ポケットモンスター in オラリオ   作:ニャース

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…………すみません、投稿が滅茶苦茶遅くなりました。

本当に申し訳ございません。


22 ベル、面接を始める

 

 ベル・クラネルは着々と闇派閥(イヴィルス)の本拠地攻略への準備が進む中、精力的に力を貸し続けた。

 

 ロキやフレイヤ・ファミリア達にポケモンを預けるのは勿論のこと、それ以外にもトレーナーとして見込みのありそうな冒険者を見つけたら、例え探索系ではないどんなファミリアであろうとも惜しむことなく預けていた。

 

「という訳で、前回お世話になったお礼ということで」

「…………急に訪ねて来たかと思えば、とんでもないことを言い出しますね」

「まあ、そう言わずに。治療のお役に立つから。ね?」

「きゅわわ~~~~」

 

 催眠療法の相談で仲良くなったアミッドにはヘイズと同じく治療を得意とするポケモンを預けた。

 ……他のポケモンにスキルスワップをして貰えば、恐ろしいほどのシナジーを発揮するようになるのだが、今は多くを語らないでおこう。

 

「アミッドにポケモンを預けたのなら、私にも預けるべき」

「ええ? いや、そう言われても……」

「ミアハ様を真っ先にキビキビさせたよね?」

「すみません、すぐにご用意させてもらいます」

 

 他にもアミッドのライバル(?)且つ、神会(デナトゥス)でいの一番に犠牲になったミアハの眷属であるナァーザに、キビキビさせた詫びも兼ねてポケモンを預けた。

 今ではやたら美味しそうな子犬が、発酵が必要な材料の手助けをしながら店の看板犬として働いている。

 

「ふふふふふ……主よ、なかなか良いものを持っているらしいなあ?」

「え? ちょっ、なんですかいきなり!? やめ、身体を(まさぐ)らないで……!」

「よいではないか、よいではないか~~~」

 

 ポケモンのおとしものを何処からか聞きつけ、ヘファイストス・ファミリア の椿に鍛冶に使いたいとやたら絡まれた。

 ちゃっかりポケモンまでせしめた今頃は、二人仲良く火事場でお礼を兼ねたベル向けの防具を作成している頃だろう。

 

「……わん!」

「ああ? なんだこの犬?」

「すみません、急にイワンコが飛び出しちゃって! ……いや、でもあのイワンコが僕以外にこんなに懐くなんて」

 

 ……ベル以外に決して靡かなかったイワンコが、とある狼人族(ウェアウルフ)の少年に自らの意思でついていく事を決めたのには驚いたが。

 

 ともかくベルは他にも様々な冒険者にポケモンを預けていった。

 中にはこんな奴にポケモンを預けていいのかよと言いたくなるような冒険者もいたが、相性がぴったり過ぎて思わず託してしまったこともあった。

 

 ベルにとって大事なのは良いトレーナーになる素質を持っているか、または預けるポケモンがその人に合っているかどうかである。

 

 

 

 それ以外にもラティアスやラティオス達に頼んで、闇派閥(イヴィルス)達の活動をいち早く見抜いて破壊活動を止めて捕縛し、一部の者はキビキビ洗脳して放流していった。

 さじ加減を間違えるとヴァレッタ辺りに勘づかれるが、本拠地突入まで気づかれなければいいので、フィンがとても良い笑顔でその采配をしている。

 

 他にも検証が終わったポケモン世界の道具を提供した。

 検証のためだとザルドおじさんがアルフィアお母さんに酷い目に遭わされたが、ザルドおじさんは煤けた笑顔で良いんだと笑ってくれた。

 

 木の実類だけでなく『きずぐすり』等の道具も冒険者に効果があり、中でも状態異常も回復できる『かいふくのくすり』はエリクサーの上位互換として重宝されるが、なによりもダンジョンを一瞬で脱出できる『あなぬけのひも』が喜ばれた。

 

 ロイマンが熱い視線を送ってきているが、ウルトラホールを通って追加分を仕入れてくるのは闇派閥(イヴィルス)を壊滅させた後になるだろう。

 

 また闇派閥(イヴィルス)の本拠地に突入する際は、ベルの手持ちのポケモンを護衛につける予定であるので、すでにポケモンを預けた者も、そうじゃない者も含めポケモンの知識を広めていった。

