クソみたいな前世のアドバンテージをフルに生かし、エリート中のエリートであるレベル4まで上り詰めた主人公。
自身の超能力と前世で培った会話術で一躍学園のアイドルに。
そんな、華やかな学園生活を送っていた主人公が下々の人間の暮らしを観察する趣味に興じていると突然成金ぽい男が路地裏から飛び出してきた。
「......はわ! 何でこんな所に貴方が!」
そこには同じ学年である弓箭猟虎が......
何時かいたかもわからないのが転がってたので投稿します。
続くかどうかは反応次第。
続くかどうかは未定。
反応良かったら書くかも。
虐待、いじめ、パワハラ......。
この世のありとあらゆる被虐を受け、最後は疲労で駅のホームから落ち、電車に惹かれて天寿を全うした。
ここまでは、前世の話。
今から、今世の話をしよう。
前の世界と違ってこの世界は、化学的な発展が凄まじい、見た事ない近代的な形の飛行機は飛んでいるし、街中をロボットが巡回している。
学園都市。
人口の八割が学生と言われているこの年には、様々な分野の研究、運用が行われ、外部との科学的発展が十年違うと言われる超ハイテク都市。
そして、都市内に居る学生には、例に漏れず、『超能力』開発が実施されている。
そう、超能力。
手から火を出したり、宙に浮いたり、のあの超能力だ。
最初は我が目を疑った。
何せ、アニメや映画でしか見た事がない事象が現実として、おこっているのだから。
だが、同時こうも思った。
『能力開発が上手くいけば、なり上がれるのではないか?』
残念ながら、この世界で生を受けた家族も、お世辞にも良いとは言える者ではなかった。
無学な両親が、ないも同然の学歴で働ける所など、高が知れている。
幼い頃から共働きで、それでも、少しでも切り詰めないと暮していけない程の経済状況。
せめてモノ救いは、前世とは違い、両親が優しいという事だ。
まるでモノのように扱われていた時とは大違い、毎日忙しいのに、律儀に食べ物を食べさせてくれ、夜泣きをしたら、怒るどころか宥めてくれる。
だから、貧乏でも構わないと思ったし、そんな両親が僕は好きだった。
しかし、目の前に運が良ければなり上がれる糸が垂れているのなら、話しは別だ。
上ってやる。
そう思って、唯一のアドバンテージである前世の記憶を総動員し、五歳に満たない頃から、勉学に勤しみ、努力し......努力し......努力した。
そして、遂に『能力開発』を受け、学園都市内にある『枝垂桜学園』へと無事、入学を果たした。
発現した能力は
能力の強度によって、レベル0からレベル5に分けられる中での上から二番目の強さだ。
レベル5は七人しかいない天上の存在。つまり、レベル4は十分エリート中のエリートとという事。
しかし、問題はある。
僕が入学を果たした『枝垂桜学園』はお嬢様学校ひしめく共用地帯、その一つが件の学園。
つまり、女性のみ。
当然、僕は抗議した。
元々、受けた学校からして違う、なのに、何故か入学案内が来たのが枝垂桜なのだ。
僕は男だ。身体も心も。
そんな、僕が女の子しかいない学校に通うなんて、倫理的にも常識的にもあり得ない。
なのに、帰って来た返答は『学舎の園内で女性として振舞ってくれるのなら問題ない。些細な事はこちらでも便宜を図る』と言うモノ。
いや、ダメだろ。
幾ら、高レベルの超能力者が欲しいからと言って、そんな横暴許されるはずがない。
と、自身の自制心により、断固講義の姿勢を取ろうとした時、ふと考えたのだ。
枝垂桜学園はお嬢様学園。
僕が受験をした学校より、数段エリート学校であり、そこで、優秀な成績を収めることが出来れば、将来は安泰。
良い会社に入り、或いは企業し、今まで稼いだことがない金額を稼ぐことが出来る。
幸い、
唯一の問題は、本人にその意思はあるかどうかという事だけ。
瞬きの間に、無数の思考を巡らせ、導き出した答えは―――。
学舎の園。枝垂桜学園。
下校時間となり、授業を終え雑談を交わしながら、部活動、あるいは各々の寮へと歩いている生徒達。
回りとは、一回り程大きな背丈。
腰まで伸ばした、夜を溶かしたかのような黒髪。
やや勝ち気を帯びた、狼の様な瞳、気品漂うご令嬢が通うこの学園の中でも、一、二を争う程の美少女がそこにいた。
「百見様?
