黒曜帝国記   作:社畜新兵

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この話でこの物語は終わります。
本業が手につかなくなってしまったので。
いけませんね


第十九章「ハデスの台頭-冥府よりの咆哮-」

「冥王ハデスの台頭」

 

冥界の王ハデスは王座に座り、冷たい笑みを浮かべた。彼の足元には、無数の亡者たちが跪いていた。

「ゼウスは天界に君臨し、ポセイドンは海を支配した。だが、私は何だ?この暗く冷たい冥界へと追いやられ、ただ死者を束ねるだけ」

バイデントを大地に突き立てると、冥府全体が震え上がった。

「今こそ、私の怒りを示す時だ……!」

かつて人間たちが戦争と憎悪によって積み重ねてきた「死」が、冥界に溢れ返っていた。

フレイム王国の「蘇生魔法」によって作られた不死の戦士たち、彼らの魂は正常な死を迎えることなく、限界を超えた蘇生によって腐り果てていた。

「蘇生魔法に失敗し、意識を壊され、もはや何のために戦っているのか、それすらも分からない。そんな者たち、その中でもえりすぐりの勇者をこう呼ぼう」

「ネクロへロス」

かつて王国を救った勇者たち。しかし、蘇生魔法の呪縛によって、彼らは自我を失い、ただ戦い続けるだけの亡者となった。

「そして切り札はもう一つ、ミアズ、死を振りまく異形だ」

 それは皇帝に裏切られ、ハデスに生贄として捧げられた人々を核にした、呪いと憎悪の塊のような巨大な魔物、移動する厄災だった。

「この大地を死で埋め尽くしてやる。そして、やがては天界を制してみせる」

ハデスは天を仰ぎ、ゼウスの玉座を見据えた。

 

 

「ミアズ-死を振りまく異形-」

 

冥界の門が開かれると、そこから現れたのは異形の怪物「ミアズ」 だった。

大地を腐らせ、空気を汚し、世界に死を撒き散らす存在。

その頭には、ヘーパイストスがハデスへの生贄として捧げた10人顔が。

「王よ……王よ、なぜなのですか!」

「お母さん……痛いよ……痛いよ……」

「許せない……許せない……」

怨嗟と悲鳴が混ざり合い、ヘーパイストスの心を深くえぐる。

彼は、言葉を失った。自分がかつて犯した罪が、今、報いとなって現れたのだ。

「なんということだ……」

震える拳を握りしめ、彼は戦場を見つめた。

 

「戦慄のホットライン」

黒曜帝国の皇帝ヘーパイストスは、モニターを睨みつけた。

帝国の監視網が捉えたのは、大地を穢し、死を振り撒きながら、ゆっくりと進み続ける巨大な厄災「ミアズ」の姿だった。

それは大地を腐らせ、死者を無理やり蘇らせ、アンデッドへと変えていく、世界を破滅へと導く忌むべき存在。

「陛下!緊急通信が入りました!!」

「どこからだ!?」

「それが……女神フレイヤからです」

「なんだと?」

ヘーパイストスの眉がわずかに動く。

敵であるフレイヤが、救援を求めている?

「内容は?」

「世界樹の都『オデュッセイア』が『ネクロへロス』率いるアンデッド軍団の襲撃を受け、滅亡の危機に瀕しています!」

「映像!オデュッセイアは今どうなっている!!」

「映像、出ます!!」

ヘーパイストスは、モニターに映る映像を見た。美しくそびえ立っていた世界樹の根元は腐敗し、都全体がアンデッドの群れに飲み込まれようとしている。

そこには狂気に取り憑かれた無数のアンデッド。そしてかつて勇者と呼ばれた者たち、その成れの果て「ネクロへロス」がいた。

信じられないことに、アンデッドはネクロへロスに統率され、軍団をなして王都を蹂躙していたのだ。

「すぐに転移魔法を用意しろ!」

「しかし、陛下これは敵の罠かもしれません」

「罠であろうが、俺はフレイヤを見捨てることはできん」

「了解しました、親衛部隊『アウレア隊』を召集、直ちに転移魔法を展開します」

ヘーパイストスは腰のホルスターから「プロメテウス弾」を込めたリボルバーを取り出した。

この特製弾は、魔術士連合と協力して開発したものであり、撃たれたアンデッドは聖なる炎で浄化され、消滅する。

「行くぞ...オデュッセイアを、フレイヤを救う!」

 

 

「地獄の光景」

 

