが、その間は素寒貧。だから少し恵んでくれないか?ほら、こういう手助けも名コンビの十八番だろ?」

 

 プライド、矜持、そんなもの身に覚えがないな。犬にでも食わせておけ。

 悪いが俺は人間でな。ドックフードで腹を満たそうとは思わない。そういうのは体を張ったタレントの仕事だ。

 

 コイツの返答一つで、俺の生死が左右される。

 

「まあ、いいけど。アンタには恩があるし、今はそれなりに余裕もあるしね」

「元は俺の財産だけどな」

 

 よし。やっぱ持つべきものは最高のパートナーだ。恩は安売りしてなんぼだな。

 

 これで、食糧問題は解決した。後は如何にアビドス側を弱らせるか。そこが肝だな。

 最終目標は変わらず小鳥遊ホシノの誘拐だが、黒見を実質不能しても、まだやりにくい。

 当然、おっぴろげに誘拐すれば失敗は確実。かといって、タイマンでも万全な準備を経てようやく五分。ほとほと化け物だ。全く暁のホルスの名前に相応しいよ。

 

 摩耗させるのは戦力だけの話じゃない。精神すらも追い詰めて、獅子奮迅の気を圧し折る。銃を握る気すら起きない程にまで茹だらせる。

 自分達がやってきことの成果を悉く毀し、徒花と散らせて、残った花弁も砂と一緒に踏みにじってやるように。

 

「そういえば、アンタ今までの寝泊りってどうしてたのよ?」

「あ?……あー、心優しい民家がその門扉を開いて歓迎してくれたんだ」

「……それ、勝手に侵入しただけでしょ」

 

 よく分かるな。流石は俺の相棒だ。もう心の裡を読めてやがる。学生辞めてハンドパワーで稼いだ方がいいと思うぞ。

 我ながら恐ろしい者を拾い掬ったもんだ。これ、その内、全部バラされるんじゃないか。そう考えると背筋が凍る。もう枕があったって寝れないな。

 

「じゃあ……しばらく、泊まってく?……あ、アンタが良かったら、だけど」

「そうだな……じゃあ、お言葉に甘えよう」

 

 夜分は多少動きずらくなるが、ここは致し方ない。委託された仕事の期間は定まってないんだ。のんびりとやらせてもらうとするか。

 

「んじゃ、黒見は先に学校へ行ってこい。俺は少し別件で動く」

「別件って……まあ、分かったわ」

「先生が動くようなことがあれば連絡してくれ。ほれ、モモトークのID」

「りょーかい。じゃあ私は行ってくるわ」

 

 妙に笑顔で走り去っていく。無駄な期待だ。デートのお誘いは愛情が込められた手紙しか承諾しない。薔薇の花束も付けてくれよ。

 

 さて、盗聴器をつけられた気配はなし。携帯にもウイルスの検知はない。念のため、ジャケットを軽く払おう。

 端末のロックを開け、お目当ては通話アプリ。番号の登録名は「ガラクタ」だ。

 

『もしもし、こちらカイザーPMCだ』

「よう。随分、景気が良いじゃないか。あんなドッキリが待ち構えてるとはな。思わず気絶したよ」

『ああ、あのガスか。良い買い物だったよ。君が紹介してくれた店の新商品だ。それで、あの後黒見セリカとはどうなんだ?』

「図らずも同棲中。概ね手筈通りだな。一歩前進」

『それは上々。ああ、君の言う通りアビドス土地はすべて買収したよ』

 

 いいね。着実と俺の勝利に近づいてきている。最後は最大限、俺に利益が回るように。

 この仕事が終われば、カジノの横に豪邸でも立てようか。それとも百鬼夜行の邸宅でも買って過ごすのもいい。夢が広がるな。

 

「安価だったろ?犯罪の温床なんて誰も欲しがらない」

『ああ、お手頃だった。それで手続きはいつ行えばいい?』

「いつでもいいぞ。攫う前だったらタイミングは任せる。それで、本題なんだが……お前、適当に傭兵を雇ってアビドスにぶつけてくれ」

『ん?別に構わないが、何の意味がある。君も参戦してしまえば無駄骨だろう』

 

 訝しむように質疑するガラクタ。人に聞く前に自分で考えてみろ。コイツはきっと脚本家には向いていない。

 

