『文明消せる兵器とその兄弟の神秘は駄目だと思うんですけど』 作:混ぜるな危険。
「それで――またしても私を急いで連れ去った挙句、なぜこのような場所へと来たのですか」
「……。」
「黙っていればどうとでもなると思わないでいただきたい。これでも私は稀にとはいえ、いささか直感がさえやすい方です」
少女は男に詰め寄った。だが、相手は水晶のような肉体を震わせ、形の定まらない仮面の下で微笑むばかりだ。
「不気味なお人……あの幻聴、例の男の方が嫌忌していたのも頷ける。」
「…あいつな、あいつはいい表情をするものだよ」
「口を開いたかと思えばそれですか、他はないので?」
「他には…か。ならば君は私の言葉を、先の話をどこまで信じる?」
男は両手を上げて、暗に「解釈は君に任せる」と伝えてくる。
少女は少しだけ考え、突然目を見開いた。
「つまり"円盤"のくだりもあの"講釈"も、中身空っぽなでっちあげと読んでよろしくて?」
「ああ、そうとも。君と彼の物語を始動させる点においてのみ、どういうわけか『先生』とやらが関わるだけでは意味が無いようでな」
「ゆえにこうして騒ぎを起こした。そして、私を救いに来てくださった皆様への情報提供もまた、貴方みずから匿名で……」
「理解が早くて助かる、やはり君は私の理想だ。追い求めていた可能性は、既にここにあったのだね」
男は椅子から離れて近くの棚へと近づき、一番上の左を開けてシャンパングラスをふたつ手に持つ。
「喜んでくれるかわからんが、こういう日のために仕入れておいた」
グラスをを手慣れた動きで机に置くと、今度は下の戸を開けてシャンメリーを取り出す。
「生憎と今、懐が寂しいんだ。なかなか安っぽいかもしれないが……まぁ許してくれ」
「くだらない……。こんな茶番をするくらいなら、いつもみたいに早く話を続けていただきたいものですけれど」
そんな愚痴の本意を知ってか知らずか、男はあえてもったいぶる。
「まあいいじゃないか。積もる話もあるかもしれんのが人というものさ」
にらみ合う二人を置いたまま、時間はさらに動く。
「さて――誰がこの部屋へたどり着いてくれるのかを、一緒に予想してみないか。」
どこかで銃声が鳴り響いた。
「――何を呆けている、早くいってやれ。
君の親友達なのだろう?」
その言葉を聞いてはっとした。目の前の不審者はなぜ、どうして縄だとかで拘束すればいいような相手を、何もせずに逃がそうとしているのだろう。
思い返せば誘拐された時もそうだ。
なにもかもが不透明なまま、話や状況が「そういう流れ」として流れていくばかり。
この男は一体どうして身なりと家柄が良いだけの少女を拐かし、どういった理由で解放するのか。道理が全くわからない。
「なぜ――」
でも、目的はいまだに見えないものの、粗方の予想はついた。私はモルモットなのだろう。
「人を道具みたいに!!」
「…違うさ。むしろ家族と思っている、お前に手出しはしたくなかった」
「違う、家族ならこのような腹の探り合いもいらない!」
「私も思ったが、必要があるんだ」
「必要!?」
「時を繰り返すのは存外きつい、だが今の君に会えてよかった。これぞ目的が曖昧になるまで無理をした甲斐といえる」
彼はにっこりと微笑んで「頑張りたまえよ、君はよく他人を想える」と零すと、何かを予見したような勢いで椅子を離れた。
すると今度は外だ。彼が座っていた椅子めがけて、窓を突き破った鋭い弾丸がいくつも素早く飛び込んでくる。
「待ちなさい!」
「どうかその気迫…私の最期に向けてほしいものだが。」
追いかけようとする私。それを案じる表情が投げ込んたのは煙幕手榴弾。容赦なく爆発し、部屋中に白煙をまき散らす。
「逃れられると思って?」
煙がなんだ。こんなのただの目くらましだ。長机の上に乗って駆けて、部屋から出ようとする水晶男の胸ぐらをつかむ。
「そうか銃か、こちらも返しておく。
君の御父上はさぞ会いたがっているだろう」
「あの人はもう死んでいてよ!!!!」
「なんと…!
しくじったか!?」
気に障るやつだ、なぜ父のことを知っているのだろう。
五歳の誕生日を迎えた日、病弱な母は急逝した。以降、御父様は技術開発に没頭する傍らとはいえ、しっかりと私の面倒も見てくれた。
「それを何故!」
「まさかな、まさかとは思うが……
これが黒服の言っていた『もう一つの犠牲』か!?」
詰め寄ろうとした隙に、ふわりと体が浮く。
「ぬぅ…もうか、ゼクノヴァか!
気が早い終わりもあったものだ!」
「逃がすかァ!!!!」
「これは不可抗力だとも!!
意図的とは違うんだ、意図的とは!!」
「――っ、アヤさん!!」
先輩たちが突入してきたけれど、私はきっと、このまま虚空に消えてしまうのだろう……。
であれば―――
成すべきことは一つだ。
全身が煌びやかに光り輝いている黒水晶の男。その胸ぐらを掴んだまま皆の方を向き、気合で消滅に耐えながら声を張ってこういった。
「ボールは?! あの丸いロボットはどこです!?