 

「……悪とゴーストタイプ……はっ!? わかったわ!! この組み合わせなら弱点はなしね!!」

「不正解です、アリーゼさん。確かに昔はそう勘違いされていましたが、フェアリー技が弱点になっています」

「ああああああああ!! あと少しで追試をまぬがれたと思ったのにいいいいい!!」

 

 ……一部の冒険者が悲鳴を上げていたが、大事なことなので口調は優しいがスパルタで知識を詰め込んでいった。

 

 そんなこんなで総指揮を執っているフィンとまではいかないが、それに準ずるくらいはベルは働き詰めであった。

 アーディやリューが心配して休むように言ってきたが、ベルは立派なガラル人なので、体力的にも精神的にも全く堪えていない。

 

 ネモの気が済むまでバトルに付き合わされていた時に比べれば楽な部類である。

 

 ……ペパーが止めてくれるまでポケモンを変え続けて一週間ほぼぶっ通しでバトルした際は、流石のタフなベルも堪えた。なんでネモは体力ないのにポケモンバトルの時だけは無尽蔵に動けるのだろうか?

 流石にその後一日は気絶するように眠っていたらしいが、それにしても恐ろしい執念である。

 

 昔を思い返して少しだけげんなりしていると、一つだけ困惑するような事件があった。

 

「大変だ! ベル君がくれたスマホロトムがメスガキになっている!!」

「なんですかそれぇ!?」

 

 いつものように献身的に働いていると、いきなりヘルメスがやって来て訳のわからない事を言い出した。

 動転している内にあれよあれよとヘルメス・ファミリアの拠点まで引っ張りこまれ、その先で見たものは――。

 

『えぇー? こんなのもわかんないのぉー? お姉ちゃんって賢そーな顔して案外おバカさんなんだね』

「……くっ。確かに私には『科学』の知識はありませんが…………」

『その眼鏡は飾りなの? もう眼鏡キャラやめたらぁ?』

「眼鏡は関係ないでしょう、眼鏡は!」

『きゃははっ! すっかすかな頭で怒っても怖くないよー。しょーがないからアタシが丁寧に教えてあ・げ・る・よ』

「誰の頭がすかすかだって!?」

「馬鹿、お前の事じゃねえって、ハゲル!」

「今俺の事ハゲって言ったか? ハゲじゃねえよ!? ちょっと額の面積が大きいだけなんだぁ!!」

「誰もハゲなんて言ってねえよ、めんどくせえ!?」

 

 ……とんでもなくカオスな状況が広がっていた。

 

 スマホロトムが『ねえねえ、どんな気持ち? どんな気持ち?』みたいな動きでアスフィの周りを飛び回り、アスフィが怒りでぷるぷる震えている。

 流れ弾を食らった髪が少しだけ寂しい男性団員が暴れまわり、それを止めようと乱闘が起きている。

 

「…………お邪魔しました」

「帰らないでベル君! 元々は君のロトムだろう!?」

 

 速攻で帰ろうとするベルを、ヘルメスが決死の表情で足にしがみついて止めた。

 

「いやいやいや! 僕の手持ちの時は普通の喋り方してましたよ!? 口数多くてちょっと『なまいき』な性格でしたけど、あんなんじゃなかったですって! 誰かが変な事吹き込んだんじゃないんですか?」

「……………………」

 

 ベルがそう指摘すると、ヘルメスは目を泳がせながら冷汗をだらだらと流し始めた。

 

「……まさかヘルメス様」

「ちょ、ちょっと悪ふざけのつもりでオラリオの知識を欲しがってたロトムに、メスガキ本を与えただけなんだ。つい出来心だったんだ!」

「みなさーーーーん!! ここにロトムをメスガキにした元凶がいますよーーー!!」

「うああああああ!! ベル君が俺の事秒で売り飛ばしたあああああああ!?」

 

 その後、団員達(主にアスフィと頭が寂しい男性団員)によってフルボッコにされ、『私はロトムをメスガキにしました』というプレートと共に宙吊りにされるヘルメスの姿があった。

 なお、団長であるリディスは終始爆笑していて主神への暴行を止めようとすらしていない。

 