 舞台装置って言葉がある。それは本来なら演劇の題目に相応しい雰囲気を醸すための小道具を総称するものだが、物語のキャラにもそれは使われる。

 物語を進めるための、特定の役割を押し付けられた人物。浦島太郎なら亀を虐める子どもたち。主人公が竜宮城に行くためだけに作られた。

 

 今回の傭兵はソレだ。

 少しニュアンスは違うが、俺という存在の有用性を知らしめるための小道具。英雄の武勲をより輝かしくするための引き立て役だ。かつて、ヘラクレスの強さを示すため試練が盛りに盛られたように。

 

「ま、必要な演出だよ。安心しろ。マイナスにはならない。とにかく適当なやつを雇ってくれ」

『いいだろう。雇っておく。それで、決行日は?』

「そうだな。無理を言ってるのは分かるが、明日とかどうだ。アンタだって早く焼き鳥を食いたいだろ?」

『そうだな。日本酒も用意しておくとしよう』

 

 散々、得々と語ったが、期待通りに事が運ぶとは思わない。

 この一件が裏目に出て、逆に警戒を募らせる可能性だって低くはない。黒見を誘拐から救助したという箔もどこまで面を装飾できるか。

 いつだって一か八か。少しはスリルの山と谷が無いと人生は楽しめない。

 

 まあ、これは勝負じゃない。失敗すれば全ての功績が台無しになる乾坤一擲でもない。軽いイベント、そうハプニングみたいなものだ。

 決定的なターニングポイントじゃないなら、肩の力を抜いて気楽に。リクライニングをきかせてお気に入りのEDMでも聞いてたって構わない。

 

 少しでも敗北の芽を潰す。勝てない勝負は好まないから、エンディングは大団円で締めくくれるように。あれもこれも、そのための布石さ。

 

「よーし、第二幕だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス高等学校は、変わりない様で寂しく立っていた。

 平日の昼頃、他だったら若い声で賑わっているのが普通だが。まるで風景だけが切り取られたように閑寂としている。

 かつては同じように青春の情景が興っていたかと思うと、ふと肌に染みる寂寥感。

 

 盛者必衰か。

 このまま過去に囚われて、不細工な焼き増しを連綿と続かせるだけなら、いっそ全てを滅却したほうが前に歩けるだろうに。まあ、俺が讒訴する資格もないか。

 

 普通の学校すら覚えがない俺に、何の評論が出来るんだろうか。この湧き上がる言葉も所詮は羨望や嫉妬だ。そういうのはメッシの豪邸に抱くくらいが丁度いい。

 

「あ、やっと来た!遅いわよ!!」

「重役出勤ってやつだ。俺、一応社長だから」

 

 だから一々じゃれ合ってくるなよ。猫のくせに犬のしっぽが見え隠れしてるぞ。

 初っ端、黒猫と遭遇とか凶兆じゃないか。これはまた、明日のイベントに一波乱ありそうだ。

 

 黒見の登場を鶴の一声に、わらわらと一同が集っていく。

 そして、何かデカい闇でも抱えてそうな少女。暁のホルスこと小鳥遊ホシノが一歩前へ。微睡んで垂れた眦が若干、鋭く輝いた気がした。

 

「ずいぶん遅かったね。途中までセリカちゃんと一緒だったんでしょ?」

「事後処理だよ事後処理。てか黒見、お前言ったのかよ……」

 

 誘拐の件を自発的に語るのは予想外だった。確かに話そうとは思っていたが、てっきり強く抵抗されると踏んでたんだが。意気揚々と拵えた煽り文句が全て無駄になったな。

 

「別に隠すことでもないでしょ。報連相は大事よ」

「はい。無事で本当に良かったです!」

「いやーありがとねぇ。おかげでセリカちゃんの命が救われたよ。おじさん達は全く動けなくて、不甲斐ないよ」

「まあ、深更だったしな。別に責めはしないが、ちゃんと猫には首輪しておけよ。世話はもう御免だ」

「何よその言い草っ。私たち、一応、その……パートナーでしょ!」

「「「「「え……」」」」」

 

