石世界の錬金術師   作:ポンタ ponta

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 最終話

 宇宙空間なので空気がありません。そのため、宇宙服を着てないボロスはインカムをしてます。
 コハクもいたの忘れてた……すまん。前回で空気過ぎて忘れてたんだ。

 どう戦局を運ぶか、どう決着をつけるか悩んで書いていたら、途中でキャラが勝手に動いて、こうなりました。


第24話 石世界の錬金術師

 科学が人類に齎すのは希望か、絶望か。

 それは我々次第だ。目指すものがある限り、科学は実現のための手段となる。人類の知りたいという欲望、そこから生まれる情熱と努力、それらが科学を生み出し、人類を未来へと導くのだ。

――アインシュタイン

 

 

 

 千空、ゼノ、コハク、そしてボロスが石化したなか、ボロスのみ復活を果たす。

 これは錬金術を使用した復活ではなく、リザレクション・ウォッチを使用した復活だ。ボロスが着用していたリザレクション・ウォッチは他のものと違い、石化によって作用する。石化後は導体となる仕組みを利用して、絶縁体として通した髪の毛が石化したら電流が流れるようにしているため、石化をトリガーに復活液が注がれる。

 一方で、千空らの石化はそのままだ。これは事前に話し合っていた通り、生身でいるよりも石化していた方が安全であるため、設定した時間(24時間)を過ぎるか外部から解除されない限り石化したままになる。

 

 石像となった3人を見つめ、そしてボロスは漂うニコラ・フラメルに目を向けた。

 

「師匠、私たちと一緒に来ることはできないのですか?」

『猿と同じ檻に入れと? 天地がひっくり返っても無理な話だ』

「そうですか……なら結局、こうするしか無いのですね」

 

 悲しげに呟いたボロスは、静かに両手を合わせる。

 それは確かな戦意の表れ。

 

 勝利条件はニコラ・フラメルの助力を得ること。

 敗北条件はボロスが戦闘継続能力を失い、千空とゼノを確保されること。

 

『お前が私に勝てるとでも思っているのか? 随分と甘く見られたものだ』

 

 瞬間、賢者の石が規則正しく整列し、ドームを作る。

 それを見たボロスは、自身の予感が当たっていた事に気付く。

 

 ――錬金術は錬成陣を描くか、両手を合わせる必要がある。しかし賢者の石の状態では錬成陣は描けても後者は不可能だ。

 更に錬成陣を描くとしても、物理的に月面に刻む必要があるだろう。ならば手合わせ錬成ができるボロスにアドバンテージがある。

 しかし、敵は伝説の錬金術師にして師であるニコラ・フラメル。固定観念は足を掬いかねない。

 

 ――それがまさに今、目の前で起こっていた、

 

 ニコラ・フラメルは一つ一つの賢者の石(自身)を錬成記号と見立て、錬成陣を展開した。もし賢者の石に含まれる魂が他人のものであったら、不可能な所業。しかし一つ残らず全ての賢者の石にはニコラ・フラメルの魂が内包されており、その思考は量子もつれのように瞬時に情報の伝達が行われる。

 前提条件として、同一人物が複数かつ思考の一致を必要とする、実現不可能な条件であった。

 更に2次元である錬成陣を賢者の石が代用することによって可能となった3次元での錬成陣の展開。

 

「(直ぐに脱出を――)」

 

 瞬間、ボロスの肉体が月面に押し付けられる。

 ビシッと音を立てて岩盤が割れ、次第にめり込んでいく。

 

「(超重力……!! 皆は無事か!?)」

 

 体にのしかかる重力に耐えながら、顔を動かせば先程と変わらぬ3人の姿が見えた。どうやらニコラ・フラメルはピンポイントでボロスに重力を与えているらしい。

 

「(なら……!!)」

 

 体を月面に叩きつけられた時、試薬瓶は割れて水銀が溢れた。その水銀を使って己の周囲に錬成陣を展開、発動。

 

 重力そのものに関与するのではなく、質量を弄る。

 自身の質量をグラム単位まで落としたボロスは、直ぐ様立ち上がり――しかし、意図しない浮上に見舞われる。

 

$$F = G \frac{m_1 m_2}{{r}^2}$$

 

「(万有引力か……!!)」

 

