いつの間にやら死んでいたらしい俺が転生した先は……ガンダム!?

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『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の重大なネタバレが含まれています。
未鑑賞の方はブラウザバックなさるのを強く強く推奨いたします。



















転生したらガンダムだった件

 遠い爆発音に、俺の意識が覚醒した。

 

 待機電力を割いて薄目を開ける。メインカメラの受光部をわずかに立ち上げると、正面6.5キロ先に何本もの橋がかかった太陽光取入窓と巨大な反射ミラー、その両脇に緑の豊富な市街地が湾曲した帯となって伸びているのが見えた。知らないはずの知っている天井に、猛烈な違和感を覚えた。

 密閉型コロニーの内部がこのように見えているからには、俺は今コロニーの床に寝ていることになる。現代日本ではありえない光景に、俺は自らの状況を確かめる。

 

 主機関異常なし。火器管制装置異常なし。外部センサ感度良好。情報通信システム問題なし。セルフチェックオールグリーン、RX-78-2ガンダム、全機能正常。

 

 

 ……ガンダムぅ!?

 

 

 待て待て待て! 俺は2025年の日本に生きていた中年サラリーマンのはずだ。それがなんだってガンダムだと? それはつまりなにか? いつの間にやら俺は死んでしまって最近流行りの異世界転生でもしたのか? それで転生先が宇宙世紀0079のガンダムなのか?

 まあ両親も他界したし嫁も子供もいなかった俺には現世に未練もない……いや、仕事の引き継ぎが気になるのと新作の映画が見られなかったのだけは少し残念だが、ガンダムそのものになっている今となっては、それも些細な事だ。

 

 しかし連邦か……俺どっちかって言うとジオン派だったんだよな。小学生の頃に作ってたガンプラはザクグフドムゲルググだったし。模型誌を立ち読みして、理科の実験で作った電磁石キットから流用したエナメル線を動力パイプに巻き付けてディテールアップしてみたり、ランナーを切り貼りして指を開いた状態の手を作ってみたり……。メンテナンスハッチを開けまくった白いガンダムが表紙の本は宝物だったけれど、あれはどこに仕舞ってあるんだっけか。

 

 とは言え、俺の人格が収まるだけの容量を持っているのは、たぶんガンダムの教育型コンピュータだけなんだろう。ならば、ガンダムとして再びの生を受けたからにはアムロ・レイと組んで白い悪魔としてその名を轟かせてやろうじゃないか。

 

 こんな状況だというのにのんびり思考しているようでいて、その実、目覚めてから今まで0.5秒も経過していない。流石はガンダムの教育型コンピュータ、演算能力も桁違いだ。

 

 先程の爆発音の源にセンサを指向してみる。木立の向こうに見え隠れする緑のモビルスーツの丸い頭部。MS-06F ザクⅡだ。俺が横たわっている状況からしても、今のシチュエーションは初代ガンダムの第一話『ガンダム大地に立つ!!』に間違いない。幸いザクはまだこちらに気づいておらず、トレーラに載せられたガンキャノンやガンタンクの部品を破壊するのに夢中になっている。

 俺の横たわるトレーラはエンジンが不調で動けない。史実どおりだな。サブカメラには運転席に取り付く白いノーマルスーツの人影が写っている。テム・レイ氏か。

 つまり、まもなくアムロ・レイが俺に乗り込みに来るはずだ。うっ、年甲斐もなくワクワクしてきた。気取られない程度にNC-3型核融合ジェネレーターの出力を上げ、起動シーケンスをすっとばして即座に戦闘機動ができる状態にしておく。あ、コクピットハッチのロックも解除しておこう。いや、いっそハッチは開けてしまおう。

 

 手に汗を握るような気持ちで待つこと数分。やがて、トレーラの梯子をよじ登って俺のコクピットを覗き込む人影が現れた。よっしゃ来い天パ。お前と俺とで伝説を作り上げるんだ。

 

「やはり動くか」

 

 そう言いながら人影はシートに収まった。通信用のカメラに写ったその人物は、角のついた白いヘルメットを被り、マスクで顔を隠し、赤い軍服を着用していた。

 

 なんでお前が居るんだよシャア・アズナブル!!!!!!

 違う、史実と違う! 俺の知ってる初代ガンダムはそうじゃない……っ!

 

 どうしてこうなったとうろたえる俺を尻目に、シャアはニュータイプの洞察力をいかんなく発揮して、俺の方から操作を示唆する必要もなく発進準備を完了させた。シートベルトを締め、コクピットハッチを閉鎖すると、シャアはコントロールスティックを操る。

 シューッ! 胸のダクトから大きく排気して、俺は大地を踏みしめ立ち上がる。双眸がキンッと光り、完全に戦闘モードに入った。

 

 そこからはもう一方的な蹂躙だ。シャアの操縦テクニックと(ガンダム)の性能が合わされば最強以外の何物でもない。先ほどのザクと交戦していたガンキャノンを撃破し、ホワイトベースを鹵獲して、帰りがけの駄賃に戦闘演習に出ていたガンダム1号機まで撃墜してしまう。

 正直に言えば俺はかなり興奮していた。今はガンダムだとは言え、もともとはジオン派だったんだ。シャアに強奪されてジオン軍として行動するのならば願ったり叶ったりだ。

 アムロには悪いが……しかし、見方を変えれば一民間人として生涯を終えるほうが彼にとっては幸せかもしれない。

 

 感慨にふける俺の記憶領域に、ふと、前世で見た句が浮かんできた。

 

 『ガンダムは 借りパクされて ナンボやな』

 

 借りパクされたガンダムとして、赤い彗星を勝利に導いてやろう。今までゲームでしか成し得なかったイフストーリーが俺を待っている。人類がニュータイプへと進化した、相互理解が平和をもたらす世界を作り上げるんだ……!

 

 ……余談だが、サイド7宙域を脱出してムサイに収容された際に、ジーンのザクがハンガーで修理されていたのを見て、(あっ察し)となったのは記しておきたい。

 

 こうして、赤く塗装されて『シャア専用ガンダム』となった俺は、エルメスに搭載される予定だったビットを装備して数多の戦場を駆け巡った。俺の後ろにはシャアと同じくニュータイプのシャリア・ブル大尉が常に控えていて、二人で多大な戦果を挙げていった。それがシャアの掲げる理想に近づく道だと信じて。

 

 そして終戦間際に謎の光に包まれて行方不明になったり、数年後にかわいい女の子の搭乗する最新鋭機と組んでモビルスーツ決闘競技《クランバトル》に参加する羽目になったりするんだが、それはまた、別の話。


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