「・・・・・脅迫状を貰っただと?」
「うん・・・・・そうなんだよ」
教室に入るなりに開口一番で悩みを聞かされた。
こいつと何時も接しているからか悪友の坂本より、俺に頼むことがしばしばある。
「何て書いてあるんだ?」
「『あなたの秘密を握っています』・・・・・って」
「・・・・・明久に秘密ってあったっけ?」
「あるよ!?誰にも言えない秘密はあるよ僕だって!」
正直、物凄く下らない秘密だろうと思う。
でも、困っている友人を放っておくわけにはいかない。なぜなら―――。
「明久、実は俺も脅迫状が下駄箱の中に入っていたんだ」
「え、そうなの?」
「内容はお前と同じだ。し、しかもだ・・・・・」
俺は振るえながら脅迫状と同封されている封筒から―――チャイナドレスを
脱ごうとしている俺の写真を取りだした。
「こ、これは・・・・・!」
「今現在、俺の秘密にして黒歴史の一ページだ。明久、お前は?」
「・・・・・僕も同じだよ」
チャイナドレスを脱いでいる瞬間の写真を見せられた。
「これって俺と明久、坂本が一緒に脱いでいる写真だよな?」
「そう言えばそうだね」
「・・・・・もしや、坂本にも同じ脅迫状が届いているかもしれない」
「聞いた方がいいよね」
明久と頷き合い、ムッツリーニと話し合っている坂本の下へと寄った。
「坂本、お前んとこにも脅迫状が届いているか?
―――チャイナドレスを脱いでいる瞬間の写真付きで」
「っ!?」
激しくビクッと肩を跳ね上がらした坂本だった。
それからこっちに振り返って口を開いた。
「な、何故それをお前が知っているんだ・・・・・?」
「俺と明久もそんな手紙を貰ったからだよ」
「そうか・・・・・お前らも脅迫状が届いていたのか」
「ああ、あまりにも不愉快過ぎる。何の為に俺達を陥れるのか理解しがたい。
極めつけはこれだ」
『あなたの傍にいる異性にこれ以上近づかないこと』と脅迫状の手紙の内容だ。
「異性ね・・・・・つまり女か?」
「嫉妬による手紙だと俺も推測しているが、俺はそれ以上にヤバい」
というと・・・・・?首を傾げていると、MP3プレーヤーを取りだした。
坂本が苦虫を噛み潰したような表情になった。
「それ、お前の?」
「俺のじゃない。実は今朝、翔花がMP3プレーヤーを隠し持っていたんだ」
「MP3プレーヤー?それくらい別にいいんじゃないの?
雄二だって前に学校に持ってきたし」
たまに俺も持ってくるな。その日限って西村先生に没収される事が多い。
「いや、アイツは翔子と同じで結構な機械オンチだからな。
そんな物を持っていて、しかも学校に持ってくるなんて不自然なんだ」
それは意外だ。霧島姉妹は機械オンチか。
「そこで怪しく思って没収してみたんだが。
そこには何故か捏造された俺のプロポーズが録音されていたんだ」
「・・・・・」
坂本のプロポーズって・・・・・・。
「お前、誰にプロポーズしたんだ?」
「してねぇっ!俺は他の女にプロポーズなんてしてねぇ!」
「き、霧島さんの妹は可愛いねっ!そんな台詞を記念にとっておきたいなんて―――」
急に明久が何か焦ったように言いだした。どうしたんだ?
「いや。婚約の証拠として父親に訊かせるつもりのようだ」
「それ、もう絶体絶命じゃん?」
「これが俺の手元にある限りは問題ない・・・・・っ!
だが、この中身はおそらくコピーだろうし、
オリジナルを消さないことには・・・・・」
そう言って坂本が取り出したものはどう見ても再生専用のプレーヤーだ。
その中身を消したところで問題の解決にはならないだろう。
「おいおい、これから大事な事をしないといけないって言うのに
何問題を抱えたんだよ俺達は・・・・・」
「本当、いい迷惑だよ。誰だろう、こんな時に限って僕達を不幸のどん底に
落とすやつは」
「ああ、全くだ。翔花がこんなもんを持っている時点で俺の人生は―――」
「雄二・・・・・それ返して」
「・・・・・」」
「あ、霧島さん」
何時の間に坂本の背後にいたんだ?全然気付かなかったぞ。
坂本に視線を配ると・・・・・。
「か、返してたまるかぁっ!」
叫びながら教室からいなくなった・・・・・。
そんな坂本に金属バットを持って追いかける霧島翔花。
「あいつ、手相を調べたら女難の相がありそうだな」
「同感だね」
「お主ら、なにをやっておるのじゃ?」
「あっ、秀吉。実は雄二が―――」
坂本が落としていったMP3プレーヤーを手にして再生してみると、木下が反応した。
「む。それは明久に頼まれて雄二の真似をした時のものじゃな?」
「・・・・・え?」
意外なところに意外な人物が意外にも答えてくれた。―――マジで?