 こうしてしょうもない事にも巻き込まれながら、とうとう闇派閥(イヴィルス)の本拠地に突入する目途が立ってきたのであった。

 

 ポケモンだけでなくベル本人も参戦するつもりであるが、いくら素の身体能力が第三級冒険者並みで、ポケモンの攻撃を受け止められる耐久を持っているとはいえ、恩恵なしでの参加は認められなかった。

 

 追い詰めているとはいえ相手は闇派閥(イヴィルス)である。どのような悪辣な手段を持っているか分かったものではない。

 保護者のアルフィアもザルドも、必ず恩恵を授かるよう言ってきた。

 

 つまり、先延ばしになっていたベルの所属ファミリアを決める日が、とうとう来たのである。

 

 

 

 

 

 

 前回アルフィア達の冒険者依頼(クエスト)で使用された応接間に、五つのファミリアの主神が集められていた。

 ベルを入団させる権利を持つ、オラリオで初めてキビキビさせられた神々である。

 

 眷属を一人だけ携え、椅子に座るベルとその両端を固めるアルフィアとザルドに面接官のように視線を集めている。

 ただし、実際に面接官であるのはベル達であり、アピールするのは自分達である。

 

「各々この日までベルに己のファミリアの良さを伝えてきたであろうが、改めて入団するメリットを分かりやすく簡潔に上げていけ。煩わしく雑音をまき散らすだけならば消す。話の途中で他のファミリアが余計な横やりを入れても消す」

「順番は『くさりもち』を食った順番でいいか。めんどくせえ。さっさと終わらせるぞ」

「あはは…………その、本当にすみません」

 

 保護者二人が傲岸不遜にも神に対して言い放ち、ベルが代わりに謝罪する。

 しかし、今更彼女らに文句を言うつもりもなく、ロキがさっそく声を上げた。

 

「なら、うちからやな。うちらが上げる第一のメリットはオラリオで最大派閥であること。……とはいえ、これはフレイヤも同じやから差別化としてもうちょっと詳しく話をしたる。ラウル、うちらの強みはなんや?」

「……えっ? お、俺っすか!? そ、そんな急に話を振られても……!?」

 

 フィン達幹部が本拠地攻めの準備で忙しい為「君になら任せられる」とフィンに笑顔で無茶ぶり同行させられていたラウルが、いきなり話を振られて顔を青ざめる。

 

「大丈夫やでラウルはん。なんも気負わずにロキ・ファミリアの凄いとこを言えばいいだけの話なんや。なんも焦ることないでー」

 

 何故かボールから出ているヨクバリスが、ラウルの手をぎゅっと握りながら笑顔で励ます。

 ヒロインぶってる謎のおっさん栗鼠が普通に喋り出した事に、事情を知らない神や眷属達が騒めき始めるが、返ってそれがラウルを落ち着かせた。

 

「そ、そうっすねヨクバリス。……おほん。ロキ・ファミリアの一番の強みはダンジョン攻略における連携にあるっす」

「ダンジョン攻略における連携? 僕、実際にダンジョンに潜った経験はないから、詳しく聞いていいラウル?」

 

 ピンとこないベルに対し、ラウルが人差し指を立てながら説明を始める。

 

「まず、お母さん達から聞いているかもしれないっすが、ダンジョン攻略はどれだけ準備しても、対策しても、異常事態(イレギュラー)は起こるものっす。その際に必要なのは冒険者の力や知恵、対応力など様々なものが必要っす。でも、当然一人じゃ出来ることは限られてるっす」

「そうだね。ポケモン達にも得意不得意はあるし、皆の力がなかったら今頃僕は五体満足に生きていなかったと思うよ」

「……それはそれで気になる話っすが、こちらの話を進めさせてもらうっす。ロキ・ファミリアの強みはそういった異常事態(イレギュラー)に対しても連携して当たることが出来ることっす。個人の能力はフレイヤ・ファミリアよりも劣るかもしれないっすが、フィン団長の指揮下で結束したロキ・ファミリアはダンジョン攻略において最強だと俺は信じてるっす」

「おおー」

 

 熱弁を振るうラウルに、ベルが感嘆の声を上げる。だが、アルフィア達の表情は冷めていた。

 

