「────にんじん要らないよ」
「駄目だ」
どっさり。山のように盛られるにんじん。
トリントン基地のコックは、好き嫌いには容赦しないという慣習がある。
「コウ、どうしたんだよ」
「キース、僕は大丈夫だ」
コウ・ウラキ。この作品の主人公であり、にんじんが嫌いな人でもある。
そして、瀕死になった体験から、色々前世を思い出したオールドタイプでもある。
「昔はMSと見れば目を輝かせていたのに、最近のお前にはおかしいぜ」
そう語るは、親友で長い付き合いとなる、チャック・キース。
金髪には今日もしっかりとワックスがキめてあるが、この作品随一の善人である。
「げ、現実を知っただけさ......」
「現実を知ってジオンに就職しようとするか?」
「親に連れ戻されなけりゃ、すべてうまくいってたんだっ」
スターダストな運命を変えようと、必死にあがくこと10年。
何の因果か、結局トリントン基地に配属されるのであった。
「座学も最低、訓練もできるだけサボったのに……」
「そんなんだから、こんな基地に送られたんだろ」
「それどころか、どうしてテストパイロットになるんだよっ」
実はウラキ少尉、MSが全くと言っていいほど上手く動かせない。
MSを歩かせるというのが限界という、未熟者パイロットである。
「そりゃあ、お前が人並以上に頑丈だからだろ」
「頑丈って、MSに轢かれても死なないだけだぜ」
「それを頑丈って言うんだ」
実は、ウラキ少尉。
運命を変えられないと知ってや、すぐに気持ちを切り替え、筋トレに励む。
細い体の下には鍛え抜かれた肉体があり、手で人を殺せる程度には仕上がっていた。
「必死に24時間も訓練する奴がいるか────あれは」
「どうしたキース」
キースの視線は窓から離れない。
「コウ、あれ見てみろよ」
「あの機影、ペガサス級……」
ウラキの目に映るは、ペガサス級アルビオン。
後に“やっかいもの”と呼ばれる何とも悲しい艦である。
「これって、俺達、新型機にのれるかもしれないぜ」
「余計なお世話だよ、全く」
「そんな事を言うなって、
なぜこんなにキースがMSに詳しいのか。
それは過去にウラキが洗脳の如くガンダムの知識を与えたからである。
優しいキースは創作半分に聞いていたが、UCの知識なんか絶対語っちゃ駄目である。
「────飯を食い終わったら見に行こうぜ」
キースの優しい言葉。
正直、新型機よりも、アルビオンの美女に興味はあるが。
そんな事よりもウラキに元気になってもらいたい、そんな一心である。
「キース先に行っててよ、僕は準備があるから」
「準備ってそっちはドックとは逆方向だぜ」
飯を片付け、ウラキの足が進むは【対人用武器庫】
「僕はここである男を仕留めなきゃならないんだ」
ウラキは手をパキパキと鳴らすのであった。
◇◆◇
【アルビオン格納庫】
格納庫内には[インフルエンザに注意]との張り紙が。
また張り紙の下には、[病気を持ち込んだ警備課を許すな]とも書いてあった。
「おい、みてみろよガンダムだぜ」
「そうだね」
ハンガーに鎮座するは、二機のガンダム。
2号機は当然のように、使えるようになっており、
1号機にはチョバムアーマーが付けられている。
「チョバムがついてるってことは、漫画版だな」
「コウ、やっぱり頭大丈夫か」
ウラキが10年間独断専行をしまくっているので、漫画版もクソもない世界となっているのだが、そこは気にしてはいけない。
「おいみろよ、アレって」
「もう運び出したのか……」
二号機に運び込まれるは、弾頭。
もちろん通常弾頭ではない。三角マークの付いた核弾頭である。
「大丈夫だよ、キース、アレが使われることはない」
「やっぱり大丈夫か、コウ、震えているぜ」
「武者震いが止まらないだけさ」
数分、いや数十分に感じる間を開けて登場する、大佐。
武人ぽい雰囲気をまとった彼は、ウラキ達に声をかけようと近づく。
