バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

15 / 84
第二問だよ~

「私の息子が坊主頭に帰って来たのですぞ!?一体学校でどんなことをしたら息子や

クラスメート達が髪を切ることになるのですか!」

 

「一方的に髪を切られたと息子は泣きながら教えてくれましたわ。学園長と理事長、

しっかりと説明してもらいますわよ」

 

「これは一種の体罰ではないの!?」

 

翌日、Sクラスの生徒の親達が学園長室にいる藤堂カヲル、川神鉄心に非難と追及を

浴びせ続けていた。二人は何も知らないモンスターペアレント達に心中揃って

溜息を吐いていた。自分達が何か言ったところで納得するわけでもない上に、

自分達のキャリアとプライドを優先して学校の評判を落とされかねない。

 

 

キンコンカンコーン

 

 

ふと、小気味の良い音が学園長室に響いた。

 

『にょほほほっ!新しい教室はどうかの。『元Aクラス』の下々の輩達よ』

 

『・・・・・Sクラスの人達が何しに来たのかしら?』

 

『あなた達、今は授業中ですよ。自分のクラスに戻りなさい』

 

『なに、無様に負けた敗者の顔と新しい教室で過ごすお主らの様子を見に

来たまでじゃ』

 

『・・・・・そう、満足したなら自分の教室に戻って』

 

『嫌じゃ。なぜ名家である不死川家のこの不死川心がお主の言うことを

聞かねばならぬのじゃ。寧ろ、お主らが此方達に従うのが道理なのじゃ。

敗者は勝者の言うことを聞く決まりを忘れたわけではあるまいな?』

 

『・・・・・僕達にどんなことをさせようとするのかな?』

 

『にょほほほ、此方はそれをまだ考えておらぬ故・・・・・此方が考えている間に

この者達の指示に従ってもらおうかの』

 

『不死川さんにそう言われちゃしょうがないよな?』

 

『俺達はそれを果たす義務がある。敗者はしっかりと俺達の言うことを聞かないとな』

 

『ああ、その通りだよな。んじゃ、俺から課す指示はっと―――確か、

木下優子だったな?今日から学校にいる間、お前は俺を御奉仕してもらうぜ』

 

『俺は霧島翔子と結婚を前提に付き合ってもらおうか。胸も大きいし顔も可愛いし、

俺の伴侶にするには申し分ない。俺、前から決めていたんだよな』

 

『霧島翔花、俺の肉奴隷にでもなってもらおうか』

 

『お前らがそうなら工藤愛子を選ばせてもらうよ。確か保健体育の実技が

得意なんだっけ?だったらそれを証明してもらおうじゃないか。保健室でさ』

 

「・・・・・っ!?」

 

これは・・・・・藤堂カヲルは目を丸くしながらも静かに耳を傾ける。

 

『うむ、此方も決まったのじゃ。元Aクラスの代表。その髪をバッサリと

この場で切ってもらおうか。その綺麗な髪を見ておると目障りなのじゃ』

 

『えーと不死川さん。僕の翔子の髪を切らないでほしいんだけど』

 

『なんじゃ、此方に意見を申すのかお主は』

 

『・・・・・いや、なんでもないよ』

 

『待って!何もそこまでしなくて良いじゃない!アタシ達に勝ったからって、

アタシ達を従わせる権利があるからって、同じ女として女の子の髪を切って

何とも思わないの!?』

 

『思わぬ。それに此方と下賤なお主と一緒にするではないわ』

 

『人として心が無いと言うのか・・・・・っ!Sクラスの人達は・・・・・!』

 

『Sクラスは選り抜きされたエリート中のエリート。

Aクラスがエリートの集団というのであれば此方達は至高の集団である。

お主らの考えなど此方達と考えているレベルは違うのじゃ』

 

『では、この不死川心がさっぱりに切ってやるのじゃ』

 

その後、生々しい何かを切る音が静かに流れた後、不死川心の嘲笑が聞こえた。

それを最後に放送は停まった。

 

「―――と、俺の養子が心優しい少女の為に怒って理不尽な命令で髪を切られた

少女の為に元凶であるSクラスに殴り込み、決闘を申し込んだ。

決闘し勝利した俺の養子は事前に決め合った敗者に何でも従わせる権利で、

因果応報とばかりお前達の子息と令嬢の髪をバッサリと切ったそうだ」

 

この場に新たな声が説明口調で先ほどの放送のことを述べた。

この場にいる全員が声がした方へ向ける。

学園長の机に腰をおろして座っている真紅の長髪に金色の瞳の男性を。

 

