バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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第五問だぞ

二人が決勝戦に進出して戻って来てから程なくして事件が起きた。

 

「・・・・・姫路と島田が見掛けなくなったな・・・・・?」

 

「あれ、何時の間に?」

 

「ガクト。あの二人はどこに行ったかしらない?」

 

「悪い、こっちも忙しくて目を離していた」

 

「大和、あの二人ならアタシは見たよ?」

 

「ワン子、本当か?」

 

「うん、二人とも別々に教頭先生から何か言われた後で

アタシに用事があるって言っていなくなったわ」

 

どうしてそこで竹中教頭が出てくるんだ・・・・・?

 

「厨房に顔を出してくる」

 

そう言い残し、厨房に足を運んだ。

 

「土屋」

 

呼びかけると土屋はコクリと頷いた。

 

「・・・・・分かっている。ウェイトレスが連れて行かれている」

 

「流石だな。で、どこにいる?」

 

「・・・・・親不孝通りのカラオケ」

 

よりによってその場所か。だとすれば少数精鋭を引き連れていかないとダメだ。

 

「ハーデスを連れて救いに行こう。土屋、タイミングを見て裏から姫路達を助けてやってくれ」

 

「・・・・・わかった」

 

だが、なんでこうもまたこのFクラス限定に何度も事が起こる・・・・・?

 

「あれ、大和とムッツリーニ。どこに行くの?」

 

「明久か。島田と姫路が見掛けなくなったから探しに行こうとな」

 

「・・・・・仕掛けてきたな」

 

坂本が不穏な言葉を口にした。俺は構わず土屋と一緒にハーデスを迎えに行き、

助けに行こうとした矢先。

 

「失礼」

 

「ん?お前は・・・・・」

 

眼鏡を掛けた男子生徒が俺達に声を掛けてくるが一体何の用だ?

 

「僕の名前は久保利光だ。ちょっとクラスメートを探しているのだが」

 

「クラスメート?」

 

「ああ、木下優子さんと工藤愛子さんだ。彼女らがしばらく経っても帰ってこないのでね、

同じFクラス同士なら知っているかなと思って尋ねたんだ」

 

「・・・・・悪い。こっちも丁度人探しをしようとしていたところだ。

二人を見つけたら連れてくるよ」

 

「協力に感謝するよ」

 

久保は踵返して自分のクラスへ戻った。あいつの話を聞くと巻き込まれた可能性は高いな。

 

「待って大和とムッツリーニ!僕も行くよ!」

 

「俺もだ」

 

何故か明久と坂本までついてくることになった。

 

 

 

 

 

『さてどうする?死神だったか?そいつを、この人質を盾にして呼びだすか?』

 

『とは言っても、またあの学園に行って呼び出すのも面倒だよなぁー』

 

『別に呼ばなくてもいいと思うぜ?明日まで俺達と一緒にいてもらえりゃ

大会に参加できなくなるし』

 

『意外と簡単な依頼だったな。それなのに報酬が良いって俺達運が良いんじゃね?』

 

土屋が持っていた盗聴器の受信機から、音楽に混じってそんな会話が聞こえてきた。

依頼?ってことは、この実行犯とは別に誰かが絡んでいるってことか?

俺とハーデス、明久に坂本は土屋に案内されたのは、神月駅の裏にある街道、親不孝通りだ。

ここの街の治安は悪く、非法な取引の売買もよく行われている話だ。

不良達の溜まり場でもあるため、何かをするならもってこいの場所だ。

 

『アンタ達!いい加減にアタシ達を解放しなさいよ!』

 

『そうはいかねぇんだよ。おとなしくここに居れば、命までは取らないぜ』

 

『あ、あのっ!どうしてこんなことをするのですか?』

 

『それは言えねーよ。依頼だからな』

 

なにもされていないことに取り敢えず安堵で息を漏らす。

 

『・・・・・』

 

不意にハーデスが立ち上がった。

 

「(ハーデス?)」

 

すると、あいつは堂々と扉を開け放って中に侵入した。

 

『し、死神―――がっはぁっ!』

 

『ヤ、ヤスオ!―――いっでぇえええええええええええっ!?』

 

『お、おい待て!こいつらがどうなってもごっはあああああああああっ!?』

 

『な、なんなんだよこいつは!?マジでヤバ―――!?』

 

ドゴオオオオオオオオオオオンッ!

