迷宮と街と彼   作:はまゆ

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退屈と交流

てアリシアの実力を見たサンサは

(20層は問題なくいけるだろうが、30層までいくと大分厳しくなる実力だな。途中からはしっかり守ってやろうか。)

と評価した。

 

そうしてサンサは回復魔法をアリシアにかけると、3人は明日かの予定を経てて解散した。

 

 

 

サンサはスメゾレ荘に戻って温泉に肩までじっくりと浸かり考える。

自分はある程度強いと知っている。

だからこそ自分は人を身の丈に合う人を守れる力があると思っていた。

 

[サラ?どうしたのよそんなに考え込んで?]

[なんでもないよ、これからのことを考えていただけさ。]

 

自らのことをサラと呼ぶ、かわいらしい白髪を持った彼女はあの海の向こうに消えた。

サンサは人生の3度目の喪失で初めて己の無力を嘆いた。

自分に力があれば守れたのだろうか、迷宮にこだわることなく生きていれば彼女はまだサンサの傍に居てくれたのだろうか。

 

そこまで考えたサンサは思考を切り替えた。

(止めよう、人は前へ進まなくてはならないから。停滞は死と大差無いのだから。)

 

そう思っていつの間にか目の位置の近くまで温泉に浸かった身体を持ち上げ、持ち家に帰った。

 

その日、サンサはジパリアに来て初日以来の悪夢を見た。

 

 

 

ツアーは順調に進んだ。1日に2層のペースで潜り、

2層〈立ち昇る湯煙の山〉

3層〈夢の廃鉱〉

4層〈世界を貫く大穴〉

5層〈血の王の館〉

6層〈ある恒星のトーラス・コロニー〉

7層〈心くすぐる大密林〉

8層〈幻影の丘陵〉

と順調に攻略して行き、5日目にして現在サンサ達は第9層の〈大母ガマの背〉にいた。

自ら安全な道を選んだとはいえ、優秀なスタッフ陣が魔物を一瞬で倒し、目に入るシーカーを片っ端から追い払い捲ったため、

参加者は連れの仲間ととたまに話す位しかやることがなく、5日間延々と歩くだけでだんだんと飽きてきていた。

それはサンサも例外ではなかった。

 

遠くの方を見ればスタッフが大母ガマの背から生まれるおたまじゃくしを討伐しているのが見える。

サンサはその様子をぼんやりと眺めながら歩いていると、1人の女性から話しかけられた。

 

「なんか暇ですよねぇ…」

「そうだな。良いことなんだが窮屈だ。」

それはこの5日間で顔見知り程度になった人であった。

 

「いくらパルタジェの残党が潜んでいるかもと言われてもぉ、ツアーなんて止めとくべきだったのかもしれませんねぇ。」

女性はそう言って息を吐いた。

サンサはカミーユやアリシア以外とも退屈しのぎに話すべきだと思い、世間話を始めた。

 

「あなたはぁ、かなり強そうですけどぉ、やっぱりパルタジェでぇ?」

「そうですね、そういうあなたも深層までは行けそうなくらいには存在性が高そうですけど、ままならないものですね。」

サンサはそんな感じでコミュニケーションをとっていると。

 

「そういえばぁ、あなたのお名前はぁ、なんですかぁ?」

そう聞かれた。

サンサは自らの名前を教えると。

「そうですかぁ、私の名前はチヌと言いますぅ。50層まで行くつもりなのでまあまあ長い付き合いになりそうですねぇ。」

チヌはそう言った。

 

そういうことをしていると、サンサとチヌの様子を見たのが原因かはわからないが、ジパリアで赤の他人と話すのは避けたかったからかあまり他人同士で会話がなかった参加者達が、ぽつぽつと他人と交流を始めた。

 

サンサはそんな様子を見て、少し良い事をしたんじゃないかと良い気分になった。

 

