ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜   作:黒木箱 末宝

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御守り強化術

 帰宅後、シャワーを浴びて休憩した俺は、自分の立てた仮説を証明するため、お守り袋を使って実験を始めた。

 

「これをこうして……っと……」

 

 お守り袋を靴紐の裏に仕込み、お守り袋の紐を靴紐と同じようにしてブーツに通して結ぶ。

 

 そして、紐の裏に仕込んだお守り袋を()()()()()()()()()()()()()()と思い込み、【ラージポケット】を発動……すると。

 

「──よしっ、成功だ……」

 

 結果を【識別】で見てみれば、タクティカルブーツは【ラージポケット】の効果によって耐久力が上げていたのだ。

 

 実験は成功だ。これが偶然でないことを証明するため、もう片方のブーツにも同じようにしてお守り袋を仕込む。すると、結果は成功。

 

 これにより、収納空間の無い物も【ラージポケット】を悪用──もとい、利用する事で防御力を上げられる様になった。

 

 その後も俺は、自身の装備品に同じようにしてお守り袋を仕込み、【ラージポケット】を利用した耐久力の強化を行った。

 

 エルボーパッドとニーパッドには、内側面のプラパーツに結び付ける。保護ゴーグルは何処につけようか迷ったが、後頭部のゴムパッド部分が一番干渉が少ないので、そこに結び付ける。

 

 グローブには結び付けられる場所が無い。なので、大器は親指の付け根後ろに縫い付ける事にした。

 

「姉ちゃん、裁縫道具貸して」

 

 小学校の頃に買わされた裁縫道具が行方不明な俺は、それを持っている姉に道具を借りようとした。

 

「良いよ……ねえ、それやったげようか」

 

 店の問題で待機指示がされ暇だった姉が手を向けてくる。

 

「良いのか? じゃあ、ついでにこれもお願いして良い?」

「良いけど……時間かかるよ?」

「それさ、私にもやらしてくんない?」

 

 それに甘え、ついでに他の針仕事を頼む。すると、それを聞いていた母が声を掛けてきた。

 

「おう、ありがとう。頼むわ」

「はーい」

 

 俺はヘルメットやフェイスガードの隙間、その内側に御守りを結び付けた。そして姉によってタクティカルグローブに、母によって目出し帽(バラクラバ)の内側の天辺に御守りが縫い付けられた。

 

 

 

「終わったよー」

「あー……俺も終わったー」

 

 全ての作業が終わり、姉からタクティカルグローブを受け取った俺は、疲れから大の字になって寝転んだ。縫い物なんて小学校以来だったからな。

 

 装備に隠すように結ばれたお守り袋は些か不恰好であるものの、しかしそれが自身を守る物としての信頼性が上がったことを意味していた。

 

「んじゃ、実験開始」

 

 起き上がった俺は早速とばかりに鋏を手に取り、御守りが付けられた防具の耐久実験を始めた。軽く切るつもりで、ブーツやグローブ、フェイスマスクなどをハサミ、傷の有無を確認。結果、傷は無し。糸一本切ることができなかった。

 

 続いてヘルメットやフェイスガード、保護ゴーグルを刃先で突付いて傷付くかの実験。此方も傷は無し。何なら痕跡一つ付かなかった。

 

 そうして俺は、自身の想定通りにお守り袋が活躍したことを家族に伝える。

 

「やー、これで安全にダンジョンに潜れるぜ」

「……そうね」

「良かったね……」

 

 しかし、母や姉はそれを喜んだものの、表情は些か暗い。それも仕方無いだろう。振って湧いた食料危機に、不安がこびりついて離れないのだろう。

 それをどうにかするべく、俺は希望的観測な思考の元、ダンジョンへと狩りに向かう事を決めた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 翌日。日課となったSNSサーフィンでダンジョンの情報を収集していると、ある投稿が目に止まった。それは、スタンピードの原因が、ダンジョンを塞いだことによるダンジョンの怒りだと言うものだった。

 

