バカと真剣とドラゴン―――完結―――   作:ダーク・シリウス

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めんどくせぇ、第八問だ

合宿一日目の練習は終わり、ワシはハーデスと遅めの入浴をする。

タオルと着替えを持ってハーデスを待つ。ハーデスと一緒に風呂場に行く為じゃ。

 

『・・・・・外に行くぞ』

 

「外・・・・・じゃと?」

 

個室風呂じゃからてっきりこの合宿所の中にあるのかと思ったのじゃが・・・・・。

ハーデスは着替えとタオルを持ってワシを先導してくれるのか前に歩いて

1Fまで降りると、ロビーに足を運び下履きに履き替えてついに外へ出たのじゃ。

 

「ハーデス、ワシらの風呂場は露天風呂なのかの?」

 

『・・・・・ああ、俺が気に入っている風呂が外にある』

 

気に入っているとならば、その風呂はさぞかし気持ち良いじゃろうな。

ハーデスが歩く先は・・・・・山。

 

「のう、ハーデス。風呂がある場所はどこにあるのじゃ?」

 

『・・・・・あの山』

 

「待て待て、流石にあの山まで徒歩で行くのは危険じゃ。

しかもどのぐらい時間が掛かると思っておるのじゃ」

 

『・・・・・大丈夫だ。問題ない』

 

そう言ってハーデスはワシを横抱きに抱えたと思えば・・・・・一気に跳躍した。

 

「なぁあああああっ!?」

 

一気に合宿所から遠退き、暗い山の中へ吸い込まれ着地するとハーデスは凄い勢いで

駆けだす。木と木の間、糸を針の穴に通す感じですり抜け続けついには

湯気が立つ場所へと辿り着いた。そこは近くに川が流れていて上を見上げると

満月が良く見える。辺りも見渡すとポツンと小屋が設けられていた。

 

『・・・・・ここが俺達の個室風呂だ』

 

「こ、ここが・・・・・」

 

『・・・・・久し振りに来るが、小屋はどこも壊れていないようだ。

あの中で脱衣するんだ』

 

簡易な脱衣所じゃの。ハーデスと脱衣所に足を運ぶ。

中に入れば、この小屋との外見と裏腹に、中は広かった。

久し振りに来たと言うからてっきり蜘蛛の巣や誇りまみれになっておるのかと思った。

じゃが、現実は違っていて定期的に掃除がされているような清潔感。

 

「先に入っているぞ」

 

「はやっ!?」

 

何時の間にか脱ぎ終わっていたハーデスが、

背中に赤より鮮やかな真紅の髪を揺らしながら外へと出た。それを見送って一息。

 

「ふぅ・・・・・練習はキツかったのぉ・・・・・」

 

遅れて脱衣所で衣服を脱ぎ捨ててタオルを片手にワシは外へと出ようとする。

ワシとハーデスだけの秘密の露天風呂・・・・・なんじゃが嬉しいの。

 

「明日もSクラス打倒の為に皆は頑張るじゃろう。ワシも頑張らねければ」

 

戸を開けて外へ。露天風呂は周りも石だらけで足を前に運ぶ度足の裏から

冷たさを感じる。

 

「・・・・・」

 

ワシの前方に岩で囲まれた湯に浸かっている全裸の男がおった。

赤い・・・・・いや、真紅の長髪、夜空に浮かんでいる満月に

金色で垂直のスリット状の双眸を向けて眺めていた。

 

「どうした、何時までもそこで全裸で立っていると風邪引くぞ」

 

「っ!?」

 

急に声を掛けられ、ワシは我に返った。

 

「あ、ああ・・・・・すまん。お主の素顔と身体を見て見惚れてしまった」

 

って、ワシは一体なにを言っておるんじゃああああああああああああっ!?

これではまるで明久みたいではないか!

