カードゲーム世界に転生したが、どうやら俺はモブらしい 作:ドラゴンスキー
「これで終わりだ!クリムゾンドラゴン!」
「・・・・・・ソウルで受ける」
クリムゾンドラゴンが放つ炎が星川光輝の最後のソウルを打ち砕いた。それによって
烈火は地面に手を突いている光輝の元まで歩き、手を差し伸べた。
「俺の勝ちだぜ。光輝」
「・・・ああ。私の敗北だ。君の勝ちだ、龍神烈火」
烈火の手を取り立ち上がった。
その顔からは敗北した悔しさからかいつもの凜々しい顔つきではなくどこか影が落ちていた。
「これでリベンジ・・・・・・って言いたいところだけど、いつものお前らしくないな。何かあったのか?」
『俺もそう思うぜ!』
烈火の言葉にクリムも同意して頷く。
烈火はデュエルトーナメントの決勝までいくことができたが星川光輝に敗れ、優勝を逃した。そして今日はそのリベンジマッチを行い、見事勝つことは出来たが、烈火には星川光輝がどこかいつもとは違うという違和感を感じていた。
烈火とクリムからの言葉に光輝は少しずつ話始めた。
「デュエルトーナメントで優勝したことを父に伝えたが、反応はあまり良くなくてね。『そうか』の一言だけだったよ。僕に返ってきた言葉は」
「とーちゃんと仲悪いのか?」
「別に悪くないさ。・・・・・・仲が良いとも言えないけどね。あの人は僕に興味がないんだと思う。勉強やカードでどれだけ優秀な成績を残したとしても褒めてくれたことなんて一度もない」
「・・・・・・」
母親との関係はおおよそ良好であり、父を亡くしている烈火には光輝になんと言えば良いのかが分からなかった。烈火はそれほど頭が良いわけではない。というか勉強だけなら下から数えた方が速いであろう。しかし、光輝が父親に認めて欲しがっているということはなんとなく分かった。
「なら、もっと頑張んないとな!」
「・・・・・・なんだって?」
「だからさ。もっと頑張って、もっと良い成績を収められたら光輝のとーちゃんも褒めてくれるかもしれないだろ!?」
「・・・・・・」
烈火はさらに言葉を重ねる。
「それに、認めて欲しいってことをちゃんと伝えないと相手には伝わらないぜ!・・・・・・俺だってお前にライバルとして見て欲しいって伝えただろ?」
「・・・・・・!」
「一回ドーンとぶつかってみないと分からないこともあると思うぜ!1回でダメなら2回、3回ぶつかっていけばいいんだよ!」
「・・・・・・くく」
「・・・・・・?」
光輝の反応が分からず烈火は首を傾げる。
「あはは!そうだね、そうだったね、君は。・・・・・・僕も、どこか父に遠慮していたのかもしれない。一度、ぶつかってみようと思う。君みたいにね」
「・・・・・・!おう!」
へへ、と照れくさそうに頭をかく。
どこか落ち込んでいた光輝とのバトルは勝つことが出来たが、次は万全の時に勝負しようと心のメモ帳にメモしておく。
気持ちを切り替えたのか「そうだ」と光輝が話を変えた。
「彼は大丈夫だったのかい?」
「彼?」
「はじめくんのことさ。井上はじめくん。試合が終わった後、どこかにいってしまったみたいだけれど」
「・・・・・・いや、分からない。家にも電話したんだけどよ、帰ってないみたいだ。友達の家に泊まるって言ってたみたいだ」
「・・・・・・そうか」
「・・・・・・ああ」
デュエルトーナメントが終わったあと、海人と広美の3人であちこち探したが見つけることは出来なかった。負けた悔しさはカードバトラーならみんな知っている。俺だって勝ってばかりではない。その悔しさだってみんなとなら乗り越えていけるはずだ。
「・・・・・・どこにいっちまったんだよ、はじめ」
その言葉は誰に聞こえることもなく夕暮れの空に消えていった。
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「ちょっと、あんた!今までどこに行ってたのよ!?みんな捜したんだから!」
「・・・・・・あぁ、悪いな心配かけたみたいで」
烈火と光輝がバトルしていた時、別の場所では広美とはじめがデュエルトーナメント以来の再会を果たしていた。