転移魔法が起動し、一瞬の閃光が瞬く。

次の瞬間、ヘーパイストスと「アウレア隊」は、世界樹の都「オデュッセイア」に降り立った。

だが、そこに広がっていたのは地獄だった。巨大な世界樹は根元から腐り、黒い霧を吐き出している。

その周囲では、アンデッドたちが生きた人間を喰らい、絶叫がこだまする。街のあちこちで兵士たちが奮戦し、必死に抵抗しているが、すでに戦況は壊滅的だった。

「皇帝陛下!!こちらへ!!」

エルフの高位魔術士が駆け寄る。彼女はフレイヤの側近であり、最後の忠臣だった。

「フレイヤは!?どこにいる!!」

「宮殿の謁見の間です!ですが、もう…」

「行くぞ」

ヘーパイストスは拳銃を構え、道を阻むアンデッドたちにプロメテウス弾を叩き込む。弾丸が命中した瞬間、アンデッドの肉が焼かれ、やがて骨になり崩れ去る。

「邪魔をするな!!」

彼とアウレア隊は燃え盛る宮殿内を亡者の群れを打倒しながら切り抜け、謁見の間へと駆け込んだ。

だが、そこに待っていたのは、想像を絶する光景だった。

謁見の間の奥、玉座に座る影があった。フレイヤだった。

だが…彼女の四肢は腐り、肌は黒ずみ、謎の病魔に蝕まれたかのようだった。

「兄様……」

フレイヤはか細い声で笑った。

「何も言うな、すぐに治療を」

「ごめんなさい……私なの……私が……」

「何?」

「ある日から、蘇生魔法がうまくいかなくなったの……だから……召喚魔法を繰り返し使ったの、そしたら冥府の門が開いて……それで……ハデスが……」

ヘーパイストスの目がわずかに揺れる。彼女が開いた扉が、冥界の軍勢を呼び寄せたのか。

「わかった。わかったから、もう話すな……ここを出るぞ」

ヘーパイストスはフレイヤを抱きかかえる。その身体は驚くほど軽かった。まるで、魂が抜け落ちたかのように。

「脱出路を確保しろ!!」

「アウレア隊、退路を開きます!!」

背後からアンデッドの軍勢が迫る。ヘーパイストスたちは銃を乱射しながら宮殿を後にした。

その時、彼は最後に振り返った。あれだけ美しかった世界樹は、今や腐り落ち、王都は赤く燃えている。

フレイム王国は滅亡を迎えた。

 

「女神を背負い、戦いの先へ」

オデュッセイアを脱出したヘーパイストスたちは、転移魔法を使ってヴァルカノスへと帰還する。

傷ついたフレイヤを抱えながら、彼は特別治療院に駆け込んだ。

しかし、魔術士たちは首を振った。

「彼女の身体は、すでに死に近い状態です」

ヘーパイストスは歯を食いしばる。

「何か方法はないのか……」

「唯一の手段は、彼女を戦艦トリニティのコアにすることです」

「トリニティの……コア……?」

「トリニティの魔導コアに、彼女を融合させ、ゆっくりと再生させるしか、女神フレイヤを救う方法はそれしかありません」

「そんなことをしたら、この子は」

フレイヤの手が、そっとヘーパイストスの頬に触れた。

「兄様……それでいいのよ……」

「フレイヤ……」

「私は、ずっと……兄様と一緒にいたかった……」

ヘーパイストスは静かに目を閉じた。

「すまない」

彼は決意し、フレイヤを戦艦トリニティの魔導コアに融合させる。彼女の魂が、戦艦の鼓動と一体化する。

トリニティが再び動き始める、世界を救うために。

 

「戦艦トリニティ、起動」

 

「これ以上、この世界を死で覆わせはしない……!」

ヘーパイストスは切り札を投入する決断を下した。

「戦艦トリニティ」

それは魔術と技術の粋を集めた、人類最大の希望だった。

元々は恒星間移民船として設計されたが、黒曜帝国の魔術士連合の技術によって巨大な宇宙戦艦へと転用されていた。

「トリニティ、全機能解放!」

巨大な戦艦がゆっくりと動き始める。

「今こそ……この世に正義を示す!」

「戦艦トリニティvsミアズ 終焉の決戦-」

冥界の門が開かれ、腐敗した空気が世界に漏れ出していた。

黒い霧が大地を覆い、その中から数えきれぬほどのアンデッドや魔獣が蠢きながら這い出てくる。

その奥には、十体の「ミアズ」皇帝への怨念の集合体、移動する厄災が、ゆっくりと進む。

そして、それを迎え撃つのは、黒曜帝国がその技術と工業力を結集して建造した最終兵器、「戦艦トリニティ」。

その巨躯が夜空に浮かび、神聖な光を全身に纏っていた。

その周囲を護衛するのは、皮肉なことにフレイム王国の「機械妖精ゾンダー」が20機。

 