 

最後は部屋から鈍い音が聞こえてきた。

幸い、ここの部屋は他の部屋より奥だったため店員や客達に気付かれずに済んでいる。

 

「「「「・・・・・」」」」

 

土屋と顔を合わせ、静かになった部屋の扉をゆっくりと開けた。

部屋の中は・・・・・異様な光景ができていた。上半身が壁に埋まっている奴、

天井に上半身が埋まっている奴、有り得ない曲がり方をした腕に蹲っている奴、

 

『・・・・・』

 

ハーデスの手で頭を掴まれて口から泡を吹いて痙攣している奴が、俺達の視界に飛び込んだ。

俺達が入ってきたことにハーデスは顔だけこっちを向くと頭を掴んでいた奴を無造作に解放した。

 

「お前がこれをやったのか・・・・・」

 

信じられない気持で俺はハーデスに問うた。人質されていた島田と姫路、

木下の姉に工藤の無事も確認。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

誘拐騒ぎも解決して、喫茶店の一日目も終了した。

そこは俺とハーデス、坂本と明久の貸し切り状態となっていた。

 

「さて坂本と明久。俺達に何か隠しているだろう」

 

『・・・・・』

 

「隠し事とは人聞きの悪いことを言うな」

 

「だが、お前が言った『仕掛けてきたか』という言葉は、予想していた意味を捉える。

明久は知らなかったようだが、噛んでいることは間違いない」

 

テーブルを挟んで二人に問い詰める。そもそもおかしいと思ってはいた。

 

「急にやる気だしたかと思えば、大会に出場するなんて坂本らしくはない」

 

「俺の気まぐれだと思わないのか?」

 

「ハーデスは腕輪が欲しいから参加していると分かっている。

システムを開発した蒼天の出身者だから召喚システムに関わる腕輪を気になるのも頷けるからな。

だが、坂本は清涼祭とか大会とか興味なかったはずだぜ?グラウンドで野球をするほどだからな」

 

「それだけじゃ確証がないな」

 

「じゃあ―――どうしてお前達二人はまだ帰らないんだ?」

 

それを指摘すれば坂本は口を噤んだ。

 

「まるで、これから誰かと会うために居残っているような感じだ。

俺はお前達に訊きたいことがあるから敢えて残っている。ハーデスも似たような理由だろう」

 

「・・・・・雄二」

 

明久が当惑した面持ちで坂本に視線を送る。坂本から視線を変えて明久に。

 

「明久。お前は大会を何の理由で参加したんだ?」

 

「え?僕も腕輪を―――」

 

「嘘だな」

 

「最後まで言わせてよ!?」

 

「俺はお前と付き合いは短くないと思っている。

だからこそ、お前が自分から大会に参加する理由が無いとも分かっているんだ」

 

「違うよ大和。本当に僕は腕輪が欲しいんだ」

 

「最初から思ったのか?」

 

「う、うん・・・・・そうだよ」

 

どもった。・・・・・こいつら、何か隠しているな本当に。

 

『・・・・・隠し事を話したくないならそれでいい』

 

「ハーデス?」

 

『・・・・・お前らのチャイナドレスの姿をネットに流出すればいいだけだから』

 

「「ちょっと待て!()達を変態にするつもりかぁっ!?」」

 

手にしている数枚の写真を扇子状に広げて脅迫したハーデスだった。

こいつ、怖ろしい事を考える。

 

『・・・・・なら、答えろ』

 

ハーデスは追及する。

 

「やれやれ・・・・・アタシを呼んでいおいて随分と賑やかじゃないかガキ共」

 

声と同時に教室の扉がガラガラと音を立てて開いた。

 

「来たかババァ」

 

「・・・・・学園長?」

 

どうしてここに学園長が現れるんだ?この二人と深く何か関係がありそうだな。

 

「今回は事が事だから、きっちりとババァから説明してもらいたいことがあるんでよ」

 

「なんだい、アタシが何か隠し事をしているようなものいいじゃないかい」

 

「隠し事はなくても俺達に話すべきことを話していないことがあるんじゃねぇのか?」

 

学園長は肩を竦め上げる。

 

