最強ドラゴン姫(♂)、異世界で無双する   作:星灯ゆらり

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ゴーレム討伐成功! なお、服は燃えた

 国王がぶっ倒れた。

 

 いや、俺がやったわけじゃないぞ。

 

 昨日、魔王の使者とかいうのを撃破するために全力を出しすぎた結果、全身筋肉痛と疲労で寝込んだのだ。

 どうやら聖剣を使ったのが相当キツかったらしい。

 

「陛下、お休みください! これ以上は危険です!」

 

 側近たちが必死に止めるのも聞かず、国王は這うようにしてベッドから起き上がり、俺と話をしようとしていた。

 

「竜族の姫よ……貴殿に伝えねばならぬことが……」

 

 必死な表情の国王。

 だが、その言葉を最後まで聞く前に、俺はひと言。

 

「急ぎじゃないなら後回しでいいよ。話ができるようになるまで飯と風呂は用意してね」

 

 国王、しばし沈黙。

 

 そして、安堵したように頷いたかと思うと――

 

 バタン!!

 

 そのままベッドの上で気絶した。

 

「陛下ーーー!!!」

 

 王宮中に響く絶叫。

 いや、休ませた方がいいだろ普通に。

 

 国王がダウンし、話が進まなくなったので、とりあえず王宮をぶらついてみる。

 

「うおっ、なんかキラキラしてる……!」

 

 廊下の装飾品や、壁にかかる豪華な金の額縁に目を奪われる。

 なんかドラゴンっぽい本能が目覚めてきたのかもしれない。

 

「貴金属とか、いいな……」

 

 俺はつい手を伸ばしかけたが――

 

「いや、でも飯と風呂の方が重要だな」

 

 あっさり思考を切り替えた。

 

 光るものはいいが、食事と風呂には勝てない。

 

「今宵ご一緒にいかがですか?」

 

 そう言われて、王女様と会食することになった。

 相変わらず豪華な食卓だ。

 

「竜族の姫は、お肉がお好きなのですね?」

 

「うん、めっちゃ好き!」

 

 目の前の骨付き肉をバリバリ食いながら、俺は即答する。

 

 王女様は微笑みつつ、興味深そうに尋ねた。

 

「どんなお肉が特にお好きなのですか?」

 

「うーん……やっぱり、専門家が育てたのが美味しいよな!」

 

 俺は昨日食べて滅茶苦茶旨かった、メイドさんから聞き出した牛の銘柄を口にする。

 

「品種改良されてて、肉質が柔らかくて、めっちゃジューシーなんだよ」

 

 王女様がハッと目を見開いた。

 

(……この方、人間を食べる趣味はないのですね!?)

 

 そんなことを考えていたらしいが、俺は気づかず続ける。

 

「ちょっと遠いらしいけど、一度育ててる場所に行ってみたいなー」

 

 王女様は、そっと胸をなでおろしていた。

 

 そんなわけで、俺は相変わらず食事を楽しみながら、王都での生活を満喫していた。

 

 

 食事を終えてごろごろしていた俺は、ふと自分の背中を見つめた。

 

「……そろそろ飛べるんじゃね?」

 

 背中には、しっかりとした竜の翼が生えている。

 今までは跳躍ばかりで試してなかったが、飛行っていうロマンをそろそろ追求してみたい。

 

 というわけで、飛んでみることにした。

 

 俺は広々とした庭に出て、翼をパタパタ動かしてみる。

 

「よし、飛ぶぞ!!!」

 

 足に力を込め、バシュンッ!!!

 

 ドゴォォォン!!!

 

 俺はまっすぐ空へ飛び上がった。

 

「おおおっ!? いい感じ――」

 

 ……ではなかった。

 

 俺の体はあっという間に重力に引かれ――

 

 ズドォォォン!!!!

 

 着地した瞬間、またクレーターができた。

 

「……あ、これダメなやつだ」

 

 慌てて顔を上げると、騎士団長レオナルドが頭を抱えていた。

 

「姫様……! 王都で訓練なさらないでください!!」

 

 懇願されてしまったので、仕方なく飛行訓練は王都の外でやることにした。

 

「姫様、こちらを」

 

 王女様が、なにやら地図を手渡してくれる。

 

 ――地図って……めっちゃ重要なものじゃなかったっけ?

