船からもだいぶ離れ、海藻が多い地帯に来た。海の森みたいだ。あちこちに緑がある。
そういえば、なんやかんやあったのでステータスを確認していなかった。周囲に魚はいないみたいだし、海底に座ってそっと確認してみる。
【
種族:深淵ノ亜神
信仰:3
魔法:《海月提灯》《大波》《泡沫舞踊》《微睡の水》《水泡爆弾》《神隠し》
スキル:《水操作》《海鳴りの歌》《冥々水槽》《波槍》《波盾》《信仰変換》《大渦》《超回復》《深海ノ扉》
称号:【世界旅行者】【深海ノ祝福】【深淵】【海原の守り】【波の守護者】【大鯨の祝福】【海底葬送】【大番狂わせ】
随分と色々増えている。
レベルキャップは一気に70まで上がり、なにやら信仰という項目が増えた。これは俺が亜神になったからだろうか。
どうやら、この信仰が増えれば増えるほど、経験値にボーナスが付くんだとか。というか、ボーナスがつかないと今後なかなかレベルが上がりづらくなるらしい。流石にレベルキャップ70ともなると、1レベル上げるだけでも必要経験値が大量になる。
《信仰変換》はそのためのスキルで、お供物とか、捧げられたものを信仰に変換できるんだとか。今の俺は信仰してる人なんていないけど、今後は考えてみないとな……。
中途半端に3あるのは、リベルタかオデュセーのどちらかかな。たぶんオデュセー……? 俺を神と崇めるよりは、普通に感謝とかでも増えそうだ。
それ以外もざっくり見ていこう。
《大波》
大きな波を起こす。
《泡沫舞踊》
舞うことによって、あたりに大量の泡を作り出す。
《微睡の水》
眠りに誘う水を作り出す。
《水泡爆弾》
作り出した泡を爆発させる。
《神隠し》
物や生き物を特殊空間に収める事ができる。自分も入る事ができ、自由に内装を設定できる。
《大渦》
巨大な渦を作り出す。
《超回復》
肉体を再生させる。相応の体力、気力が必要。
《深海ノ扉》
いつでも、始まりの深海に帰る事ができる。
使用者しか通ることはできない。
また、深海を経由して別の場所に扉を作ることもできる。
スキル、魔法はこんな感じ。
シンプルなものが多い。リベルタやクラーケンが持っていたスキルもあるし、海の魔物としてかなり強い力を得たようだ。でもまだ規模は彼女らほど大きくは作れない。これは慣れとレベルかな。
《泡沫舞踊》と《水泡爆弾》を組み合わせれば、大量の泡を爆発させれそう。
泡は目眩しにも使えそうだし、時間稼ぎもできそうだ。
《神隠し》は、今回の壊れ枠その1。
収納としても、セーフルーム的なものとしても使える。俺だけの安全空間が作れるのだ。
いつでも行けて、いつでも出れる家みたいなもの。頑張って広げたら、それこそ物置と家としての部屋を分けたりもできそうだ。
《深海ノ扉》は壊れ枠その2。
あの初めの深海に戻れるだけだと微妙だけど、おまけでワープ機能がついてる。おまけとしてカウントしていいのだろうか。
ただ、場所1→場所2ではなく、場所1→深海→場所2らしい。
あと俺しか通れないので、同行は無理。
それでも十分便利だし、破格だ。
戦闘面、機能面で良いものが揃ったと思う。
次は称号だ。
【海底葬送】
海の底で看取り見送った者の証。
あなたに送られた者は永遠に安らかに、深淵に還る。
【大番狂わせ】
条件:レベル差50以上の相手に勝利する。
大番狂わせを成し遂げた者の証。
己よりレベルが高い者からの精神干渉をレジストする。
なるほど、リベルタとオデュセーを見送ったことと、クラーケンを倒したことによる称号っぽい。
海底葬送は、リベルタの言葉が印象に残っているからだろうか。鯨以外が深淵に還る信仰を持っているかはわからないけど、安らかなら良いか。
海の終わりを持つ者として、死後苦しまないのはとても良いことだろう。
【大番狂わせ】は、レベル格上の者からの精神干渉レジスト。
精神干渉がどんなものかはわからないけど、今後魅力とか恐怖をデバフとして使ってくる相手も出てくるのかな。レベルが上な事が条件だけど、レベルが下なら素である程度弾けるだろうし、そこまでキツい条件じゃないかも。
しかし、信仰という枠が出てきてしまったので今後の活動を考えねばなるまい。
今まで俺は根無草、深い海で適当にスキルの練習したり、レベルを上げたりして、今まで話した事があるのはリベルタとオデュセーのみ。
俺がこの世界に生まれて何日経ってるのかはわからないが、関わったひとが2人、それもどちらも今世にはもういないというのは、だいぶアレでは?
俺とて完全な孤独のままで平気なわけではないし、生きてる友人は欲しい。
この世界の常識なんかも全然知らないし、しばらくは人に会ったり、集落を見つけることを目標にしよう。人魚はもっと浅いところにいるらしいけど、この際リベルタのような知性ある魔物でも良い。
リベルタやオデュセーと関わって、やはり俺も少し人恋しくなってきた。
引き続き《波盾》《波槍》の練習はするし、戦闘の仕方も考えないといけないだろうが……この世界の人との関わり方も考えないとな。
亜神になったとはいえ、偉そうに信仰を強要したり教団を作る気はない。崇められるとか無理だし、友人や隣人として交流できたらそれが一番だ。
感謝でも進行が増えるシステムで良かった……。
この海の森を抜けたら、集落を探してみよう。あと《神隠し》の空間をどうするかも考えないとか……やる事が多いな。
海藻の森は鮮やかな緑で、海流に揺れる姿が綺麗だ。
海藻を食べる魚もちらほら。襲ってこないし、普通に魚なのかも。この空間で槍を振り回す気にもなれないので、ぼんやりと泳いでいる。
進化してから、尾鰭は随分と立派になった。サメの手ビレのようなものも生えたし、背ビレも滑らかな曲線だ。背中だから形しかわからないけれど。
泳いでいる姿だけでも、かなり幻想的なんじゃないだろうか。いまだに少女の姿には慣れないけどな。声も高いし。
スルスルと森を潜り抜け、開けた海底に出る。坂だったのか、森を抜けるついでに海の上の方に来れていた。先には平坦な土地が広がる。
そこにあったのは、岩や骨でできた家々。それも何軒もある。
村、あるいは集落と一目でわかる。
早速ひとと関われるかも、とドキドキしながら、俺はその方向に泳ぎ入る。
家には貝か何かでできたドアも取り付けられていて、しっかりと家の作りだ。窓もある。
勝手に入るなんてことはせず、村の道を泳いで通行人や村民を探した。
しかし、人は見えない。
というか、生き物の気配が無い。魚はいるが、人魚なんかの大きな気配が無いのだ。
これはアルゴーノム号と同じ展開を引いただろうか。廃村になってしまっているのだろうか。
人の気配を手繰ろうと探りつつ、広くはない村を廻る。
日が落ちようとしているのか、辺りが暗くなってきた。
すると、村はずれの家に一軒、灯りがついている。光源が少ない海の中、その明かりは随分と目立った。
しかも、日が落ちるまでは付いていなかったはず。
明確な知性ある生き物の気配。俺は喜びそうになったが、よく考えたらこんな夜に訪ねるのは失礼ではないか。
初対面で、見慣れない人魚だ。しかもこの世界の常識を碌に知らない。
流石に警戒されそうだし、明日の昼にでも訪ねてみよう。
俺は村の広場に戻り、試しに《神隠し》を使ってみることにした。