グラスアーカイブ   作:外神恭介

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ジャンクフード万歳

「ねえきょーちゃん」

 不意の己を呼ぶ声に対し、葵・鏡子は行動で答えた。

 手元にあったフライドポテトを指弾で飛ばし、声の主の口を塞いだのだ。

「んむぅ!?」

 熱や塩気よりも驚きが勝ったのか、若干涙目になりつつ口を押さえる姿が正面にある。薄緑の長髪に長身と巨乳、太陽を象ったようなヘイローを浮かべた少女に、今はムラサキを名乗っている己は溜め息を零した。

「シャーレ近いんだからそっちの呼び方はナシ。相変わらず物覚えが悪いんだからムイは」

「……んく。ご、ごめんねムラサキちゃん」

 ようやくといった体でポテトを飲み込んだムイこと梔子ユメが頭を下げるが、気にするなと手を前後に振る。どうせ三日後どころか明日には同じことをやらかす。そういうタイプだ。決して悪意がある訳ではないのだが、天然と抜けっぷりが致命的なアホの子、というのが彼女を知る者のおおよその評価。実際それで死んでるし。以前師匠に愚痴交じりで近況を報告した際も、

「残機が九十九あっても寿命までに全部溶けるんじゃねえのかコイツ……」

 レトロゲーか、とツッコんでおいたが内心では全面的に同意だった。腹抱えて笑ってた奏よりはマシだと思いたいが、私もこの性格だしなあ……。

 ともあれ逃避をやめて現実に戻れば、ムイはあからさまにしょげていた。自分のやらかしを深く受け止め、反省しているのだろう。それでもなおやらかすのだから、これはもうそういう個性だと割り切るしかない。名前の件についてはさすがにマズいので都度強めに言ってはいるが、麦茶と麵つゆを間違えるとか迷子になって半泣きで連絡を取って来るとか、そういう普段のやらかしにはツッコミ程度で済ませているのだから。

「……まあ、この賑わいなら誰かの耳に入ることもなさそうだけど」

 結局こうやってフォローを入れちゃうんだから奏に茶化されるんだよね、と思いつつムラサキは周囲に視線を巡らせた。

 今二人がいるのは、D.U.外縁部にあるファーストフード店のテラス席。今日は雲一つない快晴だが、テーブルに備え付けられたパラソルと店内から流れて来る空調で冷えた空気のおかげで、暑いというほどではない。昼前ということもあって人の入りはそこそこ多いが、大抵は屋内席。敷地の外は街道になっていて、人は愚か時たま戦車まで通るような状態だ。こちらを狙い撃ちで盗聴でもしない限り、会話を聞かれる心配はないだろう。

「で、遮っちゃったけど何? トラブルでもあった? 釣り銭ぶちまけたとか」

「ちゃ、ちゃんと電子マネーで支払ったもんっ。……準備に手間取って後ろの人に睨まれたけど」

「予想通り過ぎる……」

 椅子に座り直し、ムラサキは早めの昼食を手に取った。チーズバーガーらしく黄を主体とした包装紙を手早く剥き、大口を開けてかぶりつく。チーズとケチャップの甘味にピクルスの酸味が効いて良い感じだ。それらを包み込むバンズも柔らかさと歯応えが同居していて、かつ主張し過ぎない塩梅が絶妙。メインのパティも肉汁たっぷりで、大量生産品とは思えないクオリティ。さすがはIZUMO、頭おかしい以外は完璧な仕事。ジャンクフードのはずなのにそこそこ良いレストランで食べているような錯覚を得られる。欲を言えばもっとこう、身体に悪いって感じの雑な味を前面に出してくれると嬉しいのだが、そこまで行くと好みの押し付けになるので贅沢は言うまい。

 満足の吐息と共に二口目に行くと、ふと対面からの視線に気が付いた。見ればムイが何とも言い難い苦笑いでこちらを見ていて、

「どしたの?」

「あ、うん、さっき言おうと思ってたことなんだけど……」

 一度言葉を切ったムイが、少し視線を下にズラして告げた。

「……頼み過ぎじゃないかな?」

 言われ、ムラサキは己のトレイの上を見た。

 今手にしている分とは別でチーズバーガーが二つ、ポテトが二つにナゲットが一つ。飲み物はコーラとバニラシェイク。ぱっと見一家族が頼むような分量だが、残念ながらこれ全部一人分。なのでムラサキは予防線としてトレイを手前側に引きつつ、

