最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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姫騎士の正体? 会議室が凍りついた件

 王宮の奥にある会議室に入ると、妙に厳かな雰囲気が漂っていた。

 

 国王、王妃、複数の大臣たち、そして近衛騎士団による厳重な警備。

 さらに、隅っこには王妃付きの侍女たち――しかも、俺が以前押し付けた魔法少女風装束を着て、きちんと並んでいる。

 

 ――あれ? なんで俺、こんなにしっかりした会議に呼ばれてんの?

 

 まぁ、考えても仕方ない。

 

 とりあえず椅子にどっかり座ると、生意気勇者が俺の横に立った。

 

 こいつは俺の秘書的ポジションで、俺が話を聞いてなかった時に内容を教えてくれるし、俺の知識不足をフォローしてくれる。

 

 俺としては「難しい話は全部任せた」って言いたいんだけど、そうすると王女様や王妃に怒られるので、一応聞く姿勢は見せている。

 

 で、今日はやたらと国王の態度が恭しい。

 

 以前は「とんでもなく強いドラゴン」として接していたが、今や俺は「とんでもなく強い上に、神々とも関わりのある神竜(見習い)」になってしまった。

 

 そのせいで、国王が俺を呼ぶ時の呼び方も変わった。

 

「……神竜殿」

 

 一瞬の間を置いて、少し慎重な声音で呼んできた。

 

 他の出席者も、普段は「姫様」と呼んでるくせに、今日は全員「神竜様」呼びになっている。

 

 ――おいおい、そんなにフォーマルにされても困るんだけど。

 

 俺は軽く肩をすくめて、話を切り出した。

 

「……あの城塞都市や、その周辺がどうなってるのか、さっぱり分からん。教えてくれ。分からないなら分からないでいいから、その時は予想とか頼む!」

 

 分からないなら分かりそうな奴に聞く!

 

 国王はすぐに頷き、大臣たちに向かって命じた。

 

「全面的に協力せよ」

 

 この国王、実は俺のことをかなり警戒しているらしい。

 王女様や王妃には「敵対した瞬間破滅が確定してしまう最上位のドラゴン」とまで言ってるらしく、部下にも「姫君に敵対するのは絶対に許さん」と言い切っている。

 

 おかげで、大臣たちもやる気満々だ。

 王の命令に従う意思もあるし、俺に配慮しているのもあるが、それ以上に「この場で最も役に立つ情報を出して、他の大臣より優位に立ちたい」という意図も見え見えだった。

 

 結果――

 

 城塞都市の権力者やその家族、その関係性

 

 城塞都市にある物資の量やその増減

 

 これらの情報がすごい勢いで明らかになっていく。

 

 俺が全部覚えられるわけがないので、王妃付きの侍女たちが用意した魔法ホワイトボードに要点がまとめられていく。

 

 ――なんだこれ、めっちゃ便利じゃん。

 

 物理的なマーカーはないけど魔法で書き込みや消去をしている。

 

「ホワイトボードって、前からあったっけ……?」

 

 生意気勇者がため息をついて教えてくれた。

 

 どうやら俺が軽く話したことをもとに、侍女たちが開発したらしい。

 

 すげえな魔女!

 

 

 情報が出揃った頃、軍事担当の大臣がボードを見ながら呟いた。

 

「本気で魔王軍相手に抵抗する意思があるように見えません」

 

 会議室に、しんとした空気が流れる。

 

 まぁ、言われてみれば確かにそうだ。

 兵力も物資の動きも、不自然に見える部分が多い。

 

「……ふーん」

 

 俺は適当に相槌を打ちながら、王妃を鑑賞することにした。

 

 王妃は、妊娠してお腹が目立つようになっていた。

 だが、それがむしろ色っぽさに磨きをかけ、さらに精神的な充実が加わって、別種の魅力を発している。

 

 ――いや、ほんと、国王に惚れ込んでるのが分かりきってるのがなぁ……。

 

 俺がいくら見ても、王妃の愛情も忠誠も国王にしか向いていない。

 

 敗北感がすごい。

 

 まぁ、そんなわけで俺が色々と考えているうちに、会議は進行していた。

 

 

「あ、そうだ」

 

 何気なく口を開く。

 

「姫騎士の顔、裁定の神そっくりなんだよな」

 

 その瞬間――

 

 会議室が凍りついた。

 

 直前まで活発に議論していた大臣たちが、一斉に沈黙。

 近衛騎士は呼吸すら控えるような緊張感に包まれ、侍女たちは怯えたように小さく震えている。

 

 ――え、なにこれ? なんで空気止まった?

