ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜   作:黒木箱 末宝

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VSゴブリン【前編】

「あ、ちょい(ちょっと)! 質問したいことあるんだけど!」

 

 俺に祝福の言葉を告げ、静になるダンジョンアナウンス。

 質疑を問おうとしたが、俺の声に何の反応を返すことはなかった。

 

「……はー……まぁいっか。んで、スライムは……いないな……よし。ステータスオープン」

 

 ダンジョンに対する質問を諦めた俺は、周囲にスライムが再出現してないことを確認する。

 そして一旦の安全を確認できたので、ダンジョンアナウンスの言うとおりにステータスやスキルの再確認を始めた。

 

 

 

 ステータスやスキルの詳細な情報確認を終えた俺は、ステータスの状態を視覚に表示出来ると解ると、その全ての状態を視覚出来るようにした。

 そして、それらの表示されたものの透過率を上げて見れば、そこにはゲーム画面の様な視界が広がって。

 

「……取り敢えずはこれでよし」

 

 続いて砕いたスライムコア──小魔石と、残りの枝を回収。

 

「ついでに【識別】……ほーん」

 

【小魔石:小型モンスターの魔石。モンスターが稼働するのに必要な力の源。豊富なエネルギーを秘めている】

 

「魔石ねー……集めて損は無いな」

 

 そう呟きながら、服のポケットをラージポケットにして荷物を仕舞えるだけ仕舞い、次の階層を目指して進んだ。

 

「……うーん、ダンジョンだ」

 

 入口から暫く進み、迷路になっている通路を見て、俺は改めて自身のいる場所を認識した。

 

「さて、どうするか」

 

 ゲームや実際の探検で行うであろう行動を思い出しながら、今出来る方法を考える。

 

「壁に傷付けて目印に……ダメだ、直り始めてる。石とかで目印……スライムが吸収しそうだ。なら、地図か」

 

 スマホを取り出すと、それらしいアプリがないか探す。

 そして色々試してみた結果、メモアプリに進んだ方向を書き残す方法を選択した。

 ……後でこれが失敗──と言うより進行速度を落とす悪手──であると気づいた俺は、一人落ち込む事になるが……今はいいだろ。

 

 

 

 ■

 

 

 

「えーっと、この曲がり角を進むから『(みぎ)』と……お、スライム」

 

 拙い手段で地図を記しながら進む道中、もう一匹のスライムを見つけた俺は、レベルアップで上がったステータスを試してみることした。

 

 相変わらずプルプルと震えて挑発を続けるスライムを前に、ラージポケットから曲がった木の枝を取り出し、まるでゴルフでもするかのように構えた。

 

「せぇーのぉー、よいしょー!」

 

 気の抜けた掛け声とは裏腹に、バチン! と強烈な音を響かせて、スライムと木の枝は弾けとんでしまうった。

 

「──……えー?」

 

 あまりのことに呆然とする。

 最初の頃の感覚に合わせて力を込めて振るった木の枝は、俺の想像を越えて強くなった力に耐えられず、真っ二つに折れてしまった。

 

 そしてスライムは不完全な殴打で勢いよく飛び、そのまま壁に叩き付けられて死にかけている。

 

「……こんなに変わるのか……」

 

 レベルアップにより上がったステータスは、適正を加味してもプラス二程度。自身の攻撃力では九〇だった。

 しかし、ステータスボードに記載されていた例と自身の攻撃力を照らし合わせて見たら、その攻撃力は一般人類の最大値に近いと示していた。

 

「こーれーはー……ヤバいなぁ……なあ、お前もそう思うだろ?」

 

 動揺した俺は、弱々しく震えるスライムに声をかけていた。

 だが、今にも死にそうなスライムを見て、俺は“馬鹿なことをした”と自身を(たしな)め、スライムに止めを刺そうと近付く。

 

 しかし、スライムはその前に力尽きたのか、黒い霧(マナ)を吹き出して動かなくなった。

 

「……次はちゃんとするか」

 

 振り下ろす先を失くした枝を下げ、スライムのドロップアイテムを拾いってポケットに収納する。

 

 俺は適合処置の施された自身の力を試してみることにした。

 ステータスボードに書かれている説明や数値ではなく、実際に動いての確認だ。

 

「フンッ!」

 

 取り出した真っ直ぐな木の枝を確りと握り、思い切り振り抜く。

 以前なら“ヒュン”とか“ブォン”といった普通の音を出すだけだった棒振は、空気を突き破るような“ボッ!”という音を響かせた。

 そして握った根本から枝が砕け、破片を周囲に撒き散らかして終わる。

 

「……武器が必要だな」

 

 強くなった力を思い切り振るうと、武器が先に壊れる。

 それ理解した俺は、道中で手加減を覚えながら先へと進んだ。

 

 

 

 あれから更にスライムを三体倒し、枝を二本もダメにした。

 そして感に従い進んだ結果、次の階層へと続く階段を一発で見付けてしまう。

 

