※今作はVtuber白兎ねむりのネタを多用しております
用語解説
耳:白兎ねむり様の兎耳
シラート:白兎ねむり様の脂です、そう、脂
う~ん、どうやら道に迷っちゃったぞ。
人通りのある道に行こうと思ってたけど、どんどん人気が無くなってきている。
———時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり自由になる。誰にも邪魔されず、気を遣わず物を食べるという孤高の行為、この行為こそが、現代人に平等に与えられた最高の癒しと言えるのである。
おかしいな、全く人が居なくなった。
腹が減って店を探している内に、帰り道も分からなくなってきたぞ。
しかし、腹が減った。
今重要なのは腹の虫を鎮めることだけだ。
だが、土地勘も無ければ道も分からないような場所で今の気分に最適な店を見つけることなどできるだろうか……
そう思っていたが、店が見つかった。
なかなかどうして「夢の国の店」という大衆食堂のような外観をしているのに、ファンシーな店名と言うミスマッチを起こしている一風変わった店だというのに、気を惹かれる。
(大衆食堂の外見をしていて、実は異国の料理を出したりするのだろうか。よし、入ってみよう)
そう意気込んでその店に入ってみたが、内装も一見、大衆食堂、と言う訳ではなく、どちらかと言えば下町中華と言った雰囲気だ。
カウンター席に座り、メニュー表を手に取ってみたが、場に似つかわしくないピンク色の紙に、大きく「一番人気味噌ラーメン」と書かれていた。
シラート入りこってり味噌ラーメン、当店一番人気との触れ込みらしい。
(……シラート? シラートってなんなんだ?)
ニュアンスからして、おそらくトッピングか何かなのだろう。こってりと言うと、ラードやチーユなんかに近い物なのかもしれない。
味噌ラーメンの表記の隣には兎耳が付いた女の子のイラストが描かれている。
最近はこう言うファンシーな要素も取り入れていくというのが流行なのかもしれない。しかし、どうして証明写真のように真顔で正面を向いているのだろうか。
他のメニューを見れば「耳の素揚げ」という一体何の耳かは説明されていない珍妙なメニューがあった。
しかし、他の客が「耳の素揚げ二人前追加で!」などと言っている手前、普通に食されている物なのだろう。
(でも、一体何の耳なんだろうか)
そう悩みはしたものの、ひとまず注文してみることにした。
しばらくすると、先に耳の素揚げが運ばれてきた。
蛇腹折りの要領で串に刺さったその料理は香ばしい匂いを漂わせながらこんがりとキツネ色に揚がっていた。
さらに串が二本、どうやら細長い耳の様で、何かの比喩で耳と言っているのではなく、実際に耳らしい。外見からすると、ウサギの耳のような気もする。
(うん、サクサクしていて、淡白だけど塩味が効いて美味しいぞ)
一体何の耳なのだろうと思いながらも、手が止まらない。
(パリパリの鳥皮に近いかもしれない)
食べ終わるまでどういう生き物の耳なのかは分からなかったけど、気にならないぐらいにはあっという間に食べ終わってしまって、美味しかった。
次にやってきたのは一番人気の味噌ラーメンだ。
一見普通の味噌ラーメン、トトッピングもチャーシュー、ネギに卵、コーン、メンマと、目新しい物も無い。見る限りにおいてはよくありそうなラーメンだ。
しかし、匂いは少し変わっていた。
ほのかに甘い匂いがする。砂糖などの分かりやすい物ではなく、優しい甘さのようなものだ。これがメニューにあったシラートによるものなのかは分からないが、ひとまず味わってみることにする。
(美味い)
コクだ、味が深い。濃厚な味噌スープの中になんとも言えないコクが加わっている。ほのかに甘いのはそれの影響だろう。味に重厚さを加えている。
牛乳なんかが加えられているわけでもないのに、クリーミーさがあり、どっしりとした味わいを上手く纏められている。
(しかし、シラートとは何なのだろう)
確かに一番人気と言うのも頷ける。しかし、濃厚な味噌ラーメンを食べ終わるその時まで、そのシラートと言う物が何なのかは分からなかった。
不思議な味わいの店だった。お会計の時に聞いてみようとしたが、得も言われぬ満足感に満たされてしまい、結局聞く事は無かった。
ネズミとは関係のない夢の国とはいったいどういう場所だったのか、だとか。
アレは一体何の動物の耳だったのか、だとか。
シラートってそもそもなんなのか、だとか。
そう言うことは、忘れることにした。もし次に訪れるようなことがあれば、それらはその時に聞いてみることにしたのだから。