「あげないよ?」

「いや欲しいんじゃなくてね? 身体に良くないんじゃないかな、って思うんだけどなあ……」

「抑圧すると解き放たれた時が酷くなる、ってよく言うよね」

「……うん、言うね」

「病弱キャラってね? 節食と称して健康的だけど地味な食事ばっかりになるんだよ?」

「……つまり?」

「ジャンクフード万歳」

 中身を失った包装紙をトレイ上に放り投げ、ムラサキはポテトを鷲掴みにした。口に運び、舌上に広がる暴力的な味覚を堪能し、飲み込んで、

「こんなどう見ても塩分とカロリー過多な食事を後先考えず取れる。最高の贅沢じゃない?」

「……ええと、うん、ムラサキちゃんが満喫してるならそれで良いかな」

 顔を背けながらなのは気になるが同意は得られたのでムラサキはナゲットに取り掛かった。バーベキューソースのただただ素材の味を塗り潰す濃さ、良いよね……!! ほうらポテトも漬けちゃうぞう。美味。夜中に食べたら堪らんだろうね絶対。深夜のカップ麺然り身体に悪いものって何でこうも美味しいのか。健康志向なんぞ邪道。我慢尽くしで長生きするより好きなもの腹いっぱい食って死ぬ方が絶対満足度高い。金と寿命とカロリーは知らん。道楽なんてそんなもの。

「ところでそっちは何頼んだの?」

 味わい深い表情でこちらを眺めているムイに、促しも兼ねて話題を振る。そこでようやく正気に戻ったのか、ムイは己のトレイを見せるようにこちらへ押し出し、

「バンズじゃなくてお米で具材を挟んだ、バーガーならぬ(マイ)ガー。私が頼んだのはサーモン米ガーとレタスの浅漬けで、飲み物はあったかいお茶」

「……本気でIZUMO系列というか、IAIの因子濃く出過ぎじゃないかな……」

 味はともかく名前は絶対にふざけてるだろうこれ。普通にライスサンドで良いだろうに。確かあっちだと山賊の頭領を戯画化した猛者バーガーとかいう名前でチェーン店広げてたはずだが、山賊で海の幸を具にするのはどうなんだ。師匠の身内が中落ち米ガースペシャルを偉くリスペクトしてて、見せびらかしに来たもののトッピングのワサビが塊で悶えてたこともあったっけなあ……。