「ふむ・・・・・。やれやれ。賢いヤツだとは思っていたけど、

まさかアタシの考えに気がついたとは思わなかったよ」

 

「最初に取引を持ちかけられた時からおかしいとは思っていたんだ。あの話だったら、

何も俺達に頼む必要はない。もっと高得点を叩きだすことのできる優勝候補を使えばいいからな」

 

「あ、そういえばそうだよね。優勝者に後から事情を話して

譲ってもらうとかの手段も取れたはずだし」

 

「そうだ。わざわざ俺達を擁立するなんて、効率が悪過ぎる」

 

・・・・・この二人に学園長は支持をしていたというのか?

 

「お前ら、学園長と何か裏で取引でもしていたのか?」

 

「ああ、色々と話し合った結果でな。大会の優勝賞品のチケットを手に入れてくれたら

俺達の要求を飲んでくれると言う話になったんだ。―――が」

 

坂本は学園長にハッキリと言った。

 

「高がプレミアムペアチケットを手に入れるだけで、どうして俺達は営業妨害、

誘拐騒ぎにまで起きてしまうのか疑問でいっぱいだ。まさかとは思うが、

企業の企みなんかよりもっと重要なこと、それもこの学校の存続が左右されるような状況に

なっているんじゃないよな?チケットの件については後で優勝者から説明して、

譲ってもらう手もあるからよ。さて、ご説明を願いましょうか―――クソ学園長?」

 

言い訳は許さないと学園長を睨む。そんな坂本に対して学園長は深く溜息を吐いた。

 

「そうかい。向こうはそこまで手段を選ばなかったか・・・・・すまなかったね」

 

突然学園長が俺達に頭を下げてきた。

 

「アンタらの点数だったら集中力を乱す程度で勝手に潰れるだろうと

最初は考えていたのだろうけど・・・・・そいつが決勝まで進まれて焦ったんだろうね」

 

「じゃあ、坂本達に重大なことを話していないことを認めるんですね?」

 

「はぁ・・・・・。アタシの無能を晒すような話だから、

できれば伏せておきたかったんだけどね・・・・・死神、

できればこの事は公言にしないでほしい」

 

どうして死神にそんな事を言う?蒼天の出身者でしかない死神に?

 

『・・・・・事情による。話せ』

 

「分かった、話そう。アタシの目的は如月ハイランドのペアチケットなんかじゃないのさ」

 

「ペアチケットじゃない!?どういうことですか!?」

 

「企業の企みなんてどうでもいいんだよ。アタシの目的はもう一つの賞品の方なのさ」

 

「腕輪の方ですか?なにか問題があるので?」

 

調べたが。腕輪は三つあるらしい。

一つはテストの点数を二分して二体の召喚獣を同時に喚び出すことができる腕輪。

もう一つは召喚獣同士の融合ができる腕輪。

さらにもう一つは教師の代わりに立会人になって召喚用のフィールドが作ることのできる腕輪。

こっちは使用者の点数に応じて召喚可能範囲が変わるらしい。

召喚の科目はランダムで選択されるとか。

 

「そうさ。その腕輪は問題があってね、アンタらに勝ち取って貰いたかったのさ」

 

「回収ができない状況だから正式な方法で手に入れてほしかったわけですか?

だから坂本と明久に要求を飲む代わりに条件を突きだして頼んだと」

 

「その通り。できれば回収なんて真似はしたくない。

新技術は使って見せてナンボのものだからね。

デモンストレーションもなしに回収なんてしたら、新技術の存在自体を疑われることになる」

 

できればということは、最悪の場合はそれも考えていたのだろう。

 

「それで、腕輪の問題点とは?」

 

苦々しく顔を顰めだす学園長。

 

「成績優秀、高得点の奴らが使用すると暴走してしまうのが問題点さね」

 

「あー、つまりFクラス並みの点数なら暴走は起きないわけですか」

 

『・・・・・優勝の可能性を持つ低得点者なら腕輪の暴走もない。デモンストレーションを

するにも俺達はアンタの理想な人材だったとそういうことか』

 

「そうさね。アンタらみたいなのが一番都合が良かったってわけさ。

召喚フィールド作成用の腕輪はある程度まで耐えられるんだが、もう片方の同時召喚用の腕輪は、

現状のままだと平均点程度で暴走する可能性がある。融合用の腕輪は特に問題ないさね」

 

