PERSONA EPISODE of SHADOW WORKER   作:漆竜 黒鍵 

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 もう何度目かは覚えてないが、それでも最近は来たという覚えがない場所にいる。青い床、青い壁、青い座席に青いテーブル。窓から覗く景色は一面の黒、まるで人生における不透明で不確かな未来を暗示するような色だ。

 微かに心地のいい揺れが続くこの空間はベルベットルーム。その主であるイゴールはさぞや面白いものを見るかのように俺を微笑み(?)ながら見つめている。いや元々そういう顔だったか。

「ふふふっ……よもやかつてのお客人と今のお客人の運命が交わる機会に巡り会うとは、本当に貴方は面白いお客人だ。」

 かつての客人。それが誰を意味しているかは分からないが、おそらく俺が会いに行こうとしている人物を指しているのだろうことはわかった。確か名前は

「鳴上悠……だっけか。どんな人なんすか?」

「どのような人物か……私の口から話すのは些か時間が掛かりますが、お聞きになりますかな?」

「長くなるのか……じゃぁいいや」

「…………」

 あ、少し落ち込んでる気がする。最近この顔でも何となく何考えてるかわかるようになってきた気がするな。
 まぁ今のはイゴールの話が嫌だとかいう話じゃない。

「どんな人なのか、それは俺が直にあって直接感じてみるよ。アンタが饒舌になるくらいの男だ、いい男なんだろうな」

「ふふふっ……ええそれはとても素晴らしい御仁でございます。貴方にとっても素晴らしい邂逅となり得るでしょう」

 そっか………あ、そういえば

「有里湊って人もここに来てたんだろ?そっちはどんな人だったんだ?」

「長くなりますが、よろしいですかな?」

「長くなるならいいや」

「………ふふっ、いけず……というヤツですな」

 そんな言葉よく知ってたなこの人………さて


 どうして俺がその鳴上悠に会うことになったのか。その事の発端と言えるのは6月だが、それが今となった経緯はそう、7月14日のテスト返却後にまで遡る。


夏の雪解け

 

 少し遡り 7月14日 月光館学園 所員室前掲示板

 

 テスト週間明け最初の月曜日となった今日、土日とせっせこと答案の答え合わせをしてくれた多大な勤労者である教師陣によって学生達の順位と点数が張り出されている。

 

 まず目に着いたのは俺より上の学年、2年生の順位。それを1位から順に見ていけば3位の時点で見知った名前を見つける。

 

「栂和さんは相変わらず上位なんだな」

 

 全6科目。現国、数学、英語、理科、歴史、総合の合計点数は588点。つまり各教科2点ずつ、問数においてなら各一問ずつの間違えってところか。すげぇな…………。

 

 そして次に視線は我ら1年生の順位に移る。………6教科オール90越えでまじで南雲が12位に食い込んでやがる……、うわぁ…………。尚当の本人は既に学園どころか辰巳ポートアイランドにも巌戸台にも居ない。

 

 ちなみに天田は南雲よりも点数が良かったらしく、今回は7位にその名前を刻んでいる。中等部の時から頭がいいのは知っていたが、こうして改めて見ると天田然り栂和さん然り、生徒会に参加している面々は往々にして頭がいい。

 

 さて問題はここからだ、巌戸台寮のメンバーは先程の3名以外にも4名が学園生活を送っている。俺と綾崎、久遠、そしてテレジアだ。上位から順々に下へ下へ、時には右にずらして下へ視線をスライドさせていけば………あった、俺の名前だ。1年生全240人中俺の順位は105位、平均よりは上と言ったラインだろう。次に知っている名前を探そうと下へ動かせば………いや動かさなくても目に映っていた。久遠は俺の次点の106位……お互い特に勉強をしている訳でもなく、課題さえやれば良いという感覚なのでやはり獲得する点数帯は近しいものになるらしい。

 

 そしてさらに視線を動かしていく。下へ、右へと右往左往という訳では無いが少し時間をかけてようやく目に映る。まぁ……………うん。

 

 

────────────────────────────────

 

 同日 放課後

 

「いっぇえーーっす!!YES!YES!!イェェエエア!!!」

 

 学校から帰る途中ずっと奇声をあげてガッツポーズをし続ける綾崎、正直うるさくて仕方がない。ぶん殴ってやろうかとも思うがこいつにとってはかなり嬉しい事なのは解るので敢えて泳がせておこう。

 

「この私が!赤点ゼロ……っ!!これってやっぱり桐条式勉強合宿のおかげなのかな?」

 

「まぁゴールデンウィークを丸々勉強に回したんだから、そら多少はその恩恵もあんじゃねぇの?」

 

