ね、見える?夕陽。ちょっと木の陰に隠れちゃってるけど。
「ええ、見えるわ。ほんとうに綺麗ね……あなたの髪の色にそっくりよ」
いつも大げさだな……別に母さんも俺とおんなじ色だろ。それよりさ、脚は大丈夫?
「大丈夫よ。ちっとも痛くないし、昔みたいに普通に歩けるの。もうずっと杖を使ってないわ」
……そっか、ならよかった。
「ねえ、ジーク。あなた、ここに来たときのことを覚えてる?」
……そりゃあ、まあ。
「……そう。……あのね、私よく覚えていないの。脚を治してもらってから、あなたがここに来るまでのこと……。どうしてここで暮らすことになったのかとか、どうしてあなたがここに来たのかとか、そういうことなにも覚えていなくて、なんだかおかしいって今になって思うの」
……それは、ほら、あれだろ。無くなった脚が治るなんて信じらんないことが起きたから、心がびっくりしてそれ以外のこと忘れちゃったとか、そういうのだよ。……別に、何も……母さんは何もおかしくなんかなかったし、大丈夫だったから。
「……そう?」
そう。急に住む場所とか生活とか、いろいろなことが変わって、びっくりして、ちょっと疲れてただけだよ。大丈夫だから。
「……ジーク」
ん、なに。
「ふふ、いい子ね」
ねえそれやめてよ、俺もう15なんだけど。
「いいじゃない、男の子なんてちょっと目を離した隙に大っきくなっちゃう。すぐに私の手なんて届かないところに行っちゃうんだから」
……まあ、身長は欲しいけどさ。
「小さい頃にもっと食べさせてあげられたらよかったんだけど……。ご飯もそうだし、私の体のこともあったし、苦労させてばっかりでごめんね」
なにが。別に苦労とかしてないし。つか、腹空かせてたわけじゃないし。ってか俺どっちかって言うと少食だから。母さんの作る飯いっつもちょっと多いなって思ってたくらいだから。……だから頭撫でんなってば。
「いい子に育っちゃって」
いい子じゃねーし。つか来年くらいには絶賛反抗期中だからな、覚悟しとけよ。
「はいはい。……ねえ、あの子とは仲良くしてるの?」
え?あー、あいつ?まあ、それなりに。毎日顔突き合わせてるから、イヤでも、まあ、喋ってはいるっていうか。
「……私は脚を治してもらってから会えていないけれど、あの子、ずっとこのお屋敷にいるみたいなの。まわりも血の繋がらない大人ばかりで不安じゃないかしら。……少しも笑わなくて、すごく静かで、まるでお人形さんみたいで心配だわ」
そう?……でもあいつ結構喋るよ。結構口煩いし、口悪いし、口答えするし。可愛げがねえっていうか、生意気っていうかさ。全然お人形さんじゃねえよ。もっとこう、なんつうか、投げたら変なとこに飛んでくボールみてえ感じ。頭良いのに、全然もの知らねえし。鳥も兎もちゃんと見たことねえし、絵は下手くそだし、寝坊助だし、人のことバカにして笑うし、顎で使うし、機嫌悪いとすぐ顔に出るし。
「……そう、それならよかった」
……なにが?
「なんでも。ジーク、あなたのほうがお兄さんなんだから優しくしてあげなさいね」
してるって。あいつのほうが俺に優しくすべきだよ。俺はあいつを弟みたいにかわいがってる。
「ふふ、弟なんて……本当に仲良くなったのね」
……別にそんなんじゃねえけど。……………あー、あ、あのさ、もしもの話だよ?もしも、あいつが俺の弟で、本当に俺たちの家族だったら、どう思う?
