ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜 作:黒木箱 末宝
「よし、完成だ!」
全ての防具を完成させた俺は、調整を終えたそれらを眺めながら、疲労と達成感による心地好い余韻に浸っている。
それは獣系モンスターの毛皮と骨をふんだんに使った防具だ。今までの装備に重ねて着れば、それはとても暖かく着なれた様に馴染む。
全てを装備して立てば、何処からか沸いてきた無敵感に溺れそうになる程だった。
「次は武器だな」
スマホで時間を確認すれば、時刻はまだ昼を過ぎたばかり。
「……その前に、飯にするか」
大器は素材と道具を仕舞うと、変わりにキャンプ用具を取り出した。ダンジョンの探索を想定したのか、ホームセンターでセット売りされていたものだ。
些か古いそれらを見るに、過去の流行りで入荷して在庫に抱えていた物だろう。
「ま、使えりゃ良いや」
ダンジョンで拾って来た木の枝を組み、スライムオイルを垂らす。そしてマッチを擦って付けると、距離を取り、薪目掛けてマッチを放り投げる。
組み上げられた薪にマッチが当たったその瞬間、スライムオイルに引火し、青い炎が巻き上がる。
「ヒュー! 危ねえー……何か違う気がするが、まあ良いか」
落ち着いてきた火に近付き、スキレットを乗せる。
そして表面にスライムオイルを塗ると、ポリバッグを取り出し、刻んでおいた
ジュワッ! と油が音を立て、暫くして人参の甘い香りが漂ってきた。
「美味いんだよな~これが」
胸一杯に香りを吸い込み楽しんだ後、火の通りを確認。火が程良く入っている事を確認すると、紙皿にダンジョン人参を避け、バトルコッコのもも肉を取り出す。
「へへへ……」
思わず笑みがこぼれる。当然、狩ったバトルコッコ持ち帰り、その日の夕食としてチキンステーキを食べた。すると、キックラビットと違ってコッテリした肉に食欲を途方も無く刺激され、家族全員で合計七枚ものもも肉を平らげてしまったのだ。
約束された美味にニヤけながら、熱々のスキレットに皮からもも肉を投入。ジュゥ~! と肉の焼ける音と匂いが五階層に広がり始めた。
皮目を焼き、肉側にも火が通ったら、一度もも肉を取り、再びダンジョン人参を焼き始める。
「たしか、ここで乗せるんだったか……」
スキレットに敷き詰められたダンジョン人参の上にもも肉を乗せる。これをやる事で、鶏肉の油と旨味を人参が吸って美味しくなるらしい。Y◯uTubeで見た調理法を真似しているのだ。
「ふむ……もう良いかな」
持って来たバーベキュー用の串で肉を刺し、火の通りを確認。透明な肉汁が出てきたので大丈夫だろう。
スキレットを火から下ろすと、俺は首から上の装備を外し、食事の準備をする。
「よし、いただきます」
バーベキュー用の串をもう一本取り出し、肉に突き刺して持ち上げる。
(凄い、串を刺した所から肉汁が溢れてくる。ダンジョンの光を反射して、まるで黄金の滝みたいだ)
零れ落ちそうな肉汁を、勿体無く思い自然に舐め取った。
(う、美味いッ! ただ肉汁一滴舐め取っただけなのに、全身の意識が一瞬でこの肉に集中し始めやがった!)