 

 そんなことを思いつつも、深く考えずに受け取る。

 

「では、お気をつけて」

 

 王女様、女官、メイドたちに見送られながら、俺は王都を出発した。

 

 

 騎士団の一隊が俺の警護兼道案内兼監視として同行することになった。

 

「姫様、我々の馬と歩調を合わせていただけると助かります」

 

「おっけー、控えめに走るわ!」

 

 ……が。

 

 俺が控えめに走っても、ギリギリ騎士団がついてこれるレベルだった。

 

「お、おい……!?」

「人間が走るより速いのは分かっていたが、ここまでとは……」

 

 騎士たちが青ざめながら必死に馬を駆る。

 

 結果、騎士団がほぼ全力疾走する形で移動することになった。

 

 

 目的地の郊外へと近づいていたときだった。

 

 ドン……ドン……ドン……

 

 地面が、わずかに揺れた。

 

「……ん?」

 

 俺は耳をすませる。

 

 遠くから、規則的な重い足音が聞こえる。

 

 そして、視界の先――山の向こうから、巨大な影が現れた。

 

 それは、王都を破壊するために魔王軍が派遣した巨大ゴーレムだった。

 

「うおおお!! かっこいい!!!」

 

 俺は目を輝かせる。

 

 だが、横の騎士たちは顔面蒼白だった。

 

「姫様!!! あれは敵です!!!」

 

「……えっ、マジ?」

 

 騎士が必死に説明することで、俺は「すごいカッコいいゴーレム」が、実はヤバいやつであることを理解した。

 

「まあ、敵なら仕方ないな」

 

 俺はサッと構え、地面を蹴る。

 

「おりゃあああ!!!」

 

 バキィッ!!!

 

 俺の拳が、ゴーレムの足を直撃!!

 

「……うん、効いてるけどデカすぎるな」

 

 俺の攻撃は通用するが、ゴーレムが王都にたどり着く前に全部ぶっ壊せるかというと微妙な感じだ。

 

「これ、くしゃみした方がいい?」

 

 そう言いかけた瞬間、騎士の一人がゴーレムの傷口を見て呟いた。

 

「……まさか、あれは鉄!? あれほどの量の鉄があれば……」

 

 ――お?

 

 つまり、くしゃみでゴーレムを消し飛ばすのはもったいないってことか?

 

「そっか、じゃあ……」

 

 俺は大きく跳躍し、ゴーレムの頭上へと飛び上がった。

 

「滑空蹴り、いっくぞぉぉぉ!!!」

 

 ドゴォォォォォン!!!!

 

 俺の全力の蹴りが、ゴーレムの頭部に直撃した。

 次の瞬間、石の塊が砕け散り、巨体がグラリと揺れる。

 

「よし! いけた――」

 

 そう思った、その瞬間。

 

 ボウッ!!!!

 

 ゴーレムの内部から、猛烈な炎が噴き出した。

 

「……え?」

 

 ゴーレムの破片の中から、黒々とした炭の塊がボロボロとこぼれ落ちる。

 それに引火し、一気に燃え広がった。

 

「うおおお!? 燃えた!!??」

 

 メラメラメラメラ!!!

 

 俺は豪快に炎に包まれた。

 

「ひ、姫様が燃えている……!?」

「ど、どうする!? 水をかけるか!?」

「いや、それより姫様は無事なのか……?」

 

 騎士たちが呆然としながら俺を見つめる。

 

 だが――

 

「……あっついなぁ、これ」

 

 炎の中、俺は何事もなかったかのように立っていた。

 

 ――服以外は。

 

 ゴーレムに含まれていた炭や石炭が炎上し、俺の服が半分以上炭と化していた。

 

「……あ」

 

 俺の頭の中に、あの時の女官たちの笑顔が浮かぶ。

 

 『姫様に似合うよう、真剣にお選びしました!』

 『きっとお喜びいただけるはずです!』

 

 ――ごめん、俺のせいでドレスが燃えました。

 

「女官の……悲しむ顔が……」

 

 俺は静かに落ち込んだ。

 

「……姫様」

 

 ふと、横から声がした。

 

 騎士の一人が、視線をそらしながらマントを差し出してきた。

 

「お召し物が……その、燃えてしまわれたので。お使いください」

 

「おお、騎士も気が利くんだな」

 

 俺は素直に礼を言い、マントを肩に羽織る。

 

 騎士たちは目のやり場に困りつつも、気を遣ってくれているようだった。

 

「よし……今度は、大技なしでいくか」

 

 俺は深呼吸し、改めて構えを取る。

 

 ――デカい相手に無茶な大技を使うと、思わぬ事態が起こる。

 

 それはもう学習済みだ。

 

「細かく壊していくぞ……!」

 

 俺は跳躍し、ゴーレムの膝関節を狙う。

 

 バキィッ!!!

 

 衝撃でヒビが入り、ゴーレムがグラリと揺れる。

 

「いい感じだな」

 

 今度は腕の関節を叩き、バランスを崩す。

 

 ゆっくりと、しかし確実にゴーレムは破壊されていった。

 

 そして――

 

 最後の一撃を、残った胸部に叩き込む。

 

 ズガァァァン!!!!!

 

 ゴーレムは轟音を立てて崩れ落ちた。

 

 俺はゆっくりと着地し、マントを翻す。

 

「……ふぅ、これで終わりっと」

 

 騎士たちは驚愕しながらも、ようやく事態を理解したようだった。

 

「姫様……凄まじいお力です」

 

「いや、今度はちゃんと調整したぞ?」

 

 そう言って笑う俺の前には、王都へではなくなったゴーレムの残骸。

 

 そして、それは――王女様への土産となる予定だった。

 

 続く。

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