「デモンストレーションで問題発生が生じると、この学校の評判はガタ落ちで、

学園長の失脚は免れない。だとすれば、そういう奴らがいて

その立場の人間―――他校の経営者とその内通者といったところですかね?」

 

色々と仮説を述べる。この学園は多くの生徒を抱え込んでいて、他校に行く生徒は減り、

当然のことながら他校を経営する者はこの学校の存在を許し難いはずだ。

ならば、手を組んで学園長を失脚させて、学園を潰そうと考える経営者もいなくない。

 

「ご名答。身内の恥を晒すみたいだけど、隠しておくわけにもいかないからね。

おそらく一連の手引は教頭の竹原によるものだね。

近隣の私立校に出入りしていたなんて話も聞くし、まず間違いないさね」

 

「それじゃ、俺達のクラスの営業妨害をしてきた先輩達とチンピラも」

 

「教頭の差し金だろうさね」

 

『・・・・・』

 

ハーデスがスケッチブックで学園長に伝える。

 

『・・・・教頭の部屋のガサ入れは?』

 

「それをできる理由がないから現在進行中だよ」

 

『・・・・・分かった。こっちがガサ入れできるように仕組んでおく。後は任せた』

 

仕組むって・・・・・ハーデス、なにをする気だ?

 

「学校の評判を落とさない程度で頼むよ」

 

『・・・・・当然だ』

 

ハーデスは立ち上がって、教室からいなくなった。

 

「学園長。ハーデスは一体何者ですか?」

 

「試験召喚システムを開発した国の出身者さね」

 

「それ以上は何も言うつもりははないと?」

 

「あいつのことが気になるなら、本人に訊いた方が早いよ。

アタシはこの学園の長だからね。生徒の情報を漏らすつもりはないさ」

 

・・・・・そこだけは学園長らしい発言なことで。まあいい。

もしかしたらいずれ自分から教えてくれるかもしれない。気長に待つとしよう。

 

―――☆☆☆―――

 

清涼祭二日目突入。そして、ワシとハーデスの召喚大会決勝戦の日でもある。

クラスメート達に声援を受けながら会場への道を歩く。

観客席は満席で、この日を待ちわびていることが良く分かるのじゃ。

 

「ハーデス、優勝するぞい」

 

『・・・・・当然だ』

 

「死神君と木下君。入場が始まりますので急いでください」

 

ワシらの姿を見つけた係員の先生が手招きをしている。

ハーデスと共に先生に近づきその時を待った。

 

『さて皆様。長らくお待たせ致しました。

これよし試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を行います!』

 

聞こえてくるアナウンスは今まで聞いたことのない声じゃった。

この手のプロを雇っているのかもしれんの。

世間の注目を集めているこの学校じゃ。十分考えられることじゃろう。

 

『出場選手の入場です!』

 

ハーデスとワシは頷き合って。観衆の前に歩み出た。

 

『二年Fクラス所属・木下秀吉君と、同じくFクラス所属・死神・ハーデス君です!

皆様拍手でお迎えください!』

 

盛大な拍手が雨のように降ってくる。随分と御客が入っているようじゃな。

まるで演劇をしている時と似た感覚じゃ。いつも通りに行けば問題ない。

 

『なんと、最高成績のAクラスを抑えて決勝戦に進んだのは、

二年生の最下級であるFクラスの生徒コンビです!

これはFクラスが最下級という認識を改める必要があるかも知れません!』

 

ふふっ、嬉しいことを言ってくれるのじゃ。何時にも増して高揚感が湧くのぉ。

 

『そして対する選手は、三年Aクラス所属・夏川俊平君と、

同じくAクラス所属・常村勇作君です!皆様、こちらも拍手でお迎えください!』

 

コールを受けてワシらの前に姿を現したのは、昨日営業妨害をしたと言う例の先輩コンビじゃ。

 

『出場選手が少ない三年生ですが、それでもきっちり決勝戦に食い込んできました。

さてさて、最年長の意地を見せることができるのでしょうか!』

 

同じように拍手を受けながら、二人はゆっくりとワシらの前にやってきた。

 

『それではルールを簡単に説明します。試験召喚獣とはテストの点数に比例した―――』

 

アナウンスでルールが説明が入る。もう十分知っていることなのじゃが、

先輩らはそれを無視してワシらに話しかけてきた。

 

「よう、Fクラスコンビ。あんまり調子に乗っていると、痛い目に遭うぜ?」

 

「そうそう、せっかくお前らが公衆の面前で恥をかかないように、

という優しい配慮をしてやったと言うのにな。

Fクラス程度のオツムじゃあ理解できなかったか?」

 

・・・・・ワシらの知らないところで妨害をしていた?

