『文明消せる兵器とその兄弟の神秘は駄目だと思うんですけど』   作:混ぜるな危険。

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エタる可能性・確率はOOの某模擬戦の生存率より高いです。


0章 月光の下を飛ぶ蝶々たち。
これが逆月、不便な力よ!


某日。私はベッドから飛び起きて開口一番にこういった。

 

 

「この円盤は人から借りたやつなのに!」

 

 

何が何でどういうことか理解し難いだろうが、早い話が私は転生者。そして円盤とは……

――知り合いであり食わず嫌いをしない雑食性ガノタから押し付けられた、『ターンエーガンダム』なる作品のDVDである。

 

 

「だめだ…非常によろしくない、これは駄目だ!!」

 

 

あの円盤は()()が"家宝"と呼んでいたモノのひとつ。

私が大ポカやらかして一緒に河の底へランデブーと知られた日には、『そこのMP!』の刑*1に処されるだろう。

 

「けどちょっと待て、ここどこ?」

 

問題というか疑問というか――ともかく気になることは他にも存在する、いったい私は誰に助けられたのか。

 

「今いる部屋の景色といい雰囲気から察するに女性だと思うけど、待てつまりおrはよりにもよって異性に見られたと?」

 

それは恥ずかしい。

 

「あんな、あの、河のそばを爆走して。そんでもってこけて、ゴロゴロと水の中に突っ込んでっておぼれた所をは見られたんだ!!」

 

というかってなんなんだ、は男だぞ!!

 

「ああクソッ女々しい言葉遣いだ、いいさだったら鏡を見てやるよ!! は男だ!!!!」

 

ほら見ろこの随分と綺麗な少女!?

 

 

「――――どうなってんだよ!」

 

 

少女とはな、しかも何か変だ…なんだこの変な形の浮遊物、邪魔ったるいやつ!! 

 

「あっ、う、うわあぁ!!!!」

 

しかも今生えたこの羽、よく見ればあいつがプラモを手に随分と熱く解説していた『月光蝶』と似ている!!

 

「凄い夢じゃないか、こんなの悪夢だ!」

 

 

分からない、いったい何が起きてるんだ!?!?

 

 

 ■◆■◆■◆■

 

 

「……それでお嬢様は取り乱していたと……」

 

「うん、そうだよ。ホントびっくりした。だって昨日までこんな羽なかったのに、今日になって急に、だよ?」

 

 

しばらく狂乱していた所、異変に気付いた猫や犬のメイド、ロボットの執事なんかがこちらも死に物狂いでやって来た。どうやら異音と叫び声が廊下の方にも聞こえていたらしい。

 

 

「あり得ない、なんでこんな。私は、羽なんか生える理由ないのに」

 

恐怖で手を震わせつつもティーカップを置く。この翅はあってはならないものだというのに、未だに消えるそぶりを見せない。

 

ひっこめることは可能なのか。実際に本家のように、万物を塵に還し砂にする可能性(危険性)があるのかどうか。全てが全くもって不明な蝶の羽。

その正体の不透明さとは裏腹に、背中の()()はさながら月光の如く。幻想的に、濃く薄く透き通って輝いている。

 

既に犬のメイドの尻尾の毛が先っぽだけ消し飛んだとかいう眉唾な現象が事実であれば、これは危険だ。だが上記の能力があると決めつけるにはまだ判断材料が足りない。

もっともこんな情報をどうやって拾えたかも不明であって。と、このように次から次へと不思議が湧いてくる。

 

「みんな、少しお願いがあるの。」

 

「おねがいとは一体…?」

 

「ほんの少しだけ。そう、すこしの間だけ」

 

 

「この部屋を出てから数分か、長くとも十数分。絶対に扉を開けないで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

制服を着て、姿見で確認する。

 

 

「すこし厄介だけど、でも慣れないと」

 

 

自室を出て玄関へ移動し、靴を履く。

 

 

「スニーカーか? それにしては随分といかつい見た目だな」

 

「お嬢様…?」

 

「あっあぁ、ごめんごめん! なんでもない!」

 

