最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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城塞都市の貴族、イキる

 城塞都市の市庁舎に足を踏み入れると、すぐにわかった。

 

 ――こいつら、俺を利用する気満々だな。

 

 広々とした部屋の中央、堂々と腰掛けているのが市長。そして、その両脇には副市長とかいろんなギルドのトップとか。

 

 豪華な衣服に身を包み、身振り手振りは上品。言葉遣いも丁寧。

 

 だが、目の奥に透けて見えるものがある。

 

「私たちはこの城塞都市の支配者であり、神竜であるあなたを導く立場です」

 

 そんな雰囲気を隠しもせず、俺の前に並んでいた。

 

「ようこそ、神竜様。我々は貴方様を心より歓迎いたします」

 

 市長がにこやかに言う。

 

 その隣の貴族が、目を細めて続けた。

 

「神竜殿には、是非とも我々と協力関係を築いていただきたい」

 

「ええ、貴方様ほどの存在がこの城塞都市の発展に関与してくだされば、人類全体の利益になることでしょう」

 

「ちなみに、私の家系は代々、高位の神々に認められた由緒ある血筋でしてね……」

 

「そして私は、地母神様の神殿からの信頼も厚い家柄でして……」

 

「神竜であろうと、我々のような高貴な家柄の意見は無視できないでしょう?」

 

 ――お、おう……。

 

 会話が始まって10秒くらいは、まあ聞いていた。

 

 だが、こいつらの言いたいことはすぐに察した。

 

 俺たちはスゴイ家柄だから、お前も俺たちをスゴイと思え!

 

 お前は神竜(見習い)かもしれんが、俺たちは神に近い存在!

 

 ……みたいな話を延々と続けている。

 

 ――なんだこいつら、国王より地位も力もない低いくせに調子乗りすぎだろ。

 

 王女様の国の国王は、一応、威厳ある態度を取っていたが、実際には国王という地位に許される範囲内で最大限へりくだっていた。

 

 この都市の権力者どもは、それとは真逆だった。

 

 言葉こそ丁寧だが、実際は俺を利用する気が満々。

 

 しかも、ちらっと視線を送ると、――ん?

 

 うっすらとした悪魔の気配を感じる奴がいる。

 

 ――契約とかしてんのか?

 

 どおりで醜悪な雰囲気を隠しきれてないわけだ。

 

 俺は目の前の連中を軽く一瞥し、肩をすくめる。

 

「……しばらくこの城塞都市の周りで活動する。邪魔するなとは言わねーが、わざわざ近付いてきて巻き込まれても文句を言うなよ」

 

 そう告げて、さっさと踵を返す。

 

「ま、待ちたまえ!」

 

 権力者たちの声が飛ぶが、ガン無視。

 

 すると、俺の前に兵士たちが立ちはだかった。

 

 そのうちの一人が、剣に手をかける。

 

 ――あーあ、やっちまったな。

 

 俺が止まる気がないのを見て、完全にビビりながらも、奴は剣を半分ほど鞘から抜きかける。

 

「これ以上の無礼は――」

 

 言い終わる前に、俺はサクッと動いた。

 

 ほんの軽いステップで兵士たちの間をすり抜け、そいつの腕を軽く叩く。

 

 パシンッ!

 

「うわっ!?」

 

 剣を抜こうとした兵士は、一瞬のことで何が起きたのかもわからないまま、反射的に剣を落とした。

 

「お、おのれ――」

 

 周囲の兵士たちが動く気配を見せたが、俺が軽く手を振るだけで全員ビクッと固まる。

 

 ――こいつら、自分たちが何に喧嘩売ってるのか分かってんのか?

