それは銃弾よりも鋭く、人々の心に深く突き刺さる。
黒曜帝国の皇帝、ヘーパイストスは激怒していた。
帝国の中心ヴァルカノスが襲撃され、無数の命が奪われた。
彼の怒りと悲しみは、やがて復讐の炎へと変わる。
帝国の民たちよ、立ち上がれ。
敵を討ち、国を守るために。
これは、一人の皇帝が国民に向けて放った演説の記録であり、
新たな戦争の火蓋が切られる瞬間である。
女神フレイヤは怒っていた!大陸の中央に根ざす世界樹はその力を弱めていたからだ。
全ては海の向こう側、エウロパ大陸を支配する黒曜帝国のせいだ。大気を汚し、海や川を埋立て。海に毒を流す。
この世界を汚すだけ汚て、発展を享受するその傲慢に、世界樹の化身フレイヤは怒っていた。
世界樹の力が弱まったことにより、フレイヤの見た目は14歳の見た目まで幼くなってしまった。フレイム王国、ここは人々が自然との調和を重んじ、繁栄してきた国、人々は世界樹の恩恵を受け、老いも病も知らない。魔法によって願いが叶う国、しかし今世界樹の力が弱まり、王国は病み疲れていた。
今こそ立ち上がるときだ。残された自然を守るために。
黒曜帝国の荘厳な謁見の間。巨大な黒鉄の柱が並び、天井には黄金と黒曜石の装飾が輝く。皇帝ヘーパイストスが玉座に腰を下ろし、来訪者を迎えた。
フレイム王国の女王フレイヤが堂々と歩み入る。その後ろには魔術士たちと屈強な騎士たちが控えていた。彼女の幼い姿とは裏腹に、その瞳には怒りと決意が宿っていた。
「兄上、すぐに木を切るのをやめなさい!!海を汚すのをやめなさい!空気を汚すのをやめなさい!!」
フレイヤは高らかに告げる。
「このままでは世界樹の力が弱まり、大地は枯れ、命は消えてしまう。貴方の黒い煙、汚された水、それが我が国を蝕んでいる。もし貴方が聞き入れぬならば、私は最後の手段に出ざる得ない!」
フレイヤは宮殿の窓辺から覗く空を指さした。
黒曜帝国の上空には、幾百ものドラゴンが舞っていた。巨大な翼を広げ、漆黒の翼は空を切り裂きながら、王都の上空を覆い尽くしている。
ヘーパイストスは冷静に答えた。
「フレイヤよ、私は貴女の怒りを理解している。しかし、繁栄には犠牲がつきものだ。」
「この帝国は戦争に勝ち、大勢の民を養っている。飢えさせぬために。火なくして鉄は鍛えられず、工場なくして発展はありえない。お前の理想論では世界は回らぬのだ」
「ならば!」
フレイヤは怒りの声を上げ、ドラゴンに命じた。
「撃て!」
ドラゴンが咆哮を上げ、巨大な火球を吐き出した。真紅の炎が市街地へと降り注ぎ、瞬く間に黒曜帝国の街ヴァルカノスは火の海と化す。人々の悲鳴が響き、兵士たちは逃げ惑う。
ヘーパイストスは立ち上がり、燃え盛る街を呆然と見つめた。
「なんてことだ!!」
その時、フレイヤは静かに言った。
「兄上が悪いのです。私の大地を汚すから。」
ヘーパイストスは驚愕する。
「大地はあなたのものではありません。我ら神々のものです。これは父上ゼウスからの伝言です」
フレイヤは冷たい微笑を浮かべると、転移魔法を発動した。
「では、ごきげんよう。」
そう言い残し、彼女は魔術士と騎士たちを伴い、一瞬で姿を消した。
炎に包まれる黒曜帝国の都。ヘーパイストスは拳を握りしめ、力強く命じた。
「大臣!将軍たちを集めろ!」
そして、燃え続ける街を見つめながら、ヘーパイストスは唇を噛みしめた。
「戦争だ……また始まってしまった……なぜだ!なぜだあああ!!」
これが、黒曜帝国とフレイム王国の戦争「人魔大戦」の始まりであった。
黒曜帝国の首都ヴァルカノス。
帝国の象徴たる宮殿、そのバルコニーに立つ男の姿があった。皇帝ヘーパイストス。その姿は映像となり、帝国全土へと放送されていた。
「昨日!我々のヴァルカノスが襲撃を受けた!!」
ヘーパイストスの怒りに満ちた声が広場に響く。集まった群衆は息を呑み、映像を通じて彼の演説を見守る人々もまた、同じように震え上がった。
「この屈辱を!私は!帝国は忘れぬだろう!」
彼の拳が握りしめられる。その目には炎が宿り、怒りが抑えきれない様子が伝わってくる。
「焼き殺された民を思うと!私は悔しくてたまらない!!」
一瞬の沈黙。空気が張り詰める。
女神フレイヤの映像と帝都空爆の映像が映し出される。「撃て!」の号令とともに、ドラゴンたちが火球を吐き出す映像が。
「よくも!!よくも!!」
叫びにも似た声に、観衆の間からざわめきが広がる。
「この襲撃を企てた連中は!!フレイム王国と名乗った!!烈海の向こう側の!巨大な王国だ!!」
映像を見た人々の間で、どよめきが巻き起こった。人々の中に憤怒が渦巻く。
「どうか!!皆の力を貸してほしい!!帝国の新たな敵を討つ力を!私に貸してくれ!戦う時が来たのだ!!」
熱気が広場を包む。兵士たちが敬礼をし、市民の中には拳を突き上げる者もいた。
ヘーパイストスの声が、広場を埋め尽くす。
「民たちよ!!銃を取れ!!故郷を守るために!!子供たちを!未来を守るために!!」
演説は最高潮に達する。
「目を覚まし、立ち上がる時がきたのだ!!!」
ヘーパイストスは右手を上げ指三本を広げた。帝国万歳のサインである。
「帝国万歳!!!」
その瞬間、群衆は一斉に叫んだ。
「帝国万歳!!!」「皇帝陛下万歳!!!」
熱狂の波が押し寄せる。その日、戦争が始まった。
宮殿には黒い旗が掲げられ、帝国全土に響き渡る戦争の鐘が打ち鳴らされていた。
兵士たちは武器を取り、工場では戦車が組み立てられ、街には志願兵の行列ができる。
皇帝の演説は、人々の心に火を灯した。
そして、戦争は動き出した。この戦争はのちの世で「人魔大戦」と呼ばれ、この世界に深い傷を残すこととなる。
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社畜新兵 Mk.5!