「・・・・・・はじめ、大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫。
「・・・・・・?そう、よかった」
俺の言葉に少し違和感を感じたようだが、安心したように胸をなで下ろした。
「なあ、広美。スピードしようぜ」
「スピード・・・・・・?まあ、いいけど」
「『土龍王グラウンドドラゴン』を賭けて」
「・・・・・・!?・・・・・・は、はじめ?あんた、一体・・・・・・」
「『
「・・・・・・!」
はじめの言葉の後、光が2人を包み込んだ。
「ここは、バトルフィールド・・・・・・!」
「その通りだ」
「なんで、あんたが・・・・・・!」
「なんでって・・・・・・。まあ、いろいろあってな」
なんでもないようにはじめは話していく。広美が知る限り、はじめは
「あんた、一体誰・・・・・・?」
「誰って、井上はじめだよ。知ってるだろ?」
「・・・・・・」
そう。偽物かとも思ったが、話している感じから井上はじめ本人だと理解した。理解はしたが謎の不気味さがあり、どこか違和感を拭いきれない。
「んじゃ、先行は貰うぞ。スタートフェイズ―――」
「ターン終了時、グラウンドドラゴンは回復するわ!・・・・・・ターンエンド!」
広美は垂れてきた汗を手の甲で拭う。
「(なんなのよ・・・・・・!デッキの属性は光から闇に変わっているし、戦い方もいつもよりさらに磨きがかかっている!フィールドカードの『絶望の奈落』のせいで迂闊に攻撃できないし!ソウルも一つしか削れてない!)」
それでもまだ勝機はあると自分を鼓舞する。
そんな広美をあざ笑うかのように自身もまたキーカードを召喚した。
「暗黒より産まれし壊滅の龍よ。今こそ全てをぶち壊せ。『滅龍王カタストロフドラゴン』、召喚」
「・・・・・・!」
はじめのフィールドに漆黒の模様が浮き出てきてその中から手が、模様を引き裂くように現れる。そうして中から現れた龍は全ての黒を足し合わせたような絶望のオーラをその身に纏っていた。
「なんなのよ、その龍・・・・・・!」
広美は驚いたように目を見開く。
はじめは知っている。
自分が主人公ではないことを。
そして烈火が主人公であることを。
主人公とは勝つために存在している。あるいは勝てる人物であるから主人公としての役割を当てられているのかもしれないがそれはどちらも同じ事だ。
絆の力とやらでどんなピンチも乗り越えていく。だから
油断してはいけない。
相手が反撃に出れるチャンスは潰せるだけ潰す。
そう、
ケアをし忘れて相手に勝ちの目を残すから負けるのだ。
まあそれをやっても負けるのかも知れないが。
「バトルフェイズ。『滅龍王カタストロフドラゴン』、攻撃。カタストロフドラゴンの攻撃時効果、相手の行動不能になってない『龍族』を指定してバトルすることができる」
「なによその効果!?」
だがケアして負けるのとケアしないで負けるのでは全然違う。出来ることは全てやるべきだろう。
「グラウンドドラゴンを指定する」
「くっ・・・・・・!ブロックよ、グラウンドドラゴン!」
「カタストロフドラゴンは『龍族』とバトルする時、DPをプラス4000する」
「・・・・・・!?」
カタストロフドラゴンから放たれる壊滅の炎がグラウンドドラゴンに直撃してグラウンドドラゴンは爆散した。
「そんな・・・・・・」
『続けるぞ、ダークドラで攻撃」
「・・・・・・アイアンゴーレムでブロック」
ダークドラは勝負に負け、爆散する。
「・・・・・・はじめ、あんた、どうしちゃったの・・・・・・?」
「どうしたもこうしたもないだろ。別に今まで通りだぞ」
「そんなわけ、ないでしょ」
「そうか?・・・・・・そうなのかもな。・・・・・・『堕天使ララエル』で攻撃」
「・・・・・・ソウルで受ける」
広美の最後のソウルをララエルが打ち砕き、戦場から解放される。
「・・・・・・これで2枚目っと」
地面に落ちたグラウンドドラゴンを拾い、回収する。
「はじめ・・・・・・」
「悪いな、広美」
でも、
これ以上ここに留まる理由はない。その場から離れ―――。
「―――はじめ、くん?」
「――――海人」
そこに立っていたのは海人だった。