ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜   作:黒木箱 末宝

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VSホブゴブリン

 集落の奥。丸太の壁で囲われた更に奥へ向かうため、俺は門を蹴り開ける。荷物で両手が塞がっているため致し方無いのだ。

 

「おじゃま~」

 

 開けた門の奥には、確りした木組みの掘っ立て小屋が一つ。そして──

 

「……」

「……うーん、勝てるかこれ?」

 

 骨の玉座に座る、鉄の鎧を着た巨大ゴブリン──ホブゴブリンが、肉を齧りながら俺を睨み付けている。

 

 肉を食い終わり、骨を投げ捨てゆっくりと立ち上がるホブゴブリンを観察する。

 

 身長は二メートル程で、体格は身長に似合わず細マッチョ。武器は二メートル程の鍔の無い錆びた大剣。装備は粗末ではあるが、頭以外全て鉄製の全身鎧。

 

 観察を終えた俺は、カバンを後ろに放り投げ、(マカナ)を抜いた。

 

「グルルル……ゴギャアアァァァアァアッ!!」

 

 互いに様子見をした後、ホブゴブリンが大剣を手に立ち上がり、雄叫びを上げる。

 

 轟く咆哮。飛散するホブゴブリンの唾。

 

「──ッ!! ウオオオオォォォォーーッ!!!」

 

 少し潔癖の()がある俺はそれにぶちギレ、怒りに関するスキルが自動で発動。ホブゴブリンに負けない程の怒声交じりの咆哮を放った。

 

 

 

 ■

 

 

 

「ゴアァッ!」

 

 初撃はホブゴブリンの振り下ろし。

 

「ダァッ!!」

 

 それを大器は怒りをぶつけるようにマカナを振るい、迫り来る大剣を反らした。

 

「ガアッ!」

 

 ホブゴブリンは直ぐに体制を建て直し、大剣を薙ぎ払う。それを大器は後ろに跳ぶことで回避する。

 

「ウオォォォッ!!」

「ガギッ!?」

 

 今度は大器が攻める。真っ直ぐホブゴブリンに向かって走ると、すんでのところ斜め前に飛び大剣をかわし、地面を蹴りつけて飛翔。ホブゴブリンを蹴り跳ばした。

 僅かにフラつくホブゴブリンに、体幹を崩すことが有効だと微かに残る理性で見て取った大器は、即座に体幹を崩す作戦を実行する。

 

「オォッ!」

「ガァ! ──ギィッ!?」

 

 果敢に攻める様に突撃し、眼前を抜けて振り下ろされた大剣を横から蹴りつける。

 大剣に引っ張られフラつくホブゴブリンに切りかかるが、鎧で防がれてしまう 。

 

「……」

「ギィ……」

 

 一旦互いに距離を取り、見合う。大器の(マカナ)は鎧に防がれ、ホブゴブリンの攻撃は避けるか反らされて致命的な隙を晒す。

 

 このままでは(らち)が明かないと互いに感じ大器とホブゴブリンは、同時に敵を殺すため動いた。

 

「ギガァッ!」

 

 ホブゴブリンは大器に向かって駆けると、大剣を両手で構え大きく引き絞り、槍のような突きを放った。

 

「ッ! オォォッ!」

「ギャッ!?」

 

 大器はそれを盾によって大剣の側面を殴り反らすと、隙だらけなホブゴブリンの股を潜り、マカナに羅列した牙で装甲の薄い内腿をズタズタに切り裂いた。

 

「ギッ、ガアァッ──ギイィィィッ!!?」

 

 

 大剣を支えに立ち上がろうと踏ん張るホブゴブリン。しかし脚に力がうまく入らないのか、立ち上がろうとする度に何度も膝を付いている。

 

「……」

「ッ! ギィッガアッ!?」

 

 止めを刺そうと近付く大器。殺られてなるものかと踏ん張るホブゴブリンだが、終に立つのを諦めた様子。

 

「……」

「ギィィィ……」

 

 息の根を止めるため、大器はマカナを手に駆ける。

 そして次の瞬間、ホブゴブリンが大剣を握り締め、最後の一撃を放った!

 

「ラアッ!」

「ギアッ!?」

 

 しかし、大器は迫り来る大剣に剣を打ち付けることで真っ向から弾き返した。力も録に入っていない重量と遠心力だけの攻撃では、最早大器を仕留めることはできない。

 

「フンッ!!」

「ギャァッ!?」

 

 返す刃でむき出しの顔を切りつける。

 ホブゴブリンは僅かに怯み、顔を押さえて踞った 。

 

「ハハハハッ!」

 

 大器は思いの外弱く感じるようになったホブゴブリンを嘲笑する。しかし、晒された隙を逃すことはなく、大器はホブゴブリンの体を駆け上がり、その目を抉らんとマカナを振るう。

 

「ギッ!? ガアーッ!」

「ウオッ!?」

 

 不安定な足場故か僅かに狙いがそれた。しかし 片目は取った。だが浅い。武器の威力か、鋭さか。ホブゴブリンを仕留めるための一歩が足りない。

 

 同じ場所を切る続けることで仕留めようと、追撃にもう一度マカナを振り上げる大器。

 だがホブゴブリンも大人しく受け続ける筈が無く、身体を振り回して大器を振り落とした。

 

「チィッ!」

「ギギギギ……ギガァァアアァッ!!!!」

 

 舌打ちしながら構える大器。

 そんな嘗めた態度の敵に、ホブゴブリンは殺意を滾らせて立ち上がった。

 

「ッ!!」

 