「要のフィンが潰れれば烏合の衆と化すだろう?」

「フィンが潰れても動けるようじゃなきゃ、話にならんな」

「……うっ。それを言われると痛いっすね…………」

 

 鋭い指摘をされ勢いをなくしてラウルが項垂れる。

 まだまだ新米の身ではあるが、もしフィンが倒れれば本来の力の半分も出せなくなるであろうことは自ずと知れた。

 

「……まあ、実際そうやからなんとも言えんな」

 

 ロキも言い返せず口を尖らせる。

 

(もっとも、長い目で見ればそうとも限らんかもしれんがな)

 

 細い目を更に細めて、フィンが次の団長候補として密かに期待しているラウルを見つめる。

 

 ロキとしても当初は半信半疑であったが、あのベル・クラネルが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()聞かされて以来、ラウルに期待するようになっていた。

 だからこそフィンの頼みとはいえ、大事な面接の場にラウルを連れてきたのである。

 

(せやけど、まだまだ未熟なのは事実やからなー)

 

 だからこそ口出しせずに、殻を破る事を願って顔を青くしているラウルを静かに見守る。

 

 とはいえやはり今のラウルには酷な話である。碌に言葉が出ずに視線をキョロキョロ忙しなく動かしている。

 このまま微妙なアピールで終わるかと思われた時、ヨクバリスが声を上げた。

 

「大丈夫やで! ロキ・ファミリアにはラウルはんがおる!」

「…………はあ!? い、いきなり何言い出してるんっすか、ヨクバリス!!」

「おっちゃんは知ってるで! ラウルはんが指揮官として成長することをフィンはんに期待されてることを! 確かにラウルはんはまだレベル1で未熟な冒険者や! でも、将来性は大やでえ。ベルはんやってその事は知っとるやろ?」

「……へ? 団長が俺を指揮官にって? ……ちょ、聞いてないっすよ、それ!?」

「まあ、確かにトレーナーとしては一番期待してるのはラウルだけどね」

 

 叫ぶラウルを余所に一所懸命にアピールしてくるヨクバリスに苦笑しながらも、ベルが肯定する。

 フィンやヘディンを差し置いてラウルを推すベルに、アルフィアが訝しんだ。

 

「……こいつがか? 冒険者としては才能は無いが?」

「……ううっ」

 

 アルフィアに薄々勘づいていたことをはっきりと明言され、ラウルが項垂れる。

 

「冒険者としてはわからないけど、トレーナーとして一番大事なものをラウルはすでに持っているから」

「大事なもの? …………ああ、なるほどな」

 

 思わず問い返したザルドだが、ラウル達を見て納得する。

 

「確かにラウルはんは冒険者としてはクソかもしれんけどなあ」

「誰がクソっすか!? そこまで言われる筋合いはないっすよ!?」

「言葉の綾や。気にしんとき~。……こんなラウルはんでも、将来はフィンの代わりに指揮をとれる立派な漢になれるんや! 可愛い可愛いおっちゃんが保証したる!」

「そんな重い期待をされても困るっすよ!? ていうかヨクバリスは可愛いというよりどっちかっていうと不細工寄り――」

「なんやて!? おっちゃんのぷりてーな顔を見てみい! 可愛らしいやろ!?」

「何処からそんな自信湧いてくるんっすか? 鏡を見ろっす!」

 

 アルフィアが事前にあれだけ脅しを掛けていたというのに、二人でぎゃーぎゃーと喚き始めた。

 ツッコミたかったがアルフィアを恐れて黙っていた他のファミリアが、こいつ正気かという目で見てくる。ロキだけは神より恐ろしい魔女を前にしての二人のやりとりに爆笑していた。

 

 しかし、喧嘩をしていても二人の間には確かな絆を感じられた。

 

「……確かに、この命知らずの馬鹿共ならば、大きなことを成せるかもしれんな」

 

 雑音を前にしてもアルフィアに怒りよりも呆れを覚えさせるという偉業を、ラウルとヨクバリスは自覚なしに成し遂げていた。




本当にお待たせして申し訳ありません。

こんな期間が明いたのに、お気に入りや評価などをしてくれた方には頭が上がりません。

次はすぐに投稿……とは言えませんが、気長にお付き合いして頂けると幸いです。
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