「お前さん、何時の間にそこにいたのじゃ」

 

「さっきの放送が始まったところからいたぞ」

 

「やれやれ、神出鬼没じゃなお主は」

 

「褒め言葉として受け止めておこう。さて、こんな放送はでたらめだと思う

お前達に被害者と会わせよう」

 

男性は指を弾いた。それに呼応するかのように学園長室の扉が開いて、

数人の少女とその両親らしき家族が入って来た。

 

「彼女達は先ほどの放送で理不尽な命令に従わされていた少女達だ。

その中に髪が短い少女がいるだろう?その子はあの名家である不死川家の令嬢に

切られたんだ。勝者の特権とは言え、心のない行いで彼女は酷く心に傷を負った。

どっちが正義かどっちが悪かなんてこの際どうでもいい。

この中に先ほどの放送で彼女達に肉奴隷扱いをした生徒、彼女達の人間としての

尊厳を奪おうとした生徒の親がいるはずだ。その親達は前に出て欲しいな」

 

その問いにSクラスの生徒の両親達は顔を見合わせざわめき立つ。

 

「いないのかな?それとも自分が非難を浴びることを恐れているから出ないのかな?

まあいい。不死川のご両親、ああ、そこで俺から視線を逸らして浴衣を着ている

男性のお前だ。前に出て来い。それか、それ以外のご両親はその人から

離れてくれないか?思いっきり邪魔だ」

 

そんな物言いにSクラスの生徒の両親達は男性が指定した男性から距離を置いた。

その異様な空間の中、男性は一人だけが取り残された男性の前に立った。

 

「さて、不死川さん。あなたの心のない令嬢の行いで俺の養子の息子が怒り、

あなたの令嬢を含めて殆どの生徒の髪は綺麗さっぱり切られ丸坊主となった。

俺の息子も度が過ぎた行動に申し訳ないと思うが、あなたの令嬢はとても名家と

名乗るに値するほどの者であろうか?由緒ある名家だから、

自分が誰よりも偉いだから、両親も先祖も立派だから、

成績優秀でこの学校の誰よりも優れていることは確かだろうけど・・・・・」

 

ポンと男性の肩に手を置いた男性。

 

「人間として失格じゃないか?お前の娘は」

 

「・・・・・」

 

「この場に九鬼の御家族がいないのは自分の息子に非があると自覚して来なかったと

俺は思っている。それに比べてお前はこの場に足を運んだ。それは何の為だ?

自分の娘の為の怒りか?学校に対する怒りをぶつけようと?―――全てが間違いだ。

今回の騒動の元凶はお前達の子息と令嬢、

Sクラスにお前の娘の心のない行いが招いた」

 

男性の足を払って体勢を崩した。不死川心の親は男性を見上げるだけで

何も言わなかった。

 

「ああ、自己紹介が遅れたな。俺は蒼天の者だ。

名前は言えないがもしもこの場で俺の息子に国家権力でどうこうしようと

する者がいるなら自分の身を心配した方がいい」

 

にっこりと目だけ笑わずに男性ハッキリと言った。

 

「その時、歴史ある不死川の家とお前ら、日本に蒼天は宣戦布告をする。

―――蒼天と日本の真剣(マジ)な戦争をしてこの国を蒼天の領土にする為だ。

日本を手に入れたら真っ先にお前らの家と誇りを潰してやるから覚悟しろよ」

 

その言葉に、この場にいる全員が戦慄した。

おどけた風に言っているように聞こえるが、とてもふざけているのではないと悟る。

この男は本気だと面々は身震いする

 

「それじゃ不死川さん。霧島さんと霧島さんの娘にすることがあるんじゃないのか?

ああ、勿論。彼女の友達とその親に対する態度も示さないとな」

 

男性の言葉の意図に不死川心の親は察し・・・・・。

 

「私の娘の行った言動に深く、

申し訳ないとこの場であなた方に謝罪を申し上げまする・・・・・っ!」

 

大勢の視線を浴びる中で土下座をしたのだった。

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

「って、そんなことがあったんだよ!」

 

「うへぇ・・・・・義理とはいえ、ハーデスの親はすげぇな・・・・・」

 

「うん。Sクラスの両親達に真正面から啖呵を切って

不死川の親を土下座させるなんて誰もできるわけじゃないよ」

 

昼休み。学園長室で起こったことを工藤は俺達に教えてくれた。

 

「蒼天と日本が戦争なんて、しないですよね・・・・・?」

 

