ベイラム・インダストリー所属パイロット『G7 レイヴン』 作:チームマッチUNRANKED
仁王立ちするミルクトゥースのデッドコピーの後ろで、赤色のレーザーセンサーが一斉にこっちを向く。そして、センサーの発生源たる鹵獲品らしき塗装され直されたRaDMTたちが起き上がる。
「遮蔽に入れ! ミサイルが来るぞ!」
言うや否や、RaD製のどデカいミサイルがレッドガン目掛けて飛び交い、炸裂した。
「何機落ちた!?」
「陣形を立て直せ! 所詮相手は烏合の衆だ!」
MT隊員たちは自身を奮い立たせるようにそう言うと、応戦を開始する。
「…… … ………」
ブルートゥのパチモンは異様な音を通信に乗せながら青い噴射炎とミサイルをばら撒く。
暗号通信……周囲の機体もブルートゥの制御か! 烏合の衆と呼ぶには少し強いようだ。
「G3、この量を捌くのは俺でも時間がかかるぞ。その間どうする?」
五花海に指示を仰ぐと……。
「保たせておいてください。私は一度引きます。あ、2分隊ほど借りていきますね」
そそくさと臨時ガレージの方に逃げ去っていった。
「……マジか〜〜〜」
怒りを通り越して呆れが出る。こうもあからさまに保身に走られると、少し笑いまでこみ上げてきそうだ。
俺が全員守るしかないようだ。
「G3に代わり、俺が臨時で指揮を執る! とりあえず物陰で亀になってろ!」
言うと同時に飛び出す。
凄まじい数の連装バズーカを巡航で躱しながら常陳とターナーのダブルトリガーで弾丸を叩き込んでいく。変な組み合わせだ、全然瞬間火力と衝撃力が出ない。誰だこんなの乗せたやつ。
『ギャイン!』
「っ!」
駆動音に反応し、ミルクトゥースの
「それは俺たちベイラムの十八番だろうが!」
ミサイルとバズーカを回避しながらミルクトゥースを相手にするか? いや、ダメだ。
レッドガン部隊迎撃……そうか。
「MT部隊! 後退しろ! 遠距離から支援砲撃を頼む! 相手のバズーカは遠距離の精度が低い、警戒すべきはミサイルだ! 大型ミサイルが見えたらすぐ遮蔽に身を隠せよ!」
まくしたてるだけまくしたてて敵軍へ突っ込む。集中しろ、G7 レイヴン……!
しばらくして指示通りの支援砲撃が始まる。ありがたい……!
砲撃態勢のRaDMTは動けない。コア理論を無視した遠距離からの攻撃でもある程度効果的だ。
榴弾の嵐がRaDMTの数を削っていく。アーキバスのMTからもRaDMTへ攻撃が入っている。これでミルクトゥースに集中でき……
「…… ………………… …………」
「側方から奇襲! 迎撃しろ!」
「……!?」
MT乗りの通信を聞いて振り返ると何もないところからレーザー狙撃がMTに向けて放たれている。ジャミングを付けたゴーストを回していたか……やられた……!
MT達が狙撃でどんどん一箇所に固められるかのように追い詰められていく。
「カバーに入る!」
ミルクトゥースに背を向けてAB。ミルクトゥースのブースターはミュール。この機体重量でミュールならテンダーフットに追いつかれることはない!
そのはずなのに……!
「どうして引き離せない……!?」
拡散バズーカを間一髪でQBで避ける。これでAB分と合わせてEN切れだ。
おかしい。どうなっている?ゴーストがいるらしい場所にミサイルをばら撒きながらミルクトゥースの攻撃を捌く。
「……チっ」
そういうことか。"青い噴射炎"に"ギリギリで避けたチェーンソー"。元のミルクトゥースのジェネレーターは内燃型、青い噴射炎は出ない。そしてミュールの弱い近接攻撃推力ならギリギリで避ける必要なんてない。
「オールマインドの野郎……内装いじりやがったか……!」
あのブルートゥがカーラから貰ったものに、ミルクトゥースに手を加えようとするはずがない。だからこそコヨーテスのボスという大仰な立ち位置でありながら、旧式パーツをそのまま使い続けてるんだ。オールマインドの趣味に違いない。
「はっ! カーラはどう思うだろうな! ミルクトゥースが啼いてるぞ!」
「…… …」
当然俺の挑発を意に介すこともなく、ブルートゥは火炎をばら撒きながら不規則な信号を発し続ける。
次は何を……マジか……ッ。
見上げた先にいたのは、飛来する大量の自爆態勢の封鎖ドローン。
その数は
ゴーストの別働隊でMTを一箇所に固めたのはこのためか!
「狙ったか、オーネスト・ブルートゥ!」
不気味に立ち尽くすミルクトゥースのデッドコピーを睨みつけながら叫ぶ。
よりによってこの距離で……。
精神を全力で集中させ、直進ミサイルをノーロックで放つが一機落としたのが精一杯だった。
「クッ……」
ダメだ、守りきれない! 馬鹿な、これがレッドガンの最期というのか! 認めない、認められるか、こんなこと!