 肉体が引っ張られる感覚から、それをニコラ・フラメルによる質量増大と看破したボロスは、自身の質量をあえて極大させた。

 これにより両者間にかかる力は強くなり、一気に距離が近づく。そしてそのまま、ボロスは両手を合わせた。

 しかし、その狙いは賢者の石の破壊ではない。目的は攻撃ではなく、防御。

 

「(宇宙空間である以上、使えるのは超基本的な法則のみ。空間を伝播する重力ときたのなら、次に来るのは――)」

 

 転瞬、視界を奪う青白い光。

 

「(プラズマ!!!)」

 

 ――通常、大気が無ければ稲妻は走らない。月は重力が弱いために大気を極僅かにしか持たないが、今、この場には強い重力が発生している。

 なら、月面の砂をプラズマ化し、電場と磁場を変化させてやればプラズマを誘導できる。

 

 無論、それを予知していたボロスは水銀を展開。自身を覆うように展開した水銀はプラズマを受け取め、無力化する。

 

 それを見届けたニコラ・フラメルは確信する。

 同時に、ボロス・フラメルも覚悟を決めた。

 

『(……やはり)』

「(目指すは……)」

 

 超短期決戦!!!

 

 錬金術師同士の戦いは、相手の思考を上回れるかどうか。

 次の手を読んで策を練り、更にその策を読まれることを予想して、対策を考え、実行する。

 二手、三手、四手と思考を回し続ける。

 

 ボロスはゲノムを弄ってブーストした脳回路を持って。

 ニコラは魂を分割して数万と増やした複製魂を持って。

 

 それぞれが最適の手を打ち続ける。

 文字通り頭の数が違うため、ボロスは攻撃を捨てて防御に回ることで、ギリギリの綱渡りを続けている。

 

『(何故攻撃をしない?)』

 

 ボロスの行動にニコラは訝しむ。

 現在ボロスは逃げに徹するように、ひたすらニコラによる攻撃を避けるか迎撃している。

 

『(防御するので手一杯?)』

『(何か別の手を考えている?)』

『(私の知らない理論か?)』

 

 目まぐるしく回る思考。

 そうこうしている間にも、ボロスは常に両手を合わせて何かを錬成している。

 

『(何だ? この違和感……)』

 

 脳裏にへばり付く奇妙な感覚。

 その感覚の答えが出る前に、状況が変わった。

 

 何故か想定出力と実際の出力値に見逃せないズレが発生し始めたのだ。一度ならまだしも、二度三度と繰り返されれば馬鹿でも気付く。

 

『(そうか! それが狙いか!!!)』

 

 ボロスが絶えず錬成していたのは、水銀のナノ粒子化。ナノ粒子化した水銀を操り、三次元錬成陣の間に入れ込んで出力の低下を齎したのだ。

 

 ニコラ・フラメルは探知に使う電磁波を紫外線(200〜300 nm)に変更し、発動。

 

『(やはりそうか!!!)』

 

 水銀ナノ粒子の自由電子がプラズモン共鳴を起こしたことにより、三次元錬成陣の各地点にて紫外線の吸収と散乱を確認。

 直ぐに修正しようと錬金構築式を連ねたところで――戦略変更。

 

『(ここはあえて乗ってやる)』

 

 ボロスが気づいているとは思えない。

 そもそも水銀ナノ粒子はプラズモン共鳴を起こしにくく、ピークが広くて弱い。更にナノ粒子のサイズや形、温度などの条件によって共鳴する波長も変わってくる。

 しかし愚者の石は錬金術に依らない電磁波の変更が可能。目の代わりに電磁波を使って外界の様子を観測できるため、広くて弱いピークでも関係無い。

 この事実は、実際に魂を愚者の石に搭載しないと気付けない。

 

『(貴様は墓穴を掘ったのだ)』

 

 少しずつ、ほんの僅かに手を弛めていく。

 僅かな綻び、静かな破綻をあえて広げていく。

 それはまるで、食虫植物のように、相手の致命的な一手を誘い込む。

 

 その時は間もなくやってきた。

 

 ――三次元錬成陣の、錬金術的概念の崩壊。

 

 一際戦意を滾らせたボロスが、その瞬間を待っていたと言わんばかりに、全身を輝かせながら飛び込んできた。

 それを待ち侘びていたニコラはひっそりとほくそ笑む。

 

『やはり猿だ』

 