「するわけないじゃない。ねぇ、ハーデス」

 

姫路の言葉に島田はハーデスに問うた。当の本人は膝の上に霧島を乗せ、

木下優子が作って来た弁当を食べていた。評価はまぁまぁだそうだ。

 

『・・・・・戦争はしないと思うけど、その気持ちは未だに抱いていると思う』

 

「つまり、不安はまだ取り除かれていないと言うことか」

 

日本の未来は危ぶまれているなこりゃ・・・・・。

 

「霧島財閥って確か蒼天と同盟関係だったよな?」

 

坂本の質問に霧島姉妹は揃って頷いた。

 

「・・・・・うん、そう。だから蒼天の関係者が来てもおかしくはない」

 

「蒼天は・・・・・身内のことに関して何か遭ったら駆けつけてくれる話がある」

 

甘いと言うわけだ。蒼天は身内に対して。

 

「けどビックリしたわぁ。突然あんな放送をされたんですもの」

 

「・・・・・Sクラスの評判はさらにガタ落ち」

 

「威光も栄光も崖っぷちってことじゃのぉ。

Fクラスとは対して変わらんのではないのかの?」

 

「こっちはまだ可愛いってことか。まあ、言えているな」

 

FクラスのSクラス。この意味が分かる人はいるかな?

深く考えないでそのまま考えた方がいいぞ。

 

「それはそうとハーデス。どうして俺の友達だけ髪を切らなかったんだ?」

 

英雄は代表だからバッサリと切られたが・・・・・どうしてだ?

 

『・・・・・お前の友達だからだ直江』

 

「・・・・・お前」

 

『・・・・・深い意味はない。それだけだ』

 

「はい、死神君。あーん」

 

「・・・・・死神、あーん」

 

ちょっと感動したのにこの二人は今の雰囲気をブチ壊した。

 

「・・・・・異端者には死を・・・・・」

 

「えーと、鉄人の電話番号はっと」

 

「・・・・・直江、それは卑怯」

 

あっさりと矛を収めた土屋。俺の最終兵器の一つを使わずに済んで良かった。

 

『・・・・・工藤』

 

「ん?なぁーに?」

 

『・・・・・約束、作って来た』

 

鞄から取り出したのはシュークリームの山。

本当、あの鞄は四次元と繋がっているのかと疑問が浮かぶばかりだ。

 

「わっ、覚えていたんだ?」

 

『・・・・・約束だけは守る』

 

「・・・・・死神、私と結婚する約束・・・・・」

 

『それだけは絶対にしていないからな?』

 

「すげぇ!一秒で書いたぞ!」

 

坂本が思わず感嘆した。

 

『・・・・・取り敢えず、皆も食っていいぞ』

 

「そう言う事なら食べさせてもらうぜ」

 

「ありがとうハーデス」

 

了承を貰いシュークリームに手を伸ばす俺達。

手触りがとてもフワフワで何度も揉んでも形が崩れない。

 

「あはっ。面白いね。揉んでも弾んで形が崩れないなんて」

 

「モロ・・・・・お前、ある意味エロい事を言ったぞ」

 

「ぼ、僕はそんなこと言っていないよ!?純粋な感想を言っただけだよ!」

 

「・・・・・それはまるで―――(ブッシャァァァァッ!)」

 

「おいムッツリーニ!自分で言って鼻血を出すなんて世話が無いぞ!?」

 

何だか騒がしくなってきたな。まあ、これはこれで賑やかだから楽しいか。

 

「うーん!このシュークリーム美味しい!」

 

『・・・・・蒼天の職人が編み出した逸品。伝授してもらって作った』

 

「蒼天の人達って凄いみたいね。あの宇宙まで建てている巨大な建物もそうだし。

あれ、いつごろ完成するの?」

 

『・・・・・今年の夏の間に完成する』

 

と、ハーデスは教えてくれた。夏か、もう少しじゃないか。

 

「完成したら地球を見下ろせるんだろうなー。俺、蒼天に行ってみたいぜ!」

 

キャップが言った。言うと思ったよ。

 

『・・・・・見学、頼んでみようか?』

 

「え、どこの見学?」

 

『・・・・・蒼天のシンボル、あの塔は90%進んでいる。

中に入っても酸素が送られているから問題ない』

 

ハーデスが提案してきた。ということは・・・・・。

 

「頼むぜハーデス!」

 

純粋な眼差しをハーデスに送るキャップがそう言うと思ったのは必然的だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。