 

「ハーデス、試合中何か妨害されていたかの?」

 

『・・・・・』

 

フルフルと首を横に振る仕草をしたハーデス。ふむ、そうじゃろうの・・・・・。

 

『・・・・・やることは同じ、目の前の敵を倒す。それだけ』

 

「うむ、そうじゃの。ワシらは何時も通りの事をすればいい」

 

ハーデスに微笑む。ハーデスは仮面の中で笑ってくれているのか分からんが、

ワシの頭に手を乗せて優しく撫でてくれる。

 

「・・・・・のう、ワシの事を女扱いしておらんか?」

 

『・・・・・断じてない。俺がしたいだけだ』

 

それなら良いが・・・・・何か釈然としないのじゃ。

 

「「なにイチャついてんだゴラ!」」

 

先輩達が怒鳴ってくる。男同士なのにイチャイチャしてなどおらんのに・・・・・。

 

『それでは試合に入りましょう!選手の皆さん、どうぞ!』

 

説明も終わり、審判役の先生がワシらの間に立つ。

 

「「「『試獣召喚(サモン)!』」」」

 

掛け声を上げ、それぞれが分身を喚び出した。向こうの装備はオードソックスな剣と鎧。

高得点者の召喚獣らしく、室はかなり良さそうなものじゃった。

 

                

                 『日本史』

 

  Aクラス 常村勇作  209点  & 197点 夏川俊平 Aクラス  

 

 

 

 

Aクラスに所属しているだけのことはあるのじゃ。じゃが、姉上や霧島より劣っておる。

普段勉強に力を注いでいないのかもしれんな。

 

「どうした?俺達の点数見て腰が引けたか?」

 

「Fクラスじゃお目にかかれないような点数だからな。無理もないな」

 

誇らしげにディスプレイを示す先輩達。反論はない。確かに誇ってもよい位の点数じゃ。

じゃがのー?

 

「先輩達、あまりワシの隣にいる死神を侮るではない」

 

「あん?」

 

「ワシの隣にいる死神は―――」

 

 

                   『日本史』

 

  Fクラス 死神・ハーデス 1000点 & 49点 木下秀吉 Fクラス

 

 

 

 

「Fクラスの中で最強の死神なんじゃよ」

 

誇らしげにハーデスの事を言う。うむ、予想通りの点数じゃな!

 

「ば、バカな!1000点だと!?」

 

「有り得ない!絶対にカンニングだ!こいつ卑怯な手を使っている!」

 

その気持ちは分からなくはないが―――。

 

「先輩方、お覚悟をしてもらうのじゃ」

 

試験召喚獣が得物を構える。戦闘開始じゃ。

 

「ハーデス、速攻で片付けるのじゃ!」

 

『・・・・・了解』

 

ワシとハーデスの召喚獣が寄り添うように隣で立つ。

 

『・・・・・なら、有言実行をしよう。―――発動』

 

ハーデスの召喚獣の腕に装着している腕輪が光り輝く。すると、召喚獣が光り輝きながら包まれ、

光が弾けたかと思うたら、召喚獣は全身鎧を着込んで姿が変わっておった。

赤いまるでドラゴンを模した全身鎧を。

背中に翼と腰に尻尾が生えて全身に緑色の玉を嵌めておる。

 

「な、何だその鎧は!」

 

「召喚獣が鎧を包むだと!?何かのシステムのバクか!」

 

先輩達が喚きながら召喚獣を突っ込ませてくる。

ワシは迎撃しようと召喚獣を操作しようとしたが、

ハーデスの召喚獣に抱えられ宙に浮いた。

 

「空飛べるなんて卑怯だなおい!?」

 

『・・・・・』

 