 

「吉井明久みたいな発言だな」

 

「うぐっ!?」

 

「まあ、嫌いじゃない。とにかく入れ」

 

「う、うむ・・・・・・」

 

おずおずと湯に入る。むぅ、こんな緊張をしていなければ湯の温度に

堪能していただろうに。

 

「今日はお疲れ様」

 

「うむ。また明日も頑張るのじゃ」

 

「ああ、Sクラスを除いた六クラス全員がこんなことできるのは今回だけだ。

時間が許す限り操作を慣れないとな」

 

「そうじゃの・・・・・」

 

ワシもSクラスはあまり好きじゃないのじゃ。好き勝手に周りを困らせておるからの。

そんな奴らをハーデスは仮面を被ってSクラスに敗れた者達の一矢を報いた。

・・・・・今更ながら、ハーデスは何故仮面を被っておるのじゃろうか?

 

「のう、ハーデスよ。どうしてお主は素顔を隠すのじゃ?」

 

「・・・・・未練を残さないためかな」

 

「未練じゃと?一体、何に対して・・・・・」

 

「それをお前が知る必要はない」

 

ハッキリとハーデスに拒絶された。何故じゃ?お互い同じ学校を通い、

ワシとお主は友ではないか。共に召喚大会を優勝した仲じゃろう・・・・・。

 

「俺はな木下秀吉。毎日苦痛でしょうがない」

 

「・・・・・なぜじゃ?」

 

「俺にとってこの世界は鳥籠に等しい。俺より強い奴はいないし、

家族と会えないでいる」

 

家族と会えないとは・・・・・もしや、亡くなっておるのか?

 

「でも、今はそれなりに楽しいさ。でも、俺が求めているような世界はここにない。

それが苦痛だ」

 

「・・・・・」

 

「お前にこんなこと言ってもチンプンカンプンだろう。

俺の独り言だと思って無視してくれ」

 

無視なんて・・・・・できるわけなかろうて・・・・・・!

 

「ハーデス。お主は一体何者じゃ」

 

「・・・・・それを知ってどうする気だ?」

 

「決まっておる・・・・・」

 

ワシは立ち上がり、全身から湯が流れ落ちる感覚を感じながら真っ直ぐハーデスを

見つめた。

 

「ワシは、お主の友達として知りたいんじゃ!

一人で何か抱え込んでいることよりも、ワシらに頼ってくれてもよかろう!

共に助け合い、共に前へ進むことは友達ではなかろうか!?」

 

「・・・・・」

 

「ハーデス!ワシは何度でも言うぞ。ワシはお前の友達じゃ!

お主がそうでないと言い張ってもワシは断固としてお前を友だと言い張るぞい!」

 

想いをハーデスにぶつけた。ハーデスは目を丸くしてキョトンと呆然と

ワシを見上げていることしばらくして、立ち上がった。

 

「・・・・・へぇ?俺のことを友達と言い張るのか?」

 

「そうじゃ」

 

「―――じゃあよ。この姿を見て、お前は友達だとそれでも言えるか?」

 

そう言って天然の露天風呂から出たハーデスが人の形を崩して、

ワシの目の前で全長100メートルほどの真紅のドラゴンになった・・・・・。

その光景にワシは思わず立ち上がった。

 

「―――――なん、じゃと・・・・・?」

 

『これが、俺のもう一つの姿だ。俺は―――――ドラゴンだ』

 

立ち並ぶ鋭利な牙を覗かせる口、鋭い金色の双眸、赤い立派な角をワシに近づける。

 

『この姿になるのも久し振りだ。この姿を晒したのはお前が初めてだぞ木下秀吉』

 

「・・・・・っ」

 

伸ばしてくる赤く大きな手。ワシは思わず目を瞑ってしまったが、

頭を撫でられる感触で目を開いた。

 

『さて、聞こうか。お前はこの姿の俺でも尚、友達だと言い張るか?

言っておくが俺は相手の心を読める力がある。もしも本心から願っていなければ、

お前の記憶から今日の事を消させてもらう』

 

な、何じゃと・・・・・!?