「どうって、どうしたの?急に」
例え話だよ、ただの。
「変なの。でも、そうねえ、なんだか想像できる気がするわ。あなたとあの子が私たちの家にいるところ……笑ったり、喧嘩したりして、今より少し騒がしいおうちになりそうね。──ええ、それもきっとすごく楽しいわ」
……そっか。うん、俺もそう思うんだ。あのさ、それで、俺一つ考えたことがあって──あ、あいつ、窓んところにいる。
「あら、どこ?」
屋敷の一番上の階の、ほら、あっち。おーい!……うわ、あいつ俺が手振ってんの気付いてて無視してる……。ねえ、母さんも手振ってみてよ。
「でも、1回しか会ってないのよ?私のことなんて覚えてないんじゃないかしら」
そんなことないよ、ちゃんと覚えてる。喜ぶよ、あいつも。…………ほーら、手を振り返した。あ、すぐやめた。部屋引っ込んだ。見た?照れてんだよあいつ。明日からかってやろ。……てかさ、あいつ、俺のことはああやって無視するくせに、母さんには素直に手を振り返すだろ?俺のこと舐めてんの、あいつ。ねえ、母さんもなに笑ってんのさ、もう……。
「ふふふ、ごめんってば、拗ねないで。ほら、いつもみたいに笑って、私の可愛い子。それで、さっきのお話の続きは?」
……ああ、いや、また今度でいいよ、日も落ちてきて、寒くなってきたしさ。身体を冷やさないうちに中に戻ろう、母さん。
◇
霊王宮に上がってから、見えざる帝国の滅却師たちという数多の監視の目から逃れられたのは石田にとってチャンスだった。
現世からやってきた石田は異邦人で、なにをせずとも常に誰かの目線を集めてしまう存在だったからだ。なにか行動を起こそうにもそんな数多の目があっては難しく、ましてユーハバッハの傍にはハッシュヴァルトがいた。
──ハッシュヴァルト。
誰よりも石田を警戒しているのがあの男だった。
もちろん事実、石田の目的がユーハバッハの殺害である以上、彼の警戒は最もなものだが石田の障害であることに変わりはない。
数刻前、親衛隊の面々に与えられた皇帝からの命令は、真世界城へやってきた死神たちの迎撃だ。すでに他の親衛隊は死神を発見したらしく、四方から戦闘の音が絶え間なく聞こえてくる。
そうしてあちこちで発生した戦闘の隙を縫って、石田は祖父である石田宗弦から譲り受けた散霊手套から作成した崩壊チップを真世界城のあちこちへ仕掛けていた。
起動すればチップは即座に周囲の霊子の分解と拡散を行う。そうすれば霊子で組まれた真世界城は容易く崩壊し、遥か上空から地上へ落下させることができるのだ。
そうすればユーハバッハとて死ぬ……はずだ。
真世界城の中を足早に進みながら、石田は自身の思考のために眉間へ皺を寄せる。
この計画によって討つべき者を確実に討てるという確信は実のところ持てていなかった。
けれどこれは自分の持つ力と知恵をすべて使ったうえでの結論だ。
このままユーハバッハを放置すればこの世界は崩壊する。それは確かな事実だ。
この計画の実行によって、仮にユーハバッハは殺せなくても、親衛隊をはじめとした見えざる帝国の滅却師たちは殺せるだろう。そしてユーハバッハとて、仮に生き残れど無傷で済むはずがない。そうすれば、世界の崩壊をいくらか先延ばしにすることはできるはず。百年か、千年か、それはわからないけれど。
本当は黒崎たちがここへ辿り着く前に終わらせたかったことだ。石田は歯噛みする。
彼らがいる限り、石田は崩壊チップを起動できない。彼らを巻き込んでは意味がないからだ。
チップは各所へ確実に仕込んだ。いつでも起動はできる。だから次は一刻も早く黒崎たちを見つけ出さなくては。
彼らを太陽の門を使って現世へ逃がし、そして崩壊チップを起動させる。
それでいい。それが最適解だ。自分が彼らのためにできる、唯一にして最大のことだ。