「そこの君、弾頭の装填はすんでいるかね」
「ガトオオオオオオっ!!」
会話のドッチボール。
遠慮なく体当たりを敢行する、ウラキ少尉。
日々の訓練のたわモノか、歴戦のパイロットでも反応できない速度である。
「貴様ァッ、急に何をするッ」
有無を言わさず、馬乗りになり、銃を取り出すウラキ。
ガトー大佐の額には銃口が添えられる。
「この距離なら外さないぞっ、ガトオオオオオオ」
「いやまてェェッ、私はまだ何もやっていないだろォ!!」
流石に慌てるガトーさん。
まだ何もやっていないが、基地に忍び込んだ時点でアウトである。
「しねおやああ」
「いやちょっとおおお」
間一髪、頭に当たりそうな銃弾を避けるガトーさん。
ウラキ少尉は遠慮なく二発目をお見舞いしようとするが────
「何の音だ」
アルビオン格納庫内に鳴り響くアラーム。
発生源は2号機の方から。
「ふふふ、部下達はよくやってくれたようだな」
恰好をつけているが、ウラキに馬乗りにされた状態では、哀れさの方が際立つガトーさん。
「そんなァ、私のガンダムがァッ」
どこからか聞こえる、ニナな声。
そして。コードをブチブチとちぎり動き出す、二号機。
「馬鹿なっ、ガトーは捕まえたハズだろ」
「ガンダムは二機あるのでなッ」
「まさか部下を」
「武人としては当然の判断だッ」
「都合のいいことをっ」
「未熟者には「うるさいっ」────ぐほっ」
ガトーに腹パンをかまし、コウはキースを探す。
キースは1号機のコクピット桟橋で、男とのもみ合いに負ける。
「コウ、一号機がッ」
1号機はコードを引きちぎり、補給もせずに動き出そうとする。
「馬鹿な、1号機までッ」
「馬鹿な、連れてきた部下は一人だけだぞ」
何故か、ウラキと一緒に驚いてる、ガトーさん。
そんなガトーさんの胸倉は、ウラキ少尉に掴まれる。
「ガトオオオオオ、貴様はどれだけ僕たちをコケにすればっ」
「うるさあああい、こっちも不測の事態だ、未熟者がァッ!!」
一号機から声が届く。
「悪いな、ガトー、アンタの名前は俺が貰っていくぜ」
「お前、その声はオービルッ」
「ええっ、オービルがっ、いやオービルって誰だ」
情けない声を出す、ガトーさん。
「悪いな、少佐。アンタの役割はいただいていく」
ニック・オービル。彼もまた思い出したオールドタイプの一人。
だが記憶は部分的であり、思想はジオン軍によっている。
「少佐、アンタはパイロットとしては一流だが、ジオンを引っ張っていくには三流だ」
向けられるは、1号機頭部バルカン。
中途半端な装弾の為、撃てる数は数発。
それでも人を殺すには十分な数である。
「アンタは、ここでオービルとして死ぬんだよっ」
「────ちィ、やらせるかっ」
とっさにガトーを庇う、ウラキ。
右手でバルカンが防げるのは、格闘訓練のおかげである。
「運のいい老害め」
ガトーさんは25歳なので、実はお前より若い説がなんて言ってはいけない。
ブースターを吹かし、離脱を図る、1号機と2号機。
「そ、そんなァ、私のガンダムがァ」
そして、やっぱり聞こえるニナの声。
「視界が、噴煙で……」
MSのブースタの影響か、舞い上がった土煙はウラキの視界をつつむ。
全てが過ぎ去ったころには、ガンダム1号機と2号機はいなくなっていた。
「────僕は、俺は、結局駄目だったのか……」
格納庫に届くは、爆撃音とサイレン。
近づくは基地への攻撃、原作より悲惨な状態で、スターダストなメモリーは幕を開ける。
────次回予告
襲い来るジオンの残党軍。
駆り出される、ウラキとキース。
なぜか先に足を汚しているバニング大尉。
パイロット不足の負け戦に、艦長の策が光る。
シナプス艦長:「そこの連邦の大佐は、どうだ」
ガトーさん :「えっ、私ですか」
次回「ガトー、出撃する」
君は生き残ることが出来るのか……
もちろん続かない。
最終回はバスクさんがコロニーを調理して終了です。