「どうしたのムラサキちゃん、急に遠くを見て」

「ああ、うん、今日の夕飯はカルビでも買って帰ろうかなって」

 首を傾げられたので気にするなと手を振っておく。

 戸惑いつつも律儀に手を合わせてから米ガーを手に取るムイに苦笑。剥かれた包装紙から見える海苔の黒を懐かしく思いつつ、

「エジプトでも稲作はしてた気がするけど、そういえばこっちでは見た記憶ないね。自治区があの状態じゃ稲作も難しそうだけど」

「日常生活に支障が出る程じゃないけど、水は貴重だからね。お米は基本輸入品」

「そういう場合作物は痩せた土地でも育つ麦とかジャガイモがメインになるけど、そうなると私が広義のエジプト飯でムイが日本食もどきってのも変な感じだなあ」

 ファーストフードの代名詞をエジプト飯と呼ぶのも大分アレだが、麦で出来たバンズとジャガイモで出来たポテト食ってるんだし一緒一緒。

 小口で米ガーを頬張るムイが、ふとこちらに目を向けた。その視線は背後、シャーレのオフィスビルがある方を見ていて、

「ナコちゃんから連絡来た?」

「まだ。まああの子のことだし、ひょっこり帰って来そうだけど」

 二つ目のチーズバーガーを消化しつつそう答えると、ムイが俯いた。何事かとナゲット片手に顔を向けると、

「……一人で大丈夫かな」

「心配し過ぎ。今までだって何度も侵入してるんだし大丈夫」

「だ、だってシャーレのビルは防犯対策で、不法侵入するとお尻にプラスドライバーぶち込まれる呪いが掛けられるって噂に!!」

「それお姉ちゃんが言ってるだけだから。説得力あるだけで実際にはないはずだから」

「……でもお師匠さんの身内に、術式関係のスペシャリストいたよね? 割とノリが良い性格の」

「…………」

「そ、そこで無言になるのやめようよ!!」

「いやまあ一瞬考え込んじゃったけど、ナコも師匠の身内だしその辺は抜かりないでしょ。お姉ちゃんも大概チート染みてるけど、あの子は存在自体がチートだから」

 ムラサキはその立場上、姉以上に師匠達の抱える事情へ首を突っ込んでいる。ナコの正体や師匠達の目的、自分やユメが今ここでこうしている理由も。その辺りはムイにも説明してあるが、やはり元がこちらの住人ということもあり伏せている部分もある。十年来の付き合いであるムラサキと、ホシノ奪還戦以降の合流である彼女とでは、ナコの実力に対する信頼度が違う。

 ……まあ、ナコが全力出す機会なんてない方が良いんだけど。

 自分達の活動も、基本的には治安維持。時たま神秘の欠片や神々の遺物を相手取る場合もあるが、それにしたって師匠から横流しされた専用武装で事足りる。色彩戦でもいよいよとなれば介入するつもりだったが、幸い事なきを得ているので現状続行。

 ……かくて世はこともなし、で済まないのがキヴォトスなんだけど。

 さすがにあのレベルではないものの、とにかく騒動に事欠かない世界だ。師匠の周りも大概だったが、こっちも良い勝負してると思う。まあお姉ちゃんが不規則言動で騒ぎ起こしてるのも多々あるけどね……!!

「……そういえば、ナコちゃんと先生って元々知り合いなんだよね?」

「え? あ、うん。シッテムの箱からあの子を経由して外の師匠達と連絡を取ってる。ただしあの子が江田ナコとしてキヴォトスに来てることは知らない」

「なら、素性を明かして手伝うのは──」

「ダメ。師匠に止められてるし」

 バニラシェイクを手に取り突っぱねた。蓋を開け、溶け具合がちょうど良い飲み頃になっているのを確かめつつ、

「いくらバックアップの為とはいえ、世界間交流は最小限にするって建前でお姉ちゃんだけ送り出したのに、ナコがいるってバレたら面倒だから。私やムイについて伏せてるのも同じこと」

 それに、と飲み掛けのコーラへバニラシェイクを注ぎフロートに改造。肩越しに背後を見遣りつつムラサキは言う。

「お姉ちゃんは好き勝手シャーレを振り回してるけど、決して無敵の万能者じゃない。連邦生徒会とかゲマトリアとか、外部の要因で動きが止められる可能性だってある。それでもどうにか抜け道を見付けて何とかするだろうけど、協力者がいるって表立ってバレてたらこっちまで身動きが取れなくなりかねないから」

「で、でも」

「大体、──死んだはずの私やムイが顔出すだけで大騒ぎだよ」

 告げた言葉に、今度こそムイが言葉を失った。

 葵・鏡子も、梔子ユメも、とっくに死んだ存在だ。亡くなってから年単位で時が過ぎているのに、お互い姿は生前のまま。関係者の前に姿を現せば一発バレは確実で、大きな混乱を呼ぶことになるだろう。

 場合によっては、死者蘇生を望む個人や団体が手を出して来ないとも限らない。

「私も、貴女も、例外中の例外。死の直前に魂を情報体化した私は当然として、死してなお残念としてこの世に留まっていた貴女は、冥界神としての神性を持ち合わせていたから生前そのままの魂を保っていられた。いくら自動人形という身体を与えても、魂が変質していたら別人も同然」

 死者が皆正しく己を保っていられるなら、怨霊や悪霊なんてものは生まれない。未練に固執するあまり、歪んだ形となるのが関の山だ。自分の場合とて賭けに近い部分があり、どの道死ぬならと乗った結果勝てただけ。ムイだって保有する神秘が別のものであれば、怪異と成り果てアビドス砂漠を彷徨うモノとなっていただろう。今の身体である自動人形の器も、師匠達という繋がりがあったからこそ用意出来たものに過ぎない。