「コア拡張、展開」
声が通信に乗って聞こえたのと同時に、空中に
「指示通りよく保たせましたねぇ。では、行きましょうか」
パルスプロテクションの中から四脚ACが現れ、ミルクトゥースの前にドスンと着地する。
「五花海……!」
土煙が晴れたそこには、G3 五花海の機体、鯉龍がいた。ガレージでコア拡張を換装したのか!?
「上官ですよ? G3と呼びなさい」
「そんなことより、敵前逃亡したはずじゃ……!?」
「言ったはずですよ? 我々は誇り高きレッドガンのパイロットなのです。敵前逃亡や離反などと」
五花海はやけに"レッドガン"という部分を強調しつつそう言う。
なるほど、そういうことか。こいつなりにミシガンやナイルに恩義のようなものを感じてここにいるのだろう。
「理気の流れはレッドガンにあります。ここで降りるだなんてもったいない」
俺が察したのを察したのか、そう言って五花海は取り繕う。素直じゃないやつだ、詐欺師らしいな。
「これ以上疑うのは無粋、か」
「ええ、ええ。是非とも私を信じてください」
「からかいやがって。騙されてやるよ!」
ミルクトゥースが再度動き出したのを見て、出鼻をくじくブーストキック!
「ステルス機の対処を頼む! こいつとRaDのMTどもは俺一人で押さえておく!」
「もう対処しました」
「え?」
「もう対処しました」
クイックターン。炎を予測射撃をだまして躱しながら見渡すと、狙撃をしていたゴーストを背面から撃ち抜くMT分隊がひとつ。ガレージに戻ったときに連れて行ったやつらか!
「倒しましたG3! 複数個所からのスキャン、やはり有効ですね!」
「G7、あなたは指揮が下手ですねぇ。兵力とはこう使うのですよ」
MTを広く展開させ、多方面からの攻撃で盾持ちの対処能力を上回る。敵が薄くなった陣容に向けて突出すれば、自らミサイルで機先を制す。自身に向けた奇襲には盾で冷静に対処。視野が広すぎる、なんなんだこいつは……!
「おや、近接型のステルス機ですか」
鯉龍が近接型ゴーストに奇襲を受ける。
「カットに入る!」
「結構です。ACを抑えてください」
「っ……信じるぞ!」
ミルクトゥースと少し距離をとった状態で撃ち合いをしながら会話する。
「この程度、"商品をお買い上げいただく"より簡単ですよ」
レーザーウィップを受けながらも、指示出しは続けている。
数が限られているはずの近接型……やつら出し惜しみは辞めたらしい。オールマインドはかなりの戦力をここにつぎ込んでいる。アーキバスが不利な状況にあるとはいえ、ここまで焦るとは。
「第三分隊、そこでストップ。読みが正しければ正面から来ます、迎撃態勢に入ってください。……"撃破"と。重畳」
鯉龍がスタッガーするが、意にも介さず指示を続ける。なんつー胆力だ、だから"3"なのか。
「生前のオーネスト・ブルートゥについてはG7の報告書で戦法は知っています。通りませんよ、それは」
RaDMTと封鎖兵器の殲滅がほぼ終わり、次第にMTたちの砲口がミルクトゥースへ向き始める。アーキバスと俺たちに挟撃されるような位置取りだったから、余計に早く済んだ。
「… ………」
ミルクトゥースもいくら火力不足WトリガーをWRECKERの耐久で受けているといえども、さすがに底が見えてきている。
「俺たちの勝ち、だな」
「……… ……」
「この期に及んで暗号通信なんかしやがって。AIでも辞世の句を詠むとは知らなかったぜ!」
「…… ……」
唐突に辺り一帯が明るく照らされる。
地平線にはまるで朝焼けかのような光。そんなまさか……!
「オーバード……レールキャノン!?」
アイスワーム撃破で損壊したはず……! いや、固定観念を捨てろ。オールマインドとブルートゥの技術があれば、応急処置ぐらいは可能かもしれない。
使うエネルギーも、オールマインドならバートラム旧宇宙港の待機電力には及ばなくとも砲撃はできる程度のエネルギーは用意できるだろう。
クソっ、機体越しにでもブルートゥのあの斜視が入ったニヤケ顔が目に浮かぶようだ。
最悪の事態を想定しろ……!
「G3! 敵はワーム殺しの時のオーバードレールキャノンを使うつもりだ! ここにぶち込まれれば、洒落にならない被害が出る! あんたの指揮でMTたちを守ってくれ……!」
「もう対処しました」
「え?」
「もう対処しました」
近接型ゴーストを蹴り飛ばして爆散させつつ、五花海は事もなげに告げる。
「別働分隊より連絡! オーバードレールキャノン付近の不審な機体を制圧しました!」
同時に光は弱まり、夜明けはそのまま夕暮れに転じる。
「重畳。実に重畳」
「は、はは……!」
連れて行った2分隊のもう片方だ。
五花海はミルクトゥースと対峙し、話す。
「あなたが"サプライズ"好きなのは知っていますし、オーバードレールキャノンを使おうとしていたのも報告を受けていました。正直動くとは思いませんでしたが……念を入れておいて正解でしたね」
鯉龍とテンダーフットでクロスファイアし、スタッガーを取る。そして俺がそれをぶった斬り、五花海が蹴り飛ばす!
