吾輩はカブトムシである。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でもまだ人として生きていたときにトラックが目の前に突っ込んできた事だけは記憶している……
冗談はここまでにしよう。
前世でトラックと正面衝突し、カブトムシに転生した──それが俺だ。
「なんだ、カブトムシかよしょーもなっ」と思った君!ただのカブトムシだと思うなかれ。俺は──
「見つけたぞ!メタルカブトムシだ!捕まえろ!」
見つかってしまった。
「囲め囲め!今日こそコイツを捕まえるぞ!」
床に止まっている俺を中心に、ヘルメットを被ったJKたちの集団「ヘルメット団」が陣形を組み、銃を構える。
「情報通りここにいたな」
「今まで私達フワフワヘルメット団をバカにしやがって」
「今日こそ捕まえてやる」
「分解してパーツの隅々まで有効活用してやるからな」
フワフワとの戦いは……今回で10回目。ついに2桁だ。
こんな感じで、毎日のように襲撃を受けている。目的は様々で、コレクターへの転売や研究材料など。今回のフワフワは研究目的らしい。
普段なら逃げるところだが、10回目ともなれば懲らしめが必要だろう。
目の前のヘルメット団員めがけて全速力で突撃する。人間の反応速度は毎秒200m。対して俺の最高速度は時速950km、つまり秒速約264m。プロのアスリートには及ばないが、目の前の未熟なJKには十分だ。ヘルメットに直撃し、頭上のヘイローが消えて気絶、仰向けに倒れた。
予想外の速さに、ヘルメット団が固まっている。チャンスとばかりに気絶した団員にベルトを装着することにした。
ツノを使って団員の服を壁の突起に引っ掛けて立たせる。亜空間から「ライダーベルト」を取り出し装着。そこに俺が、ベルトの「セットアップレール」を通って装着完了ゥ!
『HENSHIN』
「ゼクターチップ」が俺を認識し、システム音と共にベルトの左右それぞれ3点の物質生成装置「アポーツ」から特殊金属の装甲が生成される。
ヘルメット団が慌てて銃を構えるが、すでに「マスクドライダーカブト」の「マスクドフォーム」への変身は完了していた。
「コンパウンドアイ」で周囲を確認し、手を開閉して動作チェック。生身の人間での初変身は成功だ。
ここで改めて自己紹介だ。俺は、
ほんで、今の状況を説明しよう。今の俺は、カブトに変身したヘルメット団員の体を乗っ取っている状態だ。原作には無い機能だが、俺が認めていない者が変身した場合、体の操作権は俺に移るようシステムを改造したのだ。
簡単に言えば「資格のない者が変身したら体の操作権は俺のもの」ということだ。分かる人には「G4システムに似た感じ〜」と言えば伝わるだろうか。
さて、調子に乗りすぎたフワフワヘルメット団に、このカブトムシのお兄さんが少々お灸を据えてやろう。
だが、どう懲らしめるべきか。今までカイザーたちのオートマタ相手なら実験済みだが、ヘイロー所持者への攻撃は初めてだ。どこまで攻撃していいものか。
とはいえ、俺の全速力突撃でも気絶で済んでいる。相当な耐久力の持ち主らしい。普通の人間なら、新幹線以上の速度での頭部への衝突で、即死どころではないはずだが……。
……ヘイローってずるくない?
「こ、攻撃開始!!」
考え込んでいる間に先手を打たれた。
一斉射撃の轟音が響くが、「マスクドアーマー」には通用しない。むしろ跳弾で向こうが被弾している始末だ。
さらなる変身をして全員気絶させるのも手だが……後方で飛んでいる小型ドローンが気になる。あれは明らかに撮影している。
先ほどの「情報にあった通り」という発言と監視ドローン。
ゲマトリアかぁ。
俺への襲撃者の中でも、最も厄介な存在だ。普段はカイザーと共闘してくるが、今回はヘルメット団を操っているようだ。相変わらず姑息な手段を……。
こうなれば、これ以上の情報は与えられない。あいつらの謎の技術でマスクドライダーシステムのチートを再現されては困る。
万が一、ライダー同士の戦いになれば、こちらのスペックが上でも、実質変身者不在の俺では変身者のポテンシャルを引き出せず不利になる……。
決めた。今後は正式な変身者の確保を最優先し、その次に最強フォームへの変身アイテム作成を目指そう。
とりあえず今は、クナイガンで片付けよう。
銃撃を浴びながら、左半身をヘルメット団に向け、右側のアポーツから「カブトクナイガン」を生成してグリップを握る。
正面を向くと同時に、ドローンに照準を合わせてトリガーを引く。
ドローンの破壊を確認後、クナイガンをヘルメット団に向け直す。
突然の反撃に動揺する彼女たちを、一人ずつヘッドショットで気絶させていく。
「に、逃げろー!!」
数人気絶したところで、ヘルメット団が撤退を始めた。なんだか可哀想になってきたから、ここまでにしておこう。
「っ……、みんなぁ、待ってよぉ……、ぅ……」
おや、一人が腰を抜かしたらしい。仲間に置いていかれ、座り込んでいる。
かわいそうだね。近づいてみよう!
「ひっ……や、やめて。近づかないでっ……」
怯えながらも銃を構えるが、震える手では狙いも定まっていない。
目の前まで近づき、屈んで目線を合わせる。
『もう襲ってこないと約束できるか?』
「……っ!?」
突然の問いかけに驚きの表情を浮かべる。
『もう一度聞く。もう襲ってこないと約束できるか?』
「は、はい!もう、絶対に襲いません!」
『よし。倒れている全員は気絶しているだけだ。仲間を呼んで後始末をしてくれ』
「り、了解です!す、すぐ呼びますね!」
『じゃあ、俺は帰る。約束は絶対に忘れるなよ』
スマートフォンを耳に当てながら、彼女は猛烈な勢いでうなずいていた。
俺がカブトゼクターをベルトから外すと同時に、装甲がパラパラと崩れ、アポーツへと集まり、視点が元に戻る。
変身が解除されたことにより、支えを失って倒れたヘルメット団員からライダーベルトを引っペがして、亜空間にしまう。
一応、壊したドローンを持って帰っておこう……。上手くいけば、あいつらの拠点を特定出来るかもしれない。
バラバラになっているドローンが落ちている地面に亜空間を開くと、ドローンの残骸はそのまま亜空間へと収納された。
そろそろ拠点に帰ろう。忘れ物がないか周りを確認して飛び立つ。
天井をぶち抜き、大気圏まで到達したところで亜空間を通り拠点へと帰った。
カブトムシのお兄さん(?)
CV:水○ヒロ