ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜   作:黒木箱 末宝

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楽しいダンジョン自己研鑽

 転移陣を使い五階層まで戻って来た俺は、休憩をしつつ、ゴブリンの集落で見た巨大なゴブリン──ホブゴブリンに勝つための方法を考えていた。

 

「あれに勝つって言ってもね~……」

 

 水を飲みながら色々考えるが、結局の所、解決策は絞られてる。

 

(レベルを上げて、装備を強化して、手段を押し付けてぶち殺す。……うん、まあ……いつも通りだな)

 

 それを「ゲームの世界と大体同じだ」と呟いて、続いてホブゴブリンに辿り着くまでの事を考える。

 

(先ず集落までの道中のゴブリン。放置しても後ろからこられたら厄介だ。つっても(とは言え)一々相手にしてらんないしなー……)

 

 そこで俺は、過去に見たりプレイした作品で、似たような状況を突破した話を思い出した。その中で今の俺にできるようなものを探す。

 目的はホブゴブリンまで万全かつ見付からないように進むこと。それならば作戦は自ずと絞られる。

 

(道中のゴブリンも集落のゴブリンも、バレずに殺ればいい……か?)

 

 自分にとって一番馴染みのある潜入作戦(スニーキングミッション)だ。()()()のようにはいかないが、自分の作戦は失敗の許される緩いもの。気楽に行こうと俺は考えた。

 

うっし(よし)、あとは……」

 

 休憩を終え立ち上がる。そこでふと、肌に張り付く不快感を覚えた。

 見ると、自身の血と汗が装備と交じって乾き、装備と体の一部が張り付いていたのだ。

 不快感を解消しようと装備を引っ張ると、パリパリと音を立てて装備が肌から剥がれて行く。それと同時に、装備に空いた穴が目に入った。

 

「あー……装備が壊れちまった……これは何か言われるよな……言い訳どうしよう」

 

 度重なる問題の出現に、俺はため息を吐きながら着替え、ダンジョンから帰投するのであった。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様でーす」

「はい、お疲れ──えっ!? どうしたんですかその傷、大丈夫なんですか?!」

 

 ダンジョンの外に出た俺は、帰投を記録するため葵に声をかけた。すると案の定、ボロボロで血塗れな服を来て帰って来た俺を見て、葵は声を上げて驚いた。

 

「えー……まぁ、大丈夫ですよ。治したので」

「え、治した──……ああ、いえ……御無事で何よりです……」

 

 葵が声を上げてしまった所為で注目を集めてしまう。俺は自身が注目される事にため息を吐くが、それはそれとして置いておき、帰還したことをクリップボードに書く。

 

「あの、山城さんがそこまでの傷を負う程のモンスターがいたんですか?」

「んー……いえ、これは十階層にあったゴブリンの集落で()()やらかし所為でやられたもので、別に強いやつは──ボスがいたくらいですかね」

「え、十階──ゴブリンの集落!? 何をやらかして──ボス!?」

「詳しくはまた後日でいいですか? 今日はもう疲れたんで」

「え、は──はい、お疲れ様でした……え~……?」

 

 情報の洪水に対応できずにいる葵に断りをいれ、俺はゆっくりと、かつ追いかけられない様に帰宅した。

 

「あ──山城さん……いない……」

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「おー、お帰り──どえぇぇぇ!? どうしたそれ!」

 

 帰宅した俺を出迎えた母だったが、血にまみれた姿を見て派手なリアクションを見せた。

 

「デジャブ。いやー、ゴブリンにタコ殴りにされてさぁ」

「傷は!?」

「回復薬飲んだから無傷」

 

 簡単に事情を話せば、母は俺を過剰に心配しだした。しかし、俺の言うことを聞いたら、不安そうにしているものの直ぐに落ち着きを取り戻したのだった。

 

「あー……じゃあ、そのまま風呂入れ!」

「荷物は?」

「そのへんに置いとけ!」

「うーい」

 

 そして直ぐに指示を出し、家を血で汚さないようにビニールを敷いたりして俺を風呂場へと誘導するのであった。

 

 

 

 血塗れの服をゴミ袋に詰め、シャワーを浴びる。それが終われば母の事情聴取が始まった。

 ドロップアイテムの整理をしながら、俺は母に怪我をした状況や理由を話した。

 眼鏡をしていない理由を語れば、自分もやりたいと言い、狩りの成果を見せればその量にドン引きして冷蔵庫の心配をし、荷物が限界の状態でゴブリンの集落に行ったことを語れば思い切り叱られた。

 

 そして、ゴブリンの集落で包囲され死にかけた話をする。

 

 集落の状況に考察を混ぜながら話せばそれに驚き、ゴブリンにバレた時の緊張を語ればスリルを味わうかのように息を呑み、剣や槍で刺された事を生々しく言えば顔をしかめて溜め息を吐く。

 

「そんでスキルが発動してさ、バーサーカーみたいに大暴れしてゴブリンを千切っては投げ千切っては投げってして……で、今に至る訳さ」

「……はぁ~~~~」

 

 母の溜め息に嫌な予感がした俺は、必死に弁明を始めた。

 