……これでいい。これでいいはずだ。
心の裡に巣食う不安から目を逸らしながら、石田は銀架城から大きく変容した真世界城の中を足早に進む。抑えても響いてしまう足音が酷く煩わしくて仕方がなかった。
「──そんなに急いで一体どこへ向かう?」
突如、降り注いできた声に、石田の足が止まる。
ホールの中心、立ち止まった石田は背中に冷や汗をかいた。憔悴が脳内を満たす前に、熱を持つ身体を冷やそうと深く息を吐く。それから顔を上げ、声の主の名を呼んだ。
「……ハッシュヴァルト」
ホールから続く上階への階段、その手摺に軽く手を置いたハッシュヴァルトが石田をその蒼い瞳で見下ろしていた。
彼の表情には余裕がある。普段の無表情に近い彼の顔つきと比較すると、やや高揚しているかのように口角が上がっているのが見て取れた。
彼は薄い唇を開くと言葉を紡ぎ始める。
「親衛隊はみな、侵入した死神たちの迎撃を陛下から命じられている……。そのはずだが、何故お前は今この真世界城にいる?」
彼はゆっくりと足音を響かせながら階段を一段一段と降りていく。
ハッシュヴァルトから石田への視線は途切れながらも、そこに油断や隙は少しも無い。仮に今この瞬間、石田が全速力で駆け出したとしても、ハッシュヴァルトから逃げられはしなかっただろう。
そうだとわかっていたから、石田は内心に焦りを滲ませながらも降りてくるハッシュヴァルトから目を離さずに奥歯を噛みしめる。緩く癖のある金の髪が揺れ、時折ハッシュヴァルトの顔を隠した。
皇帝の側近であり、誰よりも石田を警戒していた男。石田にとっては今、最も会いたくない相手だった。
ハッシュヴァルトはホールまで降りてくると、隠すこと無く笑みを見せる。そして、石田から言葉が返ってこないことなど気にする様子もなく、演説をしているかのように一人で続けた。
「もしや、なにか忘れ物でもしたか?そうだな、例えば──」
ハッシュヴァルトは握り込んだ右手を身体の前へ突き出すと、その手をパッと広げた。
「──お前の祖父の形見……だとか」
彼の掌から白く四角いものがパラパラといくつも落ちていく。石田はそれに見覚えがあった。むしろ、彼には心当たりしか無かった。
──祖父である石田宗弦から譲り受けた散霊手套から作成した崩壊チップ。
真世界城のあちこちに仕掛け、あとは起動するだけだった彼の最終兵器。
ハッシュヴァルトは指の間に挟んでいた1枚のチップを石田へ見せつけると、唇を開いた。
「これに見覚えは?」
「……ありませんね」
「そうか、私はこの機構には見覚えがある。お前の祖父である石田宗弦が持ち出した
「……さっきから何のことでしょう。心当たりがありませんね」
石田の虚言を当然ハッシュヴァルトは信じない。彼は一笑すると、指に挟んでいたチップを地に落とした。そうして貼り付けていた笑みを消す。
「不可能だ」
氷のように冷たい表情で、ハッシュヴァルトは吐き捨てる。
強張った石田の表情を見つめたまま、彼の前に立ち塞がるようにして言葉を続ける。
「この崩壊チップを起動させて、霊子で構築されたこの真世界城を破壊し、親衛隊や死神や自分ごと地に落とす。そうやって諸共、陛下を殺害する。それがお前の計画だろう。……なるほど、面白い発想だ。否定はしまい。お前の苦悩が見える。お前の努力が見える。なんともいじらしいことだ。──故にお前の願いが叶わないということだけが、哀れで仕方ない」
ハッシュヴァルトは言葉の割にさして面白がっても憐れんでもいない様子でそう呟く。ただ淡々と彼にとっての事実を語るばかり。
「こんなもので陛下は殺せない。お前に、お前たちに陛下を殺害することなど不可能だ。あのお方の前に立てば最期、塵のように命を散らす。それだけだ」
「…………」
「この程度のことが理解できていないとは思えなかったが……希望的観測、か。所詮、お前がお前自身のために作り出した都合の良い妄想に過ぎない」