「遅くなってすまないな強化合宿のシオリのおかげで手間取ってしまった。
HRを始めるから席についてくれ」
そう告げる担任こと鉄人―――じゃなくて西村先生は片手に大きな箱を抱えていた。
もう片手には坂本の頭を鷲掴みにしていて、こっちに放り投げてきた。
うおっ、あぶねぇっ!?
「さて、明日から始まる『学力強化合宿』だが、大体のことは今配っている
強化合宿のしおりに書いてあるので確認しておくように。
まぁ旅行に行くわけではないので、勉強道具と着替えさえ用意してあれば
特に問題はないはずだ」
すいません。俺達は絶対に余計な物を持ってきます。前の席から、
ワン子から順番に冊子が回されてきたから俺も一冊取って残りを後ろに回した。
「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないように」
鉄人からドスの利いた声が響き渡る。確かに集合時間と場所を間違えたらシャレに
ならない。学力強化が目的とはいえ、皆で泊まり込みのイベントに参加できないなんて寂しすぎる。パラパラと冊子を捲って集合時間と場所の書かれている部分を探す。
今回俺達が向かうのは卯月高原という少しシャレた避暑地で、
この街からは車だとだいたい四時間ぐらい、電車とバスの乗り継ぎで行くと五時間
くらいかかるところだ。
「・・・・・」
合宿ということは・・・・・ハーデスの素顔を見れるチャンスか?
「特に他のクラスの集合場所と間違えるなよ。クラスごとでそれぞれ違うからな」
「どうせ俺らは狭いマイクロバスとかで行くんだろう」
坂本がそう漏らす。他のクラス、元Bクラスと元CクラスもDクラス、
Eクラスのバスで向かうだろうな。
「いいか、他のクラスと違って我々Fクラスは―――現地集合だからな」
『案内すらないのかよっ!?』
あまりの扱いに全級友が涙した。
「と、本来ならばそうだがお前ら。死神に感謝しろよ」
あの先生がハーデスに感謝しろという。・・・・・何故に?
「おい、どういうことだ?」
「蒼天が我々Fクラスに特別でリムジンバス並みのバスを用意してくれるそうだ。
蒼天から来た死神に不便な思いをさせないためだとな」
鉄人からの説明に俺達は―――。
『『『『『ありがとうございまーすっ!』』』』』
ハーデスに向かって土下座をしたほど感謝したのだった。俺達はついでだろうけど
それでも構わない。現地集合よりは断然良い整備とバスで行けるんだからな!
