出演者『幸桃音ほろん』、『ろんねぇ』許可取り済み
「また明日会いましょう!行ってらっしゃ〜い、ばいば〜い、またね〜」
そう締めの挨拶をして右上の退出ボタンを押す。『ライブを終了しますか?』という問いに対し『終了する』という赤いボタンを押す。
配信が閉じリザルトが表示されると、ふぅと言う息と共に緊張が解ける。配信を始めてからはや二ヶ月、いまだにこの緊張は治らない。
ベッドに寝転がり伸びをしているとコンコンと軽いノックの音が聞こえる。はーいと魔の抜けた返事をすると扉が開き、同居人のろんねぇが顔を覗かせる。
「ほろん、配信終わった?」
「うん、さっき枠閉じたよ〜」
「クッキー焼いたんだけど、食べる?」
「食べる!」
足を振り上げ、反動をつけて起き上がる。部屋の入り口でたたずむろんねぇに対し手招きをすると、ろんねぇは不思議そうな顔をしながらこちらへ近づいてくる。そんなろんねぇに対しほろんは開いた口を突き出す。
「はい、あーん」
「え?」
「あーーん!」
「いや、恥ずかしいんだけど……」
そう言って後ずさろうとするろんねぇの足を、ほろんは自分の足を絡めることで防ぐ。ろんねぇの動きを防いだほろんは再びろんねぇへ口を突き出す。
「あーーーん!!」
「えぇ……あーん」
ろんねぇは恐る恐ると言った様子でクッキーをつまみあげると、ほろんの方へゆっくりと近づけていく。
なかなかクッキーが口元へとこないことに焦ったく感じたほろんは狙いを定めると、ベッドから体を乗り出しクッキーへかぶりつく。
「あむっ、ん〜おいし〜!」
「っ!! ほろん、指!」
勢い余って指まで咥えてしまい、ろんねぇから軽い悲鳴が上がる。
「ん? どうしたの?」
「もう、うるさいなぁ!」
ほろんがとぼけたふりをしてそう聞くと、ろんねぇは顔を真っ赤にして声を上げる。
「クッキー置いてくから!」
ろんねぇは怒った態度を崩さないものの、クッキーの乗った皿をテーブルの上へ丁寧に置く。
「ねえあーんは?」
「知らないっ!」
耳まで真っ赤にしたろんねぇは扉をバンッとしめて部屋を出ていく。数秒ほどしてスマホの通知に『おつかれさま』と労いの言葉が表示された。
「かわいいなぁ、ふへへ」
通知を見てニヤニヤしつつ片手でクッキーをつまむ。焼きたてなのかまだほんのりと暖かいクッキーは口の中に入れた瞬間ほろりと解ける。
「今夜は夜這いしちゃおうかな〜」
「……ダメだから」
クッキーを味わいつつ独り言を呟くと、入り口の方から小さな声が聞こえる。スマホからそちらへ目を向けると少しだけ開いた扉からろんねぇの片目がのぞいていた。視線があった瞬間ろんねぇは再び扉の向こうへ消えてしまう。
(ほんとに可愛いな〜♡)
ほろんはまだ扉の向こうにいるであろうろんねぇに聞こえないよう、心の中でそう呟く。スマホの画面には『本当にダメだから!』という通知が増えていた。