「貴方が話し始めてからは他の人に話しかけられましたよ。」

カミーユが交流を出来て少し退屈しのぎができたと報告する。

「アリシア君は人と話せるんですね!サンサさんから聞いた話では結構人とは淡白な付き合いが多いのではないかと言われていましたが。」

アリシアはサンサから退屈しのぎに聞いた、カミーユが元仲間の死体を顔も変えずに蜂の巣にしたエピソードを思って驚く。

「まあ仲間と言ってもいつかは迷宮へ潜る為に縁を切る存在でしたからね。」

カミーユはそう言って反論した。

 

 

 

そうして少し活気を持って話していると、サンサの傍にいたスタッフが声を漏らした。

「…急に仲良くなりすぎじゃないかな、…最初の方みたいにあんまり話し合わないほうが良かったかも知れないけど、…まあいっか楽しそうだし。」

そう言ってジパリアらしくない光景を見て、また周囲を警戒し始めた。

 

 

 

そうして暫く歩いていると、9層目のセーフゾーンの前に立ちはだかるカエルの幼体と群れと1匹のドデカイカエルを前衛スタッフ5人が殲滅して、9層目のセーフゾーンに入ることができた。

「今まで5日間お疲れ様でした!ツアーは2日間の休日の後にまた5日間潜る事になります。次の集合場所はこの場所になりますのでお忘れないようにお願いします。」

ハンダはそう言ってツアーを解散させた。

 

 

 

サンサ達はツアーから別れた後、アリシアからの提案で先に10層を見てみる事にした。

「私はこの大迷宮の調査をしにきたんですが、やはりジパリアの大迷宮の10層はじっくり見たいんですよ!」

そう言うアリシアを見て、カミーユはまあそうだろうなという顔を見せた。

 

そんな2人を見て、なにも知らないサンサは2人に聞く。

「よく知らないんだが、ジパリアの大迷宮の10層は他の場所とは違うのか?大迷宮近くの中迷宮は大迷宮の10層につながる事は知っているんだが。」

 

不思議そうにするサンサに対して、こいつマジか!という表情を見せたカミーユは、

「まあ見れば分かりますよ。」

とだけ言い、3人は10層へと下った。

 

 

 

3人が10層に着くと、そこはセーフゾーンと同じように街となっており、建物の先端には傾いていない天秤の印の旗が取り付けられていた。

城塞都市のようなその街を観察するサンサをアリシアが引っ張り、城壁の上に連れてきた。

 

サンサは城壁の上から見える景色に驚いた。

街の外には緑の平原が広がっており、ちょこちょこと今いる場所と同じような城塞都市が点在しており、街の外にも家を建てて暮らすような人がいた。

そして本当に所々に魔物が見える位で、全然魔物はおらず、迷宮内を多くの人々が行き交っていた。

 

「これは…凄いな。」

サンサは上手く言葉を出せないでいるとアリシアが自信満々に言った。

「ここは第10層〈平穏なる大戦場〉です!」

 

サンサは視点をぐるっと回し辺りを見る。

「ここが戦場?」

平和そうな光景を見てサンサは聞いた。

 

それに対してアリシアが答える。

「ジパリアには10層毎に他の階層からやってきた魔物以外一切出現しない不思議な階層が存在するんです!何故この階層では戦利品も発生しないのか、ジパリアにしか存在しないのか、全てが全く判明していない迷宮研究家の人気の研究対象なんですよ。戦場と呼ばれる理由は詳しくないのでカミーユ君に聞いて下さい。」

 

アリシアはそう言って話をカミーユに振った。

「アリシアも知らないんですか、戦場って呼ばれるのは至極単純、魔物の脅威がなさすぎて人の争いが起きやすいんですよ。」

そう言って説明を言うと、

「やっぱり明日にしませんか?せっかくツアーの休みの日なんですし、ずっと歩いて精神的に疲れましたし。」

そう言った。

 

そうしてカミーユの提案により、アリシアのやりたいことは明日に回され、その日の迷宮探索は終了したのだった。

いつも3行空白を入れて区切りや場面転換をしてきてましたが、どうも区切り方を変えるべきか気になって迷いました。他にも良い案があれば教えてください。

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