「…… ………… …」
ミルクトゥースのデッドコピーはひときわ大きく誘爆し、崩れ落ちる。
「頭脳勝負なんてせず、副長のように正面から力押ししたほうがまだ勝ちの目があったかもしれませんねぇ」
五花海は停止したデッドコピーの上でクツクツと嗤った。
辺りの敵を殲滅し、後始末や救護をしながら話す。
「これで俺は地下に戻れるんだよな?」
「いいえ? 当然まだです。今日のアーキバスの戦力の少なさ、ご覧なさったでしょう? 連中はまだ底を見せていない。明日にも大攻勢をかけてくる可能性だってあります」
「……チッ」
「今日の貴方の活躍に免じて、その上官への不遜な態度は不問としますよ」
「……どうも」
「アーキバスと言えば、だが」
少しカマをかけてみよう。
「はい?」
「うちの上と違ってアーキバスはなかなかクレバーな立ち回りをするよな。あんたには向こうの
方が合ってるんじゃないか?」
「ははは、鞍替えの勧めですか? あなたこそその騙されやすい性格、企業には向いてないのでは? そう、例えば……何でしょうねぇ?」
「……」
「……失礼、戯れが過ぎましたね。忘れてください」
「……」
強化人間でよかった。強化手術されてなかったらおそらく今ごろ冷や汗だけでボナ・デア砂丘にオアシスを作れただろう。
「しかし、人の懐を探るというのはそういうことなのですよ」
五花海は歩き去りながらポツリと漏らす。
「……もっとも、私が"レッドガン"を敵に回すなんてこと、万に一つもありませんがね」
少し深く息を吸い、そうして俺もその場を後にした。
早いところ地中探査に戻りたいが、しかし補給路が断たれた状態で進んでもどうにもならないことも確かだ。弾数豊富な武器だけでCELと対決……考えただけでも寒気がする。
地中に帰れない間の万一に備えてこの前の地中での補給で"策"は張っておいたが、杞憂だといいが……。
ノーザークはベイラムが敷いた迎撃態勢をやすやすとすり抜け、既に深度2に到達していた。
「先行したベイラム部隊の通信ログを拾ってきました。どうやら第三勢力が入り込んでいるようです」
エアがいつものようにノーザークの中で囁く。
「ありがとう。しかしどうやって潜り込んだんだ?」
疑問が晴れないまま探索を続けていると、スキャンに何かが引っかかった。
「崖下に未確認の反応だ。635、警戒しろ」
「位置をマークします」
ノーザークが、エアがマークした位置に再度スキャンを走らせる。目を凝らすと、未起動状態のMTとACに金と銀のUIが付いて表示されているのが見えた。スキャンを徹底しなければ到底気づけなかっただろう。それほど巧妙に隠されていた。
「……解放戦線の部隊みたいだな。オールマインドにバトルログ指定されてるのが見える」
「直近に付与されたもののようです。仕掛けるかは貴方にお任せします」
「……やろう」
ノーザークはABクイックターンで無理な軌道で崖下に突っ込み、そのままMTに蹴りを入れる。MTは轟音を立てて壁に叩きつけられた。
「なっ……奇襲?! 総員MTを動かせ!」
MTたちは素早く立ち上がり応戦しようとする。しかし、洗練された即応力で僅かな時間で起動しても、その僅かな時間が対AC戦闘では致命的な隙になる。
「635。相手にするなら時間はかけるな」
「了解」
瞬く間にMTたちは停止し、残るは奇襲に巻き込まれて前後不覚のイェルシン操るACのみだ。
「クソっ……企業の……狗が……!!!」
「なるほどなるほど」
「「!?」」
「レイヴン不在の間隙を突いて尖兵を潜り込ませるとは……アーキバスもよく頭が回るものだ」
ノーザークはクイックターンをするが、一瞬遅かった。銃口からゼロ距離で重ショットガンを浴び、スタッガー。さらに逆関節の強烈な蹴りで吹き飛ばされる。
「奇襲!識別は……独立傭兵、コールドコールです!」
「お前も匂い立つな。レイヴンからはこれほどの腕利きが来るとは聞いていなかったが……まあ仕事だ、少しだけ相手をしてもらうとしよう」
アリーナランク12/B コールドコール
企業との取引でルビコンに密航した際同様に
G7 レイヴンとの取引で地下に入り込んだ独立傭兵
侵入方法の都合上乗機「デッドスレッド・ベイラム」は彼本来のACと構成が異なるが
長年の粛清代行で磨き上げた技術は機体が変わっても翳ることはない
このAC名を登録したのはレイヴンだが
コールドコールはネーミングに満足していないという