 今でもまだ覚えている。ゴールデンウィーク初日、俺達に呪いを吐きながらアイギスに連れていかれた綾崎。

 そうかぁ……あの綾崎が赤点ゼロかぁ………いや正直褒められた点数では決してない。平均点以下という事実は変わらないが、中等部の時から補習の常連だったこいつが補習無しで夏休みを迎えられるというのはある意味では快挙だろう。

 

「大袈裟なんだよ綾崎は」

 

「でもふゆっぺ!!私が!あの私が夏休みフルで遊べるって凄いことでしょ!?」

 

「ふゆっぺ言うな」

 

 ちなみにテレジアはまだこの輪の中に戻れていない。昨日今日であの損壊が直るとは思ってはいなかったが、テストやその結果を一番楽しみにしていたのはテレジアだ。ちなみにそのテレジアは綾崎よりも順位も点数もいいが180位、綾崎は201位だった。

 

「お前は相変わらず上位だったな、天田」

 

「まぁ普段から予習と復習してるし、なんなら玖城と久遠さんも勉強に力入れたらもっと上を狙えるんじゃない?」

 

「私はパス。必要以上に勉強しても将来的に役に立つわけでもねぇし」

 

「俺もパス。極端に悪い訳じゃないからな」

 

 まぁそんなもんだ。テストなんてのは評価方法の一部であり、余程変な点数じゃない限り上位10名と赤点以外は特に評価に大きな変動があるものでも無い。要は普段どんな態度で勉強をしているかが重要なのだ。

 

「つうかよ」

 

 久遠が苦虫を噛み潰したような顔で口を開く。

 

「中等部の時になかったあの総合って科目なんだよ……、地理やってると思ったらいきなり公民の問題に切り替わったんだが?」

 

「お前なぁ、鳥海先生の話聞いてなかったのか?」

 

「あん?」

 

 そう、今回この総合という科目がなんとも言えない難易度なのだ。今久遠が言ったようにこの科目は地理と公民、さらに保健体育と家庭の分野からそれぞれ四分の一ずつの配分で一つの科目となっているのだ。

 

 ちなみに俺は地理分野が壊滅的だった。オータムナルの問題が出たのも地理の分野のオマケ問題だ、つまりその問題以外全滅した。知らねぇよどこだよパプアニューギニアって、俺は日本人だぞ。

 

 …………日本の地理も危ういけど……。

 

「おまたへ」

 

 テストの話で色々と文句つらつらの俺達にようやく追いついてくる栂和さん。別に待っていた訳では無い、もしかすれば合流するかも程度で歩調を緩めていただけだ。

 

「生徒会はもう良いんですか?」

 

「特に急を要する議題もないしねぇ、実際1年生の役員は天田含めて参加させてないし。

 でも後テスト疲れ?がこの土日で取れてないのか半分くらい寝てる役員も居たし、本格的な話し合いは明日かな」

 

「明日って終業式の後に?……うっわぁ……」

 

 本気でドン引きする綾崎、しかしまァ生徒会なんてのはそんなものだろう。むしろ俺達一般生徒がやらない雑務をそうやって時間を使ってやってくれているのだ、有難いことだ。

 

「で?みんなはどうよ高校最初のテストは?」

 

「総合はクソ」

 

 久遠のその一言は全員から笑い声を捻り出してくれた、わからんでもない。

 

 

──────────────────────────

 

 午後5時 桐条グループ ラボ

 

 巌戸台分寮に帰るのとは何となく気分が違う。今思えば寮が爆発したことはあまり学校では騒がれなかったな。情報統制……と言うほど大袈裟なことをした訳では無いだろうが、みんなが気を使ってくれたんだろうか?

 

 さて、俺達が寝泊まりする個室はラボの中でも一般公開されていないフロアにある。つまりそこまで行くには特別な許可が必要ということだ。

 

「早く行ってよ、後がつかえてるんだけど?」

 

 綾崎に急かされたので渋々懐からカードを取り出し、壁にある認証機に触れさせる。認証を示す音が鳴り響けば自動ドアが開き5人でそれを潜る。

 ハイテクだよなぁ……。

 

 そんなハイテクな扉を抜けて個室のあるフロアのエントランスど真ん中、ハイカラ(社交辞令)な女が居た。

 

「お前達、田舎に泊まらないか?」

 

 サングラスに麦わら帽子……室内でどうなんだと言いたいがそこまではまだいい、季節は夏だ。だがその下だ、ズボンに裾をインしたアロハシャツに七分……いや五分丈と言ったくらいの短パン。手には虫取り網と双眼鏡、肩にかけている虫カゴがなんとも言えない……………いや今時田舎でもそんな格好見ないぞ。

 

「………何やってんですか美鶴さん……」

 

 苦笑いを浮かべながらどう反応すべきか大いに悩んでいる天田が口を開く。俺も今回ばかりはみつ姉の奇行に反応しきれない……。

 俺や天田でこれだ、後ろにいる綾崎や栂和さん、久遠はもはや唖然を通り越して驚愕と言ったところか。笑えるならまだ救いがあるが、相手が相手だけに笑っていい場面なのかも分からないのだろう。