 運が良かった。自分達が今ここにいるのは、本当にただそれだけなのだ。

「だから、死人は死人らしく目立たず陰から手伝えば良い。Jud.?」

 Jud.、本当にピッタリな応答だ。本来死んで、消えているべきはずの存在。終わりを迎えた誰もが望むであろうその先を、運だけで享受している咎人。

 ましてや己は、姉の人生を縛り過酷な道行きへと変えたのだから。

「……確かに、騒ぎを起こさない為には、その方が良いのかもしれない」

 俯いていたムイが、肩を落としてそう口にした。だが、言い募るように両の手を握った彼女は、真っ直ぐな視線をこちらに向け、

「でも、大事な人とまた会えることを、喜んでくれる人もきっといると思うの」

 だって、

「先生が今も休まず頑張っているのは、生徒の皆のことが大事だからだとしても、──先生になろうと思ったのは、きょーちゃんを大事に思ってたってことだから」

 知ったようなことを言うなと、普段の自分であれば返していただろう。

 それでも十年の断絶を経ている己より、ユメの方が姉について詳しいのかもしれないと、そんなことをムラサキは思う。

 ホシノが反転し掛かった際、夢のような空間とはいえ、彼女は姉と言葉を交わしているのだから。

 残念として盾に焼き付いていた時期と。

 直接対面を果たした夢の名残の時間と。

 その中で全幅の信頼を置くだけのものを、きっと彼女は姉に見たのだ。

 生前そうやって幾度も痛い目を見ただろうに、それでも彼女は他人を信じる。

「でも、貴女はそれで良いんだろうね」

 へ? と首を傾げるムイに、かつての記憶をムラサキは思い返す。

 どんな状況下であろうと、生徒に対し絶対の信を置く姉。

 そんな馬鹿で甘い大人と、根っこの部分が似ているのだ。このポンコツなお人好しは。

 現実はいつだって理不尽で、不条理で。

 それを知ってなお、前へ進もうと足掻き抜く姿。

 諦めなど知らぬと、未来を望む意思とは言い換えれば、

(ユメ)って、そういうものだから」

 不思議そうに身体ごと顔を傾けている目の前のアホに、こちらの思いは通じていまい。これが姉なら鬼の首を取ったように騒ぐだろうが、こっちの方が大人しくて助かる。何だかんだ言いつつ自分も甘いし、無茶苦茶やってる姉を笑えないが、

「なら最初からツンデレ炸裂させず素直に言えば良いじゃないですか」

 背後から頭に落とされた手刀と台詞に、ムラサキは血の気が引いた。正面、表情を明るくしたムイが笑みを浮かべ、

「あ、お帰りナコちゃん」

「ええ、作戦予定時間ピッタリでした」

 二人の間、己の左手側へと座るナコに、ムラサキは努めて穏やかな笑みを向け、

「ねえナコ。記憶を消すかこの場で殴り倒されるか、どっちが良い?」

「どちらでも構いませんけど、ムラサキの貴重なデレシーンは録画の上お兄様に送付済みですよ?」

 突っ伏した。

「む、ムラサキちゃん大丈夫!? どうしたの!?」

「気にしなくて良いですよムイ、隙を見せると狩られるのが我々のルールなので。十年一緒にやっててそのことを失念したムラサキの落ち度です」

「……一般人を容赦皆無の狂人集団と比べないで欲しいんだけど」

「おやおや、その狂人集団と忌憚なく言い合える時点で貴女も十分フツーの範疇から外れてると思いますが? というか姉と同じ血が流れている以上貴女も素養はあるでしょう」

「クッソ、否定のしようがない……」

 緩慢な動きで身を起こす。これ以上言葉のドッジボールをしたところで分が悪い。都合の悪い話題は流すに限る。なので目下の問題として、

「無事作戦は完了したの?」

「Jud.、当然です。──AL-1S't、天童ケイ専用に製作した自動人形のボディをシャーレ地下に搬入完了しました」

「じゃあ、お師匠さん経由で先生に連絡入れたらお仕事終わり?」

「いえ、天童ケイの意識データインストールまではミレニアム近郊で待機するつもりです。必要な設備類や手順についても用意はしてありますが、万が一が起きないとも限らないので」

