最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

19 / 44
俺の姫力が高すぎてドラゴンが求婚してきた件

「……まだかなー」

 

 俺は豪華なソファに寝転がりながら、ワクワクした気分で待っていた。

 

 そう、「対ドラゴン武器」シリーズの新作が届くのを!

 

 前回、「ドラゴンを殺すための剣」 で爪を切ったときの感動は、未だに忘れられない。

 あの鋭い切れ味! そして、何の苦労もなくスパッと整う快適さ!

 

「これで爪が切れるなら、髪も、無駄毛もいけるんじゃね?」

 

 そう考えた俺は、魔法大国に対して追加の発注を行ったのだ。

 

 ――対ドラゴン武器による究極の美容セット!

 

 ――髪を切るための剣! 無駄毛を剃るための短剣!

 

 ――これさえあれば、俺の美しさがさらに磨かれるはず!

 

 ――まあ、王女様に褒められるのが一番嬉しいんだけどな!!

 

「姫様、ご注文の品が届くにはまだ数日かかるかと……」

 

 女官が苦笑しながら言うが、俺の期待は止まらない。

 

 だってほら、俺の髪、めっちゃ手間かかってるじゃん?

 

 今も、美容技術を持つメイド達が、俺の髪を何人がかりで整えている。

 彼女たちは真剣そのもので、まるで職人のような眼差しだ。

 

 ――そうだよな。これがあればメイド達の苦労も減るはず!

 

 だが、髪を手入れされるのが気持ち良すぎて、俺のまぶたは次第に重くなっていく……。

 

「……すぅ……すぅ……」

 

 しばらくして、俺は目を覚ました。

 

「姫様、仕上がりました」

 

 メイド達が、俺の前に大きな鏡を運んでくる。

 

 俺がそこに映る自分を見た瞬間――

 

「おおっ……!」

 

 美しい――!

 

 奴隷オークション会場で目覚めたときよりも、はるかに磨かれた姿。

 さらに、手入れ前と比べても、明らかにクオリティが上がっている!

 

「これでついに……王女様を超えちゃったかな?」

 

 かなり調子にのった俺がつぶやくと――

 

「王女殿下の方が美しさは上です」

 

 鏡が断言した。

 

「……へ?」

 

 思わず鏡を二度見する。

 

「腹話術? 声も変えてるの?」

 

 不思議に思って女官を見ると、彼女は少し苦笑しながら答えた。

 

「王妃様が手放された鏡です」

 

 俺の思考が一気に巡る。

 

 ――白雪姫のストーリー、いつの間にか始まって、いつの間にか終わってた!?

 

 だが、それよりも――

 

「これって……あの 魔法の鏡じゃね?」

 

 俺は好奇心でキラキラと目を輝かせる。

 

「やっぱり一番美人なのは王女様だよな?」

 

 何気なく聞いてみると――

 

「美人というなら、紅のドラゴンです」

 

「……は?」

 

 俺は、王女が一番じゃないという事実に驚く。

 というか、紅のドラゴンって何!?

 

 俺の頭の中に、新たな疑問が渦巻いた――。

 

 

 次の日。俺は謁見の間に招かれていた。

 

「王妃が懐妊した!」

 

 国王の発表により、王宮は大騒ぎになった。

 

 俺はというと――

 

「へぇ、よかったじゃん」

 

 俺はゆる~く祝っていた。

 

 ――あのとき、王妃はかなりショック受けてたけど大丈夫だったのか? まあ、こういう発表があるってことは、大丈夫なんだろうけど……

 

 心のどこかで心配しながら、ふと隣を見る。

 

 王女が小声で俺に耳打ちしてきた。

 

「魔女の方は体が頑丈なので……。姫様ほどではないですが」

 

 つまり、王妃はタフだった。

 

 ――王様、頑張ったんだな

 

 俺は少しだけ国王に敬意を抱きながら、謁見の間の光景をぼんやりと眺める。

 

 そんな中――

 

「ほう、ここが人間の王国 か」

 

 その声は、あまりにも堂々としていた。

 

 次の瞬間、謁見の間の入り口から、男のドラゴンが歩み入る。

 

 紅のドラゴン。

 

 髪は赤く、外見は超絶美形。

 俺と同じく角と翼を持つ、まごうことなきドラゴン。

 

 だが、違う。

 

 こいつは――

 

「なんか、嫌な目してんな……」

 

 直感で思った。

 

 何かこう、俺がめっちゃ嫌がる系の視線を感じる。

 

 ――おい、こいつ、こっち見んな

 

 ゾワッとした。

 

 いや、分かる。確かに俺は美しい。

 

 メイド達の渾身の技術によって、爪先から髪の先まで完璧な状態になった俺の姿は、間違いなく美しい。

 

 でもな?