 

「田舎だ」

 

「それだけで通せると思うなよ?会話しようぜみつ姉」

 

「高校生は勢いだろう!!」

 

「高校生舐めんなぁ!!!」

 

 

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「合宿?」

 

 今のみつ姉では埒が明かないので俺は頼りになる大人を召喚することにした。その結果俺に呼ばれた斉川さんによる制裁(鉄拳)によって大人しくなったみつ姉の口から出たのはそんな内容だった。

 

「………また勉強ですか?」

 

 眉を顰めてみつ姉に尋ねる綾崎、ゴールデンウィークの記憶が蘇っているのだろう。だが合宿がなくてもお前はもうちょい勉強した方がいい、勉強の仕方を。

 だがみつ姉から出た次の言葉はそんなものとは関係のない内容だった。

 

「君達にはとある地方都市に行ってもらい、現地に居る我々の協力者にあってきてもらいたい。彼等もまたペルソナ使いだ」

 

 その言葉に場の空気がピリつく。適度な緊張感が場を満たしていく。シャドウワーカーやエルゴノミクス以外のペルソナ使い……、ラビリスやその他の話から居るのだろうと想像はしていたが、まさか会うことになるとは思わなかった。

 

「お前達にとってもいい機会となるだろう。それにせっかくの夏休みだ、2週間程の長い旅行と思ってもらって構わない。旅費等はグループから出させてもらう、言うなればここ3ヶ月ほどの君達に対する労いという意図もある、楽しんで欲しい」

 

 そういうと微笑みながら立ち上がるみつ姉。旅行かぁ……田舎にかぁ……

 

「真千琉姉さんやテレジアはどうするつもりなんだ?」

 

 そこでようやく久遠が口を開く。確かにそうだ、真千琉さんは重傷でテレジアは修復中。とてもじゃないが旅行……もとい合宿に参加できるような状態では無いだろう。

 

 そう思っていたその時、俺たちが先程潜った扉が開きよく知ったシルエット二つが入室してくる。

 

「テレジアならもう行けるよ。ウチら対シャドウ兵装には予備パーツが基本的に用意されとるからな。でもさすがにフェイスパーツは予備無かったみたいで包帯で隠さなあかんけど」

 

「ご心配お掛けしました。テレジア、これより部隊に復帰いたします」

 

 ラビリスと顔半分を包帯で覆ったテレジアだ。そうか、確かに生身ではないのだからパーツの差し替えでテレジアはすぐに回復するのか……。

 

「日曜日に部位の換装、続く本日月曜日に各部のメンテナンス及び最終チェックを経て無事万全となりました」

 

 ジャキーンっとオノマトペが聞こえてきそうなポージングをとるテレジアに先程まで保っていた緊張感が崩壊していくのを感じる。しかしそうなると生身で重傷を負った真千琉さんは居残りということだろうか?

 

「真千琉に関しては2週目のタイミングで合流する予定だ。昔から傷の治りが早いからな彼女は」

 

 確かに、タルタロスに突入した時もそこそこ傷を負っていたが翌日にはケロリと晩酌まで嗜んでいた記憶がある。いや学生寮で堂々と酒を飲む寮母ってどうなんだろうか…?

 まぁこれで南雲以外のメンバーは全員参加することができるって事か。……南雲っていえば

 

「みつ姉、そういや圭さんって今どこにいんの?」

 

「圭叔父様か…私も詳しくは知らないが、この夏の休暇はハワイでと聞いた気がする。

 あぁなるほど、南雲のことか」

 

 先日アイツは圭さん、南条圭に師事を受けると言っていた。そしてその圭さんがハワイにいるということは

 

「アイツもハワイなんだろうなぁ……」

 

 何も問題起こさなきゃいいが……

 

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 現在 7月15日 電車内

 

「玖城」

 

「ん……くっ……ぁ……ふぅ…」

 

 微睡みの中聞こえてきた天田の声に意識が覚醒し始める。そうか寝てたのか俺、通りで扉を開けた覚えがないのにイゴールと話してた訳だ。スマホの電源を入れて時刻を見る。

 

「20時かよ……ふぁ…ぁ…」

 

 一学期の終業式が終わった後に準備してそのまま電車に揺られ、乗り換え、揺られと繰り返しようやく最終乗り換えのあとから記憶が曖昧だ…寝たのはそのタイミングだろう。

 周りを見れば綾崎と久遠も寝息を漏らしており、栂和さんも寝息こそ無いが上半身を前のめりにぶら下げて意識を手放している。起きていたのは天田とラビリス、テレジアの3人だけか。そして起こされたということは

 

「もうすぐ着くって」

 

「やっとか…」

 

 伸びをして肩を回すといい音が響く、かなり身体が固まっているらしい。地方都市とは聞いていたがこれ程遠いとは……。

 