 

リュックサックを背負ってから髪を整えてもらい、逆Aの形とXの形をした二つのヘアピンも付けた。

 

 

 

 

 

「これが、私…。」

 

形状の差異があるとはいえ鏡に映った全身のうち、頭とリュックサック(バックパック)、それから靴。

特徴的な部分の悉くが、「言われてみればそんな気がする」という程度ではあるものの、二つの機械人形と似ているのが分かる。

 

「たぶん外見とかこの銃はターンA()で。こっちのリュックと靴はもう一個の…えーっと、なんだっけ?」

 

 

「――ああ思い出した、ターンX(X)だ」

 

 

怪訝そうにこっちを覗っているメイド達。

そりゃそうだ。これから学校へ行こうというのに、身だしなみやヘアピンはともかく、大事な鞄というかリュックを忘れていきそうになったのだから。

 

おまけによくわかんない独り言が漏れてるんだものね。

 

「羽の事は既にティーパーティーの方々へと連絡しておきました、くれぐれもお気をつけて。」

 

「ありがとう。それじゃあ、行ってきます」

 

 

 

本来であれば休むはずだった。

でも、危険かどうか推測するには情報が全然足りないので、ならばいっそと外に出てみようというわけだ。

 

 

玄関を開けて外へと飛び出す。

 

 

羽の引っかかった部分が音もなく消え去り、塵が舞い落ちる。

 

 

 

月光蝶の羽は本物であった。

 

 

 


 

 

「――――と、いったところです」

 

「........................。」

 

「アヤ。きみ、その羽をどうにか消せないか試したりとかは?」

 

「一人だけの時に部屋の中で試してました。でもどうやったって引っ込まないので」

 

「わぁ~お……ロールケーキもチョコレートケーキもスコーンもぜーんぶ消えちゃうじゃんね、あっフォークの先端もダメになった!」

 

「ミカ、お客さんの羽で遊ぶんじゃない。」

 

 

着いたと同時に、どこからともなく現れたナギサ様から「是非お茶会へ」と誘われ…。

案内されるがままに来たはいいのですが――――

 

 

「ナギサ様?」

 

 

肝心のナギサ様は今。

 

私の話を聞きながら、顔面蒼白でカップを持った手を震わせています。

 

「あの、ナギサ様? ナギサ様??」

 

「ご心配なく。」

 

笑顔を崩さずにいるが既に限界が近いのか、はたまた"羽"に恐れを抱いているのか。

 

 

「にしてもここ、本当にキヴォトスなんですね」

 

「当たり前だろう、どうしてそんな――ああいや、君は確か外から来ていたね。それに病気がちで入学が遅れたんだったか、すまない。」

 

「いえ、大丈夫ですよ。過ぎたことですから」

 

家で起きたことについての話題に移る前。

丁度茶会が始まったくらいにセイア様から聞いた話では、この肉体というか私は病に倒れてから今日にいたるまで、一度も意識が戻らなかったそうで。

 

そういえば自室で錯乱していた時にやってきたメイドが腰を抜かしていたけれど、ようやく納得がいきました。あの人は蝕まれきった私の肉体が、病気が原因の何らかの現象によって操られて動いているとしか考えられなかったのでしょう。

 

「まぁそんなのはどうでもいいとして…ナギサ様、ミカ様を剥がしていただけないでしょうか。さっきからなんだか背中から感じる存在感と言うかが大きくなっているような気がするので」

 

「え、え、ええ、も、もちろんです、はい!」

 

「あのナギサ様、落ち着いてくださいナギサ様! ナギサ様ぁ!?」

 

まるで背負い投げみたく剥がされるミカ様。

そんな御友人が怪我をしないかなんてこと気にせずに、素早く私から距離を取るナギサ様。

 

揺れ動く羽。

 

その羽を、命からがら避けきるセイア様。

 

砂となって吹っ飛んだ、私の椅子の背もたれ。

 

 

混沌が生じた。

 

 

「危ないなぁ!!」

 

