最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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悪魔討伐2回目!国王涙目

 会議室の空気は、重苦しいものだった。

 

 小人の国による突然の侵攻、そして竜姫による圧勝。

 

 魔王軍にも対魔王同盟にも属していなかった中立国が、このタイミングで全面戦争を仕掛けてきた。

 その背景を推測できる者はいても、確定的な証拠を示せる者はいなかった。

 

 国王は腕を組み、静かに考え込んでいた。

 彼の周囲には、大臣たちが並び、それぞれ難しい顔をしている。

 

「これで我が国は、魔王軍、対魔王同盟、そして小人の国……三者から注目を浴びる立場になった」

「まさか、たった一度の戦いでここまで情勢が動くとは……」

 

 大臣たちは一様に困惑していた。

 貴族的な思考を持つ彼らは、『想定外の勝利』ほど厄介なものはないと知っている。

 

 しかし、その空気は――

 

 ガチャッ!

 

 扉が開いた瞬間、すべて吹っ飛んだ。

 

「急ぎの話って聞いたんだけどー?」

 

 軽い口調で、竜の姫君が現れた。

 

 しかし、彼女の姿を見た大臣たちの視線は、すぐに別のものへと釘付けになった。

 

 ぶらんぶらんと揺れる、巨大な猪型の悪魔。

 

「……あ、これ小人の軍を監視してたっぽい悪魔」

 

 主人公は、悪魔の両手両足の先をまとめ、片手でヒョイッと掴んでいた。

 まるでスーパーの袋でも持ち運ぶように。

 

「ころして……」

 

 その悪魔は、全身にブレスでこんがり焼かれた跡を残し、虚ろな目で呟いていた。

 皮膚は炭のように焦げ、蹄はひび割れ、牙すら黒ずんでいる。

 

 国王を含め、会議室の全員が言葉を失った。

 

(……生きてるのか、これ?)

 

「……宝物庫より聖剣を持ってこい」

 

 国王は、すぐに決断を下した。

 

 この悪魔がどのような役割を持っていたかは問題ではない。

 『悪魔を滅ぼす』という事実そのものが、王の力を示す行為なのだ。

 

 ほどなくして、王宮の奥から神々しい輝きを放つ聖剣が運ばれてきた。

 

 国王は静かに立ち上がり、猪型悪魔の首元に剣を突き立てる。

 

「我が国の名の下に、滅する」

 

 ズバァァァ!!

 

 聖剣が振り下ろされると、猪型悪魔の身体は光に包まれ、消滅していった。

 

 その最後の瞬間――

 

「……ありがと……う……」

 

 ――まさかの感謝の言葉を残して、悪魔は完全に消滅した。

 

「な、なんということだ……!」

「二度も悪魔を滅ぼされた国王陛下!!」

「これこそ我が国の誇り!!」

 

 大臣たちが、まるで神話の英雄を讃えるように国王を褒め称え始めた。

 

 実際、この世界では『悪魔殺し』というのは極めて困難な偉業であり、

 二度も成功した国王は、ドラゴンの助力があったとはいえ十分に偉大な王として語り継がれるレベルの存在になったのだった。

 

 一方で、俺はそんな周囲の熱狂をよそに――

 

 ――周囲への被害をまったく考えずにくしゃみしても、殺しきれるかわからなーものを殺せるなんてすげー

 

 と、妙な感心をしていた。

 

 そして、ふと考える。

 

 ――次の悪魔もいたら、また捕まえて持ってこよう

 

 国王の聖剣なら確実に悪魔を滅ぼせる。

 ならば、俺の手間も省けるし、国王の名声も上がるし、これは良いシステムなのでは?

 

 ――俺、マジで天才では?

 

 ……と、思ったその時だった。

 

 国王は、俺の顔を見た瞬間――

 

(まさか……竜の姫君、今後も悪魔を持ち込む気では……!?)

