最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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神竜、天界へ殴り込み!

 ――まったく、こうなるとは思っていなかった。

 俺は今、生意気勇者を連れて、天界の門を真正面から蹴破る勢いで乗り込んでいる。

 

「お行儀よくなんてしてられねぇよな。あいつら、どんだけ好き勝手しやがるんだ」

 

 自分で言うのもなんだが、神竜(見習い)が天界に直接行くなんて聞いたことない。

 普通なら「裁定の神」の許可が必要らしいが、そもそもその裁定の神が今回のトラブルに関わっている。多分被害者側だろうがな。

 

「天界がこんなに騒がしくなるのも久しぶりでしょうね」

 

 生意気勇者が、呆れと覚悟が入り混じった顔でそう呟いた。

 周囲を見渡せば、雲海のように白く輝く光の柱があちらこちらにそびえ、神殿のような建造物が連なっている。どこを見ても神々しい……はずなのに、どうにも不穏な空気が漂っているのを感じる。

 

 守護騎士とやらが現れたのは、ちょうどその時だった。

 銀色の鎧をまとい、巨大な翼を持つ神の兵士がずらりと並び、槍や剣をこちらに向けている。

 

「神竜殿、こちらへの無断侵入は認められていません! 即刻退去を――」

 

 先頭の騎士らしき男が叫ぶが、俺は軽く肩をすくめた。

 

「悪いが、話してる暇はねぇ。どうせお前らが盾になっても俺のブレス一発で終わるんだが?」

 

 軽く脅しのつもりで言ったが、彼らは途端に顔色を失って槍を持つ手が震えだした。

 

 ――そりゃそうか。

 

 俺って滅茶苦茶強いからな、強さを直接感じたら怯えるよな。

 

 その時、横から別の騎士が慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「なぜ裁定の神をお呼びにならずに……? 神竜殿、何が目的ですか!」

 

 苛立ちが募ってくる。

 

「俺の仲間を好き放題に狙ってるんだろうが? 裁定の神に会わせろ。理由も全部そいつに聞く」

 

「で、ですが裁定の神は……」

 

 苦しそうな顔をする騎士。何か言いかけて飲み込む。

 

 ――これだ。どうやら裏で相当面倒なことが起きているらしい。

 

 ドンッ!

 

 生意気勇者が一歩踏み出し、腰に下げた剣を軽く見せつけるように握る。

 

「私たちには時間がないの。もし裁定の神が出せないなら……強行突破するわよ?」

 

 少し前までは「強行なんてやめなさい!」とか言いそうだった生意気勇者も、今回ばかりは腹をくくっているようだ。俺がやる気満々だし、仲間が危険に晒されていることも大きいだろう。

 

「……ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 騎士たちが同時に後ずさる。このまま押し切れそうだが、さすがに天界に来て騎士を片っ端からブッ飛ばすのは気が進まない。

 

 そんな微妙な沈黙が流れた時、遠くで激しい音が響いた。

 

「……何だ、今の音」

 

 生意気勇者が「魔法の鏡」を取り出す。これは彼女が持ってきたものらしく、地上と映像をやりとりできる仕組みになっているようだ。

 その鏡に浮かび上がったのは――

 

 姫騎士たちが戦っている森の映像、だった。

 

「……あれは、異端の勇者? 逃げようとしてる……?」

 

 鏡に映る森で、異端の勇者と思しき男が、半壊の小屋から慌てて飛び出し逃げようとしている。

 

 そんな隙を見逃す訳がない。姫騎士が勢いよく突っ込んで、男の背中から深々と斬りつける。

 

「どうして? 上から呼び戻された?」

 

「文字通りの上……天界からかもな」

 

 鏡に映る姫騎士は、勝利したのにどうしてこうなったか分からず混乱している。

 

「……なんだかよく分からねぇが、とりあえず姫騎士は無事か」

 

 俺も鏡越しに映る光景を見つめる。姫騎士はまだ剣を構えたまま、倒れた異端の勇者のほうを警戒している様子だ。

 

 ――しかし今は、こっちだって悠長にしていられない。裁定の神から直接話を聞かないと、嘘を言われているかどうか分からない

 

「姫騎士が助かったみたいなのはいいけど……まあ、細かいことは後で聞こう。裁定の神も、この状況なら詳しいことまで説明してくれるだろうしな。

 

 鏡をしまい、生意気勇者が騎士たちを睨む。

 

「裁定の神はどうしたの? 本当に出てこれないわけ?」

 

「それは……我々にも分かりません。しかし、天界の一部が“裁定の神を幽閉した”という噂は……」

 

 騎士はうつむきながら答える。どうやら天界の内部で派閥争いが起きているらしい。

 

「上等じゃねぇか。幽閉されてるなら助けるついでに話を聞くだけだ」

 

 俺は勢いよく空に飛び上がり、背中の翼をバサリと動かした。

 

「ま、逆らう騎士がいるなら手加減はしてやる。できれば闘いたくねぇしな」

 

「すみません、神竜殿……! も、もし本当に裁定の神が囚われているなら、私たちも力を貸します!」

 

 騎士たちが顔を上げて言う。おそらく、こちらをどうこうしてる暇はないし、本来は裁定の神を慕っている連中なんだろう。

 

「よし、じゃあ案内しろ。幽閉されてるって言う場所へ。最短ルートで頼むわ」

 

「は、はい! こちらへ!」

 

 こうして、俺と生意気勇者は守護騎士の先導で“天界の聖域”を突き進んでいくことになった。

 その背後では、他の騎士たちが慌てて連絡を取り合い、誰かに報告しているのがわかる。

 

「これで一気に天界中が大騒ぎだな……」

 

 生意気勇者が苦笑する。俺も正直、内心はちょっと焦っている。天界を相手に下手すりゃ全面衝突だ。

 

(でも、姫騎士が助かったならOKだし、裁定の神は誰かに幽閉されてる可能性が高い――)

 

「ただの派閥争いか、あるいは天界全体を支配しようとするやつがいるのか……」

 

 いずれにせよ、裁定の神がいない状態で姫騎士が狙われているとなれば、やるべきことは一つ。

 

「生意気勇者、やるぞ。あいつらが何を企んでるか知らねぇが、俺たちの仲間を自由に狙わせたりはしない」

 

「ええ、わかってるわ」

 

 そうして俺たちは、守護騎士を先頭に天界の奥深くへと踏み込んでいく。

 先ほど鏡で見た映像――異端の勇者が慌てて逃げようとして、謎の斬撃で倒された場面が気になるが、今は天界をどうにかするのが先決だ。

 

 “裁定の神が幽閉されている”という情報が真実なら、天界で暗躍している連中はかなりの実力者だろう。

 ――だけど、俺は神竜だ。見習いとはいえ、天界の何を相手にしても負けるつもりはない。

 

「天界が騒ごうが、仲間が狙われるなら全部ブッ飛ばす。行くぞ!」

 

 遠くにそびえる白い神殿の群れを見上げながら、俺は翼を大きく広げた。

 果たして、何が待ち受けているのか。

 だが、勢いと覚悟だけは十分。

 

 ――天界との衝突は、もう避けようがない。

 

 続く。

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