 そう確信し―――太陽が弾けた。

 

 

 

 

「確かに届けたぜ」

 

 

 

 

【第24話 石世界の錬金術師】

 

 

 

『(何が起こった?)』

 

 一瞬途切れた思考。気付けば辺りは黒く染まっていた。

 魂の繋がりは致命的に減っていて、数万もあった複製はもはや片手で数えられる程度しか残っていない。

 自身の残骸の多くは溶けていて、恐らくそれ以上の残骸は液体となった。

 そして、勝利を確信した瞬間、視界の端で何かが弾けたのが見えた。

 これらと、目の前の惨状から原因を推察すれば、解は自ずと導ける。

 

『核兵器……』

 

 してやられたと、ニコラは腸が煮えくり返る思いだった。

 いつの間にか、月の表側近くまで移動していたこと。

 いや、これはまだいい。千空とゼノを守る為に、同調していたから。自分からボロスの誘導に乗ったようなものだ。

 

 だが一番憎悪が駆り立てられるのは、猿に一泡吹かせられたことだ。

 

 錬金術こそが警戒すべき対象だと高を括っていた。だからこそ、ボロスのみを注視していた。その結果、このザマだ。

 

『(だが何時だ? いつ発射命令を出した? 人工衛星から核兵器を撃ったとして、月まで届くには1時間はかかる……)』

 

 時間稼ぎが核兵器の到着を待っていたのは確実。なら、問題はいつ命令を出したのか。

 

『まさか、あの猿か……!』

 

 時間を遡れば、あの時しかない。本船に残った猿との会話を思い出す。思えば不自然なまでに発言がおかしかった。たかが猿の発言と流したのがいけなかった。あの発言に発射命令が混ざっていた……!!

 

 だが、もういい。

 既に決着は着いた。

 

 自身はこうして生き残ってること。

 そして、目の前には気を失い、焼け爛れた肌を晒すボロスが横たわっていること。

 

『意趣返しだ。お前の肉体を乗っ取り、お前の手で猿を滅ぼす……!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 遡ること1時間。

 レイの人工衛星に核兵器を搭載し、レイとスタンリーはその時を待っていた。

 

「! っスタンリー!」

「あぁ、任せな」

 

 龍水から突如として流された電波。そこに含まれた千空の2文字。それを発射命令として受けていたスタンリーは、核兵器の発射ボタンを押した。

 核兵器は照準で捉えた本船に向かって突き進んでいく。地球から月まで約38万kmの距離を越えて、核は月へと到着する。

 

 だが核を届けるだけが任務じゃない。核を起爆させるのもスタンリーとレイの任務だ。

 ただ単に核を運んでしまえば、ニコラの電波感知で悟られる。そこで、超高出力レーザーによる狙撃で、起爆させる。

 

 必要なのは超精密な位置計算と超出力。それがレイなら可能で、スタンリーの勘が裏付けする。

 チャンスはたったの1回だけ。外せばワンチャン人類の滅亡。当てれば勝利に大きく近づく。

 

 そして、人類の命運を背負った2人は、見事任務を完遂させたのだった。

 

「――んで、どうすんよ?」

 

 スタンリーは、噛みタバコを嗜みながら、チラリと隣を見た。

 

『あとは、本体がやる』

 

 魂の分割と賢者の石への搭載。

 それをボロスも行っていた。魂の連結は電波で感知できないため、月面のボロスから核兵器の起爆指示を、スタンリーとレイに告げる仕事を担っていた。

 だが、重要なのは次の段階だ。

 

『祈っててくれ』

 

 ニコラ・フラメルがボロスの肉体に入り込んだのを感知したボロスは、賢者の石から抜け出したのか、それっきり音声は途切れた。

 賢者の石が、抜け殻のように無重力空間を漂った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 上も下も、右も左も存在しない虚無に塗れた白の世界。

 純粋なエネルギーだけが息をするその次元の中で、2つの魂が苛烈な光を放っていた。

 

 かたや、旧世界に名を刻んだ錬金術師。

 かたや、新世界に名を残した錬金術師。

 

 2人は師弟であり、創造主と被創造主であり、愚者を憎む錬金術師であった。

 しかし師は愚者を猿と蔑み、弟は愚者を仲間と慕った。

 

 それは仲間たちも同じだ。

 

