最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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邪竜討伐! なお傷すらつかない

 王宮での暮らしは、だいぶ板についてきた。

 

 美味い飯、最高の風呂、ふかふかのベッド。

 

「王宮サイコー!!」

 

 俺は湯船の中で手足を伸ばしながら、大声で宣言した。

 

 周囲の女官たちが微笑ましそうに俺を見つめている。

 この生活、正直もう抜け出せる気がしない。

 

 しかし、最近の俺は、単に怠惰な生活を送っているわけではなかった。

 

 最近の俺は、王宮の女官たちから学問を学んでいる。

 

 歴史、農業、政治、経済、その他いろいろ。

 一人の女官がすべての分野に詳しいわけではないので、分野ごとに講師が違う。

 

 最初は「めんどくせぇな」と思っていたが、実際にやってみると意外と楽しい。

 

「必要に迫られてする学習はつれーけど……」

 

 俺はぼんやりと考える。

 

「趣味でする学習は、なぜか楽しいんだよな……」

 

 これは、日本人だった頃の記憶から来るものだろう。

 テストのための勉強は嫌いだったが、興味のあることを調べるのは楽しかった。

 

 ……まぁ、問題は俺の頭の出来が平均的な日本人かそれ以下なせいで、学んでもほぼ身についてないことなんだけど。

 

 それでも、女官たちが面白エピソードを交えながら教えてくれるおかげで、俺は毎日楽しく勉強していた。

 

 しかし、そんな王宮ライフの中で、俺はあることに気づいた。

 

「……そういや、ここ数日、国王見てなくね?」

 

 普段なら、謁見の間や廊下で見かけるはずの王様が、まったく姿を見せない。

 

「まぁ、忙しいのか?」

 

 そう思って流そうとしたが――

 

 どうにもモヤモヤする。

 

「王女様に聞いてみるか」

 

 俺は、王女様のもとを訪ねた。

 

「王女様ー、国王って今何してるの?」

 

 王女様は、一瞬だけ視線を逸らした。

 

「……ええと、父は……少し、お忙しいのです」

 

 ――お? なんか誤魔化してる?

 

「ふーん?」

 

 俺はニヤリと笑ってツッコもうとしたが、王女様の表情が微妙に真剣だったので、深入りしないことにした。

 

「まぁ、いっか」

 

 王女様に妙なプレッシャーをかけるのも悪いし、そのうち分かるだろう。

 

 俺はひとまず、気にしないことにして、いつも通り王宮ライフを満喫することにした。

 

 しかし、運命とは皮肉なもので――

 

 俺はたまたま、国王と王妃に遭遇することになった。

 

「おっ、王様!」

 

「む……竜の姫君か」

 

 久々に見る国王は、どこか疲れた様子ではあったが、妙に自信に満ちた表情をしていた。

 何かを達成した男の顔、という感じだ。

 

 そして、その隣には――

 

 王妃。

 

 相変わらず、ソシャゲに出てくる露出度たけー魔女みたいな雰囲気だったが……

 

 なぜか異様に艶々していた。

 

 俺は一瞬、彼女の姿に釘付けになり――

 

 ゴクリ、と生唾を飲み込んでしまった。

 

 王妃は、俺の視線に気づいたのか、「フン」と鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 

 ――いや、そんな態度されても……普通に色気がヤバいんだが!?

 

 が、それ以上に、彼女の表情には微妙な悔しさが滲んでいた。

 

(あれ? なんか不満そう?)

 

 ひょっとしてマジでこの国で陰謀でも企むつもりだった?

 でも、それができなかった?

 

 王妃の艶々っぷりと、妙に満足げな国王。

 

 そして、悔しそうな王妃の表情。

 

 俺は全てを察してしまった。

 

「王妃はやらんぞ」

 

 国王が、無言の圧を放ってきた。

 

 俺は、軽く肩をすくめ――

 

「寝取りは趣味じゃねーよ」

 

 と、同じく無言の圧で返した。

 

 そのまま数秒間、沈黙が続く。

 

 ……これ、第三者から見たら、ただ目を合わせてるだけだよな?

 

 王妃が不機嫌そうに「勝手に決めないでください」とでも言いたげな視線を向けるが、

 俺は心の中で「いや、ガチで興味ないんで……」と念じておいた。

 

 こうして、俺と国王の間で繰り広げられた謎の心理戦は、何の決着もつかぬまま幕を閉じた。

 

 

 そんな状況により――

 

 王女様が代理的な立場で、大臣たちの報告を聞いていた。

 

「王女様、お疲れ様です」

 

 俺は、のんびりと王女様の隣の椅子に座る。

 ここ最近、王女様と一緒にいる時間が増えてきた。

 

 理由? いや別に……。

 

「姫様がいらっしゃると、やはり安心いたします」

 

 ……うん、なんか周りの大臣たちが俺を見る目が生暖かい。

 

 違う違う、俺はただ、王女様の用意してくれるメシと風呂が最高だから近くにいるだけなんだって!!

 

 ガシャァァァァン!!!

 

 その時、窓ガラスが爆音とともに粉々に砕け散った!!

 

「ここが王宮か!! 悪しきドラゴンよ、覚悟しろ!!!」

 

 金髪のポニーテール、短パン、鋭い瞳。

 そして、手にはやたら神々しく輝く剣。

 

 まるで「悪いドラゴンを倒しに来た正義の勇者」そのものな風貌の少女が、窓から乱入してきた。

 

「……え?」

 

 俺は、目の前の金髪少女を見つめる。

 

 勇者っぽい。

 いや、まんま勇者だな、これ。

 

「はっはっは!! ついに見つけたぞ!!」

 

 少女は、いかにも悪役を見るような目で俺を指差した。

 

「貴様がこの国を乗っ取った邪悪なる竜の姫君だな!!?」

 

「いや、違うけど?」

 

「黙れ!!!」

 

 俺の返答は一瞬でスルーされた。

 

「魔王を討つのは勇者の使命!!

 だが、お前のような悪しき竜も討つ!!」

 

 そう叫びながら、勇者は一瞬で間合いを詰めてきた。

 

 シュンッ!!!

 

 まるでワープしたような速度で俺の目の前に現れ、鋭い一閃を放つ。

 

 ヒュッ……スパァァン!!!

 

 俺は格好良く迎撃しようとして、失敗した。

 

「いってぇぇぇぇぇ!!!」

 

 勇者の剣が俺の顔に直撃した。

 

 そして、俺の目からは涙が滲んだ。

 

 勇者が俺の表情を見て不敵に笑う。

 

「どうした? 痛いか!? さすがの邪竜でも、勇者の剣には敵わないようだな!!」

 

 俺は涙目になりながら、顔を押さえる。

 

「……普通に痛いんだけど!? なにこれ、カウンター技!? ズルくね!?」

 

「あんたが自分から当たってきたんでしょ! これは聖なる一撃!!」

 

 勇者は自信満々に宣言するが――

 

 勇者の剣には一滴の血もついていない。

 

「……え?」

 

 気付いた勇者が俺の顔をまじまじと見る。

 

 俺の肌には、かすり傷すらない。

 

 俺が反撃のため力を込めると、大理石の床に俺の足を中心にひび割れができた。

 

「え? ちょ、待って……」

 

 勇者は、急激に不安そうな顔になった。

 

「……なんで、ダメージが通らないの?」

 

「知らんよ、こっちが聞きてぇわ!!」

 

 こうして、勇者による「竜の姫君討伐作戦」は、初手で失敗した。

 

 続く。

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