In Seventh Heaven   作:九条空

8 / 8
おすすめBGM:https://x.gd/Mo4fU


NEVER SAY DIE

「青い伝説の羽を追いかけて

 夜が明けるまでに……」

 

 サクスムの星を滅ぼす隕石の脅威が消え、宴はさらに続いた。

 

「自由な風のように君と

 かなでる宇宙の MELODY」

 

 星と人生の危機を乗り越えたのだ。宴好きのサクスム人でなかったとして、はっちゃけて当然である。

 ミレーヌは声が枯れるまで歌い、サクスムの皆はぶっ倒れるまで酒を飲んだ。

 

 あれだけずっと音楽が響いていたステージも、今は静かなものだ。

 観客席はその辺で寝っ転がるサクスム人でいっぱいだし、ステージ上ではミレーヌ、レイ、ビヒータが眠っていた。

 

 ガムリンとアイスだけはステージで眠りこけるミレーヌたちに毛布を掛け、ゲロで窒息しそうなサクスム人を横向きに寝かせ直し、予定では明日発つ貿易船の荷物のチェックや、ヴァルキリーの状態確認をしていた。

 俺は働き者のアイスにどうやって総理大臣の座を渡すか計算しつつ、アイスに用意してもらった音楽再生機器に、ミレーヌにサインしてもらった記録媒体をセットして再生していた。

 

 もしかすると、バサラも人間ではないのかもしれない。

 あれだけの大立ち回りをした後にライブで熱唱もしたというのに、まだ元気そうなバサラを見る。

 

「本人がいるんだから、わざわざそんなもん聴くんじゃねえよ」

「リクエストしたら、その曲を歌ってくれるのかい?」

 

 バサラは、音楽再生機器の音をかき消すようにギターをかき鳴らした。

 

「いや。お前が好きそうな曲を歌ってやる」

「それほど贅沢なこともない」

 

 俺は音楽の再生を止めた。

 

「失くしたらまた取り戻すだけさ

 いつだって 夢なんて 単純なもんだぜ」

 

 宣言通り、バサラはギターの演奏と共に歌いだした。

 

「やりたいことを やり尽くすだけさ

 その声が そう駆り立てるから

 

 バサラの見立ては正しく、彼の歌う曲は俺の心によく響いた。

 

「”NEVER SAY DIE”」

 

 弱音を吐くな、という叱咤激励。

 遠くにいても、近くにいても。やはり彼の歌は直接、この心臓によく響く。

 一曲が終わり、バサラはギターの弦をいじりながら、俺に言った。

 

「もしかするとお前、何万年も前にこの星を救ってたんじゃねえのか」

「ありえない話ではないね。ここ最近はそんなことしていないけれど、銀河で戦争があるとたまに行っていたんだ。血気盛んすぎる兵士からスピリチアをもらうために。星を打ち落とすくらいの力は、その時にはあったかも」

「この星には大猫伝説ってのがあると、猫のじいさんに聞いた」

 

 大猫伝説は、サクスムに伝わる神話だ。

 

 ――巨大な岩が、星に落ちてこようとしていた。

 サクスムの民が嘆き悲しみ、途方に暮れていると、空から巨大な大猫がやってきた。

「笑って、楽しめ」と大猫は言った。民は宴を開き、笑い楽しんだ。

 すると大猫はそれに満足し、空から降ってきた大きな石を打ち破り、去って行った。

 それ以来、サクスムでは笑って、楽しむことを最も尊ぶ文化が生まれたのだ。

 

 バサラは俺を指さした。

 

「お前じゃねえの?」

「どうだったかな……思い返せば、俺がこの兵器の体を借りることに決めたのも、この耳の尖った姿が愛らしかったからかもしれない」

 

 伝説の中にある「笑って楽しめ」という指示が、スピリチアの増幅を指示するものだとすれば、ちょっとそれっぽい。

 通りがかったこの星のことを気に入って、かつての俺が隕石を打ち落としていたとしても……まあ不思議なことではない。人生が長すぎるので、そうだったとして記憶に残っていないのも納得だ。

 

「もういい加減、眠りについてもいいかと思っていたが、君に出会って俺は変わった」

 

 心変わり、なんてものではなく、体ごとつくりかえられてしまった。

 まさか、自分自身でスピリチアを作り出すことができる生き物にされてしまうとは。

 俺はもう、誰かの命を借りなくても生きていける。歌を歌えば、自分の力になるのだ。

 寄生虫から植物になったようなものだ。これから歩む道が、いままでと同じとは思えない。

 どんな終わり方をするかばかり考えていたことが、信じられないくらいだ。

 

「もうしばらく、この星で歌って暮らすよ」

「ああ。いいんじゃねえか」

 

 バサラはなんてことなく言って、ギターをかき鳴らす。

 彼に言われるまでもなく、俺はバサラの歌に合わせて歌った。

 




おしまい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生チート悪用Gジェネ錬金術師マン。(作者:はめるん用)(原作:Gジェネレーション)

 あるとき、ガンダムの2次創作を楽しんでいたひとりの読者は考えた。▼「ガンダムの2次創作面白いけど、ちゃんとした作品ほど読み手にも知識とか求められるの大変なんだよな……。せや! ゲームだけのフワッとした設定だけ引っ張ってきて頭カラッポで読めるファンタジー書いたろ!」▼ これは、モビルスーツは好きだけどガンダムそのものはあんまり詳しくないタイプの人々に捧げる物…


総合評価:1378/評価:8.52/短編:3話/更新日時:2026年03月04日(水) 21:46 小説情報

ソシャゲみたいな世界で「ここは俺に任せて先に行け」をやったら生き残ってどうしよう(作者:アサリを潮干狩り)(オリジナル現代/冒険・バトル)

特異な力に目覚めた十代の少年少女が、国や家族を守るために怪物相手に命懸けで戦うゲームのような世界。▼そんな終わった世界に転生して、仲間を守る為に敵を引き付けて死のうと思ったら生き残っちゃった。別れる前に色々言っちゃったしクソ気まずい。これどうすんの。▼※一発ネタです。そこまで長く続きません。


総合評価:16100/評価:8.58/完結:8話/更新日時:2026年04月05日(日) 00:52 小説情報

地雷系彼女(マイ・フェア・レディ)(作者:あなたへのレクイエムです)(原作:HUNTER×HUNTER)

「ねえ! あなたの目を、私にちょうだい? 綺麗な瓶に入れて、毎日眺めたいの!」▼アンドー=ルモアが出会ったのは間違いなく地雷系の女の子だった。ウワーッ!?▼ヨークシンシティのオークションまであと10年。▼ネオン=ノストラードの"破裂"する運命は変えられるのか。▼※掲示板形式主体作品の検索利便性を考慮しタグを控えていますが、幕間の末尾などに…


総合評価:45544/評価:8.96/連載:34話/更新日時:2026年05月21日(木) 20:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>