―――☆☆☆―――
「うわー!これが蒼天が用意したっていうバスなのね!」
「すげーな・・・・・」
「バスの大きさと中の広さが全然違うのじゃ」
「・・・・・まるでAクラスの教室」
僕達は蒼天が用意してくれたバスに乗り込んだ。
バス自体は二階建てでまるでAクラス並みの設備で僕達は驚いた。
天井にはシャンデリア、椅子やテーブルは高級そうなアンティーク。
冷暖房完備、各席に冷蔵庫付き&テレビで下手したら高級ホテル並みのバスだった。
ハーデスは扉がある奥に差しながら言った。
『・・・・・扉の向こうには寝台がある。寝たい奴はそこで寝ればいい』
「マジで!?どこまで凄いんだ蒼天のバスって!」
奥にも部屋があるとは正直驚いた。
「死神君、ありがとうね!」
「おう!退屈せずに済みそうだぜ!」
「僕達は運が良いね」
「ははは!そうだな!」
ハーデスに感謝の言葉を発しながら適当な場所に座る。元Aクラスの皆も入れるほど
広いバスだから学校も払うはずの経費が削減したから喜ぶだろう。
『・・・・・他のクラスもこのバスに乗っている』
「へぇ、じゃあ小山さんや根本君達も満喫しているだろうね」
『・・・・・あっちの状況を知ることができる方法がある』
既にバスは運転手さんの手によって発進されている。
「どうやって知るの?」
『・・・・・これだ』
テレビを指すハーデス。電源を入れると、リモコンで何やら次々と数字を入力して
『OK』ボタンを押した瞬間、このバスと同じ設備のバスと神月学園の生徒の
映像が映った。
『・・・・・相手はこっちが見ていることは気付いていない』
「へぇ、こんなこともできるんだね。まるで監視カメラみたいだよ」
『・・・・・もしものための設備。バスジャックに遭った時にはこれで
中の映像を見ることができる』
「ハーデス、キミの国は色々と念には念をと思ってあらゆる状況を対処する為に
詰め込んでいるでしょう」
蒼天の技術者達の考えは理解できなくはないけどこれはやり過ぎだと思う。
バスジャックなんて滅多に起きはしないんだから。
「・・・・・死神」
「うわっ!?」
何時の間に現れたんだろう。霧島さんがハーデスの背後にいた。
「霧島さん、どうしたの?」
「・・・・・死神を会いに来た」
「やっほー♪死神君、こんな凄い乗り物を用意してくれてありがとうね♪」
「運転中は動いちゃいけないけど、代表達がどうしてもというから・・・・・」
工藤さんに秀吉のお姉さん。
「皆、久し振りのAクラス並みの設備ではしゃいじゃって僕達も
自由に動くことにしたんだ」
『・・・・・地獄で仏に会ったような?』
「うん、そんな感じだよ。それはそうと座らない?」
「そうね、丁度空いている席もあるし座りましょう」
その指摘に木下さん、工藤さん、霧島さんは三人ぐらい座れる席に腰を下ろした。
僕とハーデスも三人の前に座って雑談する。
『・・・・・このバスは面白い機能がある』
「へぇー?どうんなの?」
『・・・・・これだ』
と、僕達が座っている席の真上にぶら下がっている紐を掴んで引くと、
目の前のテーブルが突然に変形し出して、機械的なテーブルとなった。
さらには僕達を囲む見慣れた空間が広がる。
「うわっ!?」
「・・・・・召喚フィールド?」
「まさか・・・・・
木下さんは召喚獣を喚ぶキーワードを言った。すると機械的なテーブルに見慣れた
幾何学的な魔方陣が出現して、
西洋の鎧にランスを携えている木下さんの召喚獣が現れた。
「ハーデス、まさかここまで設計していたなんて驚いたんだけど」
「・・・・・蒼天って開発に開発を重ねてここまで凄い物を作ったのね・・・・・」
「あはっ、でも、合宿に着くまで召喚獣を操作できるね」
「・・・・・これ、他のバスと同じ?」
『・・・・・既に誰かがやっている頃だと思う』
ハーデスはそう言ってこの席にあるテレビに視線を向けた。
それはさっき違うバスの様子を映っているテレビで、他のクラスの大半が
この召喚フィールドを展開し、召喚獣を召喚して動かしている光景が映っていた。
「他のクラスの様子かしら?」
『・・・・・その通り』
「皆、やってるねー」
「・・・・・私達もやる。
霧島さんも召喚獣を召喚する。工藤さんも召喚すれば
この流れ的に僕も召喚しないといけない。
だから、僕も学ランに武器は木刀という出で立ちの召喚獣を召喚した。
「あれ、そう言えば点数が表示されていないわね?」
『・・・・・科目が無いから点数は表示されない。
ただし、これを用いたゲームがある』
「・・・・・ゲーム?」
霧島さんの問いはハーデスが機械的なテーブルにある様々な色のボタンの中、