「開戦-黒の霧の襲撃-」

 

「トリニティ、全システム起動!」

ヘーパイストスの指令が艦内に響く。

「魔導エネルギー炉、出力安定!魔導砲、照準完了!」

トリニティの艦首がゆっくりと沈み込み、巨大な主砲が動き始める。超エネルギーゲイン魔導キャノンがまばゆい閃光を放ち始める。

「魔導キャノン、撃てます」

「撃て――!!」

轟音と共に光の奔流が地上へと突き刺さる。蒼白い炎が戦場を照らし、アンデッドの群れを焼き払い、「厄災ミアズ」を貫いた。

一体のミアズが燃え上がり、崩れ去る。

だが、黒の霧はすぐさま補充されるように渦を巻き、新たなアンデッドの群れが地面から湧き出し、崩れた肉塊がうごめき、狂気の呻き声を響かせながら再び前進を開始した。

「ゾンダー隊、出撃!」

「機械兵、全機降下!」

トリニティのハンガーから、次々とゾンダーと機械兵が飛び出していく。

流麗なフォルムの赤い機体が、冥界の霧の中を縫うように飛翔し、狙い澄ました一撃を加えていく。降下した機械兵たちもアンデッドに容赦ない機銃掃射と火炎放射を浴びせた。

「ザンッ!」

魔導ランスがミアズの巨躯を貫き、爆発と共にその体が弾け飛ぶ。機械兵たちは自動破砕ブレードが振るわれ、アンデッドの群れを切り裂いていく。

「こいつら……いくら倒しても……」

ミアズは次々と再生し、倒した端から形を変えて迫ってくる。

それでもゾンダー隊は怯まず戦い続けた。

それはまるで、地獄の中で舞う花のようだった。

 

「ネクロへロスの出撃」

「全てを……滅ぼせ……」

突如、黒い霧の中心で何かが蠢いた。現れたのは、かつて勇者と呼ばれた者たち、今は骸となりし戦士たち、ネクロへロス。その目には光がなく、ただ虚無の中で何かを求めるようにトリニティを見上げる。

「お前たちを……滅ぼす……!」

ネクロへロスが呪詛を唱えると、黒い鎖が空を裂き、トリニティへと絡みついた。その鎖を伝い、ネクロへロスに率いられたアンデッドの軍勢が次々と戦艦トリニティに乗り込んでくる。

「甲板に取りつかれました!!艦内にアンデッドが侵入してきます!!」

「このままでは……」

「メディナ部隊、交戦に入ります」

 艦橋で式を代理していたヨアヒムが淡々と告げる。

「いいのか?」

 ヘーパイストスはヘルムートたちの身を案じるが。

「あの二人ならやってくれます。お任せを」

 ヨアヒムはかけらも心配していない。

「まさかあんたと、共闘とはね」

 魔術師ハンナが毒づく。

「必ず食い止めるぞ」

「当然」

 ヘルムートとハンナ、かつては敵同士だった二人が、今銃をとり、人類の未来をつなぐため、戦う。

 

 

「ゾンダーの特攻」

 

「俺たちがやるしかない!」

ゾンダー隊のリーダーが叫び、全機がネクロへロスへと急行する。黒い鎖を断ち切るために、彼らは限界を超えて加速する。

「行くぞ、野郎ども!」

ドォォォン!!20機のゾンダーが一斉に魔導ランスを突き立てる。光が炸裂し、黒い鎖が消滅した。

しかし、その代償は大きかったネクロへロスの呪詛の逆流によって、ゾンダーの半数が機能停止し、残った機体もボロボロだった。

それでも、生き残った者たちはなお戦い続けた。

 

「ミアズの罠とクロノスの復活」

 

