最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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新米神竜の日常
竜信仰、始めました(俺は聞いてない)


 魔王が滅びた。

 

 だが、魔王軍そのものはまだ健在だった。

 

 指揮系統がズタズタになって勢力は衰えたが、それでも魔王の残党たちは各地で活動を続けている。

 

 一方で人類側も、王国と俺の圧勝で内紛は終わったものの、俺が人類全体にあまり手を貸さなくなったせいで、魔王軍相手にやや優勢という微妙な戦況になっていた。

 

 いや、俺の縄張りと認識している王国とその周辺は別だぞ? そこはしっかり守る。

 

 でも、それ以外の国や人間たちに関しては……正直、そこまで興味がない。

 

 そんな状況の中、俺の神殿では奇妙な動きがあった。

 

 

「私たちも、姫様を信仰したいんです!!」

 

 王妃付きの侍女たち(相変わらず魔法少女姿)が、生意気勇者に詰め寄っていた。

 

 信仰? 俺を???

 

 思わず授業を受けながら横耳を立てる。

 

「……信仰しても利益はないわ。 それに、別に信徒の募集とかしてないから」

 

 生意気勇者が冷静に返す。

 

「ご利益はなくてもいいから! そこにもう信徒がいるじゃない!」

 

 侍女たちが指さしたのは、俺の神殿で過ごしている人々だった。

 

 そこでは、俺が魔界から救出した人々の中にいた子供たちが、王宮から派遣された女官たちの授業を受けたり、遊んだりしている。

 

 俺も混ざってるけどな!!

 

「信仰というより、普通に子供の教育の場になってるんだけど……」

 

 俺はちっちゃい椅子に座り、絵筆を握っていた。

 

 今日の授業は「絵を描いてみよう!」

 

 他の子供たちと一緒に、俺もなんとなく筆を動かしていたが、聞き捨てならない話題が出てきたので、つい顔を上げる。

 

「おい、授業の邪魔だから別の所で話をしろ」

 

 俺が侍女たちにそう言うと――。

 

「あなたを信仰すると言ってる人間に何よその態度っ! いつまでも断るのは無理!! 分かってるでしょ!!!」

 

 生意気勇者がビシィッと指を突きつけた。

 

 なんか前より口調が普通の女性っぽくなってるな……。

 

「……悪かったよ」

 

 俺はちょっと反省する。

 

 すると、教師の女官たちが機転を利かせ、生意気勇者の大声が響く前に子供たちを屋外へ誘導し、別の授業を始めていた。

 

 よくできた先生だな……。

 

 さて、俺の信仰とかいう話はどう落ち着くんだろうか。

 

 

 俺が魔界から救出した人々のうち、一部は回復し、元々所属していた組織や国へ戻っていった。

 

 ……が、まだ精神的に回復していなかったり、回復が不十分な者たちもいる。

 

 彼らは、俺の神殿の維持や警備、さらには各国の王家や組織から届く贈り物の受け取りや管理なんかをしていた。

 

「……これ、みかじめ料みたいじゃね?」

 

 贈り物の山を見て、思わず呟く。

 

「そろそろ、自分で稼ぐ方法を考えたほうがいいのか?」

 

 なんてことを考えていたら、神殿の奥で、何やら楽しげな空気が流れていた。

 

「これをここに混ぜると、どうなる?」

 

「うーん、濃度を変えたら結果も変わるかも!」

 

「試験のために人あつめるよー!!」

 

 何やら研究に没頭している人々がいる。

 

 彼らは、俺が助けた人々のうち、回復が不十分な者たちや、回復したけど自主的に俺のもとに残った者たち。

 

 元々が勇者や聖女だった連中で、知的好奇心が強いやつらが多い。

 

 だから、俺が知ってる世界の知識を元にした検証や研究を始めたのだが……めちゃくちゃ楽しそうにやってる。

 

 今の流行は、生理食塩水の研究らしい。

 

「おい、俺の知らないところで変な実験して爆発させるなよ?」

 

「大丈夫です! 今回は爆発しません!」

 

「爆発したことあるのかよ! 俺の留守中!?」

 

 そんな俺と研究班のやりとりを、大神官がニコニコしながら眺めていた。

 

「……で、なんでおっちゃんがここにいるんだよ?」

 

 俺が大神官に尋ねると、彼は少し気まずそうにしながら答えた。

 

「実は……地母神様が甘味の研究を望まれているようで……」

 

「……は?」

 

 女神様(地母神)、いや恩とかないのが分かったからあの女神でいいや。何考えてる?

 

「アイツ、俺の監督をするって言ってなかったか?」

 

「はい。でも、どうやら『スイーツの開発こそが、この神殿の最優先事項』という結論に達したようで……」

 

「ねーよ!!!」

 

 何してんだよ女神様ァァァ!!!

 

 俺が頭を抱えていると、王女様の姿が目に入った。

 

 彼女は王妃付きの侍女たちと話し合っている。

 

 どうやら、侍女たちの信仰の件について、色々と条件をつけて調整しているようだ。

 

 まあ、王女様が話を持ってきたら俺は即受け入れるし、王女様自身も俺が不利になるような話は絶対にしない。

 

 ――つまり、もう話がまとまりかけてるな。

 

 そう思っていたら、大神官が俺をじっと見てきた。

 

「姫様……王女様に加護を与えましたか?」

 

「……は?」

 

 何それ、俺そんなことした覚えねえぞ?

 

 俺が怪訝そうにしていると、横から生意気勇者が少し嫉妬混じりに口を挟んできた。

 

「……寝ぼけたときや寝起きのときに、近くに王女様がいたら体をすりつけているの、自覚がないの?」

 

「………………え?」

 

 ちょっと待て、それどういうこと!?

 

「完全に無意識っぽいけど、猫のマーキングみたいになってるわよ」

 

「いやいやいや、俺、そんなこと……」

 

 ――思い返してみる。

 

 たまに、寝ぼけながら何かにすりすりしてた気がする。

 

 あれ、王女様だったのか!?

 

 そういえば、最近の王女様、なんか美貌に磨きがかかってる気がするし……いやいやいや!

 

「ま、待て待て待て!! それは偶然だろ!!」

 

「……でも、王女様の美貌と生命力が向上してるのは事実よ」

 

「………………」

 

 どうやら俺のドラゴンとしての本能が、本当に王女様を強化していたらしい。

 

 俺は頭を抱えた。

 

 無自覚にやることがデカすぎる。

 

 ――まあ、王女様が元気で美しいのは、いいことなんだけどな?

 

 こうして俺は、今日も神殿で予想外の事態に巻き込まれつつ、なんとかやっていくのだった。

 

 続く!

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