「そういやなんて名前だっけ、俺らが行こうとしてるとこって」

 

「八十稲羽や、もー何回も言わさんといてよ樹下くん」

 

「わりぃラビリス、地名って何回聞いても行ったことない限り覚えれねぇんだ」

 

「住所とか言われても玖城分かってない時あるもんね」

 

「住所より目印くれよ目印」

 

「住所分かるんやったらスマホで調べたらええやん……」

 

「え?スマホってそんなこともできんの?」

 

「いつまでアナログ引き摺っとんの!?」

 

 気になりスマホを操作するとたしかにマップと書かれたアプリケーションが存在していた。もう少し自分の持ち物の機能をちゃんと把握してやらないとダメかもしれんなぁ……。

 

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 20時18分 稲羽線 八十稲羽駅

 

「んっぉっ………ごっ、ふぃぃ……」

 

 駅から出れば綾崎が背骨を伸ばしながらそんな呻き声を漏らす。まぁあれだけ熟睡してれば姿勢も固まる、俺自身さっき肩がいい音を鳴らしていたのだ。背骨からの音はさぞ気持ちのいい響だろう。

 それはそれとして

 

「おっさんかお前は」

 

「にゃにぃをう?!花の女子高生ですけどぉ!?」

 

 言いたいことは久遠が言ってくれたので周りの俺達の気分もスッキリした。ひと段落ついたというのを認めたのだろう、一人の女性がこちらへ近づいてくる。着物だ、和装と言うほど仰々しいものではないが着物美人という言葉はこういう人に向けられたものなんだろうな。

 

「お待ちしてました、長旅ご苦労様です」

 

 見れば彼女の後ろの方には10人、いやもう少し多めの人数が乗れるであろうマイクロバスが止まっている。その側面には仰々しく達筆な文字が並んでいる。天城屋……確か俺達が1週間世話になる旅館の名前だ。つまりこの人はそこの

 

「天城屋の若女将を務めています、天城雪子です。お話は桐条さんから伺ってます。疲れてるでしょ?荷物、預かるね」

 

 言葉の途中から物腰が柔らかくなるのを感じて俺達も肩から力が抜ける。若女将という肩書きから硬っ苦しい印象だったが、よく見れば俺達と言うほど歳が離れている訳では無さそうだ。おそらく二十歳前後と言ったところだろう。

 

 天田は一応面識はあるのだろうが、話しかけないあたり言うほど相手のことを知っているわけではないのだろう。そしてそれとは対称的なのが

 

「久しぶり、雪子ちゃん!」

 

「うん、ホント久しぶりラビリスさん。2年ぶりくらい?」

 

「せやね、あん時はホンマご迷惑おかけしまして……」

 

「やだなぁ、気にしてないよ。あ、花村くんとか完二くんとか連絡したらすぐ来るけど呼ぶ?」

 

「ええよええよ態々呼ばんでも、会いたかったらウチが直接行くだけやし」

 

 知らない名前が幾つか出てきたが、まぁ気にすることでは無いだろう。荷物を預けてふと町に目を向ける、妙に落ち着く感覚が芽生えるほどの長閑な景色だ。巌戸台や辰巳ポートアイランドとは真逆のThe田舎と言った様相。言い方を選ば無いのなら

 

「なんも無いな」

 

 同じように風景を見ていた久遠と考えが被る、しかしそれ以外の感想は確かに出ない。むしろ俺達はなんでもある、あり過ぎる環境に身を置いているのだと逆説的に実感する。視線は町や山々から次第に上へ、都会の街灯が無い分ここの空は夜になると星がしっかりと見えていた。

 

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 翌日 7月16日 午前7時半 準二級河川 鮫川

 

 今頃綾崎当たりが旅館で出る朝食に舌鼓を打っているだろうが、俺には関係のない話だ。未だ改善しない不食という名の呪い、流石に今回ばかりは本当に嫌気が刺した。

 

 …………美味そうだったなぁ……川魚の塩焼き…………ちくしょう……。しかしそんな気持ちとは裏腹に出てきていたメニューのことを思うと食欲は産まれるどころか減退、寧ろ明らかな吐き気とイラつきを覚えている。

 まぁ、俺が食わないなら事情を知ってるテレジアやラビリス、あと久遠辺りがフォローを入れてくれるだろう。

 

 そんなこんなでしばらく手持ち無沙汰になった俺は送迎バスの中から見えていたこの河川に来ている。チラ見した時から感じてたがそこそこでかい、準2級河川という名肩書きに恥じない雄大な川だ。ここで釣りとかしたらさぞ楽しいのだろうと思いながら河川敷まで降りてみれば、なんとまぁ実際に釣りをしている人物が一人居た。

 邪魔になるのも悪いのでそこには近付かず、河川敷にある木製の丸椅子に腰を下ろしてぼんやりと流れる川を見つめる。

 

