学マス世界に転生したV.Ⅱスネイルが月村手毬をプロデュースする話   作:雪浪夏鶏

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親密度20「キャンパスモード到達(ALT)」

 

 

 N.I.Aの最終日に行われる『FINALE』と呼ばれる公開オーディション──その参加条件は、N.I.Aランキング上位三名に入っている事である。

 つまり『FINALE』に参加する事ができるという時点で、それはアイドルとして既に圧倒的な知名度を有している事の証左となる。

 そのため『FINALE』は公開オーディションと銘打たれているものの、参加アイドルのファンたちからは合同ライブのような物として見られ、会場内は凄まじい熱気に満ち溢れる形となっている。

 

 そして、その参加者の中で最も高い注目度を有しているのは月村手毬だろう。

 ここ最近のプロモーション戦略によって良くも悪くも話題となり、一躍時の人にまで上り詰めていた。

 

 だがしかし、忘れてはならないのはその対抗馬として秦谷美鈴の存在が居ることである──彼女にはプロデューサーが付いておらず、そして目立った自己プロデュース活動を行なった様子もない。

 だというのに、『FINALE』の参加資格を有する程にN.I.Aランキングの順位が高いというのはハッキリ言って異常事態である。

 

 それはつまり、既に秦谷美鈴の実力がアイドルとして完成されている事に他ならない。

 スネイルは月村手毬から彼女が怠惰で傲慢であるという愚痴を何度も聞かされていたが、そのある種余裕ともとれる態度を取り続けられていたのは、既にそれに相応しい実力を身につけていたためだろう。

 

 わざわざスポットライトを当てなくとも、真に美しきものはただそこに存在しているというだけで大衆の目を惹きつけてやまない。

 ただ純粋に彼女のパフォーマンスに惹かれた者たちの人気だけで『FINALE』の参加資格を得た、本物の中の本物。

 アイドルとプロデューサーのタッグマッチというN.I.Aの大前提を覆す怪物。

 秦谷美鈴の秘めていた潜在能力は圧倒的で──だからこそ、そんな彼女の全力を今まで引き出す事も出来ずに、自分のフォローばかりをさせてしまっていた日々が月村手毬にとっては悔しくて仕方なかったに違いない。

 

「いよいよ『FINALE』ですね。プロデューサー」

 

 ──そして、そんな日々を覆す時が来た。

 賀陽燐羽はブランク期間が長く本調子ではなかったため、かつての『SyngUp!』メンバーとの戦いで勝利したという形になるかは微妙なところだったが──しかし、今回の『FINALE』の舞台で秦谷美鈴を打ち倒す事ができれば、月村手毬はコンプレックスの楔から解き放たれ、新しい世界に足を踏み入れる事ができる。

 それを越えて初めて月村手毬は、一番星(プリマステラ)となるに相応しいアイドルの資格を手にする事ができるのだ。

 

「えぇ。今更多くの言葉は必要ないでしょう。ただ、いつも通り──最高のライブを行うように」

 

「……はい!」

 

 自信を持ってプロデューサーは、担当アイドルを見送っていく。

 初めて彼女のパフォーマンスを──まだ未熟だった頃のパフォーマンスを見た時、一番星(プリマステラ)を導く上で最適な人材は彼女であるとスネイルは直感的に判断した。

 あとはもう、その時の直感は正しかったのだという答え合わせを行っていくだけの作業だった。

 今でも答えは変わらないどころか、かつてよりも自信を持って言うことができる──彼女こそが、頂点を取るに相応しいアイドルだと。

 

 

 ────────────

 

 

 月村手毬と秦谷美鈴──両者の実力はほぼ拮抗しているが、しかし純粋なパフォーマンスの精度の高さで言えば秦谷美鈴の方に軍配があがる。

 月村手毬の血の滲む様な努力を持ってしても、手の届かない本物の領域というものは存在する。

 

 だが、未熟だからこその美というのもまた存在する──スネイルは長かったN.I.Aの道程で、数多のプロモーション活動と共にその紛い物(美しさ)の価値を多くの人々に知らしめてきたつもりだった。

 それは決して、狙って作れるようなものではない──本物がそうであるように、偽物もまた唯一無二の価値を有する存在なのだから。

 月村手毬の想いが込められた歌声は果ての果てまで響き渡り、観客たちの心を揺さぶり続ける。

 

「ファンもまた、ライブを構成する為のパーツの一つ……というわけか。勝敗は決まったも同然だな」

 

 公開オーディションの様子を見にきていたフロイトは、早々に月村手毬が勝利すると確信していた。

 高嶺の花としての美しさで言えば、やはりそれは秦谷美鈴の方が圧倒的ではあるが──しかし月村手毬の自らの弱みも曝け出した、ある種共感しやすい想いを乗せたパフォーマンスはやはり強みだ。

 これが審査員たちのみによる閉ざされた環境での勝負であれば話は違ったかもしれないが、しかし──今回の公開オーディションというシチュエーションの中で、より観客たちの熱量を引き出せたのは月村手毬の方だった。

 であるのならば、もはや審査結果を待つ必要もなかった──アイドルに対してファンを満足させられたか以上の審査基準があるわけがないのだから。

 

「まぁそれも、事前にお前のファンが月村手毬の方に流入していた影響も大きいだろうが──」

 

 ──月村手毬が賀陽燐羽のアイドル引退を引き止めたことで、賀陽燐羽のファンはそのまま感謝の想いを抱えながら月村手毬の事も応援するようになった。

 そしてその声援が、会場内での月村手毬優勢の流れを作る為の一助となっている。

 

