ZOID・of the・DUNGEON〜外れ者の楽園〜 作:黒木箱 末宝
「そんじゃあ
回復薬をバックパックに慎重にしまった俺は、草で編まれたポーチ見て、以前にも同じ様な物をそのまま仕舞っていたことを思い出した。
「ゴブリンは……いないな。今のうち今のうち 」
周囲を確認し、何もいないことを確認する。そしてバックパックからゴブリンポーチを選択して取り出した。
「えーっと……さっきのと合わせて四つか。意外と取ってたな」
そう呟きながら、一つずつ草紐を解いてポーチを開けていく。そしてポーチを傾けて、中身を掌に取り出した。
「屑宝石に屑鉱石……お、知らないアイテムだ。水色の草の玉と……薬臭い小包か……」
そして出てきた見慣れない二つのアイテム。先ず水色の草を丸めて作られた玉から【識別】した。
【除菌玉:亜人系のモンスターやその集落から低確率で取得可能。体等に付着した菌を落とす煙を出す。地面に叩き付けて使用する。吹き出した煙を暫く浴びることで、身体などに付着した菌やウイルスを除去することが出来る】
「除菌玉ねー……そう
次は、幅の広い葉っぱを重ねて草紐で結ばれた小包みを【識別】で確認。
【ゴブ薬:ゴブリンやその集落から取得可能。薬草を磨り潰して作られた塗り薬。切り傷・刺し傷・打撲などに効く】
「ゴブリンの薬か……傷薬の下位互換だな」
タイミング良く現れた新しい傷薬に喜ぶ。草紐を引っ張ってほどき包みを開くと、黄緑色の青臭いペーストが現れた。
「臭ッ……草刈りの後の臭いがする……まぁ、問題無いっぽいけども」
青臭いペーストに再度【識別】を使用するが、項目に“青臭い”が書き加えられていただけで変わらない。
「……今日は帰るか」
アイテムの確認を終えた俺は、回復薬の事を考えると居ても立っても居られなくなり、二階層の入口の魔法円に向かって駆け出した。
「完全無敵の俺様だー! ……なんてな」
道中に
ダンジョンの一階層、その入口で、俺は外に出る前に装備を脱いでいた。このまま出たら不審者だからな。気を付けねば。
「ふぅ──臭ぇーッ!! え、こんな臭う?!」
ヘルメット、ゴーグル、フェイスカバーを順に外し、目出し帽を脱いだ俺は、鼻を突く自分自身の汗臭さに叫んだ。
確かにダンジョンは熱くもなく寒くもない。だが俺は、防御力を上げるため長袖の服に厚手のパーカーを重ねて着て、更にプレート入りのタクティカルベストなど全身に重い装備を装着している。
肌の露出が目元しかなく、そんな通気性の悪い状態で痛みに耐えながら激しく動き、戦ったのだ。それはどうしようもなく発汗を促し、上がった体温を下げる為に更に汗を流す悪循環。
結果、俺は汗塗れになり、酸化した皮脂や汗に反応した菌が悪臭を発生させているのだ。
「どうすっかな~……あ、そうだ」
塩分タブレットを噛み砕き、水を飲みながら考えていた俺は、そこでふと、ドロップアイテムの除菌玉の存在を思い出した。
「えーっと? 『地面に叩き付け、吹き出した煙を浴びて使用する』……こうか」
バックパックから取り出した、水色の草を丸めて作られた除菌玉。それに【識別】で除菌玉の使い方を確認した俺は、書いてある通りに除菌玉を地面に叩き付ける。
すると、除菌玉はフィクションに登場する煙玉のように破裂し、そこからきめの細かな煙が吹き出した。
「うおッ! ……意外と良い匂いするな……なんか……『爽やか』って香りの概念の塊みたいな?」
そんな喩えようのない爽やかな香りにしばし包まれる。するとどうだろう、段々と体から立ち上る不快な臭いが薄れて行くではないか。
「さて、どうだ……うん、臭くない!」
煙が晴れた際に自身の臭いを確認すると、汗による湿った臭いはするものの、汗臭さは一切感じなくなっていた。
「良いなこれ。集めとくか」
湧き出た収集欲を押さえつつ、俺は全ての荷物をしまったバックパックを背負い直すと、不織布のマスクを装着してフードを深く被り、外に出た。
■
「あぁ、良かった! 無事だったんですね!」
「……ええ、まあ。この通り」
「……ダンジョンに入った男性が帰投しました。おくれ」
「……」
外に出た大器を待ち受けていたのは、神主と二人の警察官だった。神主は大器の無事を喜んでいるが、しかし警察官はなにやら報告をした後に事情を聞き近寄って来る。
(うおおおお、面倒な臭いがする~~~~!!)
物凄く嫌だが、しかし早く家に帰りたい俺は、起こる面倒を避けるため、神主に許可を貰って入ったことを伝えた。
警察官は大穴の事を聞いて来たので、大穴はダンジョンという特殊な構造のものであり、中に危険なモンスターや危害を加えてくるモンスターが居るので注意するよう知らせる。
更に何か情報を得ようとしたので、俺はこれを職質と捉え、拒否する事にした。
そうして俺は、レベルアップして高まったステータスを使い、人知を超える力を周囲に晒すミスを犯しながら、逃げるように立ち去るのだった。
■
追跡されている事を前提に考え、複雑な道を描いて家まで帰って来た。直ぐ様自宅周辺を確認するが、こちらを見る様な視線を感じなかった。
「……そりゃそうだ。今の俺は凄いからな……まあ、油断はしないが」
そう一人呟きながら帰宅。階段を上る途中、あれだけ激しく動いても疲労感が少ない事を感じ、ダンジョンでレベルアップすれば全員こうなるのかと戦慄する。
「……ふぅー、ただいまー」
「あ、お帰りぃ~! 大丈夫だった?」
有り得る未来に、想像以上に精神的な疲労が溜まっていたのか、安心して気が抜ける。すると、母が慌てた様子で出迎えに来た。
「……はー……怪我ないね、良かったわ」
「
「それがね──」
無傷で平然としている俺を見て、深く安堵する母。
何があったかと問うと、ニュースでダンジョンに関する行方不明事件や死亡事故が騒がれ始めたらしく、母はそれを見て不安になったと答えた。
「気持ちは分かるけどさ。でもほら、何処にも傷無いだろ?」
「確かに無いけど……」
どうやら母は、俺にダンジョンへ行ってほしくないのか、止めるようとしている様子。
だが、無傷な俺の「大丈夫だって! 俺が負けるわけ無いだろ?」のゴリ押しにより、ダンジョンの探索は
「そうだ、かーちゃん。これ飲んでみない?」
「何やそれ」
「回復薬だけど──」
「飲むわ」
「ちょっとまて!」
着替えてシャワーを浴びた俺は、ダンジョンで手に入れた回復薬(小)を母に飲ませようと取り出して見せた。すると、母は何の
それに対し「流石にちょっとは疑えよ!」 と止めるが、母は「えー?」と不満げな表情を浮かべる。
「これ飲めば
「……まぁ、そうだけどさ……あー……
オタク知識に理解のある──何なら親子全員オタクな大器達一家ではあるが、今回の母の即答には
しかし、その疑問は即座に消え去った。
気遣うように問えば、母は「まぁね」と溜め息を付きながら脚を撫でる。
それを見つめながら、俺は「流石に怪しいし、ねーちゃんと相談してからにしてみる?」と聞いてみる。それに対して、母は渋々だが頷いたのだった。