先輩の言葉を気にせず、ハーデスは腕を前に突き出した。

その仕草に呼応してハーデスの召喚獣から、

 

『BosstBoostBoostBoostBoost!!!!!』

 

と音声が聞こえてきた。

 

『・・・・・木下秀吉』

 

「なんじゃ・・・・・?」

 

『・・・・・お前に(点数)を譲渡する。受け取れ』

 

『Transfer!』

 

ハーデスの召喚獣の全身から発する赤いオーラにワシの召喚獣が包まれる。

するとどうじゃろうか?ワシの日本史の点数が―――。

 

 

                  『日本史』

 

  Fクラス 死神・ハーデス 500点 & 549点 木下秀吉 Fクラス

 

 

 

一気に信じられない点数まで跳ね上がったのじゃ!

ハーデスの元々の1000点が500点にまで下がったということは、

500点を削ってワシにくれたということか!?

 

「ンなバカなっ!?自分の半分の点数を味方に渡しってのかよ!」

 

「どんな腕輪の能力なんだよ!?」

 

『・・・・・変化』

 

ハーデスの召喚獣がまたしても光に包まれた。

今度は召喚獣が包む光が見る見るうちに膨れ上がり、

ワシの召喚獣は・・・・・1メートル級の生物の背中に騎乗していた。

その生物のフォルムはドラゴンであることは明らかじゃった。

 

『・・・・・俺の腕輪の能力は、俺が想像した召喚獣の姿、能力、

武器を自由にそのまま具現化できる』

 

ただし、消費する点数は凄まじいとハーデスは説明してくれた。

 

 

                  『日本史』

 

  Fクラス 死神・ハーデス 250点 & 549点 木下秀吉 Fクラス

 

 

 

む。確かにそうみたいじゃ。半分点数が消費しておる。

能力を発動するタイミングが重要というわけじゃな。

 

「くそぉぉっ!お前ら如きに三年の俺達が―――!」

 

「こんな試合、負けても絶対に認めねぇぞっ!」

 

じゃが、試合は試合じゃ。お主らが認めんでも。

 

「ハーデス」

 

『・・・・・ああ』

 

巨大な生物となったハーデスの召喚獣は先輩達の召喚獣を肉薄する!

ワシも最高得点で威力も格段に上がった。背中から先輩の召喚獣にダメージを与え、

ハーデスの召喚獣と一心同体のように―――。

 

 

『木下・死神ペアの勝利です!』

 

 

見事、決勝戦はワシらが勝利を掴み取ったのじゃ!

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「優勝おめでとう!秀吉、ハーデス!」

 

「お前らの戦いぶりは凄かったぞ」

 

「うん、まるで龍騎士のようだったよ」

 

授賞式と簡単なデモンストレーションを終えた木下とハーデスを迎え入れる俺達。

正直、ハーデスの召喚獣の腕輪の能力には度肝抜かれた気分だった。

強力な分消費も半端ないがその分、強力な能力だ。

 

「ハーデス」

 

『・・・・・なんだ?』

 

「お前、アレが本気だったのか?」

 

『・・・・・直江。俺の召喚獣の腕輪の能力はまだまだ奥が深い。

色んな能力を具現化できたり武器や姿も変えられる。あれが本気だと思わない方が良い。

臨機応変の能力でもあるから』

 

・・・・・こいつがどうしてこのクラスに編入してきたのか今になって少しわかった気がした。

 

「お前達、話し込んでいる場合じゃないぞ!Fクラスの生徒が優勝した

切っ掛けで客が増えて大変なんだ!」

 

と、教室の方からクリスが掛けてきた。おっと、そうだったな。

 

「二人共、残りの時間は喫茶店を手伝ってくれよ?」

 

「分かっておるのじゃ」

 

『・・・・・了解』

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

『ただいまの時刻をもって。清涼祭の一般公開を終了しました。

各生徒は速やかに撤収作業を行ってください』

 

「お、終わった・・・・・」

 

「さすがに疲れたのう・・・・・」

 

「・・・・・・(コクコク)」

 

放送を聞いた途端に、明久達はその場で座り込む。俺も疲労気味だ。

にしてもハーデスは疲れていないのか、さっさと撤収作業を始めている。

何て体力バカなんだ・・・・・。

 