「……待ってくれ。妄想なのはあなたのほうじゃないか。本当に僕が陛下の命を狙っているのなら、あなたにその計画がバレた時点でチップを起動しているはずだろう。保身に意味はない。自分諸共、なんでしょう?」
石田の反論にハッシュヴァルトは口を噤むと、一度だけ嘆息する。それから肯定するように頷いた。
「その通りだ。故にこれは私の妄想……希望的観測に過ぎない」
「……?なにがだ」
彼の問いかけにハッシュヴァルトは答えない。
その代わりに左腰に差していた剣を素早く引き抜く。
「……っ!待て、ハッシュヴァルト……!」
瞬間、これまでとは異なる緊張が走った。
戦闘になる。そう判断した石田は外套を翻して素早く身を護る行動を選択した。
対話を拒絶されて先制攻撃されたのは自分。その状況を作れれば、反撃することに道理が生まれる。仮に自分がハッシュヴァルトを殺すことになったとしても、こちらに非は無いと主張できる。
身を固くする石田の視界の中、薄暗い城内で一度だけ刃が僅かに光を反射する。それを見た瞬間、同時に感じた空を裂くような鋭い風。斬撃はすでに辿り着いていた。続く破壊音。
石田の立っていた場所、そのすぐ傍の壁がハッシュヴァルトの斬撃によって吹き飛ばされていた。続いて背後の壁も連動するように崩れていく。
それによって数多の粉塵や破片が石田へ降り注げと、しかし彼の身体に傷はない。
「……なにを──」
その瞬間、石田は感知し慣れた霊圧を感じ取って咄嗟に振り向く。
破壊された壁の向こう側、粉塵の煙の中でさえ目立つあの夕陽のようなオレンジ。
見開いた目が確かにそれを捉える。そうして彼は諦めたようにその名を呟いた。
「──黒崎……!」
「石田……!」
そこに立っていたのは一人の青年。
死神代行、黒崎一護。
「黒崎くん!」
「大丈夫か!一護!」
そして、彼と共にこの真世界城までやってきてしまっていた井上織姫と茶渡泰虎。
石田が見えざる帝国へ単身やってきた理由であり、彼にとって護るべき日常の象徴であり、──ほかでもない、友達である彼ら。
思わず顔を歪める。どうして君たちがこんなところに来てしまったのか。
理由なんてわかりきっているのに子供みたいに喚いてしまいたかった。
このわからず屋め。君たちがこんなところにいたら、僕がここに来た意味がなくなってしまうじゃないか。
そんな石田の心を読み取ったように、ハッシュヴァルトは言葉を紡いでいく。
「──黒崎一護ら現世の住人がこの真世界城にいる限り、お前はここを落とすための崩壊チップを起動しない。何故なら、彼らを犠牲にすることはできないから。……そんな、私の希望的観測だ」
粉塵が晴れた先、そこには抜刀した剣を手にしたハッシュヴァルトがいた。
彼は軽やかに数歩、石田のほうへ足を進める。緊張に満ちたこの場を完全に支配したハッシュヴァルトは、余裕のある顔で石田や彼の背後にいる黒崎らを眺めると小さく笑う。
「しかし、少し予想外だったこともある。お前が何事もなくこの城に戻ってきたことだ。私はバズビーへお前を追うよう指示したのだがな」
口角を上げてそう呟くハッシュヴァルトに、最早逃げることも誤魔化すこともできないと判断した石田は咄嗟に皮肉を口にする。
「残念だが、確かに僕は彼の姿を見ていない。そもそも彼が君の指示を聞いているのも見たことはないが……団長しての威厳が足りていないんじゃないか?」
瞬間、石田の口角が上がり、対してハッシュヴァルトの口角が下がる。
石田の言葉は多少なりとも彼に不快感を与えることに成功したらしい。だからなんだ、とは石田自身が思っていることだが。
「──あァ、確かにコイツから団長としての威厳を感じたことはねえが、お前を追わなかったのは先に別の兎を見つけたからだぜ」