「……それもあの子の実力の内よ。アイドルは歌が上手なら良いものでもないし、踊りが上手なら良いものでもないし、そして──両方とも熟せても、まだ完璧には程遠いもの。あの子はとっくに、アイドルとして本当に必要なものを身につけていたのよ」

 

「なるほど……プロデューサー見習いとして、勉強になるな」

 

 フロイトと共に、公開オーディションを見にきていた彼の担当アイドル──賀陽燐羽の発言は曖昧なものではあったが、月村手毬のライブパフォーマンスを見ながらだとなんとなく言わんとする事は伝わるものだった。

 人柄から滲み出る魅力、とでも言うべきか──ソロアイドル月村手毬の真髄はそこにあり、そしてそういう所にスネイルは惹かれたのだろう。

 賀陽燐羽がアイドルに復帰したのも、賀陽燐羽のファンが月村手毬を応援する流れとなったのも──全ては月村手毬が、自らの手で勝ち取った結果だ。

 スネイルから言わせれば、人を振り回す事に関しては一人前──と言ったところか。

 フロイトは得るべき教訓を得て、そしてこの際この公開オーディションを盛大に堪能する事とした。

 

 

 ────────────

 

 

 最終オーディション『FINALE』は無事に月村手毬の勝利に終わり、N.I.Aに優勝する事ができた。

 全力の秦谷美鈴を倒した事で、月村手毬が抱えていたコンプレックスは全て払拭されたと言って良いだろう──例えばそれは、スネイルがAC戦でフロイトに勝利するレベルの奇跡である。

 

 その後に行われた優勝ライブもまた素晴らしく、勝利者の歓喜を乗せた歌声は今回のN.I.Aを締めくくるに相応しいものだった。

 N.I.Aを通して月村手毬を見守ってきた観客たちにとって、決して忘れられないライブとなっただろう。

 

「──見事なライブです、ソロアイドル月村手毬。本当に、見事なライブでした」

 

 紛い物の翼は空高く──越えられなかった筈の壁は越えられた。

 スネイルからすればそれは、羨ましさすら感じるほどの偉業だった。

 しかし──ここは羨望よりも、感謝が勝る。

 

「……ここは素直に、感謝の言葉を述べるとしましょう──私にこの景色を見せてくれて、ありがとうございます」

 

 無駄にプライドが高く傲岸不遜であると知られているスネイルの口から『ありがとうございます』なんて言葉が飛び出るとは、天災が起こる前の予兆とも捉えられかねないほど稀な事である。

 フロイトがこの場に居れば耳を疑っていたに違いない。

 しかしスネイルにとって、月村手毬が叩き出した結果はそれ相応の価値があるものだった。

 かつて諦めつつあった前提を覆し──彼女はまだ見ぬ先の世界にまで、自分を連れてきてくれたのだから。

 

「……お礼を言うのは、こっちの方です。だってプロデューサーがここまで引っ張って、連れてきてくれた──プロデューサーのおかげで、私はこんなに高い所まで来ることが出来たんです」

 

「……月村手毬」

 

 そして、その想いは月村手毬にとっても同様のものである。

 今回のこれはアイドルとプロデューサー、互いの支えがあってこその結果なのだから。

 

「まだまだ、お礼をし足りないぐらい──だから、次のH.I.Fでも見せてあげます。私が、格上相手に抜き去っていく所を!」

 

 ──月村手毬のその宣言は頼もしく、不可能を可能に変えて見せるに相応しい程の力が込められているものだった。

 

 





これにて『学マス世界に転生したV.Ⅱスネイルが月村手毬をプロデュースする話』は、二度目の完結となります!
以下長文

当初はここまで書く気は無かったのですが、この作品を投稿してから予想以上の反響があったので、急遽N.I.A編も書く事になったという流れでした。

元々あった学マススネイルのN.I.A編のアイデアは二つあり、一つ目は
『極月学園に移籍した元初星学園プロデューサー科の生徒ラスティ、その正体は同じく極月学園に移籍した賀陽燐羽のアイドルとしての終活を引き止める為に送られた初星学園側からのスパイだった』
というもの。

そして二つ目が
『賀陽燐羽と契約して敵として立ち塞がるフロイト。だが実際はイメージほどの強敵ではなくスネイルが曇らされる』
というものでした。

極月ラスティ案も捨てがたかったのですが、スネイルの旨みをより引き出せるのは間違いなく後者だろうなという判断でそっちが選ばれたという経緯があったりします。
その時の判断で正解だったとは思うものの、極月ラスティ路線はちょっと捨てがたかったかなぁと思ったり……お陰でただでさえ手毬シナリオでは薄かった極月学園の存在感が、より一層薄くなってしまったという問題が……誰かが代わりに似たようなの書いてくれたら嬉しい。
AC6と学マスのクロスオーバー、増えないかなぁ……

定期公演『初』の頃は入念にプロットを練り、あらかじめ最初から最後まで全て本文を書き溜めておいてから順番に予約投稿して行くだけだったので、毎日投稿が確約されていました。

しかしN.I.A編はある程度プロットを練ってから片っ端に一話ずつ書いて投稿して〜を繰り返す形となっていたためストックがなく、てっきり不定期更新になるだろうなぁと思っていたのですが……なんか普通に毎日投稿になりました。
見切り発車感が隠せてない部分もあったかもしれませんが、まぁ意外とやれるものです。

これで語れそうな裏話も全て語り終え、良い加減長くなってきたので後書きを締めようと思います。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!大感謝……!

P.S.
学マスでN.I.Aの続きの新シナリオ(多分H.I.F?)が実装されて、気が向いて書けそうだったら……ひょっとしたら学マススネイルの続きも書くかもしれません!多分!おそらく!Maybe!

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