白のボタンを押すと僕達の召喚獣の前に粒子が現れて次第に様々な形に具現化した。
「・・・・・積み木、かしら?」
『・・・・・このボタンの色は難易度。白は誰にでもできるレベルで
白と真逆な色の黒は超絶難関の難易度』
ハーデスの召喚獣が機械的なテーブルに現れると、
積み木をどんどん積み上げて子供でも完成できる形にした。
すると、『MISSIONCOMPLETE!』と召喚獣の頭上に表示した。
『・・・・・こんな感じでクエストをクリアする感じで楽しめる』
「なるほど、これは面白いわね」
「この階の皆も、ボク達のようにやってるしね」
周りを見渡す、確かに風間ファミリーの皆が機械的なテーブルを囲んで
召喚フィールドの中にいた。他の皆もちらほらとやっている。
「それじゃ、ボク達も始めよっか」
「・・・・・うん」
「死神といると、退屈な時間が無くなるわね」
木下さん達も召喚獣を操作し、積み木を積んでいく。
そして僕達は時間を掛けてようやく超絶難関の難易度の黒に挑戦していた。
だけど、ほんっっっとうに難しくて・・・・・・。
「もう一回よ!」
意外と負けず嫌いだと知った木下さんが自分から黒いボタンを失敗する度に押した。
「はぁー、座っているだけとはいえ、召喚獣って操作する時精神力が使うよね」
「そうだね、おかげでお腹が空いちゃったよ」
「・・・・・そろそろお昼の時間」
時計を見ていると11:50と表示していた。
「ねえ優子。お弁当を持ってきてここで食べない?」
「もうちょっと・・・・・後もうちょっとで・・・・・」
ダメだ、召喚獣に夢中で聞いちゃいない。
「工藤さん、木下さんの分のお弁当も持って来た方がいいと思う」
「みたいだね。じゃ、代表。ボク達だけ戻ろっか」
「・・・・・死神、この席は予約」
『・・・・・言いたいことは分かったから行って来い』
誰にも座らせないでと暗に話しかけてきた霧島さんを見送るハーデス。
二人が一階に戻る為、僕達から離れて姿が見えないところで・・・・・。
「ミッションクリアァッー!」
木下さんがようやく超絶難関をクリアしたのだった。木下さんの召喚獣の頭上には
MISSIONCOMPLETEと表示している。凄い集中力だ。
因みに黒のボタンは召喚獣が棒を持ってあみだくじのように
作られた鉄製の間に棒を通して、ちょっとでもぶつからないようにゴールまで
通すゲーム。これをハーデスは木下さんが何度も挑戦する度に
目の前で軽々とクリアする。しかもこれ、ランダムで同じ形の棒通しはできないから、
彼女はこれに苦戦していたんだよね。
「どう死神!アタシはクリアできたわよ!」
『・・・・・すごい集中力。流石だ』
「ふふんっ!まあ、アタシが全力で集中すればこんなもんよ!」
ははは、ようやくクリアできた反動なのか・・・・・木下さんは自慢した。
『・・・・・俺は三回ぐらいでクリアできたけどな』
「・・・・・へぇ?」
あっ・・・・・ハーデス、油に火を注いだ。
「じゃあ、死神。アタシと勝負する?」
『・・・・・断わる』
ハーデスはぶら下がった紐を引っ張って機械的なテーブルが元のアンティーク的な
テーブルに戻した。
『・・・・・今の木下に勝っても楽しくない。精神がすり減っている状態じゃなく、
万全な状態の木下と挑みたい』
「・・・・・そう言われると、物凄く疲れてきたわね・・・・・」
テーブルに突っ伏す木下さん。気だるそうに溜息を吐いた。
『・・・・・』
木下さんの頭に手を伸ばして撫でる。
その手は淡く光っていて、木下さんの全身を包みこむ。
「ん・・・・・」
小さく漏らす木下さん。次第に寝息が聞こえてくる。寝ちゃったのかな・・・・・?
「お待たせー・・・・・ってあれ、優子?」
「・・・・・寝ている?」
一階から戻ってきた工藤さんと霧島さん。ハーデスはコクリと頷いて立ち上がった。
『・・・・・寝室で寝かせに行く』
ハーデスは木下さんの横に立つと彼女の背中と足の裏に腕を差し込んで持ち上げた。
所謂お姫様抱っこだ。その状態でハーデスが奥へと進む。
それに工藤さんと霧島さんは追うように続く。
僕も行こうかなと思ってついて行こうとすると、
「よぉっ明久!良いところに来たな!ちょっとこっちに来い!」
「へ?雄二、どうしたの?」
満面の笑みを浮かべている雄二が歩く僕の腕を掴んだ。その力加減は異様におかしい。僕を逃がさないとばかり腕の骨を握り潰さんとばかりだ。
「姫路の奴が俺達の為に弁当を作って来たんだってよ。―――だから、一緒に逝こう」
「―――――っ!?」
ひ、姫路さんの料理・・・・・。お、おのれ雄二・・・・・僕まで巻き込もうとして
いるんだな!?
