ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜 作:黒木箱 末宝
ヘァッチャ・ダの宣言以降、各地でダンジョン発見の通報が相次いだ。
当然、ダンジョンは日本だけではなく、世界各国にも出現している。
これは、ワシントン州シアトルにある観光地の一つ、スペースニードルの麓に発生したダンジョンによって巻き起こる、一つの終わりのお話。
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「まったく、どいつもこいつも無茶を押し付ける!」
ワシントン州最大の都市であるシアトルの市長は、引っ切り無しにかかってくる電話と、再現なく送られてくるメールの対応を追われていた。
観光客で賑わうスペースニードルの麓に、突如としてダンジョンなどという不穏なものが出現したからだ。
そのためシアトル市長は、合衆国や州知事に他の市長や現地住民、市の役員や市民にシアトルに出資している企業やらから【ダンジョン排除要請】が大量に送られて来たのだ。
「言われなくてもそのつもりだ……」
こうしてシアトル市長は、州兵を治安維持や災害対応としての活動要請。オペレーション・ダンジョンブレイクを決行するのであった。
オペレーション・ダンジョンブレイクの決行日。各方面に作戦の詳細を発表したためなのか、観光地で物々しい動きがあったためか。ダンジョンを破壊する話は広がりに広がり、各国が作戦の生中継を受信し、野次馬が現地にて見守っていた。
「……時間です」
「良し、オペレーション・ダンジョンブレイク発動! 突入開始!」
そうして各国の人々が見守る中、作戦が開始された。物々しい装備の州兵達が、爆弾らしき荷物を手にダンジョンへと入っていく。
「ブルースライムを発見!」
「捕獲を決行する!」
道中、現れるスライムを研究のために分厚いガラスケースに入れて回収しながら、州兵は進む。
そうして何度かスライムを捕獲し、宝箱を回収した州兵は、一階層を制圧した。
「クリア!」
「良し、爆弾の設置を開始せよ! 」
一階を制圧後、州兵は各地より集めた爆弾の設置を開始した。古いミサイルに、使用期限間近だったり期限の切れた弾薬だったり。在庫処分も兼ねた爆発物をありったけ設置し、念の為ダンジョンの入り口付近と、二階層へと続く入口にも爆弾を設置する。
爆弾の設置が完了したので、起爆コードを巻き下ろしながら出口へと向かう州兵。
ダンジョンより脱出。入口を警戒していた州兵達に退避の合図が送られる。
ダンジョンから遠く離れた場所、そのバリケードの裏に退避した州兵達の退避完了を司令部へ知らせる。
「撤退完了。何時でも行けます」
「……よし、最終確認を終え次第に起爆開始」
「了解。各員、周辺の安全確認を──オールクリアです」
「……では──これより、ダンジョンを爆発します!! 安全な場所まで退避して下さい!! 繰り返します──」
司令は全体の安全確認や、ダンジョンやその周囲に異常が無いかの確認をさせ、それが終わると周囲に伝わるよう、声を張り上げて起爆開始を伝える。
そうしてダンジョン周辺より退避が完了すると、分かりやすくカウントダウンを開始する。
「起爆まで──5・4・3・2・1……起爆!!」
「起爆!」
カウントダウンの後の合図に従い、起爆スイッチを押す。
「……起爆装置は?」
「……問題無く起動しています。ダンジョンの影響でしょうか」
数秒の間の後、音も振動もチリ一つとして届かない事を不審に思う州兵達。
「ダンジョンの入口に反応!」
「ッ!!」
「なんだッ!?」
すると、観測兵がダンジョンの入口に激しい波紋が走っていることを伝えた。
それと同時に、先程の爆発では届かなかった地響きに似た震度と、獣の様な唸り声が聞こえきた。
州兵が銃を構えて警戒する。次の瞬間、ダンジョンの入口の波紋を突き破るように、無数のモンスターが飛び出してきた。
「──スタンピードだ!! 総員戦闘開始!! 市民を守れ!!」
命令が発せられた瞬間、備えていた州兵達は銃撃を持ってモンスター達を撃ち殺していく。だが、その数は一向に減ることは無かった。
一匹のゴブリン撃ち殺しても、その後から三匹のゴブリンが屍を踏み越えて突撃して来るのだ。
ゴブリンが出現仕切ったのか、新たなモンスターが現れた。それはアイソレイトウルフにコーザティブウルフ、ワイルドボアだった。
「何だあれは、狼!?」
「クソッ速い!? ガアアッ!?」
アイソレイトウルフは興奮しているのか、死の恐怖なんて欠片も感じていないかのように、次々と同族を撃ち倒し我が身を削る弾丸をものともせず突撃し、放たれる弾丸をものともせず突き進み、遂に州兵へと食らいついたのだ。
「ギャアアアアッ!!?」
「アレックス!? グアアッ!?」
乱れた隊列を更に切り裂く様に、コーザティブウルフが州兵に飛び掛かる。
そうして前線の州兵が抑えられいるうちに、後方へとワイルドボアが突撃する。
「クソッ! 猪のモンスターはヤバい! 弾が全部弾かれてる!」
「来るな来るな来るなッ!! ウワアアアアアア!!」
牙で、毛皮で、分厚い頭蓋骨で弾丸を弾きながら突撃するワイルドボアは、州兵を撥ね飛ばしバリケードを突き抜ける。そして目についた車に牙を差し込むと、思い切り持ち上げてひっくり返してしまった。
暴れるモンスター、逃げ惑う人々。
その光景を見て、司令部は即座に応援を要請しよと無線に手を伸ばした──その瞬間だった。
「ゴアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ダンジョンから、身を裂く様な咆哮が轟いたのだ。
逃げ惑う人々や州兵、モンスターすら硬直する様な、死を感じさせる咆哮。
そんな仮初の静寂を砕くように、スクリーンで見聞きした化物の足音が轟く。
誰もがダンジョンを注目する。そして、絶望が現れた。
それは──レッドドラゴンだった。
エメラルドを思わせる深緑の瞳。
マグマを想起させる真っ赤な鱗。
太陽光をそのまま形にした様な翼を大きく広げ、レッドドラゴンは眼下の全てを睥睨する。
「ギギャーーー!!」
「キャンキャン!」
「ブギャアーーー!?」
レッドドラゴンが現れた先で巻き起こるを事を本能で感じ取ったのだろう。真っ先にモンスター達が散り散りに逃げ出した。
そして、未だに恐怖から一歩も動けない人間に向かって、レッドドラゴンは灼熱のブレスを放った。
「逃げ──アアアアアアアッ!!?」
「ギャアアアアアアアア!!?」
「イヤアアアアアアアア!!」
レッドドラゴンのブレスは、人が逃げようと一歩を踏み出したその瞬間に全てを飲み込んだ。
各地で悲鳴が上がるが、人々は炎に喉と肺を焼かれ、辺りには物が燃える音だけが残った。
レッドドラゴンは翼を開き、飛翔した。
そしてランドマークであるスペースニードルの天辺に登ると、レッドドラゴンが己の使命に従い、シアトルの全てを灰と瓦礫に変えていった。
後に【第二次スタンピード】と名打たれたこの騒動は、国軍の全力出動の末、多大なる犠牲を持ってレッドドラゴンを討ち倒した事で終わりを迎えた。
しかし、そのかわりにシアトルは壊滅し、軍も致命的なダメージを受けた。
国連はこの自体を受けて【ダンジョンに対する意図的な破壊行為】を全面的に禁止する法案を可決するのであった。