 

「……じゃ、用件は済んだから行くわ」

 

 軽く手を振って、その場を後にする。

 

 

 

 外に出ると、姫騎士が待っていた。

 

 狭い部屋で待たされていたせいか、ちょっと不機嫌そうな顔をしている。

 

「お待たせ」

 

「いえ……」

 

 姫騎士はちらっと俺を見てから、意を決したように言った。

 

「泊まるところがないなら、私の家に……」

 

 ああ、こいつなりに気を使ってくれてるんだろう。

 

「いや、いいわ」

 

 俺は周囲を見渡し、この城塞都市の規模を改めて確認する。

 

 ――うーん、たぶん風呂、しょぼいな。

 

 宿があったとしても、どうせお湯たっぷりの風呂なんてないだろう。

 

 だったら――。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 姫騎士の腰に手を回す。

 

「えっ、えっ!?」

 

 次の瞬間、俺はそのまま飛翔した。

 

 ドンッ!!

 

 大気を突き破るような風圧が巻き起こり、俺たちは一瞬で雲の上へと駆け上がった。

 

「ひゃああああああああああああああああああああ!!??」

 

 姫騎士が絶叫した。

 

 まあ、無理もない。

 

 なにせ俺の飛行速度は、普通の竜と比べても桁違い。

 

 気がつけば、城塞都市の灯りが豆粒みたいになっていた。

 

「ちょ、ちょっとおおおおおお!!」

 

「おー、結構いい声出すじゃん」

 

 姫騎士は俺にしがみつきながら、半泣きになっていた。

 

 ……と思ったら、ふと、彼女が息を飲むのがわかった。

 

「……すごい……」

 

 最初は恐怖でしかなかった空の旅。

 

 だが、しがらみのない空間に身を置いたとき、彼女はそれに圧倒されていた。

 

 月明かりに照らされた雲の海。

 

 地上の灯りが、まるで星屑のように瞬いている。

 

 風が頬を撫でる感覚。

 

「……これが、空……」

 

 その感動に気を取られている間に――

 

 俺たちは音速で、王女様のいる王宮へと向かっていた。

 

 

 城塞都市の薄暗さとは打って変わって、王宮の輝きは眩しかった。

 

 俺は姫騎士を抱えたまま、優雅に着地する。

 

「ただいまー」

 

 王宮の女官や侍女たちが整列して俺を迎える中、姫騎士はまだ震えていた。

 

「……し、死ぬかと思いました……!」

 

「まぁまぁ、いい体験だったろ?」

 

「よくありません!!」

 

 姫騎士が涙目で抗議してくるが、俺は気にしない。

 

 そんなやり取りをしていると、王女様が姿を現した。

 

「おかえりなさい、神竜様。姫騎士殿も、ご無事で何よりです」

 

「おう、ただいま」

 

 王女様は相変わらず上品で優雅。そして、俺に対して親しみを込めた笑みを浮かべていた。

 

「まずは旅の疲れを癒してください。お風呂を用意しております」

 

 ――よし、風呂だ!

 

 俺は王宮の風呂へ直行した。

 

 

 王宮の風呂は、相変わらずとんでもなく豪華だった。

 

 広い。深い。お湯がたっぷり。

 

 しかも俺が入る前に、しっかり清掃されている。

 

 ――うん、いい風呂ってのは、こうじゃないとな!

 

 俺が湯に浸かると、すぐにメイドや女官たちが手際よく世話を焼いてくれる。

 

「お背中をお流ししますね」

 

「髪の手入れもいたします」

 

「お湯加減はいかがでしょう?」

 

「完璧!」

 

 俺は満足げに湯船に沈んだ。

 

 そんな中、姫騎士は端っこで小さくなっていた。

 

 彼女は大都市に属する騎士階級とはいえ、この王宮の格式には馴染みがない。

 

 貴族の娘が侍女や女官として仕えている王宮の風呂で、明らかに気後れしていた。

 

「……私なんかが、こんな場所にいていいのでしょうか……?」

 

「いいんじゃね?」

 

「そういう問題ではなく……!」

 

 姫騎士が顔を赤くしてもじもじしているのを見て、メイドたちがクスッと微笑んだ。

 

「どうぞ、ゆっくりなさってください」

 

「今日は神竜様のお客様ですから」

 

 そう言われて、姫騎士は小さく頷いた。

 

 それからしばらくして、ようやく落ち着いたのか、ゆっくりと湯に浸かった。

 

 

 風呂から上がると、王女様主催の食事会が開かれていた。

 