「......ッ!? な、何でしょうか?」
ぼー、としていたのか、慌てて取り繕った返事をする、その少女そこ、今の僕、百見美多芽である。
いやー、もうね。
倫理観がどうとか、周りの女子生徒に対してどうとか、散々正義感を振りかざしていたのに、金の匂いがした途端平然と鞍替えしたのは自分自身どうとは思ったんだよ?
でも、仕方ないんだ。
だって、お金稼ぎたいし。
だから、僕は入学が決まった時、心に誓ったんだ。
どんな手を使っても成り上がってやるって。
計画はこうだ。
この学園、と言うより、この学園のある地区はお嬢様学校と言うだけあって、金持ちのご令嬢がうようよしている。目を瞑って、歩けば、金持ちの子供に当たるくらいそれはもうたくさんいる。
だから、この中学の三年間の間に、徹底的に彼女達を調べあげ、より自分に利がある人間をマークする。
そして、女性としてのこの身体で近づき、交友を深める。
ある程度好感度が上がったら、今度は、男の僕と接触させよう。
そこから、女の僕があの手この手で男の僕の好感度を上げて、何とかして恋慕の心を抱かせる所まで持って行く。
そして、最終的にはゴールイン。
結婚する相手の会社にコネで就職することが出来ると言う訳だ。
「わたくし達、これから学舎の園の外を散策しようと思っているんです。―――宜しければ、百見様もご一緒に如何ですか?」
歩幅を合わせながら、隣に現れた生徒一号と二号。
彼女らは、同じクラスの生徒だ。
クラスの全員は、大体調べがついているので、早々に標的リストから外した。
故に、名前は知らない。というか覚えていない。
二人とも顔の造形は整っているが、正直に言って女性に変身している自身の容姿が整い過ぎているので、一ヵ月もこの姿で生活していれば、並大抵の美少女を見ても、何も反応しなくなった。
意を決し話しかけて来た所悪いが、お前達には用はないんだ。
「―――申し訳ございません。生憎、これから所用がありまして......」
顔では申し訳なさそうにしているが、その実、『早くどこかに行け』と心で言っているどうしようもないクズが此処に居た。
彼女達と離れ、学舎の園の外。
授業が終わり、これから買い物の生徒達で人通りが多くなっている所を、上品な所作で歩いている。
入学して半年。
丁寧に行ってきたイメージ形成のおかげで、同学年のみならず、学園の中での今の僕は『孤高の麗人』『麗しの君』『お姉さまにしたいランキング一位』。
見向きもされなかった人生が死して転生した結果、美少女達にちやほやされる甘々人生が待っている何てだれが予想出来ようか。
自身の美貌を称賛する他校の生徒達の声を、聴きながら悦に浸ると言う、とんでも趣味を楽しみながら、僕は夕日が沈みゆく学園都市へと消えて行った。
誰もが惚れる美貌、トップに位置する超能力、将来を安泰にしてくれる金づるに塗れた学園。
どう転んでも明るい人生が待っている。
そう思っていた。
「はぁ.....はぁ.....」
今、僕は手足を血まみれにしながら路地裏を必死に走っていた。
どうしてこうなった!