『私は君たちとは違う生物だが、それでも君たちは私を人間として扱うか?』

『……なぁにくだらねぇこと言ってんだ』

『おうよ』

『『俺たちは仲間だ』』

 

 その認識の差が、ボロスに力を与えた。

 

 ――魂とは、思考であり、精神である。

 そして人間のもつ神秘のうちの1つ。

 執念は精神に宿る。

 

 3700年秒数をカウントしていた千空とゼノの執念しかり。

 3700年杠を想い続けた大樹の覚悟しかり。

 何十年と川底を漁り続けた百夜の信念しかり。

 

 人の執念は、覚悟は、信念は、時として奇跡を見せる。

 

 ――蝋燭の蝋のように溶け固まり、決して動かせる筈のないボロスの肉体が、その止まっていた両腕が持ち上がった。

 

 何度も負けた。その度に迷惑をかけた。心配もかけた。

 だが一度だって、失望されたことは無かった。

 何度だって、頼ってくれた。

 

 だからこそ、負けられない。

 この戦いだけは、負けちゃいけない。

 

 ――パン、と体が柏手を打つ。

 祈るように両手を合わせ、環を成す。エネルギーが流れ、巡り、閾値を越えてその現象を呼び起こす。

 

 それはボロスが構築した理論。石化現象の再現。ただし、肉体は石ではなく、石の王様――ダイヤとなる。

 ダイヤであっても、特に炭素の欠落があるNV中心を持つダイヤは、その空孔(vacancy)に魂の情報が入り込む。この檻を作ることによって、魂の漏出を防ぐ。

 そしてついに、ボロスの頭の先から爪先までダイヤへと変化し、まるで美術品のようなボロスの彫刻が出来上がった。

 

 宇宙の黒と反転して魂の白の世界。

 ――互いが互いを喰らうように、魂がぐるぐると回る。自身の尾を飲み込む龍のように、魂が1つになりかける。

 ボロスはニコラの5つの魂のうち、3つを呑み込んだ。一方でニコラはボロスの2つの魂のうち、弱い分体の魂を取り込んだ。そして残った2つのニコラの魂と、本体のボロスはぶつかり合い、混じり合う。

 

 そして、魂だけの世界故に、思考が、感情が、互いに入れ混じる。

 それは、両者にとって初めての出来事だった。

 

『ボロス。思わないのか? 人類が見たことの無い景色を見たいと思わないのか? 科学の可能性はそれこそ無限だ。我々のように錬金術が扱える人間が、科学をより高みへと押し上げるのだ』

『ならば、何故、協力をしないのですか?』

 

 現実世界でもやったような問答が繰り広げられる。

 だが唯一違うのは、本音が、本心が、隠し切れずに互いの心に入り込む。

 

『猿は嫌い。分かりますよ私だって』

 

 ボロスの言葉に想起されて、ニコラの心に知らない人間――ジョン・ディー博士の顔が映り込む。それが直ぐにボロスの友人であることに気付く。

 

『ですが、今の世界を生きる人間は猿から進化してきた!! あの千空だって、ゼノだって、元を辿れば猿ですよ!!! 全てを猿だと決めつけ処分しようとするのは、それこそ思考が凝り固まった猿と同じ事だ!!!』

 

 一瞬、ニコラの思考が固まった。

 それが如実にボロスへと伝わる。

 

『気付いたでしょう? 師匠のやってることは猿と同じだと。認めてしまったでしょう? 力で無理矢理従わせるのではなく、信じて託す。今からでも間に合います。我々が手を取り協力すれば、それこそ世界の神髄にまで手が届く』

 

 慈愛を湛えたボロスの目がニコラを差して、それにニコラが返したのは沈黙だった。

 

『協力などで、できると思うのか?』

 

 その沈黙を破ったのもニコラの方で、今度はボロスの心にニコラの記憶が入り込む。

 それは遥か昔の、ニコラ・フラメルが無名の錬金術師だった頃の記憶。

 

 ――著しく知能の低い連中のせいで自分の研究を進められず、足手まといだと苛立ちを覚えた。

 ――語った仮説を、不可能だと吐き捨てられ憎しみを覚えた。

 

 そしてボロスと別れてからの歩んだ道が映し出された。

 

 ――慈善の気持ちで金を錬成すれば、異端扱いされて迫害されたこと。

 ――公的機関に入り込んだ先で、披露した錬金術を奇術扱いされたこと。

 