 

 俺が首をかしげると、生意気勇者が小声で耳打ちしてきた。

 

「神々と比較すれば、国王も大臣も普通の人間よ……。いきなり天界の不祥事に巻き込まれて、冷静でいられる人なんていないわ」

 

 なるほど、裁定の神が関係してるだけで、国王たちにとっては大問題ってわけか。

 

 しばらくすると、国王の命令によって姫騎士を連れて来られた。

 

 姫騎士は、大国の首脳陣の前に立ち、ガチガチに緊張している。

 

 しかし、それ以上に緊張しているのは大臣たちのほうだった。

 額には汗がにじみ、手は微妙に震えている。

 

 侍女たちは完全に怯えて目を伏せ、騎士たちは「職務に集中する!」という意識でどうにか平静を保っているが、顔は引きつっていた。

 

 国王が静かに立ち上がる。

 

「――本件に関する議論を再開せよ」

 

 強靭な意志で命じると、大臣たちはビクリと身を震わせたが、必死に冷静を装って議論を再開した。

 

 そして、国王はさらに続ける。

 

「この場で聞いたことは忘れろ」

 

 威厳ある声音で、大臣たちを見渡す。

 

「忘れられない者は、絶対に口外するな。記録にも残すな」

 

 その命令は、大臣や騎士、侍女たち全員に向けられている。

 

 ――まあ、俺と生意気勇者は関係ないんだけどな!

 

 そんな重苦しい空気の中、俺は再び王妃をじっくりと観察した。

 

 ――あぁ、やっぱ色っぽいな。

 

 お腹が大きくなった分、確かに「母」って感じが強くなっている。

 でも、元々の色気が衰えるどころか、むしろ精神的な充実が加わって、別の魅力が増してる。

 

 改めて国王に対する敗北感を味わいながら、ふと姫騎士のほうを見た。

 

 大国の首脳陣を前にして緊張しているが、それでも騎士らしくあろうと振る舞うその姿。

 

 ――いいな。

 

 真面目で誠実で、一生懸命な女性騎士。

 しかも、いかにも姫騎士という感じの容姿。

 

 あれ、これって――

 

 ――なんか、女性騎士が性的にひどい目に遭うゲームの女性主人公みたいだな。

 

 俺が思わずそんなことを考えた瞬間、生意気勇者がじと目で俺を見てきた。

 

「……考えてること、顔に出てるわよ」

 

 俺の顔が微妙にニヤついていたのか、生意気勇者が呆れた目で睨んでいる。

 

 すると、そのやり取りを見ていた王妃が、フッと表情を変えた。

 冷静な目で姫騎士を見つめ――そして、確信を得たように微かに頷く。

 

(……この娘は、男を惹きつける容姿を持っている)

 

(そして、神の実子という事実は……母体としての価値を極限まで引き上げる)

 

 王妃は、冷静に可能性を考察していた。

 

 裁定の神は人間社会で言うところの裁判官のような存在。

 その仕事柄、怨んでいる神も少なくない。

 

(この娘は強者から保護されていない。今後徹底的に尊厳を辱められる可能性が極めて高いでしょうね)

 

 王妃はそう判断し、静かに息をついた。

 

 しかし、ここで姫騎士本人にそれを告げるのは、あまりに残酷だった。

 

 会議では、姫騎士についての議論は深まらず、結論も出ないまま終わった。

 

 

 ということを、会議が解散した後に王妃から教えてもらった。

 

「……フィクションなら大好物だけど、リアルなら勘弁だなぁ……」

 

 地上に関わり過ぎるなって天界から言われてるけど、これを見て見ぬ振りするのはちょっと無理だ。

 

 俺は王宮から離陸して高度を上げる。

 

 そして、全力を出す。

 

 本当の全力なら時間はかからない。

 

 地面から離れすぎないよう気を付ける分、精神的にすげー疲れるけどな。

 

 城塞都市が地平線の近くに見えてから城塞都市の上空で静止するまで、少しの時間しかかからない。

 

 ――さて、久しぶりにやるか。

 

 俺は深く息を吸い込み、胸の奥底から力を溜める。

 

 喉の奥で、巨大な力が沸騰するように渦を巻き――

 

「っ……へっくしょい!!」

 

 バゴォォォォォォォォン!!

 

 天を裂く閃光とともに、灼熱のブレスが放たれる。

 

 一瞬遅れて、空気が爆ぜ、衝撃波が広がった。

 

 遠くに見える魔王軍の拠点が、音もなく砕け散る。

 

 次の瞬間――

 

 ドゴォォォォォン!!!

 

 巨大な火柱が天を焦がした。

 

 城塞都市の鐘が一斉に鳴り響く。

 

「な、なんだ!?」

「何が起きた!?」

 

 城塞都市の兵士たちが慌てふためき、警報の音が響く。

 

 だが、俺はそんなことには目もくれず、自分の神殿へ向かって飛び去った。

 

 続く。

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