 その投稿に添付された画像や映像を見てみれば、普通に撮影されたゴブリンと、スタンピードの時に出てきたゴブリンの表情に明確な違いが見てとれる。通常のゴブリンが此方を見下すような顔をしているが、スタンピードのゴブリンはシワまみれの怒り顔をしていたのだ。

 

「ダンジョンの怒りね~……」

 

 普通なら一笑に付すものだが、俺はその投稿内容を笑って捨てられるものではないと感じた。

 ダンジョンの主であるヘァッチャ・ダの言葉と、ダンジョンアナウンスが言った『下層次元世界侵略用防衛遊戯施設』というダンジョンの施設名。

 それらの事をまとめれば、ダンジョンを封鎖することやダンジョンを害すること、そしてダンジョンに挑まないといった消極的な態度はヘァッチャ・ダを怒らせ、スタンピードを引き起こすことになるかもしれない。

 

 その投稿にイイねを送り、次の投稿を眺める。

 しかし、流れてくる投稿はダンジョンの考察や妄想。探索に使えるキャンプ道具やらの個人的な宣伝。今後を憂う根拠の無い悲観的な投稿ばかりだった。

 

 使える投稿がないとSNSサーフィンに区切りを付けた俺は、母に御馳走様を伝えて食器を片付ける。

 

「お粗末様」

 

 調子の良さそうに体を動かして皿を洗い始める母を見て、俺は“今日も頑張って潜るか”とダンジョンへ向かおうとした。その時だった。世界の情報を得るために付けっぱなしだったテレビから、速報を伝える音が響いたのだ。

 

「なんて?」

「何か、ダンジョンの記者会見やるんだって」

「記者会見?」

 

 テレビの前にいる姉に聞けば、緊急速報の内容が簡素に伝えらる。あわててテレビを見に行けば、速報の内容は、総理がダンジョンについての緊急会見を行うというもの。その開始時間が伝えられると、番組は元の画面へと戻った。

 

『……え~先程の速報にもあった通り、この後午前──時から、○○総理によるダンジョンに対する緊急記者会見が行われるという事です。……えー、それで高橋さん──』

 

「記者会見ねぇ……」

「大器はダンジョン行くの?」

「いや、会見で“ダンジョンに入っちゃダメ”とか言われてたらヤバイし、見てからにするわ」

「それもそうね」

 

 そう母に伝えると、俺は会見後すぐダンジョンに向かえるよう用意だけを始めた。

 

 

 

 そして、緊急記者会見開始の時間。ニュースの画面が切り替わり、青い作業着を着た総理が会見を始めるた。

 

 挨拶に始まった会見。本題を早く言えと思いつつも全て見終えた。問題が無いよう、小難しく長い諸々の話を省き簡素に内容をまとめると、それをメモに書き起こしていく。

 

 一:ダンジョンは塞いではいけない。

 二:ダンジョンに入ることに対する自粛を要請。

 三:ダンジョンへ侵入して負った被害は自己責任。

 

 大まかにまとまった三つの内容。しかし、その内容に違和感を持った俺は、思ったことをそのまま呟く。

 

「何で禁止じゃないんだ?」

「何でだろうね」

「あれか“政府はどう責任をとるんだー!”とか言うやつに対する牽制か」

「あー……」

 

 そこで俺は、SNSで先の記者会見について調べるてみた。すると、みんな同じような違和感を持った様子で、各々好き勝手にものを言っている。

 目についた投稿でも、私有地のダンジョンに入ることはダメとか、私有地じゃないダンジョンは何にも規制が張られていない、と受け取れる投稿が多い。

 中には、自粛の要請を“ダンジョンに入るの止めてね! 止めてって言ったからね! 自己責任だからね!”と会見の内容を認識して語る者もいる。

 

「……禁止じゃないなら、行ってみるか」

「おー、気を付けてね」

「行ってらっしゃーい」

「行ってきまーす」

 

 家族と挨拶を交わし、俺はダンジョンへと向かった。

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