「いやそれでさ、今回は怪我したけど次は気を付けるから、またダンジョンに行っても……」

「……いいよ。どうせ止めても行くだろ、お前は」

「お、良いのか?」

 

 何処か諦めた様相で、俺のダンジョン探索を許す母。しかし、母が続けて放った言葉によって、俺の緩んだ気は程よく締め付けられた。

 

「ただし、()()()()()()()()()()。怪我は仕方無いって言えるけどさ、それだけは絶対守れよ」

 

 今回のダンジョン探索で、俺は文字通り痛い思いをしたのだ。身に沁みた母の言葉を受け取りながら、俺は答える。

 

「……そりゃ当然だ。絶対守るって」

「絶対だぞ? ……んじゃあ、はい」

 

 母が掌を見せてくる。それが何か分からなかった俺は、取り敢えずその掌に()()をするように手を乗せる。

 

「違うわばかもの! 破いた服とズボンの代金を払えってこと!」

「持ってるわけねーべ」

「そうなんだよね~……」

「出世払い出世払い」

絶対(ぜってー)()?」

「おうさ」

 

 気の抜けた会話をしながら、俺は母に出世払いの()の話をした。

 

「そろそろ来るぜ、探索者だか冒険者だかの制度」

「ホントに~?」

「おう。ニュースとかSNSとかでも言われてるし、公式からそんな発表もあったじゃん」

「あったっけ~?」

 

 スマホを手に調べ始める母と同時に、俺も調べたサイトを検索する。すると、そこには見間違いでもなんでもなく、ダンジョンに関する資格制度の話が載っていた。

 

「お、あった。ほれこれ」

「ん~? ……おぉー、ほんとだ」

「だべ?」

「でもそんなに上手く行くか?」

「行くさ。ほらこれとかの所為でさ」

 

 そういって回復薬の小瓶を見せれば、母はそれがどうしたと言った様子で俺を見る。

 

「これの効果は知ってんだろ? 今やそれが何処からでも取れて誰でも好きに使えるんだぜ?」

「おー、それで?」

「当然、裏の人間とかも使えるわけで」

「……あ、成る程!」

「ダンジョンの問題は損得がスッゲー絡むからさ、早いぜ国が動くのは」

 

 俺は笑いながら母にそう言うと、休憩するために座椅子を倒して寝転んだ。

 

 

 

 ■

 

 

 

 それから暫くの間、俺は壊れた装備の修復や、潜入用装備の開発していた。しかし、装備を強化しながら修復を終えた俺は、とある問題にぶち当たってしまった。

 

「……潜入用の装備ってどう作るんだ?」

 

 その情報を集めるため、同時に潜入技術の習得する方法の模索に、スニークアクションゲームをやったり、動画を見たりして使える技術を集めていた。

 

「潜入用の装備……摩擦音を少なくする。……ダンボールは……無しだな」

 

 時に試作装備で集落へと侵入し、時にダンボールで隠れて即座に発見されたりした。

 

「木の後ろも駄目。木葉に隠れるのも駄目……と」

 

 ゴブリンの死角に隠れて見るが、臭いと僅かな物音でバレてしまった。

 

「除菌玉で消臭したらバレづらくなった。臭い対策はこれでいいな」

 

 そして集めた情報を使い、実際にダンジョンで試したりして技術の選定を行っていた。

 

「木の上からの奇襲は上手く行くけど、その後でバレる。息を潜めて後ろを着いてってみたけどバレたし、そっち方面は諦めるか」

 

「歩法は……今は無理。麻酔銃は無いし、なら他で……うーん、やっぱ物音で誘導して暗殺するのが一番か」

 

 ゲームならではの現実で使えない技や、俺の大きな体型や性質での齟齬から、使える技はかなり絞られる。

 

「結局、俺が出来るのはこれだけか……隠密向いてねぇな」

 

 そして残ったのは、単純な隠密技術や、石や物音を利用した小技くらいだった。

 

 

 

 

 

 

「よし、これならいけるわ」

 

 レベリングも技術の修練も終え、潜入用の装備も完成した。そして俺は“いざリベンジ!” とダンジョン探索の用意をしていた時だった。

 

「大器、これ」

「ん、なにそれ?」

 

 姉が小さな段ボール箱をもって現れたのだ。

 

「それが何?」

「投資」

「ほ~ん? ……あ、これ!」

 

 箱を受け取り開けると、中には俺が欲しがっていたナイフが入っていた。

 鞘に入ったナイフを抜けば、持ち手から刃まで全て艶消しされた黒い刃が現れた。

 取っ手を握り数度振るえば、強度が高く衝撃に強い構造の(フルタング)ナイフの捻れにも強く、木を割ること(バトニング)にも使える程の強度と良い使い心地を感じられた。

 これは今回の潜入には勿論、普段使いも出来る。俺は大いに喜んで見せた。

 

「それでよかったんだっけ?」

「おう! バッチしこれよ!」

「それなら良かった。……大器、死ぬなよ」

「ハハッ! 当然!!」

 

 姉に感謝を伝えると、ナイフを鞘に収めてバッグに仕舞った。そして姉が不安げに願いを言うと、俺はそれを無敵の笑顔で答えた。

 

 そして翌日。修練の成果を見せるため、俺は夜のダンジョンに向かうのだった。

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