 

 この目線、なんかこう――

 

「お前は、まだ幼いが……私のつがいとして問題ない」

 

「は?」

 

 ――つがいとして問題ない?

 

 ――俺が? お前の? は???

 

 紅のドラゴンは、さらに堂々と続ける。

 

「お前の存在が最近聞こえてくるようになった。どんなドラゴンかと思えば……なるほど、確かに相応しい」

 

「……いやいやいやいや、待て待て待て待て待て」

 

 何がどう「相応しい」なのか、具体的に聞かせてもらおうか?

 

 でも、それより何より――

 

 ゾワゾワゾワッ!!!!

 

 全身の毛が逆立つ勢いで、本能レベルでの拒絶反応 が起こる。

 

(やばい、宇宙に飛び出しかけたときと同じくらい怖い……!!!)

 

 そのときだった。

 

 俺の本能的な何かが、もうひとつ別の主張を始めた。

 

(母様(王女様のこと)にみっともない姿を見せるな)

 

 ピタッ。

 

 ――なるほど。

 

 冷静になれ、俺。

 

 いきなり叫んで逃げるとか、そういう選択肢は取れない。

 

 落ち着いて、冷静に――

 

 ぶん殴ろう。

 

「てめぇ、誰が“つがい”だって?」

 

 ドゴォッ!!!

 

 俺の拳が、紅のドラゴンの顔面を捉えた。

 

 次の瞬間――

 

 謁見の間の端まで吹っ飛び、回転しながら床に激突した。

 

 ゴッシャアアアアアアン!!!

 

 壁にめり込み、床を盛大にえぐった紅のドラゴン。

 

 俺の一撃でドラゴン式高速回転アクロバット を披露したそいつは、ピクリとも動かない。

 

(……ちょっとやりすぎたか?)

 

 まあ、今のは仕方ない。

 

 だって、心底無理だった。

 

 騎士たちが緊張しながら剣を構える。

 

 国王は「勝手に殴って大丈夫なのか?」という微妙な顔。

 

 王女だけが、「ひょっとしたら、保護者が近くにいない幼い同族を保護するために来たのでは?」 という疑問を口にした。

 

 俺は腕を組み、王女を見つめる。

 

「……そうなの?」

 

 すると、床に転がっていた紅のドラゴンが、顔をしかめながら体を起こした。

 

「その通りだ」

 

 ――マジか。

 

 紅のドラゴンは、顔を払いながら堂々と言い放つ。

 

「……いきなり殴り飛ばされたのは、納得いかんがな」

 

「いや、お前の目線が悪い」

 

 ――お前、完全にそっちの目線だったぞ!?

 

「俺が悪いみたいな空気出すな! そっちがまず『つがいになれ』とか変なこと言い出したんだろ!! しかも俺、お前にとっては幼いんだろ!!!」

 

「変ではない。ドラゴンの価値観では自然なことだ」

 

「俺の価値観じゃありえねーよ!!!」

 

 紅のドラゴンは、ドヤ顔で続けた。

 

「……とはいえ、分かった。貴様はまだ幼い。即座に受け入れられぬのも当然」

 

「受け入れる気は一生ねぇけどな!?」

 

 俺は全力で拒絶の姿勢を取った。

 

 つーか、このままじゃ解決しない気がする。

 

 俺は一応、謝っておくことにした。

 

「いきなり殴ったのは悪かった。俺、保護者が必要な年齢だって知らなくてさ。気遣ってくれたことは嬉しい。感謝してる」

 

 紅のドラゴンは、「分かればよい」と満足げに頷いた。

 

 が――

 

「けどアレな目で見たのは許さねぇからな!!!」

 

 ――俺の中の怒りが再燃。

 

「お前のことはぶっ飛ばす。今後、そういう目を向けるたびにな!!」

 

 俺が怒鳴ると、紅のドラゴンは少し眉をひそめたが、すぐに落ち着いた表情を取り戻す。

 

「……ならば、鍛え直すとしよう」

 

「鍛え直す?」

 

「私が貴様より弱い状態でつがいを申し込むのは、確かに理に適わぬ。貴様を超える強さを手に入れた後、再び迎えに来る」

 

「こなくていい!!!」

 

 全力で拒否した。

 

 だが、紅のドラゴンは勝手に納得したらしく、くるりと背を向ける。

 

「ではな、我が姫君。次に会うときは――」

 

「次はねぇよ!!!!」

 

 俺の叫びを無視し、紅のドラゴンは謁見の間から飛び去っていった。

 

 残されたのは、なんとも言えない空気と、俺のうんざりした溜め息だった。

 

 ――はぁ、マジで疲れた。

 

 この日、王女様に膝枕してもらったり一緒にお風呂入ったりして気力を回復させようとしたのに、俺は落ち込んだままで翌朝まで回復しなかった。

 

 続く。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。