半年以上も間が空いてしまい本当に申し訳ございません…!
B小町SECONDを影ながらサポートをする事に決めた僕は、ルビーと実際のアイドルパフォーマンスと組み合わせるには何の超能力が適しているのかを実際に能力を使用しながら模索していた。だが中々良いアイデアが思いつかず、行き詰っていた所を例の推しの子じゃなくヒーロー協会が存在する方の世界にでも行った方がいいんじゃないかと感じさせる存在な覆面系筋トレYouTuberのぴえヨン。彼からの『シンプルさ、超能力はあくまでアイドルパフォーマンスを際立たせる程度でいいんだ。より魅力的に見えるために使えばいい、可愛さは既に十分足りてるからね。それなら―――彼女らにカッコよさを付与するのはどうかな?』という助言を受け……僕はとある一つのアイデアを閃いた。
それはバイロキネシスを使用し、彼女達が躍っている周りや背景にいくつもの炎を灯すというものである。この範囲ならば演出として十分成立するし、僕にとっての最大の懸念である超能力だと疑われる心配も殆ど無いからな。そして僕の提案を聞いたルビーも『B小町に勝つための独自性、可愛さだけじゃないカッコよさ……私は凄くいいと思うよ!その二つが共存したらきっと凄いライブになると思う!』と笑顔で肯定してくれたのであった。
こうして苺プロに所属している僕の初仕事とも呼べよう、マジシャンとしての役目が定まった翌日。
「「ジャパンアイドルフェスゥ!??」」
「うん、今ガチでお世話になったプロデューサーがコネあって―――興味があるならねじ込んでくれるって!」
「JIFって来月でしょ?無理無理、全然準備出来てないじゃない。私達みたいな新参者がいきなりそれ級のステージに立つなんて「やろやろやろー!!JIFだよJIF!B小町SECONDの初ライブがそんな大きなステージで出来るなんて凄くない!?」
「だけど確実に周りの心象良くないわよ、絶対コネコネ言われる」
JIFか、ここ最近テレパシーで何度か聞いた単語だな……かな、それはどれほどの規模のイベントなんだ?
この世界へ来て早数ヶ月、元より興味が無いのもあるが未だにエンタメ事情に関してはまるで疎いままだ。最も一般科だが芸能学校へ入学したのもあり、生徒達のテレパシーで様々なジャンルの情報が断片的にのみだが入ってはくるけどな?ただそれで理解を示せるわけでもない。そして僕の質問に対し、かなは呆れ混じりの瞳をこちらに向けてきて。
「……前から思ってたけど楠雄ってサラッと私達の話し合いの場に混じってるじゃない、暇なの?後100円タワーの階数が前より更に増えてる事やそのダッサいサングラスとかもういい加減ツッコまないわよ」
個人的に100円マンのサングラスは悪くないと思っているんだが……まあそこら辺は今はいい、僕は正式にではないが一応B小町SECONDのサポーターになったんだぞ。だからこういった場にも参加してほしいとルビーから頼まれてな。
「……ルビー、アンタいつの間にそんな事決めてたの?ていうかそもそも楠雄ってマジシャンでしょう。それをどうやってアイドルと絡めるつもりなのよ」
「ふっふっふ、それはとっておきのアイデアがあるから楽しみにしてていいよ!きっと先輩もビックリしちゃうだろうね~?」
そういう訳なんだ、これからよろしくな。
「ただでさえ無謀なライブなのに……そんなサングラスかけてる奴が私達のサポーターとかもう不安でしょうがないわ……」
頭を抱えるかなを見て、MEMちょは力強い決意を感じさせる表情を浮かべながら彼女に活を入れるように。
「でも実際、やらない手は無いと思うよ。普通のグループが何年も必死に活動して立てる舞台なんだからね、ここでやらなきゃ何の為に活動するのって話になるよ!」(私はくーたんがサポーターになる決定には何の異論も無いんだよねぇ、アクたんの話す限りだと誰も見た事がないようなとんでもマジックがやれるみたいだし絶対力になってくれるはずじゃん?それに何より……私のチャンネルに出演してもらえるよう説得出来る機会も増えるわけだしさ!バズだよバズ!)
