最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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暴力反対! と叫ぶ悪魔

「ちょ、ちょっと待て!! 暴力反対!!」

 

 突然、俺の目の前で悪魔が命乞いを始めた。

 

 ――いや、何? どういうこと?

 

 俺は反射的に拳を振り上げていたが、寸前でピタリと止める。

 

 というか、あと数ミリで顔面にめり込むところだった。

 

「……お前、俺に敵意あるのか?」

 

「ななな、ない!! 誤解を招くようなことは何一つしていない!!」

 

 悪魔が全力で首を振る。

 

 いや、そもそも何でこんな状況になってるんだ?

 

 俺はじろりと魔女を見た。

 

「説明しろよ」

 

 すると、魔女は**「あー、やっちまったかねぇ……」と渋い顔をした。

 

「……はやまったかねぇ」

 

「どういう意味?」

 

「まあまあ、落ち着きな。まずはあんた、神竜(見習い)ってのをもう少し自覚したほうがいいね」

 

 ……いや、俺もそう思うけどさ!?

 

 魔女は俺の反応を見て、ふっと肩をすくめる。

 

「一定の条件を満たせば、悪魔を介して魂を扱う契約をしてもいいと神々も認めているんだよ」

 

「はあ?」

 

 俺は疑わしげに睨む。

 

 すると、横で話を聞いていた生意気勇者が「……あ」と微妙な顔になった。

 

「そういえば昔、神官様がうっかり口を滑らせてそんな話をしてたような……?」

 

 大神官、何やってんだ……。

 

 悪魔は、俺の表情が険しいままなのを見て、びくっと震えながら言った。

 

「地上や天界の価値観では邪悪かもしれぬが、悪魔には悪魔の理がある……。」

 

「ほう?」

 

「……だから殺気を向けないで!!」

 

 めちゃくちゃ怯えてるなコイツ。

 

 まあ、俺のくしゃみ(ドラゴンブレス)一発で魔王すら吹っ飛ぶんだから、悪魔からしたら怖いのも当然か。

 

 とはいえ、このままだと話が進まないな。

 

「……仕方ない、天界に聞いてみるか」

 

 俺は渋々、天界との通信を試みる。

 

 ……が。

 

『はい、こちら戦の神の秘書官です』

 

「あ、間違えました」

 

『はい、戦火と炎の神の従属神です』

 

「だから違うって!!」

 

 間違い電話(?)の連続!!

 

 神界、こういうの本当にやめてほしい!!

 

 何度も試行錯誤し、ようやく――。

 

『はいもしもーし……あんたかー。何か用?』

 

「女神様(地母神)!! やっと繋がった!!」

 

『……あんた、私に何も送ってきてないよね?』

 

「えっ……?」

 

『スイーツ』

 

「わ、わかった!! 後で送るから、頼みがある!!」

 

『よろしい』

 

 女神様(地母神)は機嫌を直したらしく、軽い調子で説明を始める。

 

「つまり、悪魔の言ってることは本当?」

 

『うん。魂の契約は、すごく腹が立つけど厳密にルールを守ってるなら問題なし。でもなー……』

 

「でも?」

 

『契約変更には特別な許可が必要。あと、魔女の関与は微妙に面倒な問題になるのよねぇ』

 

「……つまり、俺が関わることで解決するってこと?」

 

『そういうこと』

 

 ――ややこしいっ!!!

 

 俺が話に巻き込まれたのは、魔女を毛嫌いする神が多いのと、契約変更に神の許可が必要だかららしい。

 

 で、俺はたまたま魔女に友好的だったから、都合よく利用されたってわけか……。

 

「……まあ、いいけどな」

 

 俺は溜息をついて、契約変更を進めることにした。

 

 こうして、俺と魔女と悪魔の手によって、契約は変更され、人魚姫は元の状態に戻った。

 

 ただ――。

 

「うぅ……」

 

 人魚姫は、失恋のショックでしょんぼりとうなだれていた。

 

 そんな彼女を、生意気勇者が懸命に慰めている。

 

 ……まあ、今回はこれで解決ってことでいいか。

 

 俺は、結婚式のことをすっかり忘れていた。

 

 

 数日後。

 

「あなたは、結婚式ってものをわかってない!」

 

 生意気勇者が拳を握りしめながら俺に詰め寄ってくる。

 

「わかってるって! なんかこう、食って飲んで踊るんだろ?」

 

「主賓だって言ってるでしょうが!!」

 

「……えっと?」

 

 その言葉に、俺は呆けた顔をした。

 

「あなた、王子様と元聖女の結婚式に出るだけじゃなくて、主賓なの!? 国賓待遇で迎えられてんの!!」

 

「……え、主賓って、何するの?」

 

「一番目立つ席で、祝福の言葉を述べるのよ!!」

 

「俺、そんなのやったことねぇ……」

 

 いや待て、それって王様とか大神官とかがやるやつじゃねーのか?