 瞬間、大器の身体に悪寒が走る。

 

「ガギャアァァッ!!」

「おあっ!?」

 

 発動した【生存本能】に従いその場から飛び退くと、さっきまで大器が立っていた場所に大剣が飛来。大地を粉砕し、大穴を開けた。

 

「ギイィィィ──ギガアァァァ!!!」

「ハハハッ……ククククッ……ウウゥ──アアアアッ!!!!」

 

 何やらスキルが発動したのか、筋肉を隆起させ、目を血走らせるホブゴブリン。

 向けられたありとあらゆる害意に大器は脅え、更に怒りが煽られることで【闘争本能】と【生存本能】が発動。防御力が大幅に下がる変わりに、攻擊力とスピードが跳ね上がった。

 

 自身を脅かす外敵(ホブゴブリン)を屠らんと雄叫びを上げる大器。

 

「ギィアアアアッ!!」

「オオオオオッ!!」

 

 自身を叩き潰さんと振り下ろされる大剣を、大器はマカナを力任せにぶつけて弾く。その技とも言えぬ一撃は、確かにホブゴブリンの攻撃を弾いた。

 だが次に繋がらない。大振りに大振りをぶつければ、自然と隙は互いに出来る。そこを突こうと剣を振るい、またぶつかり合った。

 

 

 

 ■

 

 

 

「ハー……ハー……」

「フゥ~……フゥ~……」

 

 あれから剣撃を幾度と交わした俺とホブゴブリンは、互いに息を荒らげ睨み合っていた。

 

 理性の飛んでいたと、知性の低いホブゴブリン。

 

 その戦いは、速く重い一撃のぶつかり合い……ただそれだけだった。

 

「あー……ダルいなぁお前ぇ……速く死んでくれよぉ……!!」

 

 スキルの効果が切れたのか理性が戻る。その代償として【疲労】のデバフが掛かり、ステータスが全体的に下がってしまった。

 

「フゥ……フゥ……ギギギ……!」

 

 それはホブゴブリンも同じだった。起死回生に発動したスキルの代償も合わさり、ホブゴブリンは最早死に体だった。

 内腿を切り裂かれ、片目を抉られ、マナの流出が止まらない様子。

 

 マナを血として稼働している(生きている)モンスターにとって、それは緩やかな死を意味する。

 

 ホブゴブリンは、せめて俺だけは仕留めようと大剣を大上段に構え、渾身の一撃を振るわんと俺が襲い掛かるのを待っている。

 バカ正直にそんなものに付き合う意味は無い。このまま待って、失血死するマヌケを眺めるだけだ済む。

 

 ──それは面白くない。

 

「ハァー……んじゃあ──死ねぇやオラァッ!!」

「グルルルルル……」

 

 ホブゴブリンの一撃の対処法を思い付いた大器は、盾とマカナを引き絞り、ホブゴブリンに向かって駆け出した。

 

「──ギガアァァァ!!!」

 

 待ってましたとホブゴブリンが全身の力を込め、 大剣を思い切り振り下ろす。

 

「うおぉおおおおぁっ!!!!」

「ギッ!?」

 

 そして俺は、その一撃に盾とマカナをぶつけることで威力を相殺。受け止めた。

 

「グギギギギッ!」

「ぬぐっ! ……オォッ!」

「ギッ!?」

 

 “ならば押し潰せばいい!”と体重を掛けて押し潰そうとするホブゴブリンだが、それに合わせてマカナの位置を調整し、ホブゴブリンに向かって走り出した。

 

 マカナを大剣に押し付けながら駆ける。

 

 大剣との摩擦とマカナを引っ張る力を合わせて溜める。

 ホブゴブリンに近付くことで重心が変わり、ホブゴブリン自身の押し込む力を利用して加速。

 力に押し倒されそうになる体を地面を蹴り砕くことで支え、更に加速。

 

「ガアッ?!」

「遅いっ!!」

 

 必殺の一撃を狙って加速し近付く俺に対し、ホブゴブリンは“マズイ!”と感じたのか仰け反るが、既に手遅れだ。

 

「とったァ!」

 

 加速を重ねた一撃は居合斬りの要領で強力な一撃を放つ。

 全て力とスピードの乗った一撃は、ホブゴブリン肉を引き裂き、骨を砕き、鎧を食い破りながらホブゴブリンの腕を切り跳ばした。

 

「ギャアァッ!?」

 

 腕を押さえて後退るホブゴブリン。それに止めを刺そうとしたその時、マカナがバキリと音を立てて砕け散った。

 

「んなっ!?」

 

 これまでの力押しで無理が祟ったのだろう。半ばから砕けたマカナは、もう武器として使え──

 

「まだだっ!」

「ギッ!?」

 

 は砕けたマカナの柄をホブゴブリン目掛けて投げ付ける。

 目を狙われたその一撃を、ホブゴブリンは残りの腕で防ごうとする。その一瞬、ホブゴブリンは俺から目を離した。

 

「ウオオオオッ!!!」

 

 その隙に、俺は側に落ちている大剣を手に取り、ホブゴブリンへと駆け出した。

 力まなければ持てない程に重いその武器を、俺は全身を駆使して持ち上げ──振り抜いた。

 

「ガアッ!?」

 

 ホブゴブリンは残った腕で防ごうとするが、俺の全力と遠心力、大剣の重量の合わさった一撃を防ぐことは出来ない。

 

 大剣を掴もうと伸ばした手を纏う鎧いごと圧し切り、刃は腕を抜け、胴を食い破り、その首を切り飛ばすのであった。

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