 

 彼は一瞬で悟った。

 

 そして、王としての威厳を保ちつつ、内心めちゃくちゃ落ち込んだ。

 

 国王は、静かに天を仰ぎ、考える。

 

(……王としての尊厳とは、一体何なのだ……)

 

 そんな国王をよそに、俺は呑気に聖剣を眺めながら――

 

「すげーな、これ」

 

 と、ただの感想を漏らしていた。

 

 

「で、結局小人の国はなんで攻めてきたの?」

 

 俺は椅子の上でゴロゴロしながらそんなことを言った。

 

「……確かな情報はまだ得られていない。推測はできるが、断言はできん」

 

 国王は真面目な顔で話し始めた。

 

「もし先ほど滅ぼした悪魔が、小人の国と関わっていたのなら……魔王軍の陰謀かもしれん」

 

「なるほどねぇ」

 

 俺は適当に相槌を打ちながら、椅子の上でさらにダラける。

 

「小人の国の戦力は、今回の侵攻でほぼ使い果たしたと見ていい。

 最低でも一個軍は戻さねば、国が崩壊しかねない」

 

「ふーん、そりゃ大変だな」

 

「さらに、今回の戦争の賠償をどうするかも決めねばならん。

 竜の姫君が、ほぼ単独で勝ったようなものだから、決めるのも当然、姫君ということになる」

 

「……は?」

 

 俺は上半身を起こし、国王をジッと見つめた。

 

「待て待て待て、それ俺が決めるの?」

 

「当然だ」

 

「いやいやいやいや、俺は気持ちよく暴れたり、気持ちよく過ごしたりしたいだけで、面倒なことは全部他人にお願いしたいんだが?」

 

「それは困る」

 

「俺も困るんだが?」

 

 国王と俺の視線が交錯する。

 

 俺は、ただ楽しく自由に生きたいだけだ。

 戦いたければ戦うし、寝てたければ寝る。それだけの話。

 

 だけど国王は、俺に何かしらの立場を持たせたがっている。

 

「姫君ほどの力を持つ者が、社会的な地位を求めぬなど、あまりにも異例。

 せめて、魔王軍と敵対する立場を明確にすべきではないか?」

 

「うーん、それはそれで……めんどくさい」

 

 押し付け合いが続いた結果、国王側から意外な情報が出てきた。

 

「……小人の国は、魔法や魔法的な力で金属を加工する技術に長けている」

 

「へぇー……」

 

 ちょっとだけ興味が湧いたが、まぁ俺の手間が増えるのは嫌だな。

 

 俺は数秒だけ考え――

 

「そうだ! 俺、王妃様を魔女って呼んだの反省した!」

 

 と、思いついたように叫んだ。

 

「……?」

 

 国王が眉をひそめる。

 

「だから、謝罪の気持ちを用意するのを、今回の報酬ってことで!」

 

「……は?」

 

「俺は深く反省している。だから、豪華な衣装を王妃様にプレゼントすることで、この話は解決!」

 

 もちろん、一応謝罪の気持ちはある。

 9割方「面倒な義務を回避するための方便」だけど。

 

 国王は一瞬、俺の顔を見つめ――

 

「…………」

 

 深々と、ため息をついた。

 

 結局、話はなかなかまとまらなかったが――

 

 ・小人軍の半数を、小人の国に帰還させる

 ・残り半数は、食料は王国が負担し、魔王軍との戦闘に使う

 ・王妃様への謝罪として、俺から豪華な衣装を贈る

 

 この三点で決着した。

 

「やったぜ!」

 

 俺はガッツポーズをしながら、心の中で勝利を確信した。

 

 ――これで俺の仕事は終わり! 面倒事回避成功!!

 

 国王は疲れた顔で俺を見つめながら、ぼそりと呟く。

 

「……まったく……」

 

 

 場面は変わり、王宮の広間。

 

 国王と王妃の婚礼の場が、華やかに飾られていた。

 

 国王の隣には、妖艶なデザインの衣装を身に纏った王妃がいた。

 しかし、その王妃の顔は……涙目で真っ赤だった。

 

「……」

 

 恥ずかしさのあまり、顔を伏せる王妃。

 

 国王は、魅了されたように王妃を見つめている。

 

 ――あー、すげー綺麗だなー

 

 俺はその様子を眺めながら――

 

「んまい!」

 

 と、口にした林檎をかじった。

 

 王妃からの返礼として贈られたものらしいが、普通に美味い。

 

 ちなみに、これには毒が仕込まれていたらしいが――

 

 もちろん、俺が気付くわけもなく、美味しく完食した。

 

 続く。

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