香ばしいキツネ色に染まった皮に、そのまま齧り付く。
「──ッ美味すぎるッ!」
噛んだ瞬間、パリパリの皮が弾け、最高の食感で歯を楽しませてくれる。溢れ出た肉汁が口を流れ、鶏肉の旨味で舌を包み込まれた。噛めば噛むほど、肉の繊維が心地良く解れ、その度に肉の旨味が溢れ出る。
そのまま二口目に行きたい所だが、このペースで食べていたら直ぐ肉が無くなってしまう。
一旦肉を串から外し、箸のように持って人参を摘む。
「おお、美味い!」
動画で言っていた通り、ダンジョン人参がバトルコッコの油を吸って更に美味しくなっている。
そうして俺は、取りすぎた肉を一人楽しむのであった。
食事を済ませ余韻に浸るが、何とか頑張って意識を戻し、武器の作成に着手する。
先ずは採って来た木材をステータスのゴリ押しで二枚の板材に加工し、設計図通りにこれまたステータスのゴリ押しで削って行く。
ある程度形が出来たら、刃を取り付けるための溝を掘る。ノミで削り、コーザティブウルフの牙を合わせ、彫刻刀で微調整する。それを両側に施すと、溝と牙の接地面をヤスリで雑に傷を付ける。
両面と溝に樹液を接着剤として塗り、並べた牙を嵌め込む。そして牙を挟む様にして板材を閉じ、樹液がはみ出るのも構わず紐で縛り付けて圧着する。
後は乾くのを待つだ。その間に剣の鞘作りを始める。とは言うものの、やることは単純。板材に剣が収まる大きさの窪みを掘り出し、そこに毛皮を張るだけだ。
側面には木材同士がぶつかり合う音を減らすため、キックラビットの毛皮を貼る。
滑らかな毛皮は、抜刀や納刀の際の摩擦を減らし、探索の助けになるだろう。
刃の部分には、コーザティブウルフの毛皮を細長く切って張り付ける。
少し勿体無く思うが、他の材料では牙で傷付きダメになるため、仕方なくだ。
これも剣同様、樹液が乾くのを待つ。
最後に盾を作る。今回俺が作る盾は、ヒーターシールドと呼ばれる盾だ。
ヒーターと言っても暖房器具のそれではなく、逆三角形を伸ばしたような形状のメジャーな盾だ。
先ずは木材を厚さ三センチ程に切り出し、形を整える。
「……うーん、何か足んねぇよなぁ……」
望み通りに出来たそれを見て、足りない何かを考える。切り出した木材を手に当てて実際にやるであろう動きを想定していると、自身のある種の癖を見付けた。
それは、盾を受けて守るために使うのではなく、防いで逸らすために使おうと身体が自然に動いていて、挙げ句盾の先端で攻撃しようとしていたのだ。
そうと解れば後は早い。自身の想定通りに使える盾を作るべく、バックパックを漁り始めた。
こんなこともあろうかと、今までのドロップアイテムを肉等の食糧を除いて全て持ってきていたのだ。
その中から取り出したのは、コーザティブウルフの頭蓋骨と肋骨、巨大な犬歯だった。
「おお、完璧だ!」
全ての武器と防具を作り終えた俺は、それらを装備して自撮りモードで確認すると、その出来に思わず歓声を上げた。
全身を灰色の毛皮で覆われた姿は、まさしく夢にまで見た異世界の冒険者のようだった。
毛皮の貫頭衣に始まり、四方を守る腰当て。
タクティカルグローブとエルボーパッドを毛皮で繋げた籠手に、同じくニーパッドを主軸として作った脛当て。
そして何より目立つのは──
「イカすぜ、このスカルヘルム!」
ヘルメットにコーザティブウルフの頭骨を組み付けたスカルヘルム。
「そしてこれ!」
左肩にコーザティブウルフの頭蓋骨を肩当てにし、バックパックごと覆い隠せる程に広く長い
右側が大きく空いたそれは、武器を振るう邪魔はせず、左側の防御を高めてくれるだろう。
「盾も我ながら良く出来てる……」
本来はヒーターシールドだった物が、表面に縛り付けられたコーザティブウルフの頭蓋骨を全面に出した異形の盾となった。
先端を腕と平行にして持つため、空いた部分にコーザティブウルフの肋骨を取り付け、その上に毛皮を張ったためか、形状が縦に伸びた不当変三角形になっている。
そして先端には、大きな牙が二本並んで付けられており、上手く使えば敵に突き刺したり切り裂いたりすることができるだろう。
「そしてこれだ……──
俺は木の鞘からゆっくりと剣を抜き出すと、それを掲げて叫んだ。
マカナ──それは黒曜石の刃を持つ太古の木刀だ。
本来とは違う獣の牙と、自己流の作り方で出来た武器だが、その見た目はまさしくマカナであった。
それを数回振るって使い心地を確かめて、満足したので鞘に戻す。
そんな抜刀から攻擊、納刀までの一連の流れを数回練習した俺は、作り上げた武具の性能を試すため八階層へと向かった。