「しっかし、優勝していない俺達にこの腕輪を貰っていいのか?」

 

「ワシは別に腕輪なんか必要ではないからの。ハーデスも腕輪を有効活用してくれればと

思って渡したんじゃ」

 

「何だか悪いなぁ・・・・・」

 

腕輪は、三つの内の二つは坂本と明久の手にある。

ハーデスは召喚獣同士の融合ができる腕輪の方を

選んだみたいだ。まるで最初のポ○モンを選んだ感じだな。

坂本は火で、明久が草、ハーデスは水と感じで。

 

「秀吉は良いの?せっかく優勝したのに」

 

「なに、清涼祭でハーデスと優勝できたこそが良い経験と思い出ができたのじゃ。

ワシはそっちの方が嬉しくて楽しかったぞい」

 

朗らかに、本当に楽しかったようで綺麗な笑みを浮かべた。

本当、木下は女では?と思ってしまう。

 

「・・・・・何だろう。今、ハーデスに殺意が湧いたよ」

 

「・・・・・許すまじ」

 

明久にムッツリーニ。お前ら、なにを言っているんだよ・・・・・。

 

「まあ、貰えるもんはありがたく貰うぜ。これで次の試召戦争時で大いに活用してみせる」

 

「そうだね。僕も二体同時召喚の腕輪を使って頑張るよ」

 

Fクラスにアイテムが付与されて戦力がアップした。Bクラスまでは余裕で倒せるはずだ。

 

『・・・・・全部、片付け終わった』

 

はやっ!?もう全部片付けたのか!あっ、本当だ。調理器具とか食器とかそういう

物以外殆ど片付けられている。

 

「お前達が勝ってくれたおかげで学園長も一先ず安心するだろう」

 

「そうだね。それじゃ雄二、学園長室に行こうか」

 

「学園長室じゃと?二人とも、学園長に何か用でもあるのか?」

 

「ちょっとした取引の清算だ。喫茶店が忙しくて行けなかったからな。

遅くなったが今から行こうと思う」

 

これで済めば一件落着だ。

 

「ならばワシも行こうかの」

 

「あっ、俺もついて行くぞ」

 

「・・・・・(クイクイ)」

 

「うん?ムッツリーニも来る?」

 

「・・・・・(コクコク)」

 

何だか増えてきたな。ハーデスの方を見ると行かない雰囲気が伝わる。まあいいか。

 

「取り敢えず(女装中)着替え直そう」

 

「そうだね。(女装中)着替えよう」

 

「ようやくだ。(女装中)元の服に着替えようぜ」

 

だが、そう問屋は卸せなかったようだ。

 

『・・・・・まだ許さん』

 

「「「もう許してくれ!お願いだからっ!」」」

 

俺達の男子制服を掴んでいるハーデスに懇願する俺達だった!もうこんな羞恥プレイは嫌だ!

 

 

―――☆☆☆―――

 

渋々とハーデスは明久達に制服を渡して校舎で行われる後夜祭の準備をしている

生徒達を旧校舎の屋上から眺めていた。

 

「いた!」

 

そこへ、女子の声が聞こえた。自分には関係ないことだとハーデスは帰る為に手すりを跨った。

 

「待ちなさい死神!」

 

『・・・・・?』

 

制止され自分の名を呼ぶ女子に振り返る。向こうから二人の女子が走って

ハーデスの前で止まった。自分に用があるのだと理解し跨っていた手すりから離れて向き直る。

 

「はぁ~、ようやく見つけたよ死神君」

 

『・・・・・何か用か?』

 

「勿論だよ。まだ言ってなかったからね。あっ、ボクのこと覚えているかな?