「ひえぇぇぇ、セイア様が死ぬかと!」

 

「はぁっ…はぁっ……」

 

「ひっくり返ってて何も見えないけど、なんか命が危なかったって事は私も分かるよ」

 

そう、危険だったのです。

どういう訳か月光蝶は『餌やり』をされている間に拡大を続けていました。ですからあのまま少し動かせば、私もろともセイア様やミカ様は塵となっていたでしょう。

 

ですがまぁこの程度で済んで良かったです。何かあってからでは遅いですし、なによりリュックが起動しては面倒――――

 

「ああー!! リュックが無い!!」

 

「嘘、でしょう…? 私はリュックを背負っているだなんて、あ。…え、リュック!?」

 

「ナギちゃん落ち着いて、パニックにならないで!!」

 

「君がどうして焦っているのかは理解した、要するに背負ってきたはずのリュックサックにも機能があるわけだろう? 任せたまえ、すぐにでも捜索隊を配備する!!」

 

 

ああ神よ、どうしてこうもトラブルが多いのです!

 

なにかろくでもない予感がしますがそんなの知ったこっちゃありません、早くどこにあるのか探さなければ!!

 

 

「でもその前に羽、ひっこめえええええええええ!!」

 

「そんな無茶なやり方で引っ込むもんじゃないだろ――ええええええ!?!?」

 

「よし、探してきます!」

 

「待って…待ちなさい、これ以上問題を増やすというのですか!?」

 

 

「今出てくとナギちゃんもっとパニックになっちゃうから!」と私に覆いかぶさってくるミカ様。収拾のつかない現状にどんどん冷静さを失っていくセイア様と、下手したら泡を吹いて倒れてしまいそうなナギサ様。

 

もみくちゃになりながら三人に抵抗していると、急に扉が開いて。

「何故なのです…。」という困惑の色がうかがえる言葉をつぶやきながら、苦悶の表情をした誰かが入ってきました。

 

「ええ、『皆さんよくおそろいで…』。廊下まで聞こえていたのですが、ひょっとしてリュックサックとはこの……私を『つけてくる』ドローンでしょうか…。」

 

「あ、そうです。…あの~ぅ、お名前をお伺いしても?」

 

「シスターフッド所属…三年生……歌住サクラコです………早くこのドローンを『どうにか』してください…でないと『鬱陶しくて仕方がない』ので……。」

 

 

破壊しろという事だろうか。

 

 

「壊せという事ですか?」

 

 

違ったらしい。

 

 

「そのような酷な事は…確かに体当たりされ続けているのもあって、『あまりよくは思えない』ですけど…いえただ『大人しくしていれば』それで…………」

 

「あっ分かりました」

 

 

羽をしまった時と同じようにイメージを描いて、背中にリュック型ドローンを誘導。

 

「できました!」

 

「ありがとうございます」

 

しっかりと背にあるかをチェックしてから、急いでカオスに満ちた現場から逃亡した。

 

 

 

「待ちなさい、アヤさん!!

 

 ちょっと、アヤさん―――

 

 

 ―――逆月アヤ、お待ちなさい!!!!」

 

「アヤ、せめてこの状況に収集を付けてから帰ってくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然今回の騒ぎはすぐに外部へと出回りました。

その結果、晴れて私―逆月(さかづき)アヤ―は『フィリウス・パテル、およびサンクトゥスの三派閥のトップとシスターフッド所属の生徒を一気に葬らんとした狂人』として、しばらく有名になったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で。この際はっきりと聞くが、お前は連邦生徒会長が行方不明になったという噂が出回っていたあのタイミングで。本当に三大勢力やシスターフッドを堕とそう、などと考えていたのか?」

 

「剣先先輩。」

 

「なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不可抗力です…ッ!!」

 

「うん、まあ。今もそれだけ羽が出てるし。しかもドローンも勝手に起動して飛んでるあたり、そうなんだろうなとは思ってた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
機動戦士Zガンダムの主人公がやらかした事案。ここでは「一方的に殴られる痛さと怖さ」を教え込まれる事を指す。

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