はやく投げてくださいまし!!」
「何言ってんだ、救出のが先だろうが!」
「この卑しい無頼漢を追わずして私が無い!!」
心臓が跳ねるのを抑えて「早くアレを渡せ」とねだり続ける。
するとようやく、けれども渋々折れてくれたみたいで、背の小ささが特徴的なメイドさん…?がボールを投げ渡してくる。
それをキャッチして、そのまま男の顔面に叩き込んだ。
「ああもう、どうなっても知らねーぞ!?!?」
「かまいません!!
死なば諸共たとえ日の中水の中、ゲヘナもブラックマーケットも!
いっそあの世でだって追いかけてやる!!!」
「ええい、なんと血の気の多いお嬢様か…!
御父が草葉の陰で大号泣よ!!」
「ハスミ様、セイア様にどうかお伝えください!
私はこの程度で死ぬ程ヤワにできてはおりませんとォッ!!!!」
「アヤさん、早まってはいけません!!
…ダメ!!そんな、アヤさん!!」
意識が時間に沈み込んでいく。
私は今、何処にいる?
■◆■◆■◆■
「
これほど近くに、少女の精神のすぐ
「なにがどうなっていてよ……。ええい、まずはこの男から!!」
「ぐっ…、全身をサイコフレームにする案は……愚かだったか……。」
「――否、次では遅い…。
銅鐘イリスよ、来い!!」
「死ねええエエエェェェェ!!!!!!」
不意に私はこう想った。このざらつきは何だろうと。
心がざわざわして、全身に切り傷をつけられるような不快感の正体が…いったい何であるのかと。
「……上かッ!?」
「ちっ、外した!」
分からない。理解ができない。
どうして目の前に降りてきた銅鐘イリスなる少女が、こうも執拗に命を狙ってくるのか解らない。
いや、理解はできた。今の私は危険なんだ。けど、だからって命を取られる謂れはない。
頭が熱くて痛い。
落ち着こうとすればするほど、心がざわざわして、それで……。
「うあああああああああああああああ!!!!」
――感情を冷まそうとすればするほど、意味不明な破壊衝動が溢れてくる。
自分で抑えたいものが、まるで膿や蛆虫、ヘドロのように這い出てくる感覚が……冷静さをさらに奪っていく。
私は初めて殺意で武器を持った。銃ではなく、熱いプラズマを発する真っ赤なビームサーベルを。
「ところがぎっちょん」
「あっ…。」
ズバン!という爆音とともに、手の甲へ鋭い実弾が掠る。痛みでのけぞりそうになって、手からビームサーベルを滑り落とす。
「バルバトスの装備でよかった。…っと、リロード完了。本当に良かったよ。
ビーム系統はIフィールドで軽減できるって聞いたし、
…もしかすると…よいしょっと、弾かれちゃうかもって」
「………!!」
「なにをそんなに驚いているの? 私とあなた、似ているのはしょうがないよ。」
もう一度、己の“おもい”に反して―――肩後方のラックからビームサーベルを取る。
いやに冷静で、自分事ながら背筋が凍りそうだ。
だから願った。
「お願い…!」
どうか殺してくれ、と。
「無理だね。それに、いまは殺さないよ。
あなたと私達が本格的に戦うのは、まだまだ先の事だ」
「…………ということで、身元は不明です。」
「でしたら、ヴァルキューレの方で身柄を――」
「ただ、先生のいわれた通りでもあります。
彼女が特段怪しいとは、少なくとも私は思いません。」
「そういうこと。みんなに説明してくれて助かるわ。
その書類は…そうね、あちらのデスクに置いといてくれるかしら?」
「わかりました、こちらに置いておきます
その子が起きたら「お大事に」と。ぜひ伝えておいてください」
ここは何処だ。
そんで、いつの間にやら俺はコイツの中へと戻っているじゃないか。さっきまでハロの姿だったから、肉体という実体に違和感を感じる。
ぐいっと体を起こすと、エレベータに向かっている一人の人物が見える。
「キヴォトスとはな…。」
キヴォトス。ゲーム『ブルーアーカイブ』の舞台となる学園都市。
既に一度降り立っているとはいえ、こうしてみるとなんとも壮大な世界だ。
それはそうと、お姉様何やってんすか!?!?
アレGQ*1のゼクノヴァじゃん、水晶野郎ががっつり「ゼクノヴァ」つってたろ、しかもララ音まで……はぁ!?
異物混入なんてレベルじゃねえよ、俺のDVDとあの野郎のせいでバタフライエフェクト起こりすぎでは?!
「よし、すっとした……。やっぱ心の中だとしても吐露しなきゃな。
まったく、アヤの主人格も溜め込むくらいならこうすりゃいいのに」
「あら、起きたの?」
「あっヤベ!」
まずい。あまりにも姿に似合わない口調をガッツリと聞かれてしまった。
ひとまず狸寝入りをして相手の出方をうかがっていると、頭に優しい感覚が乗った。
撫でられているのだろうか。なんというか、少し眠くなってきたような…。
いや、寝ている場合ではない。先生ならば顔を拝まなければ。
「あらら、起こしちゃった?」
「う……あ、え?? ラ、ぁ、ぅえ―――」
「まぁ! あなたも
初めまして、私はララァ・スン。気軽にララァ先生と呼んで?」
やりやがった、一大事だ!!!