「神竜様、生意気勇者、そして姫騎士殿。どうぞお席へ」

 

 王女様の席の前には、豪華な料理が並んでいる。

 

 肉の香ばしい香りが漂い、骨まで食べられるように特別に調理されていた。

 

 俺は迷うことなく肉にかぶりついた。

 

「うまい!!」

 

 この国の料理は本当にレベルが高い。

 

 特にこの骨、程よい硬さで噛み応えがある。

 

 俺が骨までバリバリ食ってると、姫騎士が驚いた顔でこっちを見ていた。

 

「……骨まで召し上がるのですね……?」

 

「うん、うまいぞ」

 

 姫騎士が戸惑っている横で、生意気勇者はどこか元気がなかった。

 

「……」

 

 王女様の隣に座っていた生意気勇者は、料理に手をつけず、何やら落ち込んでいる様子だった。

 

「おい、どうした?」

 

 俺が聞くと、生意気勇者はハッと顔を上げた。

 

「い、いえ……」

 

 ――ん?

 

 なんか変だな?

 

 俺が肉をかじりながら様子をうかがっていると、生意気勇者はちらっと姫騎士の方を見た。

 

 ――あー、そういうことか。

 

 俺が姫騎士を連れて帰ってきたことで、もしかして俺の勇者から外されるとか思ってる?

 

 いやいや、俺の女の好みは色気たっぷりの魔女系だし、王女様は殿堂入りだし勇者はお前しかいないって。

 

 生意気勇者の気持ちを察しながらも、俺はそのまま肉に夢中になった。

 

 

 しばらくして、話題が裁定の神のことに及んだ。

 

「そういえば、裁定の神はまだ神殿にいる?」

 

 俺が何気なく聞くと、生意気勇者はすぐに答えた。

 

「あなたが出かけてすぐに天界に戻られたわよ。……あ」

 

 生意気勇者が急に動きを止めた。

 

 彼女はゆっくりと姫騎士の方を見た。

 

 そして、その顔をまじまじと観察し――

 

「……えっ?」

 

 驚愕の表情で、スプーンを落としそうになった。

 

 ――気づいたな。

 

 裁定の神と姫騎士の顔がそっくりであることに。

 

 姫騎士は何も知らないような顔をしているが、生意気勇者は完全に言葉を失っていた。

 

 王女様は微笑みながら静かにお茶を飲んでいる。

 

 姫騎士は王女様のおかげでようやく緊張がほぐれたのか、料理の味を楽しみ始めた。

 

 

 食事の終盤、王女様がふと俺に向かって言った。

 

「他国について論評するのは良くないことですが……」

 

 王女様は丁寧に前置きをした上で、城塞都市の状況を説明し始めた。

 

 魔王軍の勢力圏が近い上に、内部に内通者がいる可能性が高い。

 

 都市国家としては王女様の国に比べて勢力がとても小さい。

 

 そして、都市の権力者たちは、自分たちの権力を維持するためなら何でもする――そんな連中だということが分かった。

 

「へぇー……」

 

 俺はジュースを飲みながら話を聞く。

 

 なるほど、俺にすり寄ってきたのも納得だな。

 

「俺がてきとーに吹き飛ばそうか?」

 

 俺が軽く提案すると、生意気勇者がすぐにツッコミを入れた。

 

「地上のことに関わりすぎるなって天界から言われたばかりでしょ。自重!」

 

 そのやり取りを見ていた姫騎士が、ふと視線を落とした。

 

 俺と生意気勇者の間に強い絆を感じ、自分にはそんな相手がいないことに気づいたのだろう。

 

 少し寂しそうな顔をしていた。

 

 そんな空気の中、俺はふと思い出した。

 

「あのあたり(城塞都市周辺)に、あの剣(神剣のこと)があるって話だったんだけど」

 

 俺がぼやくと、王女様は静かに言った。

 

「その情報は天界からのものですよね。今回姫様から教えていただいたことから考えると、その情報の中に嘘が混じっているかもしれません」

 

 ――なるほど?

 

 なんか、ややこしくなってきたな。

 

 俺、考えるの苦手なんだよなぁ……。

 

 続く。

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