「ハーデス助けて!って、もういないしっ!?」
「さぁ、明久。一緒に天国へ逝こう」
「嫌だっ!行くんなら雄二だけ逝って来いよ!」
「明久よ、ワシらは友であろう?」
「・・・・・同じ同志、親友・・・・・」
秀吉にムッツリーニまで!?そんな、キミ達まで!あっ、そんな。引きずり込まないで!
「ハーデス、ヘルプミィー!」
吉井明久の悲鳴が聞こえたような・・・・・。ハーデス達がいる空間は防音が
施されているので気のせいかと小首を傾げた。辺りは薄暗く、左右の壁にポツポツと
光が灯している。目的地に辿り着いた時には電流が流れるとおっかないシステムが
あるが既に何部屋か使用されていて、外から開けることは不可能。
中から開けることしかできないとある部屋にハーデス達は入った。
「うわ・・・・・雰囲気がある部屋だね」
「・・・・・しかもキングベッド」
「これなら川の字で寝ても問題なさそうだね」
工藤愛子は寝室を見渡す最中、ハーデスは夢の中にいる木下優子をベッドに―――。
「とりゃっ!」
ハーデスの背中から奇襲をし、
飛び付く工藤愛子にそのままベッドへダイブするハーデス。
『・・・・・なにする』
「えへへ♪死神君、今はボク達だけなんだしその仮面を取ったら?」
「・・・・・愛子の言う通り」
『・・・・・』
二人の意見でハーデスは無言で仮面に触れて取り外し、フードも剥いだ。
真紅の長髪が流れ出るように腰にまで伸びてハーデスの素顔が寝室に曝け出した。
「まったく、人気のない場所だから外せれるが・・・・・外じゃ外せれないからな?」
「うん、分かったよ。ボク達だけの秘密ね♪」
「・・・・・死神、格好良い」
霧島翔子がハーデスの胸元に顔を埋める。
ハーデスが椅子に座ると霧島翔子はその膝の上に柔らかい尻を乗せて寄りかかる。
「代表、死神君にとことん甘えているね」
「・・・・・死神は温かい。ポカポカしていてとても落ち着く」
「ふーん?そうなんだ、じゃあボクも」
興味を示し、ハーデスのもう片方の膝に乗って寄り掛かる工藤愛子。
「・・・・・うーん、体勢的にちょっと・・・・・そうだっ」
工藤愛子は立ち上がってハーデスの手を取ると、
木下優子が寝ているベッドに引きずり込んだ。
「死神君、ここで寝転がってよ」
「・・・・・大体やりたいことが分かったよ。こうか?」
黒いマントを脱いで木下優子の隣に寝転がると工藤愛子は満面の笑みを浮かべて頷き、
ハーデスの腹の上に寝転がった。
「・・・・・愛子、ずるい」
「ゴメンね代表。合宿の帰りに今度は代表が上で寝ていいよ」
「おい、俺は帰りもこうしないといけないのか」
「・・・・・分かった」
渋々と霧島翔子はハーデスの横に寝転がり、密着するように抱き付いた。
「うん・・・・・これなら死神君の体温は感じる。代表の言う通り、
落ち着くね・・・・・」
瞳が濡れて工藤愛子は熱い息を吐く。ハーデスから感じる温もりが
工藤愛子の全体に伝わり、何だか変な気分になる。
不思議と何時までもこうしていたいと思いが湧きあがる。
「(こんなこと、後にも先にも死神君だけしかできなさそう・・・・・)」
工藤愛子はほんのりと顔を赤くする。今は『友達』として接しよう。
ハーデスと一緒にいると楽しいことが起きるし、楽しむことが優先。
「ねえ、死神君」
「なんだ?」
「ボクと代表、どっちの身体が柔らかいカナ?」
底意地の悪い笑みを浮かべ、どっちの名が挙がるか楽しんでハーデスの答えを聞いた。
「俺だ」
「え―――そっちを選択っ!?そんな選択が返ってくるなんてビックリだよ!」
意外な答えに工藤愛子は目を丸くした。ハーデスは余裕のある笑みを浮かべ告げる。
「俺を困らせるにはまだまだ甘いぞ」
「・・・・・死神」
「なんだ」
「・・・・・死神の初恋の相手は誰?」
余裕のある笑みが消え、横からの質問をハーデスは口を噤んで沈黙を貫いた。
「黙秘権を使う」