(え、もう? まだ殆ど探索して無いんだけど……曲がり角は……まだ結構あるな。……なのに一発? こんなとこで運使いたくないんだが……まあ、今はいいか。地図埋めはまた今度にしよ。先も気になるしな)

 

 まだ進んでいない道はあるものの、地図を埋めることより先へと進む探究心に抗えなかったのだ。

 

「さて、今は何時だ?」

 

 そう呟いてスマホの時間を確認すると、適合処置を受けて進んでから役十四分程時間が経過していた。

 

「ふむ、あれから十四分か……つまり、ここまでは家から最寄駅くらいの距離か……長いな」

 

 見慣れた経過時間に、覚えていた距離感で当てはめてみる。

 するとダンジョンの一階層は、約一キロメートル程の長さがあると分かった 。

 入口からの距離を足して想像すると、約二十分位の距離だ。

 

「運動するにはちょうどいいな」

 

 場違いな事を呟きながら、残り一本だけになった()型の枝を十手のように持って構える。

 枝の握り具合を確かめた俺は、何が来てもいいように枝を前に構え、階段を降りて二階層へと降りるのだった。

 

 

 

 二階に降りてきた俺は直ぐに進むことはせず、警戒しながら周囲を確認した。

 階層の様子は一階層と変わらない、土を固めて作られた洞窟のようだ。

 そして階段の終わりのその右側に、何やら青白い光が見える。

 練習を兼ねて声に出さず【識別】を発動すると、問題なく発動することが出来た。

 

 そして【識別】によって、青白い光の正体が表示される。

 

【階層間転移魔法円:階層同士を繋げ、使用者を転移させる魔法円。各階層の階段付近に出現。手で触れることで使用者を登録できる。最大同時使用可能人数:四人】

 

「転移魔法円……? 魔法陣的なやつか、スゲー! ……あれ、一階層には無かような……見逃したか?」

 

 自身の認識とのズレや、一階層の階段付近の事を考えつつ、俺は魔法円に手を触れた。

 すると魔法円が一瞬だけ光りを放ち、青白から紫へと色を変化した。再度魔法円に【識別】を使うと、ちゃんと使用者の登録が書き足されているのを確認出来た。

 

「よし、これで楽が出来るな! ……いや、楽しちゃ運動の意味がないのか? ははっ」

『──ギギッ!』

 

 そんなことを声に出していたのが不味かったのか、通路の奥から何者かの足音と、耳障りな鳴き声が聞こえてきた。

 

「あん? ──うおッ!」

 

「ギギャア!」

 

 薄汚れた緑色の体。尖った耳に鼻に汚ならしい牙を持った生き物。黄ばんだ目は、此方を狩れる獲物だと見下げているようだ。

 草で編まれた腰簑(こしみの)を装備し、ビール瓶程のサイズの枝葉の付いた太い木の枝を棍棒のように振るう魔物。

 

「ゲギャギャギャ! ガァー!」

 

 ──ゴブリンが現れた。

 

「ッ! へへ、ゴブリンか。識別──は、読んでる暇ねぇなぁ──なあッ!!」

 

 枝を構える大器を前に、ゴブリンは煽るようにゆっくりと近付いてくる。

 それに対して戦うことを選んだ俺は、大声を出して威嚇した。

 

「ギ? ガガァ!」

 

 そんなデカいだけのやけにへっぴり腰な生き物を見て、ゴブリンは自身が下に見られていることに気付き“嘗めるな!”と言わんばかりに吼え、棍棒を地面に叩き付けた。

 

 直後、バコン! 大きな音を立てて地面が砕け散った。

 

 ゴブリンからしたらただの威嚇行為だが、耳目に届くその直接的な行動は、争い事から遠く離れた俺に対して抜群の効果を発揮する。

 

「ッ!? ……は?」

 

 言葉を詰まらせながらも気丈に振る舞おうとするが、本能から来る恐怖心に煽られ身体が震え、身動きが取れなくなった。

 

 精神状態が【恐慌】に染まり、肉体状態が【萎縮】する。

 

 そして条件が揃ったため、受動的な(パッシブ)スキル【臆病者】【逃走本能】【逃げ上手】が発動したようだ。

 

 そのスキルの効果は、ステータスの殆んどを大幅に下げる代わりに、素早さをかなり上げると言う癖のあるスキルだった。

 

 スキルが複数発動したことにより、俺の素早さはジェット機を越える速度まで至る。……だがしかし、肉体状態が【萎縮】であるため逃走することができない。

 状態【萎縮】により固まった体で防御力は元に戻った。しかし、他のステータスは軒並み下がったままだった。

 

 そんな威嚇し返した程度で情けなく脅える俺を見て、ゴブリンは遊び混じりの殺意を向け、棍棒を手に飛びかかって来るのだった。




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