 

『木下秀吉。お前の答えを聞こう』

 

ハーデスは答えを待って、静かにワシを見据える。

それだけでも物凄い迫力で思わず心が挫けそうになる。

じゃが・・・・・ワシの答えは決まっておる。

 

「・・・・・」

 

両腕を伸ばし、ハーデスの口先に抱きつく。

顔が大きすぎて手がこれ以上伸ばせないがの・・・・・。

 

「ハーデス。ワシはお前の友達じゃ。それ以外何も言わんぞい」

 

『・・・・・』

 

「お主の過去に何か遭ったのか当然知らん。じゃがな。

今のお主なら知っておるぞ。雄二や明久、ムッツリーニ、直江達と共にの。

お主が毎日苦痛と言うなら、ワシや他の皆とその苦痛を和らげよう」

 

優しく話しかける。ハーデスの心を癒せることができるならば、

ワシは何でもしてやりたい。それが友達というものじゃろう?

 

『・・・・・男に口説かれる日が来るとは驚いたな』

 

「く、口説くじゃと・・・・・!?」

 

愕然としてワシはハーデスを見上げた。ハーデスは口の端をニヤリと吊り上げた。

あ、あの表情は・・・・・!

 

『今の発言。録音させてもらった』

 

「け、消すのじゃ!その録音を今すぐ消すのじゃ!」

 

男に口説いた覚えはないのじゃ!そんな面白いと顔をするではない!

 

『―――ありがとうな』

 

「え・・・・・?」

 

ハーデスの身体が光に包まれ、見る見るうちに人の形へと戻り、ワシの前に佇む。

 

「お前がそう言ってくれて俺は物凄く嬉しかった」

 

仮面で見ることが不可能だったハーデスの笑みが・・・・・ワシの前で浮かべた。

満月をバックにして、靡く真紅の髪。

月の光で照らされる微笑むハーデスに不覚にもワシは・・・・・。

 

ドキドキドキ・・・・・。

 

心臓の鼓動が速く高鳴る自覚をしてしまった。

 

「これからお前のことを秀吉と呼ばせてもらう。友達だしな」

 

「・・・・・」

 

「秀吉?」

 

はっ―――!

 

「う、うむ!そう呼んでくれるとワシは嬉しいのじゃ!ハーデスよ!」

 

「そっか、じゃあこれからもよろしくな。秀吉」

 

嬉しそうに弾んだ声は、改めて友としてハーデスはワシと仲良くなった。

ワシも思わず嬉しいあまりに抱きしめて、

 

「よろしくなのじゃ!」

 

ハーデスと絆を結んだ。

 

「ところで、ハーデス。明日も明後日もここの風呂に来るのかの?」

 

「ああ、そうだ」

 

「西村先生達にはバレないのかの?」

 

「そのことか?特に問題ないぞ。お前は気にしなくてもいい」

 

頭を撫でられる。

 

「・・・・・のう、ハーデス。霧島をどうするのじゃ?」

 

「あいつか。別にどうするも何も放っておくだけだ。俺のこと信用していないししばらく様子を見る」

 

「じゃが、霧島は泣いておったぞ」

 

嗚咽を漏らす霧島を脳裏に思い出す。ハーデスがそんなワシを余所に溜息を吐いた。

 

「俺が最も嫌いなことを教えようか秀吉」

 

「嫌いなこと・・・・・?」

 

「―――俺の家族に傷つける存在。そして裏切りだ。霧島の奴は俺に対する好意が重度で

恋は盲目以上に相手の話を聞かず、自分の思い通りにならないと相手を攻撃する

そんな少女だ。俺の嫌いな事と当て嵌めていないが、

信用していた人物に話を聞いてもらわず攻撃をしてくる。

それはある意味信用していた者に対する裏切りだ。信用していたからこそ、

信用していた者から攻撃されて少なからずショックを受ける。

俺はそれがこの世で一番嫌いだ。相手が泣こうが喚こうが俺を裏切った。

しばらくは口も聞かない」

 

「・・・・・それでは、霧島が可哀想ではないか」

 

「これ以上甘やかすと聞き分けのないガキになるだけだ。

落ち着いて自分の言動を理解できる程度に成長すればいつも通りに接する。

まあ、あいつのことだ今回のことで物凄く反省して明日は落ち着いて

接してくるはずだ。俺はそう予想している」

 

そこは信じると言わぬのじゃな・・・・・ハーデスは手厳しい男じゃ。

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