トリニティは 魔導キャノン砲と魔導機関砲を駆使し、ミアズを次々と撃破していった。アンデッドの軍勢は、かつて冥界の門の入り口へと追い込まれていく。

「よし……これで終わりだ……」

しかし、それは罠だった。

生き残ったミアズたちは一つに融合し、巨大な巨人へと変貌した。

「な……なんだ、この化物は……」

その姿こそ、かつてゼウスが封じたティターン神族の王「クロノス」だった。

「クロノスが……復活した……!?」

「ハハハハハ!!どうだ!!これには勝てまい!!」

 クロノスの肩に現れた冥王ハデスは高らかに笑った。

「時を……取り戻す……」

クロノスの呟きとともに、周囲の時空が崩壊し始めた。

「こいつは……まずい……」

ヘーパイストスが呟いた瞬間、クロノスがハデスを掴み、その口へと放り込んだ。

「チッ……昔と同じかよ……!」

ハデスは最後の抵抗として、槍「バイデント」をクロノスの喉へと突き刺した。クロノスののどは貫かれ、轟音が鳴り響く。

ハデスは喰われた。しかし、その最後に一撃でクロノスは動きを止めた。

「ハデスの残した槍が……クロノスを止めた!」

フレイヤの声が響く。

「ならば……最後の一撃を叩き込む!!」

ヘーパイストスは トリニティをクロノスへと突撃させた。

「消えろ、時の怪物!!!」

「主砲、最大出力、発射しろ!!」

「魔導炉の出力が足りません!!主砲、撃てません」

「なら、出力を上げてやればいい」

 そう言うと、ヘーパイストスは魔導炉に駆け出す。

「まさか、陛下を止めろ、魔導炉に身を投げるつもりよ!」

 感づいたヨアヒムが叫ぶが、ヘーパイストスの覚悟はきまっていた。

「兄様!!やめて……!」

 トリニティのコアと融合したフレイヤは必死に叫んだ。だが彼女には何もできない。

「これで……いいんだ……」

 ヘーパイストスは魔導炉に身を投げる、強靭な肉体と誇り高い魂を燃やし、魔導炉は息を吹き返す。

「魔導炉、出力回復」

「主砲、発射」

ヨアヒムたちは涙を呑んで、主砲を発射する。

戦艦全体が震え、最後の力を込めた光が放たれる。閃光が戦場を覆い、クロノスの巨体を飲み込んでいく。

爆発。眩い光の中で、クロノスの巨体は消滅していく。

だが、ヘーパイストスの体もまた……。

 

 

「エピローグ:世界の再生と新たな故郷」

 

戦いは終わった。戦場には、黒い影が。かつて冥界に放り込んだ十人の亡霊たち。

ヘーパイストスの魂はそっとその影を抱きしめる。

「一緒に行こう……」

彼は死の影を受け入れた。魂はゆっくりと崩れていく。

「兄様……!!」

戦艦と融合したフレイヤが咄嗟に世界樹の枝を伸ばす!

 ヘーパイストスの魂を必死に現世につなぎとめた

「お願い……生きて……!!」

彼女は「奇跡の蘇生魔法」を発動した。だが、足りない。彼の「魂」は、何とか繋ぎ止めることができた。ヘーパイストスの魂はトリニティの中枢に取り込まれたのだった。

戦いが終わった。ミアズは消滅し、クロノスも滅びた。

しかし、大地は死んでいた。フレイム王国の森は焼け落ち、黒曜帝国の都市は瓦礫の山となった。

世界は「戦争の爪痕」を抱えたまま、静まり返っていた。

かつて敵同士だった人々は、瓦礫の中に佇みながら、戦争の意味を考え続けていた。

 

 

 

「黒曜人とフレイム王国の生き残り」

黒曜帝国とフレイム王国、二つの国は滅びた。

生き残った人々は苦境に立たされた。

フレイム王国の民は世界樹を失い、飢えに苦しんだ。

黒曜帝国の民は穢れた大地と汚れた空気の中、生きねばならなかった。

どちらも、生きるためには手を取り合うしかなかった。

「このままでは、私たちは滅ぶ……」

フレイム王国の民たちは、かつての黒曜帝国の人々に助けを求めた。

「魔法の力だけでは、この世界を再建できない……」

黒曜帝国の技術者たちは、それに応じた。

「俺たちは戦争しか知らなかった。だが、今度こそ平和のために力を貸そう」

こうして、二つの国の民は「共存」を決めた。

 

 

「ラタトスク王国の建設」

彼らが新たな土地として選んだのは、北の果ての島々。

そこには、戦艦トリニティが静かに眠っていた。

「ここを、新たな故郷にしよう」

黒曜帝国の技術者たちは、戦艦トリニティの生産施設を活かし、フレイム王国の魔法使いたちは、戦艦のコアに残った世界樹の力を復活させようとした。

彼らは互いに助け合いながら、

新たな国を築いていった。

その名を「ラタトスク王国」とした。

世界樹にかじりつくリスのように小さな国。厳しい環境の中でも生き抜くことを人々は決意したのだ。

 