「ならその辺は師匠と連携しつつ、だね。お姉ちゃんのことだからマッハで飛んでくだろうし、急いだ方が良いかな」

「え、あ、わ、私まだ浅漬け食べてないよ!?」

「落ち着いてください二人共。硝子のことです、どうせボディ譲渡に飽き足らず入学手続きやボディの慣らしなど、色々と手を回すでしょう。会いに行くとすれば仕込みが終わってから。私達がミレニアム入りするのは三時過ぎでも十分間に合うかと」

 な・の・で、とナコが背後に隠していたものをテーブルに置きつつ腰掛けた。

「一仕事終えたので一息入れてからでも、罰は当たらないと思いますよ?」

「……ナコちゃん、何買ったの?」

「見ての通り麦琲(むぎヒー)です」

「ナコもお姉ちゃん並みにふざけ倒すよね……。さすが師匠の妹」

「お兄様ならもっと酷いですよ? パーティーパック持ち帰りで注文して「あ!? 広義の福利厚生だよ!!」とか言ってラボにポテトの匂い染み付かせるくらいには」

「あー飯テロの極みー。電車で鉢合わせると猛烈にお腹減るよね」

 上手く話題が流れて内心安堵。自分達が昼飯がてらシャーレ近辺で時間を潰す理由もなくなったので、あとはナコの言う通り折を見てミレニアムに移動、そこで今日の対応はほぼほぼ終わりだろう。自分とムイはナコのような技術屋ではないので、何か起きても彼女のバックアップが主。待機中の時間潰しに茶菓子でも買って行けば良いかと、そんなことをムラサキは思い、

「──あ」

「何です?」

「危うく忘れるところだった。帰りにカルビ肉買って帰らない?」

「別に構いませんけど、今夜はカレーの予定では?」

「いや、ムイが米ガー食べてたから懐かしくなってさ。中落ち米ガースペシャル」

 ああ、とナコがムイのトレイを見て頷いた。そのまま背後、壁に架けられたメニュー表を見ると懐かしそうに目を細めて、

「当人が聞いたら「うちをネタにするなぁ──!!」って騒ぎそうですね」

「ワサビ送ってやろう、着払いで」

「良いですね。ついでに牛乳やキャベツに鶏肉も付けましょう」

「結局背丈もオパイもほとんど成長せず大人になっちゃったもんねえ」

「情報体となって見た目十四のままの実質二十四が何か言ってますね」

「中身はガキそのものだからこれでいいよ。それ言ったら師匠周りも中身子供だけど」

「えーと、実質十九の私はムラサキちゃんに敬語使った方が良いのかな……?」

「ホシノに憑いてた時も常時意識があった訳じゃないんだし十七で良いんじゃない? あとナコ、歩法使ってポテトパクろうとしない」

「ちっ、心が狭いですね」

「あ、お腹空いてるなら何か頼んで来ようか?」

「いえ、ムラサキへの嫌がらせが目的なのでお構いなく」

「躊躇なく断言したよコイツ……」

「……えーと、とりあえず食べ終わった分片付けて来るね?」

 苦笑と共にムイが己の分と、ムラサキが既に消化した分のゴミを手に立ち上がる。軽く手を振ってその背中を見送り、店内に入って見えなくなると同時、

「変に思い詰めるようなら、戻っても良いんですよ?」

「捻くれた気遣いどうも。でもご心配なく、降りる気はないよ」

 最後のナゲットを口に放り込み、手を拭きながら背後を肩越しに一瞥し、

「──これが私の役目だから」

「Jud.、どうぞご随意に」

 嘆息しつつも止めない辺り、ありがたくもすまないと思う。

「ところで今お兄様から「今日は大変よく出来ました記念日だな!! 次は素直にユメを褒めることを目標にしようぜ!! 達成したら赤飯ケーキな!!」とご祝儀のメッセージが」

「張り倒すぞコラ」

「やれるものなら」

 ケラケラ笑いつつそう応じるナコだが、こんな性格の情報体(AI)なんてどうやったら生まれるのかと一度真剣に問いたい。

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