 おいおい、そのお口緩すぎだろう。ソープ嬢の蜜壷じゃないんだ。もう少し締めてもらわないと。

 しかも、その表現は思春期の脳には誤解を生む。お年頃は他人のコイバナってやつも栄養素なんだ。こうやって誤謬を生むと一切合切啜られる。

 別段、昵懇の間柄じゃないってのに。こんなメンヘラまで秒読みの奴は願下げだ。結婚すると本当に墓が見えてきそうだ。

 

「待った、誤解だ。だからそのロリコンに向けるような眼は止めてくれ」

「いや~まさか体目当てだったとはねえ。いい人だと思ったんだけど」

「セリカちゃんを助けてくれたことは感謝してますけど。流石に見過ごせませんね~」

「分かった。一旦、話し合おう。俺たちは冷静じゃない。ミニガンは流石に洒落にならない。ドローンも仕舞ってくれ」

 

 誤解を優しく解くように、当たり障りのない言葉を尽くした。

 弁が立つわけでもないから苦難だった。ここ一年でも一番必死だったんじゃないかって気合の入り具合だ。こんな所で名誉が汚されたら堪らない。

 もう少し言葉の引き出しを設けておけばよかった。ウルフ・オブ・ウォールストリートでも、もう一回見たほうが良さそうだ。

 

「なんだ、そういう意味でのパートナーだったんですね!」

「そう。俺たちは所謂コンビ。ま、ビジネスパートナーだ。話が早くて助かる」

「なんだ、おじさん早とちりしちゃったよー」

「それでも大分グレーな関係ではあるけどね……」

 

 何とか理解してくれたようで、矛は納めてくれた。本当に生きた心地がしなかった。どうやらアビドスの女子高生は揃ってプレデターの親戚らしい。もう勝てる気がしない。

 特に、暁のホルス。せめて殺意をもう少し隠したらどうだ。可愛い顔が台無しだ。そんなに、俺が人を誑かすように見えるか。ギターを始めた覚えはないんだが。

 

 どうにか俺の立場は損なわれずに済んだ。ここで信頼が欠けたら、それこそ黒見セリカを救助をした意味が無い。

 せめて「仲間を助けてくれた心優しい大人」という認識くらいは保っておかないと、今後の仕事にも支障が出そうだしな。

 

 まあこの一連も見方を変えれば交流だ。こうやってある程度、言葉を交わしておくことで、俺という部外者もこの輪に段々と溶けていく。

 心を開く切欠になるなら、これも怪我の功名だ。

 

「とりあえず、何事も無くてよかった」

「そうだね。それにしても、相手はとうとう手段を選ばなくなったね」

「ここから戦いも激化しそうですね……」

「まあ、取り敢えずは目に見える課題から片付けちゃおうよ」

 

 目に見える課題ねえ。借金のことだろうが、最早、学生の身で解決できる領分は越えている。一朝一夕じゃ応急処置すら叶わない。

 与り知らぬ水面下じゃ、不利はみるみると肥え太ってもう手に負えないだろう。実はチェックメイトまであと数歩。気が付いた時には負けが込んでいる。こういうのは勘付かれないことが大事だ。

 

 無知ってのはとことん罪だな。

 

「では、借金返済に向けての会議を開始します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議は踊る。されど進まず。

 

 借金返済への会議は混沌を極めた。常々思うんだが、コイツら考え方があまりにも上調子だ。不誠実ともいえる。

 冗句に冗句を重ねて、見てるこっちは冷めるばかり。向き合う気があるかすら怪しい。冗談ってのは空気を読まなきゃただの狂言だ。コメディにも緩急は必要なのさ。

 逸れてばかりの本題を、どうにか軌道修正しようと奮起していた赤縁メガネの子の努力も報われない。

 

 以前、黒見に心が揃ってないと謗ったが、そりゃ揃わないわけだ。そもそもの構え方が違う。

 

 アイドルがどうとか宣っていたが、どう見たって失笑だ。こんなのが相手だとこっちも腑抜ける。

 先生もこの寒いノリに乗っていたが、どういう腹つもりなのか。アビドスがどう転んだってこっちにフィードバックがないと野次馬根性で臨んでいるのか。

 

 時間だけを浪費し、踊り狂うばかりの会議は一旦幕を下ろした。まだ元になった会議の方が内容は濃い。

 

 日も高いということで昼食の時間。アビドスの唯一の名店、紫関ラーメンへと向かった。

 正直、腰が重い。店主と軽く揉めた身としては、素知らぬ顔でラーメンを啜るには、俺の肝っ玉は強固じゃない。肝の鍛え方は知らないもんでな。

 