 お、魚が泳いでる……

 

 

「fish!!!!」

 

 ぼんやりとしていた時に耳を貫く大声に目線が移る。さっきの釣り人だ、凄まじい大声だ、帽子から見えていた髪が白だったのでてっきり初老の方と思っていたが、今の声からして俺と年齢は大きくは変わらないのだろう。

 そしてよく見れば体調1mから1m50程度の大型の魚を釣り上げている。いやでけぇな……あんな魚もこの川は釣れるのかよ……。

 

 ………………つか、あれ?今の声って……

 

「よぉ玖城、朝飯は食べたのか?一日のエネルギーは朝食が重要になってくるぞ」

 

 巨大魚を抱えながらこちらに近づていくる男性、帽子で隠れていた顔は見上げることによってその輪郭をはっきりと認識させられる。

 

「さ、真田さん…………」

 

 何やってんだこの人……

 

「最近ボクシング以外にも新しい事をやってみようと思っていてな。桐条グループのおじさん達によく釣りを勧められていたからな、都合よく八十稲羽にはでかい川がある。やるなら今だと思った次第だ」

 

「そ、そうなんすか……」

 

 呆気にとられていると差し出される竿。

 

「やってみるか?」

 

「まぁ、少しだけなら」

 

 受け取りそのまま俺も岩場に登って糸を垂らす。正直釣りというものに魅力を感じたことはなかったが…まぁせっかくだ、一匹くらいは釣ってみたいと思うのも人の性だろう。

 

 

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 同時刻 天城屋旅館

 

「うっ……」

 

 旅館の朝食を終え中庭の椅子に座る。飯は美味かった、美味かったが量が多かった。偏食や少食と言う訳では無いが、旅館の朝食というのは普段自分たちが食う量と比較すれば間違いなく多い。腹が重くなってるのを感じる。

 

 綾崎や栂和辺りは余裕で完食していた、天田も少しは腹に堪えていたのか苦しそうにしていたのを覚えている。しかし私に比べれば幾分か余裕のある雰囲気だった。

 

「冬祈さん、大丈夫ですか?」

 

「問題ねぇ……」

 

 心配を向けてくるテレジアへ片手を挙げて応える。しかし考えても見れば私が天田よりも辛いのは仕方の無い話だ。なんせ量が天田よりも多い。理由は簡単だ

 

「ったく……なんで私がアイツの手助けなんぞ…」

 

 玖城、アイツの拒食症は未だ改善していない。であれば当然この朝食とて摂取できるものではないのだ。即ちその分が余る、アイツが拒食症である事は周知されていないことであり、それを知っているのは私と目の前にいるテレジア、ラビリス。つまりこの3人はこの旅行中玖城が飯を食えないという事実を隠蔽してやらなければならない。

 

「別にもう正直に言っちまって良いだろうがよ…」

 

 割増で食った結果がコレだ、はっきり言ってあまりアイツのケツを持つ事はしたくねぇ。まぁ散々妙なところで何度か頼ってる私が拒否するのはあまりにも不義理と罵りを受けそうだが、コレばかりは勘弁願いたい、腹が持たない。

 

「やからウチらが食べるって言うたのに、自分も食べるって聞かへんだんは冬祈ちゃんやんか」

 

 ……………

 

「……ツンデレですか?」

 

「お前もっかいラボにぶち込まれたいのか?」

 

「遠慮します」

 

 スタコラという擬音が似合う走り方で廊下を駆けていくテレジアをラビリスと共に見送る。

 

「可愛ええわぁうちの妹、そう思わん久遠ちゃん」

 

「はいはい」

 

 うちの姉さんもそうだが、世の兄姉という存在は人間ロボット関係なく弟妹を溺愛するものなんだろうか?

 

 いや…そうでもないやつもいるか、知り合いにいないと言うだけだろう。それに

 

 私は多分可愛がらない側だろう

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 同日 正午

 

 つ、釣れない……!

 

「心の乱れ、焦りが竿から川の水面に、そして水中の魚に伝わるんだ。心に余裕をもて玖城」

 

「るっせぇよ…!」

 

 隣でザブザブ…とまでは行かなくとも、用意していた餌も残り一割となるほどに釣果のいい真田さん。それに対して俺の餌はまだ八割以上残りつつ、そして

 

「また餌付いてねぇ……!!」

 

 餌だけをスられる俺。自分ではよく分からないものの、確かに竿越しに振動が魚にもバレているんだろう…俺はそんなに焦ってるのだろうか…。

 

「お前が焦燥を覚えるのも分かる。エルゴの首領である結城明天、それと直に戦いそして歯牙にも掛からなかった。赤子の手をひねるという話じゃない、文字通り敵としてすら見て貰えていない。