 

「あなたが神竜(見習い)だからでしょ!」

 

 ――いや、俺がドラゴンで神様なのはそうだけども!!

 

「とにかく、王子様と元聖女の結婚式には必ず 出席するのよ!! 絶対に寝坊とかして遅れるな!!」

 

「へーい」

 

 適当に返事をしていたら、生意気勇者の額に青筋が浮かんだ。

 

 やばい、機嫌が悪くなる前に話題を変えよう。

 

「ところで、王子様ってどんな奴なん?」

 

「……まあ、端的に言えば人魚姫の話に出てくる王子様みたいな人ね」

 

「は?」

 

「ほら、人魚姫が嵐の中で王子様を助けて、それなのに王子様は助けられたことを知らず、別の女性と結婚しちゃうって感じの」

 

「……それだけ聞けばひでぇ話なんだがなー」

 

 元聖女がすっごく苦労してきたとか、性格と頭が滅茶苦茶よくてできれば俺の神殿に残って欲しかったとか、言いたいことはあるけど黙っておく。

 

「まあ、今回の王子様はちゃんと事情を知った上で元聖女を選んだみたいだけど」

 

「ほーん……」

 

 そう聞いた瞬間、俺の隣で人魚姫が、ガクガクと震えだした。

 

 そして、泣き崩れた。

 

「……あ、やべ」

 

 地雷踏んだ。

 

 いや、俺も悪気はなかったんだけど!!

 

 泣き崩れる人魚姫を、生意気勇者が懸命に慰める。

 

 とりあえず、何も言わずに見守るのが正解だな、これ。

 

 そして、結婚式当日――。

 

「うわ、すげぇな……」

 

 目の前には豪華な装飾が施された王宮の大広間。

 

 貴族や要人がずらりと並び、煌びやかな雰囲気が漂っている。

 

 もちろん、主役の王子と元聖女もバッチリ決めていた。

 

 元聖女は王族用ドレス姿に負けていない。

 

 以前は消えてしまいそうだった雰囲気も幸せ一杯でまぶしいほど。。

 

 王子は、それを優しく見守りながら、堂々と振る舞っていた。

 

 ――うん、これは間違いなくおとぎ話のラストだな。

 

「では主賓のスピーチを」

 

「ちょっと待て、まだ心の準備が――」

 

「はいどうぞ」

 

 強引に押し出され、俺は壇上に立った。

 

 ――めっちゃ視線を感じる。

 

 王族、貴族、聖職者――全員が俺を見てる!!

 

「えーと……」

 

 こういうの、どうすりゃいいんだよ!?

 

 考えろ、考えろ……!!

 

「……めでたいな!」

 

 とりあえず、勢いで叫んだ。

 

 沈黙。

 

 ヤバい、これ失敗したか!?

 

 すると――。

 

「はははは!!」

 

 王子が笑顔で爆笑した。

 

「ありがたい!! これほどシンプルで力強い祝辞があるか!?」

 

 その一言で場の空気が一変し、場内は一気に和やかな雰囲気に。

 

 よ、よかった……!

 

 お前いい奴だったんだな!!

 

 王女様の婚約者候補だった過去はこれで忘れてやるよ!!!

 

 こうして、なんとか結婚式は無事に終わった。

 

 その後――。

 

「ただいまー」

 

 俺たちは人魚姫を実家に送り届けてから神殿に帰還した。

 

「……ん?」

 

 すると、神殿に派遣されている王宮の女官たちが、ものすごく寂しそうな顔をして俺を見ていた。

 

「……何?」

 

「お二人とも、髪と肌の手入れが……」

 

「え?」

 

「お手入れ……されてますね……」

 

「……」

 

 そういえば、生意気勇者と一緒にいた期間、あっちの王宮のメイドに色々手入れされてたな……。

 

「……ま、まあ、今からお手入れしてもらうし?」

 

「本当ですか!? ではすぐに王宮へ!!」

 

 ものすごい勢いで王宮に連行された。

 

 そして――俺は王宮の美容専門メイドたちの手によって、全力で磨き上げられることになるのだった……。

 

 

 そのころ、王女様と生意気勇者は、最近の魔王軍の動きについて話していた。

 

「少しずつ、勢力を回復しているようです」

 

「……なんか、嫌な予感がするわ」

 

 一方、俺は――。

 

「ふぁ……」

 

 髪を手入れされながら、眠りに落ちかけていた。

 

 その時、ふと、魔女のところで会った悪魔の言葉を思い出した。

 

『あり得ないとは思うが……貴公が悪魔に手を貸しているということはないよな?』

 

『最近……いや、忘れてくれ』

 

 あれ、何だったんだろうな……?

 

 その時、まだ俺たちは気づいていなかった。

 

 手入れのときに切られた俺の髪が、魔王軍に流れていることを。

 

 続く。

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