第三者の声が響いた。
その声はハッシュヴァルトと対峙する石田や黒崎の背後よりももっと奥からだった。
声の主に一番近かった茶渡は素早く振り返ると、最も傍にいる井上や、そのさらに奥にいる黒崎や石田を護るように拳を構える。どんな攻撃が来ても自分が受け止められるように、と。
彼らの警戒の視線の先にいたのは、白い制服を短ランのように纏った男。派手な赤い髪をモヒカンスタイルに逆立てた滅却師、バズビーの姿だった。
彼は好戦的な笑みを隠さないまま、銃を形作るように人差し指と親指を立てる。
「先に黒崎一護を見つけたからよォ、こっちを追わせてもらったぜ。多勢に無勢より挟撃のほうが有利だからな、なあハッシュヴァルト!」
「言葉は正しく使うべきだ、バズビー。多勢ではなく烏合の衆。元より私たちの敵ではない」
石田や黒崎たちを挟むようにしながら、ハッシュヴァルトとバズビーは言葉を交わし合う。
そこには気安さがあり、信頼関係が見える。石田にはそれが意外だった。ハッシュヴァルトとバズビーの不仲は騎士団の中では共通の認識だったからだ。
そんな中、張られた声が空間に響く。
「おい、石田!なんなんだよ!これはどうなってんだ!」
「見てわからないのか!あの二人は僕らの敵だ!囲まれているんだ!」
突然城の壁が吹き飛んできたかと思えば、探していたはずの石田が突如現れ、かと思えば敵と思わしき滅却師二人に挟撃されている。
急な展開に困惑した黒崎が石田へ怒鳴るように問いかければ、同じだけの声量が返ってくる。それに怯むわけもなく黒崎は続けた。
「そんくらいわかってるっつーの!そうじゃなくてだな、お前は──」
「今は悠長に話している場合じゃないだろう!?」
「なっ、テメッ……!」
誰のせいで、と黒崎は眉間に皺を寄せた。
黒崎たちの視点だけで言えば、知らないうちにユーハバッハの仲間になり、そのユーハバッハに命じられるがままこちらへ攻撃してきたのは石田だ。それも何の説明もなしに。
もちろん彼が本当に自分たちを裏切って、ユーハバッハの仲間になったなんて少しも信じてなどいない。
まして根っこはどこまでも真面目で誠実な彼が何も考えていないはずがない。なにか重大なことが起きていて、その解決のために全力で動いているのだろう。
そんなことはとっくにみんなわかっている。怒っているのは、自分たちに何も相談せずにこんな危険な道を選んだことだ。
その選択の前に相談してくれたら、頼ってくれたら、きっともっと力になれたはずなのに。一人になどさせなかったのに、と。
言ってやりたいことはたくさんある。
それは黒崎だけではなく、井上も茶渡もだ。
だから全部聞き出してやる。
言いたいことは全部言ってやる。
「あァ、話はあとだ!こいつらをぶっ倒したあとで、全部聞かせてもらうからな!」
「大きい声を出さなくてもわかってる!」
黒崎は相棒たる斬月を構え、石田は弓に矢を番える。示し合う必要もなく、二人は背中を預けあった。
その左右に井上と茶渡も寄り添う。怒鳴り合う二人のいつも通りの姿に小さく笑みを零した。
いつものふたりだ、いつものみんなだ。少しだって負ける気などしない。
そんな少年少女たちの姿に、バズビーは腰に手を当てたまま犬歯を見せるように口角を上げる。
「はっ、ガキの友情パワーに負けちまいそうか?ユーゴー」
「……子供の無茶を止めるのは大人の役目だろう、バズ」
ハッシュヴァルトはスッと目を細めると、剣先を石田へ向ける。バズビーは伸ばした人差し指を黒崎へ向ける。
「お前たちを陛下の元へは行かせはしない」
「つーわけだ、ちっとばかし痛い目を見てもらうぜ」
刃は光を受けて星々のように瞬き、ストリングスはぶつかり合う霊圧に震える。
掌、拳、指先。無音、呼吸、風を切る。
かくして戦いの火蓋は切って落とされた。