 お前自身で無くとも分かる、お前のプライドは八つ裂きにされた、ならば焦るのも当然だ」

 

 プライドという言葉に眉根が寄るのが解る。そんなものは特に持っていないと思ったが、そう言われてしまえば認めざるを得ないだろう。泣け無し程度のそれが踏み潰されたというのはそこそこ堪えるということだ。

 

 それを自覚していけば自然と肩に、身体全体に力と熱が籠っていくのが自分でもわかる。

 

「ならよ真田さん、俺ァ本来こうやってのんびり釣りなんぞやってる身分じゃァねぇ訳だよなァ?」

 

 力と熱は次第に怒りへとシフトしていく。今回の旅行ら俺達全員のレベルアップの為の合宿だ。だと言うのに俺はこうして竿を握り糸を垂らしているだけ、真田さんに誘われここに居るのは俺の選んだ行動だが、それはこの人から何かしら教えて貰えると思っていたからだ。魚を釣ってみたいというささやかな願いも無いことは無いが、そんなものはあくまでついでなのだ。

 

「また竿が揺れているぞ」

 

「真田ぁ…っ!!」

 

「それに待ち人も来たようだしな」

 

 俺の叫びを受け流し視線を俺とは反対側に向ける真田さん。叫んだ手前引っ込めたり飲み込むのは苦労したが、一度怒りを置いておいて俺も身を屈め真田さんの向こう側を見れば

 

「……うぉ」

 

 奥に居たのは灰色の髪の男だ。年齢は丁度俺と真田さんの間、20歳そこらと言ったところだ。その人物もまた竿を握り糸を垂らし水面を見つめている。そして穏やかに、しかし力強く竿を持ち上げ自分の身の丈程もある巨大魚を事も無げに釣り上げていた。

 

「………………」

 

 言葉が出ない。文字通り唖然、その要因は魚の大きさか、その存在感か、それともこの瞬間に至るまでこの距離にいる事を認識できなかった事か。

 どれだとしても、今目の前の男が一体誰なのか、何者なのかはなんとなく理解した。そうか……この人が

 

「久しぶりだな、鳴上」

 

「はい、久しぶりです真田さん」

 

 鳴上悠。俺がこの町にきた最大の目的。しかし……こう、なんというか…………仰々しく居ることに驚いた風を装っては見たものの

 

「……………………」

 

「真田さん、そっちが桐条さんの言っていた」

 

「あぁ、紹介する。こいつは玖城、お前と同じように複数のペルソナを使う奴だ。」

 

「初めまして、玖城樹下です」

 

「鳴上悠です」

 

 手をこちらに伸ばす鳴上さん。それに応えてコチラも手を伸ばす。

 

 …うーん……本当にこの人なんだろうか……?なんというか、驚く程に存在感が………無い。

 薄いとも言うべきか、髪や目の色が薄いのも相まって……なんというか……妖精さん???と思ってしまうほどに存在感が希薄だ。

 

「…………っ!?」

 

 が、その心情を嘲笑うかのように手から伝わる感触が一気に俺の魂とでも言うべきか、ともかくそういった芯の部分にまでその実力を叩きつけてくる。

 力強い。いや違う、単純な握力は真田さんや、なんなら南雲や栂和さんよりも弱い。だが劣りながらも持ち合わせているその自力、それ完全に活用出来ているかのような。そう、握り方だ。握手一つ、そんな些細な行動にも出てくる程に染み付いた力の運用力…………間違いない、本物だ。

 

 時間にして2秒程度、その僅かな時間で凄まじい量の情報を処理した俺の額にはうっすらと汗が浮く。いや単純に7月の暑さのせいかもしれないが、妙に冷たい感触に背筋が自然と伸び震える。

 握られていた手は離される。感触の残る手を自然と見る、力の使い方、持つ物の応用……。

 前に真田さんとの会話の中、自分の中に構築される相手を確実に殺す為の最短手順、それを逆手に取った不殺の戦法、発想の転換。そういった機転に関する重要性は重々承知……とは思っていたが、これが先達。力というものへの理解が俺とは位相が違う。

 

 結城といいこの人といい…………クソ、化け物だらけだな

 

 

 

───────────────────────────────

 

 数十分後 天城屋旅館 1階エントランス

 

「へぇ、若女将さんもペルソナ使いなんですか」

 

「うん、丁度貴方たちくらいの歳の時かな、ある事件に巻き込まれた時に」

 

「言うとくけど、雪子ちゃんめっちゃ強いで?そらもう燃え盛る炎でもうえいやソイヤと」

 

「そんな掛け声してないよ?!」

 

 旅館に戻ればエントランスのソファーに座って綾崎とラビリス、そして若女将である天城雪子さんがそんな談笑をしている。

炎…そういえば綾崎のペルソナのオグニイェナも火炎属性を主体としていた、とすれば綾崎が手本とするなら彼女なのだろう。まぁ本人の性格っていうのは雲泥の差があるが

 