『猿はその目で見た現実を認めずに、盲目的に自分の信じたい虚構を現実と捉える。そんな輩と協力して、何が得られる?』

 

 その問いに、ボロスは噛み付くように返す。

 

『自分の力では得られなかった世界を』

 

 思い出す。皆の仲間に加った日の事を。

 振り返る。何物にも代え難い日常を。

 

 その時々でボロス感じた感情が、余すことなくニコラの心に流れ込む。

 それが危険だと気付いていても止められない。ボロスの感じた喜びや楽しさが、麻薬のようにニコラの心に浸透していく。猿への憎しみが薄れて溶けていく。

 

『たった1人では得られなかった喜怒哀楽も、皆がくれた。それが刺激となって、皆の為に動きたくなった。誰かを想う気持ちが、ここまで力になるなんて知らなかった』

 

 皆の力になりたい。皆の願いに応えたい。

 この思いが力をくれて、ボロスの長年の研究が実りを結んだ。

 

『一致する筈のない人々の魂の波長が、シンクロした時に何が起こるかご存知ですか?』

『………』

『輝くんですよ。各々の魂が燃え上がり、立ち昇り、太陽のように熱く輝く。この時のエネルギーはまさに巨大で、およそ1.21エクサワット。抽出すれば21世紀に全人類が消費していた電力およそ60年分が賄える。エネルギーの補完ができる以上、地球から戦争は無くなり科学の発展に磨きがかかるでしょう』

 

 真剣なボロスの眼差しがニコラを射抜く。

 

『魂からのエネルギー抽出の理論はできてます。これは彼らがいなかったらできなかったことです。これを聞いてもなお、私達の手を阻みますか?』

 

 疾うの昔に、道は違えた。

 それが間違いだったとは思えない。

 だがニコラは思い馳せるように生涯の記憶を振り返り、また道が重なる場面は幾つもあった事に気付く。

 

 もしそこで同じ道を歩んでいれば、未知の世界が見れたのだろうか。

 

 

 

 

【第24話 石世界の錬金術師】

 

 

 

「おおっ?」

「俺らが復活したっつーことは、1日経った訳だ」

「石化した場所は変わらず……なら、2人の戦いに決着は着いていないってところかな?」

 

 リザレクション・ウォッチの復活液で復活した千空とゼノ、そしてコハクは現状を把握すると、ボロスを探しに足を進めた。

 

「正直ニコラ・フラメル様の研究室が唆りまくって仕方ねーが、後の楽しみにするしかねぇな」

「そうだね。まずは決着が着いたかどうかも確認しないと」

「ハッ! もし生き残ってたら私が仕留めてやる!!」

 

 戦意を滾らせたコハクを傍目に、千空とゼノは緑色のレーザーを手に持った。

 

「おそらくボロスは今、ダイヤモンド状態になってる」

「同意するね。そして、これなら見つけやすくなる」

 

 NV中心のダイヤモンドは緑色(波長532 nm)のレーザーをあてると、橙色(波長600〜700 nm程度)の蛍光を発する。

 戦いの惨状は点々と繋がっていて、足取りも掴みやすかったのも相まって、およそ5時間程度でダイヤ状に石化したボロスを見つけた。その上にある賢者の石も。

 

「じゃ、起こすぞ」

 

 復活液をふりかけ、石化解除の様子を固唾を飲んで見守る3人。勝ったのか、負けたのか、いいや勝ったと信じている。だからこそ復活液をかけたのだ。

 

 ――うっ、と。ボロスが呻く。

 そして3人の姿を認めるとニヤリと笑った。

 

「そうか、勝ったか」

「ああ。師匠は我々の手を掴んでくださった」

「これで、あぁ。これでようやく終わったのか。千空の、ボロスの時代から始まった全ての物語が」

 

 万感の思いを込めてコハクが呟いた。その視線の先には、重力を無視して浮き上がる賢者の石が、いやニコラ・フラメルがいた。

 

 

 ――ニコラ・フラメルは人類の選抜を諦め、二度と石化光線を発射しないことを約束した。

 褒賞のトロフィーはたった1人の錬金術師。

 こうして、3700年前(現代)から、あるいは4300年前(ボロス誕生)から続いた数奇な運命は幕を下ろしたのだった。

 