 しかも、何が嫌ってわざわざ黒見セリカが出勤してる時間帯に来店するってことだ。

 アイツの接客はかなり迫力がある。4DXも顔負けだ。ラーメンの汁すら肌で感じられる。革新的だろ。

 

「ほらほらアヤネちゃん。チャーシューもっと食べますか?」

「ふぁい!!」

「ほら、豚骨醤油。アンタこれ好きなの?」

「男で嫌いなやつは菜食主義者くらいだ。女だって意味もなくスイーツが好きだろ?それと同じだ」

 

 意外にも来店は歓迎された。一応、軽く謝ったが笑って流してくれたよ。流石、器用にラーメン作ってるだけある。心の広さもラーメンの器並みだ。因みに誉め言葉だ。

 

「ふーん。じゃあ、一口……くれない?」

「大した度胸だ。客が注文した品を目の前で摘まもうとするなんてな。図太さを見直したよ」

「別に、そんなに言うからただ気になっただけよ……」

「食いしん坊め。パートナーでもダイエットは手伝わないぞ。ほれ」

「……ありがと」

 

 まさか、客の食い物に集るなんてな。こりゃパートナーの人選間違えたか。

 呑気に麺を啜りやがってこの猫畜生。食べログのレビューも低評価に編纂してやろうか。

 

 はあ、飼い慣らすにも骨が折れそうだ。これならまだホルスの方が可愛げがある。流石に神様は飼ったことないが。

 

「あ、いらっしゃいませー!何名様ですか?」

「あ、あのう……ここで一番安いメニューって」

「一番安いメニューですか?それなら紫関ラーメンですね。看板なので美味しいですよ!」

 

 入店して直ぐ最安値を尋ねるか。どうやら境遇は通じ合えそうだ。

 

 ほう。軍服にも似た意匠のあの身なりは既知。記憶にあるな。軒並み嫌な思い出だが。

 

 ゲヘナ学園。キヴォトスでも指折りのマンモス校。

 生徒の数から敷地の広さまで最上位。ゲヘナで出生した先天のゲヘナ人は妙におどろおどろしい角が生えてるのが特徴だ。ヘイローに続いてナンセンスな装飾だと思うな、アレは。

 生徒数が多いってことは、性格や価値観もサラダボウルの様相だ。そんな個性のぶつかり稽古に自由を重んじるゲヘナの校風は、治安の悪化という化学反応をもたらした。

 

 言うなればキヴォトスでの鈴蘭高校だ。分数が出来なくたって頭を張れる。

 

 まあ、ゲヘナと聞いて思い浮かぶのは何よりあの化け物。エターナルズのセナみたいな理不尽な暴力を振るう白い悪魔。

 あれは本当に別格、というか次元違いだ。マジで宇宙エネルギーでも持ってんじゃないか。

 

「えへへっ、やっと見つかった。600円以下のメニュー!」

「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ」

 

 へぇ、集団か。こんなクソ田舎まではるばる。暇を持て余してるのか。

 何気に外部からの観光客なんて初めて見たな。ここ数日でやっとゲヘナが一組か。つくづく未来の無さを感じる。

 

「はあ……て、何でアンタがっ」

「あ?……うわっ」

 

 見覚えがある、なんて話じゃ収まらない。コイツこそ嫌な思い出の構成員の一人。

 白と黒のコントラストを描く髪。黒曜石のように鈍く艶めくピアスに、嫋やかな肢体をルーズな装いで覆う。ガキのくせして背伸びしてるのが様になる。

 

 ゲヘナ三年、鬼方カヨコだ。

 

 ゲヘナには、荒事を生業にしてる関係で幾らか知己もいるが、よりにもよってコイツがご来店か。今日は占いも確認して、トランクスもわざわざスパイダーマンにしたんだが。そいつは嘯きか。

 いい歳こいてキャラもののパンツをかった俺の恥を返してほしいな。全くもってラッキーじゃない。占いだって大いなる責任が伴うぞクソッタレ。

 

 ……って、コイツがここに居るってことは、まさかガラクタが雇った傭兵って擬きの便利屋かよ。

 

 アイツ、人を見る目が無いな。間違いない。

 

 

 

 

 

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