「玖城、今すごい失礼なこと考えたよね?」

 

「気の所為、暑さのせいで錯覚してんじゃね?」

 

 そんな綾崎を無視して俺もソファーに腰を下ろす。皮ではない、ふんわりとしたその座り心地に身を委ねるこの感覚、旅行の醍醐味という訳じゃないが、旅館に来ると割と味わうような気がする。

 

「え?鳴上君?」

 

「ホンマや鳴上くんやん!え、なんで?!」

 

 なるほど、この2人は鳴上さんと面識…というかかなり繋がりがあるようだ。

 

「去年の元旦以来かな天城、久しぶり。ラビリスも2年ぶりくらいか」

 

「せやね、あの時はご迷惑をお掛けしました」

 

「あ、ラビリスまた謝ってる。」

 

 そんな会話をしていればほかのメンバーも徐々に集まってくる。やけに恨めしそうにこちらを見てくる人物が居るが無視。何かを言いたげだが、それに応えてしまうと要らぬボロを出しそうなので勘弁してくれ久遠。

 

 しかし話にだけは聞いていた鳴上さん。その実力は先程身をもって体験した、あれと肩を並べていたというのだから天城さんも相当な手練だろうことは想像ができる……が、やはり雰囲気として伝わってこない。

 それほどこの2人は自然体なのだ、俺達のように常にどこかしらがギラついてはいない。

 

 それで言うと真田さんやみつ姉、真千琉さんなんかもこのふたりと同じ側だろう。ある意味そういった普段と戦時での切り替えの上手さ、それが力の運用力に繋がるのかもしれない。

 

 なんだっけ?力み無くして解放のカタルシスは成立しない……だっけ?あ、でもこれだと逆か。他としたらあれか、緩みからの急激な力みによる衝撃的な。まぁ

 

「知らんけど」

 

「どうしたの玖城?」

 

 怪訝そうな顔を向けてくる天田。ただの独り言にそこまで反応されても困る。

 

「なんでもねぇよ」

 

「そっか」

 

 俺達も、その位置に何時か立てるのだろうか?今はまだ想像もできねぇ……いや、そういえば一人、南雲は割とそういった能力が高かった気もする。常にギラついてはいるが、普段と戦時のそれは全くの別枠と言える。

 

 認めたくないが、アイツはそういう面では俺達の誰よりも先に立っている、だからこそ結城に一撃を叩き込めたのかもしれない。

 

『続いてのニュースです。観光地で有名なハワイ、そのワイキキビーチにて現地マフィアグループメンバーが観光客と思われる集団と乱闘騒ぎが発生。現在は現地警察によって鎮圧されていますが、観光客と思われていたグループは発見されておらず、現在調査中です。

 

 続いては天気の話題です。梅雨前線も過ぎ、明日から本格的に夏日が多くなる見込みです。各地で熱中症及び熱射病による健康被害に備えていくことが大切でしょう。次に週間天気予報です。明日から───』

 

 ………あれ、なんかデジャブ感じるな。なんでだろ?

 

「そっか、もうなんやかんやで夏なんだなぁ」

 

 テレビに映る天気予報図をぼんやりと眺めながら栂和さんが呟く。

 

 夏。春先からここまで本当に色々なことがあったと思う。影時間に巻き込まれて、ペルソナを覚醒して、そして───

 

「…………………」

 

 人を殺した。覚醒時の半暴走状態でのあの出来事は今でも鮮明に覚えている。ペルソナ越しにとはいえ殴り飛ばした時の重み、蹴り潰した時の感触、切り刻んだ時の血飛沫の形に至るまでまだ目に焼き付いている。

 

 ああしなければ天田とコロマルが助かっていなかった。そう言われたとしても俺が命を奪ったという事実がそこにある。この手に墨汁か塗料のようにこびり付いて濯げない。

 

「紗菜が死んでから、もう1ヶ月なんだ……」

 

 綾崎の言葉が俺達の間に流れていた空気に重さを落とす。力を得て、戦って、そしてその中で初めて目に見えた犠牲者。

 

 中田紗菜。元クラスメイト、そして久遠の古くからの友人だった少女。俺にとって彼女はその他大勢の1人でしかなかった。

 故に悼めない、悲しむこともできない。何故かその事実は酷く俺に伸し掛った。そして今もまだそれは晴れはしない。

 

 俺は彼女のことをあの時より知れているのだろうか?追えているのだろうか……?それの答えは誰からも帰っては来ない。故に俺にできることは忘れないでいることだけなのだろう。

 

 ……空気は晴れない。こういう時あの不感症が居たなら場の空気も読まずウザ絡みするのだろうが生憎、あれはハワイに居る。

 まぁ居たとしても空気を読むことをしないアイツだ。空気を変えて欲しいという俺の気持ちなど汲んでくれる訳もなくそのまま何処かに出て行く可能性の方が高いだろうな。

 