「そうそう!MEMちょの言う通りだよ!」
「……はぁ、やるって言うならやるわよ」
「やったー!」
「イェーイ!」(登録者100万人への道のり……見えて来ちゃったねぇ?頼むよくーたん♡)
一人邪念が混じっているようだがいいのか?かなとルビーに気づかれないようこちらにウィンクしてくるMEMちょ、だから僕をくーたん呼びするのは母さんの『くーちゃん』を思い出すからやめてくれと言っただろう……僕が心の声を聞いて内心呆れている事など当然知らないMEMちょはこの空気の流れに乗るように。
「じゃあアレだね、そろそろ決めないとだね―――B小町SECONDのセンターを誰にするか」
「それってそんなに大事?誰でも良くないかしら」
そう言ったかなを「違う!」と熱量を持って真っ向から否定するアイドルオタクのルビーとMEMちょ。
「センターっていうのはアイドルの花形!」
「歌って踊れて可愛い子が立つ、それはまさにマ……星野アイのような全人類の中で最も光り輝く神により選ばれしこの世を救う存在しかなれないポジション!あっそういえば最近のアイの新作主演映画先輩とMEMちょは見た?アイの演技がまたアカデミー級に良くってねさえへへへ……」
「ど、どしたん急に……?何か勢い怖いよ……?」
頬を赤らながら恍惚とした表情でアイについて早口で語り始めたルビー、そんな彼女に対して困惑一色のMEMちょ……ん?心の声は描写しないのかだと?口から出てる部分でこの有様なんだぞ。彼女の内心は一体どんなカオスになっているか想像出来るだろ勘弁してくれ。
「話が脱線してるわよ……で?やりたい人はいるの?」
「べ、別にやりたいわけじゃないけど、みんながどうしてもって言うなら……」
「やっぱりここは年の功なのかな?やりたくないけど?私の人生経験がグループを一つに……!」
「どっちもめちゃくちゃやりたそうな顔してるわよ」
そこからもお互いに譲れないと言わんばかりに主張を続ける2人……やれやれ、センターがアイドルにとって特別なのは分からなくもないがこのままでは埒が明かないな。歌が上手くてメディア慣れしてる経験豊富、ルビーとMEMちょの意見を合わせるとこうなるがそんな人物は……
……いや、いるじゃないか。
「全くこれだからドルオタは……ねぇ、楠雄はどっちが適してると思うかしら?」
疲れを感じさせる声色で僕に聞いてくるかな、そんな彼女の問いに対し僕は。
そうだな―――僕はかなが良いと思うぞ。
「……は?」
予想外の返答らしく、かなはポカンと口を開けてフリーズしてしまった。MEMちょとルビーの2人も驚いた様子だったが、すぐに納得したような表情へと変わっていき……そう、子役時代のかなの代表作。
「―――なるほどぉ、ピーマン体操だね!」
「オリコン1位のやつ!」
「人の黒歴史掘り返すな!てか色々疎すぎる楠雄が知ってた事も驚きよ!一体どこで仕入れたわけ!?」
前に寿さんから教えてもらったんだが……目の前でノリノリで歌を歌ってくれた事に関しては本人の為にも伏せておくとしよう。
「ちょっと歌ってみてよ~」
「ぜっっったい嫌!自分が歌下手な事ぐらい分かってるし!」
「やっぱセンターの資格って歌じゃない?」
「確かに、センターの子がマイク握ってないのは映えないもんね」
「浅ましい……」
MEMちょは勢いよくビシッとルビーを指を指し、「カラオケの点数で高い方がセンターでどう!」と提案するとルビーはそれをやる気満々と言わんばかりに受け入れ……そして当然かなも誘ったのだが、彼女はパスと言って断ってしまった。
「バカね、センターはグループの顔なんでしょ。私をセンターなんかにしたらこのグループ人気出なくなるわよ」
「そんな事……」
「エビデンスが十分すぎるくらいあるのよ」
かなは今ここではない過去を見つめるように遠い目をしながら、苦い顔で語り始めた。
「一発屋の子役時代が終わった後もこの業界でしぶとく生き残ってた私がただ演技だけやってたと思う?色んな分野に手を出してみたものの人気は出ず、子役時代の名声で仕事をくれた赤字を出させまくったくせにちゃっかりギャラだけは貰ってご飯食べてきた私よ……つまる所有馬かなに客は付いてないわけよ。こんな口悪くて拗ねてる女に金出したくないってのはめちゃくちゃ同意!アッそういえば今日あまのドラマも赤字だったんだっけ!」
そして床に座って丸くうずくまり。
「MEMちょは登録者数めちゃくちゃ多いし、アンタも顔だけはすこぶる良いし……それに人から好かれるのはアンタ達みたいな素直で可愛い子なのよ。私みたいな面倒で捻くれた女じゃなくてね、カラオケでも何でも2人でセンター決めて」
ルビーは不思議そうに僕の方を見て。
(ねぇ斉木さん、最近の先輩妙に卑屈だよね。私はよく知らないんだけど……斉木さんは何か先輩が落ち込むような出来事とか心当たりあるかな?)