「かつての敵との共生」

だが、問題は残っていた。

「本当に、手を取り合えるのか?」

かつて戦った者たちが、共に生きることができるのか。

フレイム王国の民は、黒曜帝国の兵士たちを警戒した。

「お前たちは、戦争で私たちの家族を殺した……」

黒曜帝国の兵士たちは答えた。

「お互い様だ。俺たちも、戦友を失った。戦争はすべてを奪った……」

憎しみを乗り越えるのには時間がかかった。

しかし、人々は時間をかけて和解し、一緒に畑を耕し、建物を作った。

ゴブリンとオークは橋を架け、モンクたちは人々を癒す。魔術師は、倒壊した建物を魔法で修理した。王国の騎士たちは、ケルベロス隊と協力し、街の治安を守った。

人々は少しずつ、過去を乗り越えていった。

 

「フレイヤとヘーパイストスの約束」

戦艦トリニティの中心には、かつての皇帝ヘーパイストスの魂が眠っていた。

彼の魂は死の影を受け入れ、戦艦の電子頭脳に宿ったのだ。

その傍らで、フレイヤは祈り続けた。魔術師と僧侶たちの尽力で、女神フレイヤは肉体を取り戻していた。

「兄様……必ず、あなたを復活させるわ」

フレイヤは、世界樹の力を回復させることを決意した。黒曜帝国の魔術師と技術者たちが、それを手伝った。彼らは、汚した環境を回復させるため、科学と魔法を融合させた新たな技術を生み出した。

「この星をもう一度、緑に戻そう」

その言葉に、人々は立ち上がった。

数年が経ったラタトスク王国は、戦艦トリニティのエネルギーを活用しながら、少しずつ文明を再建していった。

世界樹を復活させるプロジェクトが始まった。魔法と技術が融合し、新しい発展が進んでいく。かつての敵同士が、共に働き、共に笑うようになった。

人々は二度と同じ過ちを繰り返さないと誓ったのだ。

「終章 ヘーパイストスの眠る場所-」

 

ラタトスク王国の中心には、静かに鎮座する戦艦トリニティがあった。

そこには、今もヘーパイストスの魂が眠っている。フレイヤは、戦艦の中心に手を当てる。

「兄様、もうすぐよ」

世界樹は復活し、少しずつ緑を取り戻しつつあった。

黒曜人も、フレイム王国の民も、その光景を見て、涙した。

「必ずや、この大地を癒し、兄様を復活させる」

フレイヤは、そう誓った。

そして、ラタトスク王国は、新たな時代を迎えた。

 

(完)

 

 

 

「エピローグ 王女パンドラの誕生」

 

かつての皇帝ヘーパイストスは、今や戦艦の中枢に繋がれた存在となっていた。己の肉体は滅び、残ったのは灰と化した骸と意識だけ。それでも彼は生きていた。戦争は終わり、役目を終えたトリニティは静かに宇宙の果てで眠っていた。

「……暇だな」

彼は思った。

動けない戦艦の中枢で、ヘーパイストスはただ思索に耽るしかなかった。帝国の栄光、戦いの記憶、そして人々を救うために犠牲にした多くの命。それらが次々と脳裏をよぎる。だが、今さら悔いても仕方がない。

彼は何かを作ることにした。

かつて鍛冶神と呼ばれた己の腕はもうない。しかし、戦艦の機械アームがある。戦艦の炉の奥に残った己の灰を集め、そこに生命の水を加えて粘土へと変えた。機械のアームでそれを練り、形を整えていく。

こねる。削る。磨く。そして、出来上がったのは美しき少女の粘土人形だった。

「……さて、ここに命を宿す術はないか」

そのとき、戦艦の中に光が差し込んだ。女神フレイヤが現れたのだ。

「兄様、また妙なものを作ったのね」

「暇だったからな」

フレイヤは微笑むと、そっと粘土人形の胸に世界樹の苗木を植えた。

すると、奇跡が起こった。苗木は根を張り、粘土がみるみるうちに柔らかな肌へと変わっていく。

少女はゆっくりと目を開き、最初の言葉を口にした。

「……お父様?」

ヘーパイストスは一瞬、言葉を失ったが、やがて微笑んだ。

「そうだ、お前の名はパンドラ。私とフレイヤの子だ」

こうして、パンドラは生まれた。それは、戦艦トリニティが残した最後の奇跡。

やがて彼女はラタトスク王国の王女となり、人類の未来を導く存在となる。

 




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