 ……………………………クゥ〜

 

「あっ………」

 

 そんな中でもやはり人間は腹が減る。先程まで神妙な顔をしていた綾崎が今度は音のなった自身の腹部を隠して俯いている。

 

「……くっ……」

 

 それ最初に失笑を零したのは久遠。それに続き天田が、栂和さんがと順番に笑いを零して行く。こんなふうに沈んでいても人間の生理現象というものは働いている。

 まるで俺達には立ち止まっている暇はないと言うように、もしくはこんな空気は似合わないと笑うように変わらずに。

 

 

 

──────────────────────────────

 

 同日午後3時

 

 皆が食事を終えまた散り散りに行動する。俺はやはり飯は食えてはいない。

 

「テレジア、言いたいことがありそうな顔だな」

 

「顔に出てますか?機械なのでそんなことは無いと思うのですが」

 

「出てねぇよ、多分言うだろうなって思っただけ」

 

 そしてこの場に残っている俺とテレジア以外、ラビリスと久遠も似たようなことを言いたげだ。

 

「わかっちゃぁいるんだよ、というか多分綾崎はともかく天田や栂和さんはもう気づいてるだろうなぁ」

 

 そりゃそうだろうと、口にして見れば当たり前だ。同じ寮に住んでいて一度も食の時間が被らないことなど有り得ない。綾崎はと省いたものの、アイツは案外察しがいい、わかった上で気づいてないことを装っているのかもしれない。

 たまにしか来ない大人達に、特にみつ姉にバレてはいないという状況は理想的だがいつ破綻してもおかしくない。彼らのうち誰かが報告しない……とは言いきれないからだ。

 

「心配かけたくねぇってのはわからんでもねぇよ、私だって同じ状況なら姉さんに言わずにいるかもしれない。

 だがそれで周りに気を遣わせちまってるならせめてもう少し知ってるヤツを増やした方がいいんじゃないか?」

 

 久遠の言葉が耳に痛い。確かにその通りだ、現にコイツには負担をかけてしまっているのも事実。それにラビリスにも黙ってもらっている手前、守秘行動によるストレスを与えていると言っていい。

 

 わかっちゃいるんだよ、ただ

 

「ビビってるん?」

 

 カッチーン。と、素の俺ならそのまま反論するような言葉だが今の現状、それこそが事実だろう。

 

「みつ姉や真田さんがこれを知ったら間違いなく俺を戦いから遠ざけようとするだろうからな」

 

 だが、本当になんとなくだが、戦うことを辞めてしまうことこそが、致命的な事態を運んでくるようにも感じてる。

 

 予感じゃない、なんとなくじゃない。確信として俺の中にある。おそらく俺が戦わないと決めた瞬間、俺は死ぬ。比喩ではなく本当に。

 脳裏によぎるメサイア影神の、マグサリオンの顔と視線、そこにあるだけで俺を死に至らしめる程の格と憎悪、憤怒。戦いを辞めた時、おそらくあれは外ではなく内に、俺へ向けられる。遥か昔から、俺が生まれるよりも前から確定している事実かのように俺には思えている。

 

 心配をかけたくないからという思いはある。だがそれと同等以上に死に対する恐怖が現状を大人たちに知られるという事態を恐れさせている。

 

「……だが…そうだな、やはり言うべきなんだろうな。」

 

 恐怖は決して拭えない。今あれが俺に牙を向けば、俺に抵抗する為の力はない。当然のように殺されるだけだ。

 しかし、それで周りに心配を掛けさせ、負担を掛けさせ続けるのは良くない。少なくとも今の状況、俺達よりも遥かに強い敵が確認できてしまった今、そんな負荷はコイツら全員の命に関わるものになる。

 

「なら、今ここに居ない天田さん、綾崎さん、そして栂和さんには」

 

「言うべきだろうな。真千琉さんには…どうするかな、あの人はみつ姉の立場に近いからな…」

 

「なら言わない方がいいだろう」

 

 意外なことに久遠がそれを言った。てっきり信頼して話すべきと言うと思ったが

 

「簡単な理屈だ、真千琉姉さんは過保護なんだよ。お前がどんなことを言っても、そんな状況なら黙って大人しくしてろって言って絶対に縛り付けて桐条の総帥に報告する」

 

 成程、よく知っているが故に何をするかもわかるってことか。ならあとは3人にいつ言うか………

 

「……旅行明けでいいかな?」

 

「ダメです」「アカン」「もう呼んだ、腹くくれよ」

 

「あぁ、取り着く島がなぁい…」

 

 

 

 




雪解(ほど)け……少し狙い過ぎたかな?

ひとまずまだまだ夏は始まったばかり。現実でももう時期夏か…早いなぁ…

八十稲羽編はまだまだ続く
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