「…………」(アイツだって私をアイドルにさせたくせに、今ガチが終わってからというものあかねからの誘いを受けて2人で遊びに行っちゃったりして……ムカつく……)
……理由は知っているが、流石にこれをルビーに伝えるわけにはいかないな。
ルビー、とりあえずかなを励ましてやってくれないか。大切なメンバーだろう?
(……そうだね!)
「大丈夫だって、中々人を褒めない兄ですら先輩の事可愛いって言ってたじゃん。面倒でも捻くれても無いって」
「でも……それ、今ガチでMEMちょにも言ってたし」
ルビーは再度、今度は気だるそうに僕を見てきた。
(斉木さん……この人やっぱり面倒で捻くれた女だよ)
……諦めないでくれ。
こうして、説得を試みるも中々上手くいかず最終的にMEMちょとルビーは2人でカラオケへ行った。
「……楠雄は行かないわけ、アンタこのグループのサポート役なんだからちゃんと2人の歌を聞いてあげなさい」
未だ床で体育座りのままのかながジト目でこちらを見てくる……そこは分かっているが、行く前に一つ伝えたい事があるんだ。
「……伝えたい事?何よ?」
僕は1枚の紙を手に持ってかなの元へ歩み寄る、何をするつもりなのかと不審げな表情だが僕が紙を手渡し彼女はそれを渋々受け取り……すると一転かなの顔が驚きに染まった。まあ無理はない、何故ならそこには。
「これ―――私がピーマン体操踊ってるときのじゃない!?いやこれアンタが描いたの!?にしてはまるで実写みたいだけど!」
―――念写、僕が強く念じたものを紙に写す超能力だ。そのクオリティは実際に撮った写真と差異が無いものである、かなは衝撃から声を荒げていたが少しして冷静になったのか大きくため息をつき。
「はぁ……どうせ楠雄の事だからマジックって言うんでしょ、最もタネも仕掛けも皆目見当つかないわ」
理解が早くて助かる。
「で?どうしてこんなものを見せてきたのよ、理由によっては怒るわよ」
そう言う割には既に額に青筋を立てているけどな……いや決して嫌がらせなんかじゃないぞ、かなは散々これを黒歴史扱いしているが僕はそうは思わない。
「全く……こんなの黒歴史意外に言い表せる表現がないわ」
かなは自嘲するように笑う……補足しておくと念写は僕が見てない物は写し出せない、行う為には一度対象をこの目で視認する必要がある。知るきっかけは寿さんだったが……まあこれでも一応B小町SECONDのサポートをすると約束したんだ。だからメンバーの情報ぐらい少しは知っておこうと思ってな?
そして動画サイトでかなのピーマン体操の動画を見た僕が最初に抱いた印象は。
かな、楽しそうだったぞ。
「…………撮影だからニコニコ笑顔振りまいてただけ」
そうか?僕は芸能界について殆ど知識などないが、撮影とか関係無しに……ただ純粋に仕事を楽しんでるように映ったな。だからまあ僕が言いたい事は……苦労は沢山してきただろうが、何も輝いてた良い記憶まで貶す必要はないんじゃないかというだけだ。
僕の言葉に対し、かなはしばらく黙り込んだ後……やがて堪え切れないと言わんばかりに吹き出し、そして大声で笑い始めた。おいそれは酷くないか??
「あー笑った笑った、ごめんごめん。あのいつも無表情な楠雄も人を励ます事とか出来たんだなって思うと何だか面白くなっちゃったのよ……フフッ」
……僕はもう行くからな。
慣れない事はするものじゃないな……軽い後悔を抱きつつ、ドアを開けようとしたそのとき。
「……ありがとね、ちょっとだけ元気出たわ」
そう、呟きにも近い小声で聞こえ……やれやれ。
こうして少々遅れながらも僕はカラオケ屋へ行き、そしてMEMちょとルビーのいる個室へ入ると。
「―――大変だよ斉木さん!今超衝撃的な事実が判明したの!」
「そうそう!くーたんも絶対ビックリすると思う!」
彼女達が勢いよくこちらに詰め寄ってきた、後何度も言うようだがくーたん呼びはやめてくれ。
それと2人が騒いでる理由ならここに入る前からテレパシーで既に知ってるぞ、それは実はかなが。
―――歌が上手いという事だろ。
次回は1週間以内の更新予定となります!