「――しかし君ら錬金術師は、そもそも誰が始まりなのだ? どこからやって来たのだ……??」

 

 ボロスとニコラの錬金術で作製した宇宙船にて、コハクは改めてそう問いた。

 

「さぁね」

『錬金術師は須らく魂を観れることが確定しているが、現状不明だ。君らも、どこから人類が始まったのか知らないだろう?』

「フゥン、粋なことを言う奴だ!!」

 

 共同で錬成した宇宙船には、復活を果たした龍水も乗っている。

 

「ああ。言われてみれば、めっぽう不思議な事だ」

「だが、それもこれからわかる」

 

 窓の向こう、常闇の宇宙を見詰めたコハクへと、千空が不敵な笑みを浮かべた。

 

「科学者&錬金術師の科学タッグで、アホほど唆るもんをクラフトする」

『何をだ?』

「時間逆行装置。つまりタイムマシン」

『……!!?』

 

 科学の申し子である千空の言葉に、伝説の錬金術師は絶句する。

 

「過去に戻れば、全てが分かる。人類の始まりも、地球の始まりも、宇宙の始まりさえも……だろ?」

『その達成確率は約0%だろう』

「あ゛ぁ、ほぼ0かもしんねぇが、0じゃねぇ。タッグを組んだ今の俺らならな」

「ハッハー! 我々なら必ず成し遂げる!! 何十年、何百年、たとえ何千年かかったとしても……!!!」

「あ゛ぁ、科学で時間すら越えて掘り出しまくんぞ。宇宙の新しいルール――」

 

 ――唆るぜ、これは。

 

 

 石の世界にゼロから文明を築いた科学者、石神千空。人呼んで石神博士(Dr.STONE)

 そして忘れてはならないのが、彼と同じく石の世界で奮闘した錬金術師、ボロス・フラメル。新世界で彼はこう呼ばれた。

 

――石世界の錬金術師(STONE ALCHEMIST)――




 NV中心のダイヤモンド
 電場、磁場、温度、圧力などにも高い感度を示すため、センサーとして多くの研究者から関心を集めている。現代化学2025年7月号

 IFEND
 ニコラ・フラメルが石化光線を多段発動するのと同時に超重力をかける。すると石化したボロスが粉々になるのでニコラ・フラメルの勝利となる。こうなるとコハクと龍水は破壊されて、千空とゼノだけが助かる。地球は再び石化光線に包まれて文明崩壊。しかし3700年後にクロムやスイカらが復活して再び文明を創り上げていくことになる。

 以下作者の感想。読み飛ばし推奨。
 Dr.STONEを連載当初から追っていて、理系の身として、そして科学の道を歩む人が増えてほしいという思いから、いつかDr.STONEの2次小説を書きたいと思っていました。やたらと科学知識が頻発するのはそのためです。
 しかし原作のように豊富で深い科学知識は持っていなかったため、修士に進学するまで書けませんでした。それでも専門知識以外は素人でしたので、科学雑誌である『Newton』『日経サイエンス』『現代化学』『化学』『National Geographic』などやChatGPTのおかげで自分1人の力(?)でここまで書けました。
 途中、評価がオレンジになってしまった時や力尽きそうになった時がありましたが、こうして最後まで書けて嬉しさと共に安堵が禁じ得ません。私は書きたいシーンだけ考えて、あとは行き当たりばったりで書いているため、風呂敷を広げ過ぎて畳むのが一苦労になり匙を投げることが多いのです。ちなみに今回だとREIの存在が一番分かりやすいですね。第9話だと『レイの存在を仄めかすことを書いてますが、実際登場させるかは悩んでいます。登場させずに、番外編みたいな感じで書くかもしれません』と言ってるくせに、第19話以降からはREIの存在が物語の進行上必要不可欠な存在になっています。
 何だか話が脱線しましたが、この2次小説はこれで完結です。後日談は書くかもしれないし、書かないかもしれません。まだ回収してない伏線や謎がありますが、聡明な読者の皆様方は既に勘づいていると思いますので。
 今まで評価付与や感想などで応援してくださった読者の皆様方、ありがとうございました。色々ツッコミどころ満載でしたが、見逃してくださってありがとうございます。何か疑問点等ありましたら、ご連絡ください。
 また別の2次小説で会いましょう。
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