ボクは工藤愛子だよ」

 

と緑のショートカットにした、ボーイッシュな女子が名乗った。

その隣には木下優子が何か言いたげな顔でハーデスを見つめる。

 

『・・・・・言っていないこと?』

 

「うん。ボク達を助けてくれてありがとうってお礼をさ」

 

『・・・・・その件になら気にするな。

寧ろ、お互い知らない間に巻き込まれていたようだったからな』

 

「アハハハ、そうなんだ。でも、助けてくれたのにお礼も言わないなんて

そんな失礼な女の子にはなりたくないんだよ」

 

朗らかに笑う工藤愛子の隣を移動してハーデスは屋上の入口に向かった。

 

「あれ、どこに行くの?」

 

『・・・・・帰る』

 

「後夜祭、ダンスを踊らないの?」

 

『・・・・・俺と踊りたい物好きな奴はいないだろう』

 

そうスケッチブックに書いたハーデス。黒いマントを全身に包み、

髑髏の仮面で顔を隠している人物とダンスは遠慮したいだろう。

 

「じゃあ、ボク達と一緒に踊ろうよ!」

 

「ちょっ、愛子!?」

 

信じられない事を言いだす工藤愛子、木下優子の反応に同感だとハーデスは思いこう書いた。

 

『・・・・・何を考えている?』

 

「いいでしょ?踊る相手がいない同士、秘密の場所で踊ってさ。

一目も無い所なら踊れるよね?」

 

工藤愛子はそう言ってハーデスの手を掴んで木下優子の手を掴むと、

 

 

ドォンッ!

 

 

凄まじい衝撃が旧校舎の屋上にまで轟いた。

 

「な、なに?なんなの!?」

 

「新校舎の方から聞こえたよね・・・・・?」

 

『・・・・・』

 

一拍して、また爆発音が聞こえた。

今度は立て続けにハーデス達がいる旧校舎の真下から轟音と衝撃が伝わる。

 

「ちょっ、どうなってんのよ!?」

 

「・・・・・これ、ヤバい感じがするんだケド」

 

工藤愛子が漏らした瞬間。旧校舎の屋上が崩壊した。

 

「「きゃあああああああああああっ!」」

 

足場が崩壊した結果なくなり、三人は落下した。

だがハーデスは真っ直ぐ木下優子と工藤愛子に向かって落ち、抱きかかえた。

 

「し、死神・・・・・っ!」

 

『・・・・・』

 

頭上から落ちてくる瓦礫に、身を挺して守ろうとしている死神に

木下優子は愕然した表情で漏らす。

 

『・・・・・大丈夫だ』

 

「・・・・・え?」

 

『・・・・・この程度の災難、二人を守るのに問題ない』

 

スケッチブックで告げずハーデスは生の声で語った。

―――背中に神々しい輝きを放つ六対十二枚の金色の翼を生やして落ちてくる

瓦礫を受け止めながらだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あれは・・・・・っ!?」

 

九鬼英雄は見た。旧校舎から発光する神々しい輝きを。それは久しく見る光だった。

十年前、富裕層を狙ったテロに巻き込まれ、姉と共々守ってくれた光と酷似している。

 

「あずみぃっ!」

 

「了解でございます!」

 

後夜祭に参加せず家に帰ろうと人力車に乗っていた九鬼英雄は侍従である忍足あずみに

ただそれだけ告げれば、

自分がどうしたいのか言わずとも理解してくれて神々しい光を放つ旧校舎まで引いてくれる。

あの光の下に行けば、間違いなく九鬼英雄が脳裏に思い浮かんでいる人物がいるはず。

九鬼英雄は激しく打ち続ける鼓動を感じながら旧校舎に辿り着いた

人力車から降りて壊れたはずの校舎が、

目の前で勝手に光に包まれながら修復していく光景を目の当たりにした。

 

「間違いない・・・・・十年前と同じ光景である・・・・・!」

 

目、顔、首を忙しく動かして目的の人物を探す。

が、裸眼では見つかることもできず旧校舎は壊れる前の状態に戻って光が消失してしまった。

 

「英雄様・・・・・これは・・・・・」

 

「ああ、あの者の仕業に違いない。―――旅人よ・・・・・っ」

 

 

 

 

 

 

 

「あなた・・・・・一体何者なの・・・・・?」

 

『・・・・・他言無用で頼む』

 

「死神君・・・・・」

 

『・・・・・んじゃ』

 

「あっ、待って!・・・・・行っちゃった」

 

「・・・・・死神・ハーデス」

 

「優子・・・・・?」

 

「いいじゃない。徹底的に調べてやるわ。

二度も助けられた上に分からないままでいるなんてアタシは嫌だわ」

 

「アハハ、だったらボクも手伝うよ?」

 

「じゃあ、代表にも手伝ってもらいましょう。彼女なら死神を―――」

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