馬車の旅が終わり、物語が始まる。
ガタガタと揺れる馬車の中、一人の男が座っていた。
彼は物憂げな目で外を見ており、視線の先には終わりの見えぬほど横に連なる大きな壁があった。
そのような男を見て御者は声をかける。
「もうそろそろ迷宮街に着きそうですな、この辺りは最近は治安も悪くなってきましたけれども、旦那がいてくれるおかげで安心ですよ。」
話好きな御者に対して男が視線をそのままに言う。
「迷宮街の治安の悪さは話に聞いていたが、やはり周辺も悪いのか?」
「そうでしょうよ、なんせ最近また迷宮街で大きな争いがあったらしいですからね。」
そんな話をしていたからだろうか、男が外を見ていると、なにやら怪しい物体が視線の先に現れた。
全身が膜のようなもので覆われており、体の中心には核のようなものが浮いていて、おまけに全身が遠目から見えるほどに帯電していた。
男は御者にそれを伝えると御者は言った。
「帯電しているスライムですか?たしかにそう見えますねぇ、予想していた治安の悪さとは違いましたが通行の邪魔になりそうですね、ではやっちゃって下さいよ旦那!」
御者がそう言うと、男は馬車の上へと素早く登り、片手を上げた。
男が人参一つ入りそうなほど穴を広げた握り拳を作ると、拳の中から半透明な槍が一瞬で生まれ、男はそれを放った。
槍はエレキスライムに直撃し、核を消し飛ばし…
戦闘が終了した
それを見た御者が言う
「ひゅう、やっぱり旦那は頼れますね!」
御者がそう言うと男は少し嬉しそうにしながら「そうでもないよ」と言いながら馬車の中へと帰ってきた。
そんな一幕があった後、迷宮街の外壁近くの宿場町へとやって来た。
「これ以上近づくと本気でどうなるか分かりませんからね、ここで私はは別のお客を連れて帰る事になります。」
御者はそう言うと馬車を降りて紙を出した。
「個別馬車送迎7日間で計200万共通貨なります。」
それを聞いた男は腰に着けている袋からじゃらじゃらと明らかに袋の見た目から想像できない量の硬貨を出した。
「なんだかんだ話が面白かったから少し多めに出すよ。」
そう言い220万共通貨を渡し少し話し込んだ後再開を願って彼は御者と別れた。
そうして彼は少し歩いた後、迷宮街の外壁へとたどり着く。
「たしかに治安が悪そうだ。」
彼は思わずそう漏らしてしまうほどに目も当てられない有り様だった。
手の届く範囲の壁にはびっしりと落書きがされており、壁に引っ付くようにバラック建てられており、喧嘩をしていたのか身なりの悪い人間が数人気絶していた。
彼はこれからの生活に不安を抱えつつ、その光景を見た場所から壁を伝って人が沢山往来している外壁の門へとやって来た。
そして、男―サンサは少し物怖じした後、覚悟を決めた様子で往来の人の波へと飲まれに行った。
これがサンサのジパリアでの軌跡のはじまりである。
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