哀れな人型兵器に鬼龍抹殺命令を下されても…
大人気格闘漫画にタフシリーズというものがある。
時代を感じるネタが多いため新規読者はかなり選ぶほうだが迫力のある打撃戦、寝技
そしてなにより親子の絆に深く踏み込んだ名作だ。今も番外編がプレイボーイで連載されており、その筋のファンからは長く愛されている名作を超えた名作だ。
昨今のネタ人気には少々複雑な思いを抱かないでもないが、過去1000万部も売り上げた大作だからこそ期待は捨てない。今も面白い話はたまに出てくるから毎週プレボを買って購読中だ。
そして俺はそんな、格闘漫画特有の力こそが至高である殺伐とした世界に転生してしまった。
今の俺にあるのは薄っすらとした前世の記憶と鬼龍の血統と弄繰り回され多少屈強な肉体だけ。
そう俺はガルシアシリーズの転生した。してしまったのだ。
ガルシアとはA国が鬼龍の精子から作った人造人間のようなもので、骨格の自由な操作、驚異的な身体能力、並外れた頭脳と引き換えに寿命を削られた人間兵器である。扱いも家畜に近く、幾度の実験と投薬を重ねて作られるため俺のかすかに残った記憶ももはやこびり付くほどしか残っていない。たくさんの自分と同じ顔の仲間が処分されていく中で、自我を保つというのはそれほど難しいのだ。
いつも通り訓練をこなし、薬物を摂取。あとはカプセルの中で眠るだけという時に自分を管理する博士からとある命令が入った。
「ガルシア15号、お前に命令だ。悪魔のようなあの男を殺してこい。あいつは日本に居る。」
ハッキリ言って絶望した。悪魔と恐れられる男といえばこの世界では鬼龍しかいない。今の時代で言えば鬼龍の衰えはそこまででなかったものの、数年たてばゴリラにボコられる雑魚に成り下がる。そんな具合の年代だ。
しかしその足切り性能はとてつもない。音速と同程度の打撃を見抜けなければ勝負の土台に立てず、悪魔王子のようなスリッピング・アウェー技術がないと打ち合う事すらできない。
精子提供したとはいえ鬼龍は謎のこだわり故、人造人間である俺たちガルシアシリーズにはとても厳しく、人間とすら思っていない。
「自分では…力不足かと」
なんとか抵抗してみるも、基準に満たなかった兄弟たちが殺処分される映像を見せられてはどうしようもなかった
「なるべく傷のない状態で殺してくるんだぞ。終わったらこの番号にスマート・フォンで電話を掛けろ。」
そう言われて謎の番号とともにパスポートを手渡され俺はしぶしぶ研究所を後にしたのであった。
「くくく…鬼龍は頭脳、心臓、脚など捨てるところがない完全研究材料だァ…」
あんこうかよ。
他の個体と比べると筋肉量、敏捷性、スタミナなどあらゆる部分で劣っていた俺は何故か処分されずに生かされている。
鬼龍かA国、もしくはそれ以外に殺されるまでせめてその理由だけでも見つけ出したい。