何時も通り、下々の人間を観察すると言う趣味を楽しんだ帰り、人通りの少ない道を歩いていると、突然路地裏からスーツを来た成金っぽい男が出て来た。
「や、やめてくれ! 金なら幾らでも出す! だから―――」
右足を撃たれたのか、絶えず鮮血を垂れ流しており、そんな素人目から見ても深い傷を負いながらも、薄暗い路地裏の中に向かって命乞いの言葉を吐き出し続けている。
最初、何が起こっているのか分からなかった。
ただ、何かマズい事が眼前で起ころうとしている事は何となく理解していた。だからなのか、突如現れた恐怖に身体中の筋肉が固まり動けずにいた。
逃げろ。
何度も脳から身体に命令を下すが、エラーを起こし、拒否される。
「お願いだ! 助けて! 助け―――」
僕に気が付いた成金男は、ぶん、と顔を此方に向け、足と同じく血に塗れた手を伸ばしてきた。
そして、手が伸びきるのと同時に、空気が抜ける音が耳に入り、それと同じタイミングで成金男の頭に赤い大きな花が咲いた。
「ひっ!」
近くに居た僕は、目を見開き、その場で腰を抜かし倒れてしまう。
「全く、これじゃあ獲物にもなりえませんね。死にかけの野良犬でも、もうちょっと―――」
醜い男の声とは一変、落ち着いた鈴の様な流麗な声が、路地裏から聞こえてきた。
その声は徐々に近づいてきて、後ろ手に倒れた僕の目の前に姿を現す。
「あ、.......あ」
その人物は僕の見知った人だった。
「......はわ! 何でこんな所に貴方が!」
無表情だったその顔は、突如、羞恥に塗れた赤で彩られた。
同学年の僕と同じ他の生徒から尊敬されている少女。
何時もの、枝垂桜の制服に身を包み、凛とした上品な所作の彼女とは違い。
膝上の丈のスカートに胸を強調された服装。
動作も、上品とはかけ離れた、どこか野性味のあるもの。
倒れて動かない男と、顔を真っ赤にした猟虎を交互に視線を移し、直感で理解した。
目の前にいる彼女は、裏の世界の住人だ、と。
逃げないと。逃げないと。
「逃げないと......ッ!」
立ち上がり、踵を返すと走り出した。
手に持っていた鞄は置いて来た。走る姿はお世辞にも上品とは言えない。
全ては生への執着、死にたくないと言う願望が引き起こした、逃げる為だけの姿。
走りながら後ろを振り向くと、左手を此方に伸ばしながら佇む彼女の姿が目に入った。
能力か。
来るなら来い!
走りながらも、己の能力の発動の為の演算を開始する。
身体のみならず、能力も変化させることが出来るこの能力。
レベル4ともなれば、性能は絶大で、想像しうるあらゆる能力をレベル4として発現させることが出来る。
僕の能力は、最強だ。
しかし、この時、僕は気付いていなかった。
例え、強力な能力を有していようとも、実戦経験のある人間とない人間には雲泥の力の差があるという事に。
パシュッ!
「いッ!」
右肩が爆ぜた。
それと同時に、爆ぜた部分周辺へじわじわと熱が広がってゆき、制服が赤く染まっていくのが見える。
右肩上がりにましていく痛みに比例して、戦意が下落していく。
戦意喪失。
兵士でもなければ、警察官でもない。
誰かに虐げられたことはあれど、戦った事のない僕にとって戦闘は、初めての経験。
そして、戦いによってもたらせた痛みは、昔の記憶を思い出させる鍵だった。
「い、痛い、痛い、痛い」
身体が動かない。
昔、前世の父から言われた『殴ってる時は逃げるな』と言う言葉が、身体を拘束する。
コトコト......。
彼女は近づいてくる。
妙に耳に残る、その足音は、母のイラついている時の足音を想いださせる。
母はよく、足を払って僕を倒し、馬乗りになり血が出るまで僕を殴った。
だから、せめて僕は痛みを抑えようと『先に倒れていた』。
「え? ......」
無意識に身体を倒す自分に驚愕していた。
コトコト.......。
暴力の音が近づいてくる。
昔の僕とはもう違う。
綺麗な身体、強い力......今は抵抗する為の力がある。
なのに―――。
「ひぐっ! や、やめて......殴らないで......ッ!」
何で涙が止まらないんだ。
やめろ、そんな媚びたような声を出すな、今のお前は違うだろう。
「ごめんなさい! ごめんなさい! 何でもしますから、言う事聞きますから、痛い事しないで下さい」
今のお前は、百見美多芽だろう!
恐怖で身を震わせながら、まるで幼い子供の様に泣き腫らし、許しを請う僕。
気が付けば、直ぐ目の前には、彼女が立っていた。
「......え?」
思わず、声が出てしまった。
普通、この手の暴力に走る人間は、怒っているか苛立っているかの二択しか見たことがない。
なのに、眼前で僕とは違う意味で身を震わせている、猟虎は恍惚とした表情を浮かべながら、蕩けた顔で僕を見下ろしていたのだ。
「私達......もう、
こうして、僕の地獄のような生活は幕を開けたのだった。