NT劇薬娘。   作:にゃあたいぷ。

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34.経過報告

 赤い彗星が戦時中であるにも関わらず、婚活に勤しんでいた頃の話になる。

 地球のユーラシア大陸では、ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースが遠大なる逃亡劇を繰り広げる。その航路は、まるで世界一周の豪華客船の如し、しかし実情は中世のカリブ海か、もしくはバイキングの縄張り、日本で例えるならば、戦国時代の瀬戸内海。優雅な旅路とは程遠い、襲撃塗れの過酷な道程に晒される。

 しかし、ピクシーを手にしたアムロは鬼に金棒の活躍を見せる。

 

 キシリア閣下が率いる突撃機動隊に所属する黒い三連星の連携も退けて、遂に中東付近まで辿り着く事が出来た。

 アフリカ大陸には、まだ戦力を保っているキリマンジャロ基地が存在する。北アイルランドにも連邦軍がまだ権力を維持する意味が残されていた。

 艦長代理のブライト士官候補生は、上官の指示を仰ぐ為に危険を承知で連邦軍との通信を試みる。

 

 だがホワイトベースの乗組員に告げられたのは、オデッサ作戦への参加。即ち、戦争への本格的な参戦の強制であった。

 

 中東付近の連邦軍では現在、大規模な反攻作戦が計画されている。

 新型量産機の開発に半ば成功し、量産体制を整えてまだモビルスーツの配備が間に合っていない今のタイミングで何故、連邦軍が拙速に殉ずるのか。それは連邦軍が貯蓄する資材が底を尽き始めているからであり、現状では、宇宙で公国軍と正面衝突するのに満足な数を揃える事が出来ないという計算結果が出た為だ。

 本作戦は敗北した先の事を考えない大勝負、いざ決戦の天王山である。

 ジャブローに身を潜めていた事実上の連邦軍最高司令官、レビル将軍が秘密裏にキリマンジャロ基地に飛んで、欧州周辺の戦力を予備も含めて全て掻き集めた事からも連邦軍の本気具合が伺える。

 必然的に戦力の中核には、航空兵器や戦車を始めとする通常兵器が担う事になる。

 

 しかし、本作戦に待ったを掛けるのはAE社である。

 先の北米大陸でのキャリフォルニアベース奪還、キャリフォルニアの奇跡とも呼ばれる戦果に焦りを抱いたAE社は、本作戦に自社製モビルスーツの参加を連邦議会の議員に要請した。

 その要望に押される形で初期生産型のジムがオデッサ作戦に配備される。

 勿論、代償もある。本来、秘密裏に勧める予定であったオデッサ作戦は、公国軍に露見する事になり、レビル率いる軍勢がオデッサ周辺に辿り着いた時にはもう、公国軍は布陣を敷いていた。

 準備万端で迎え討つ姿勢を見せる相手の様子にレビルは溜息を零す。

 

 まあ尤も連邦軍には、裏切り者が居るので、どちらにせよ、公国軍は準備万端で迎え討つ事になるのだが、今の彼には分からない話である。

 

 攻めあぐねるレビル将軍に吉報が齎されるのは、程なくしての事。驚異的な快進撃を続けて来たホワイトベースが、遂に中東周辺に姿を現したのである。

 ホワイトベースの乗員は素人集団。

 レビル将軍は、瞬時にホワイトベース隊を戦力として数える事をやめる。代わりに囮として利用する事を決めた、利用する以上は、軍法会議で処罰を受けないように守りもする。

 ホワイトベースの民間人を最初から軍人として徴兵したとするのは、保護する意味合いが強い。

 軍人は、国際条約が適用される。

 武装した民間人は、軍人としても、民間人としても扱われず、国際条約にも適用されないのである。

 

 一方で北米大陸では、レッドライダーを駆るリリス・エイデン少尉が計器に拳を叩き付ける。台パンである。

 キャリフォルニアベースで接敵して以後、公国軍の魔女部隊と接触する事が出来ずにいる。ニュータイプの超直感を使うまでもなく、殺意を漲らせるリリスの様子に、メアリー大佐とクロエ中尉は小さく溜息を零す。

 二人には、公国の魔女部隊が捕まらない理由に心当たりがある。

 

「要は、私のしていた事と一緒ね」

 

 敵主力との交戦を避けて、奇襲と強襲で戦果を上げ続ける。

 公国の魔女部隊が展開するゲリラ戦の戦い方は、過去、メアリーがゲリラ隊を率いていた時とよく似ている。

 メアリーと違うのは、彼女達は撤退戦の最中にある事。

 

 即ち、命の取捨選択を常に強いられる状況にある。

 

 メアリーは、大の為に小を切り捨てる選択を躊躇しない。見知らぬ誰かの為に必要以上に心を擦り減らす事はしなかった。

 それは彼女が大局を見据えて行動しているからでもある。

 では魔女部隊の、同じ超直感を持っているアルマはどうか。彼女は、正式に軍隊の訓練を受けていた訳ではない。

 

「ま、接触したくなければ、それでも構わないかな」

 

 今は数を減らす事の方が肝要。連邦の妖精部隊は、悠々と公国軍の兵力を削り続ける事に注力する。

 

 

 大の為に小を切り捨てる。

 北米の魔女が駆る新型機の性能は、公国軍の機体性能を遥かに上回る。故に接敵する訳にはいかない。キリー中佐も、ラル大佐も、シャア中佐も居ない今、北米方面軍の要は自分達、妖精部隊である。とアルマは、自認している。

 故に彼女は、徹底的に連邦の魔女部隊との交戦を避け続ける。

 

 命の取捨選択を重荷に感じながらも友軍の手助けを続ける事、数週間。妖精部隊の面子は、辛うじてニューヨークまで辿り着く事が出来た。

 想定よりも多くの将兵を収容できた事に感謝を受けたアルマは、与えられた部屋で横になり、そのまま寝込んでしまう事になる。

 

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